【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「……やはり、来るか」
ノーネームさんとノームさんの作った、ダンジョン的な空間。
その、なくなった天井からぽけーっと大きすぎる星を眺めていた僕たちは、気づく。
その星の周りにある影――たくさんの衛星とおぼしき球体から、小さな点がわらわらと動いていることに。
「この位置は、魔王軍――その絶対防衛圏の内。本拠地、首都……『コア』。――それは本気にも、なるだろうね」
姉さんが、つぶやく。
「……このサイズは、かつての私たちの……」って、口の中でも、ぼそっと。
「おじゃるさん。おじゃるさんたちは、僕たちをここへ連れて来ようと?」
「……うむ。少し前までは……ハル。貴様ら――お前たちを、朕の城に住まわせようとしておった」
【あー】
【そっか、殴り愛する前までのおじゃるなら……】
【でもやっぱ、殺すつもりはなかったんだよな】
【だな】
【たとえ負けても、お城での軟禁生活で住んでたんだよな……おじゃるがトップのままなら】
【でも、今は……】
「おじゃる。君たちは、それを中止してくれた。けど、離反した君の配下たち……彼らは君ごと私たちを……」
「『無抵抗で無力な敵の首領ども』を、城まで引きずりおろし……さぞ屈辱的な扱いをしようとしていたのだろうな。腹立たしいことよ」
ぶわっ。
おじゃるさんから、不機嫌な臭い。
「……おじゃるさん」
「む、済まない。朕も……感情を制御することを、覚えねば」
人間の形を取ったってことは、つまりは感情が汗に乗って匂いや臭いとして届くってこと。
――だから。
「いえ」
僕は、安心する。
「いいんです。おじゃるさんが、本気で怒ってるって……『おじゃるさんの匂い』で分かるので」
僕は、ちょっとだけ理解する。
リリさんたちが僕の体を嗅ぐ理由を。
「………………………………そう、か」
「むっ……」
「すてい」
「そうです!」
【草】
【ノーネームちゃんステイ!!】
【ノームちゃんが止めている】
【リリちゃんが使えない】
【草】
【ノームちゃん、ナイスディフェンス】
【いいところだからね、静かにしてようね】
【そうか 今のおじゃるは人間……感覚に敏感なハルちゃんなら、わずかでもかく汗で感情まで分かるか】
【索敵スキル……だけじゃないよな、きっと】
【ああ】
【誰よりも人のことが好きなハルちゃんなんだ 感情の機微にも……】
【普段は鈍感だけど、こういうときだけ ずるいよな】
【だから好きになるんだろ?】
「――だけど」
姉さんが、空中を指し示す。
「数百カ所で、大規模な魔力の衝突を感じる。……君へ同調し、理解し、付き従う仲間たちが、すでに戦っているようだ」
ちか、ちか。
昏い星の表面、あるいは空中――その衛星とおぼしき場所で、オレンジ色の光がまたたく。
索敵スキルで、かろうじて確認できる衝突の痕跡。
その下で――無数のドラゴンさんたちが、おじゃるさんのために戦っているんだ。
「……彼奴ら……」
「巣穴の近く、なればこそ自分たちのボスを守りたい。……でしょう?」
「きっと、近くで君を見てきた――そして、この配信で君を確かめた仲間たち。おじゃる。君は……慕われているね」
真上を向いているままの、おじゃるさん。
そのそばへ――そっと、姉さんとくっころさんが寄り添っている。
「……民は、支配されるものではありません。民が、王から支配されるのです」
「力ある王であろうとも、心がなければ慕われない。表面では従おうと、時間が経てばいずれは崩壊する……お父様から幾度も聞いた言葉。招かれた世界でも聞いた言葉です。今の貴女はきっと……」
静かな、リリさんとビビさんの声。
「俺たちの村でも……えーっと、なんだ。頭が良くって度胸のあって……優しい奴が、村長になってたな。怖いだけのやつは、最後は追放だ」
「はい。……権力でもお金でも、腕力でも魔物を倒した数でもなく。私たちが、安心して身を任せられる――そんな人が、信頼されていました」
腕を組んだアリスさん、胸元で手を握るアレクくんの声。
「……おじゃるさん」
九島さんが、言う。
「人は……魔族も、きっと他の種族も。力だけの支配では……こうは、なりません。自分から立ち上がったりは、しません」
えみさんが、言う。
「一時は圧倒的少数派となっても、それでも指示する王様。……私たちに実感はありませんが……それが、人望というものではないでしょうか」
るるさんが――言う。
「最初に人気がなくって。へたっぴだしのろまだしドジだし、迷惑ばかりかけて……ちんちくりんで、女の子らしい体もしてない。でも、それでも応援したい。……私のファンの人たちも、言ってました。私の……がんばる姿を、推したいって」
そして、3人が、そろえて言う。
「そういうのが――」
「『アイドル』――あるいは」
「『王様』、ではないでしょうか」
【るるちゃん……】
【くしまさぁん……】
【えみちゃんも……いいこと言うじゃないか】
【おじゃるへ、すぐ隣からその言葉を伝えられるんだ ハルちゃんの言う通り、戦力外なんかじゃ……ないよな】
【守るべき存在 居るだけで士気が上がって、力が湧く存在 きっとるるちゃんたちは……ハルちゃんや、今のおじゃるにとって……】