【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「……ハルがこう譲らない以上、私たちの方針は可能な限り魔王と共闘して外から削る形になる。ノーム、ノーネーム。君たちの魔力もいくらかは回復したはず……もう少し、がんばってくれる?」
「「ん」」
こくこく。
――空では、おじゃるさんが大暴れしている。
おじゃるさんの炎で隠れて見えないけども、きっとおじゃるさんに従う魔王軍も――くっころさんの手下さんたちも、きっと戦っている。
けども、敵はいくらでも復活してくる。
それはおじゃるさんの仲間もそうだけど、なにしろ数が違いすぎる。
「じゃあ――私も、行ってくる」
ばさっ。
姉さんが白い羽を動かして、浮かび上がっていく。
「ハルは、どうする?」
「もちろん――――」
くいくい。
光る弓矢を出そうとしたら、いつものように引っ張られる袖。
「なんですか?」
――じっ。
ノーネームさんが――――――ふむ。
「何か、作戦があるんですね?」
「ん」
「じゃあ、僕はそれに従います。姉さんは先に」
「わかった。ノームは、この場の保持をお願いするよ。来てくれている人間の子たちを帰すかどうかも含めて」
「ん」
【何かあるのか】
【あいかわらず秘密主義のノーネームちゃん】
【それがノーネームちゃんだからね】
【きっといろいろ考えてるんだろうけどなぁ】
「ひとまず……そこのドラゴンの面倒を見ててもらえたら嬉しい。チホ。大変だろうけど、ハルも含めて制御できそうなのは君だと思うから」
「えっ」
九島さんの声が、裏返ってる。
結構珍しい声だ。
【草】
【草】
【悲報・くっころの世話、くしまさぁんに丸投げされる】
【かわいそう】
【かわいそう】
【ひどいよ、こんなのあんまりだよ】
【鬼畜の所業ですアルちゃん様】
【草】
【単純なレベルと戦闘力ではむしろ最下位のはずなのに、なぜか人間代表に登り詰めているくしまさぁん】
【名誉女神だからね】
【ノームちゃんたちが打診してくれたからね】
【どこへだろうねぇ……】
【ないないされたいんなら考えろ】
【ひぇっ】
「――よーし。全力で行ってくる!」
ばさっ、ばさっ。
姉さんが嬉しそうな声を上げながら、飛んでいく。
「楽しそうですね」
「「ん」」
こくこく。
心なしか弾んでいる返事が返ってくる。
「ところで……作戦って?」
「ん」
「こっち」
くいくい。
黒髪の2人が、僕の両袖を引っ張る。
前から思ってたけど、ノーネームさんたちって僕を引っ張るとき手を握ったりはしないんだよね。
ノーネームさんはよく張りついてくるけど、それでも1歩引いてるっていうか……こう、ちょっとだけ不思議な感じ。
「……え、ええと……みなさん、くっころさんの介抱を一緒に……」
部屋の隅の方へ引っ張られながら振り返ると、おそるおそるって感じで……さっき捨てられてたくっころさんのところへ九島さんたちが向かっている。
「九島さん。その人、悪い人じゃないので優しくしてあげてくださいね」
「え? ………………………………え、ええ……」
「?」
九島さんが、なにか変なものを見たみたいな目をしている。
なんでだろう。
【goddess】
【これは女神】
【どっちが?】
【どっちも】
【ハルちゃんもくしまさぁんも、愛の深さと器の大きさでは間違いなくアルちゃん様にも劣らないね】
【それな】
【美しい……】
【ふぅぅぅぅぅぅぅぅ】
【えぇ……】
【草】
ぽてぽてぽて。
両側から袖を引っ張られて歩きにくい中、僕たちはみんなから離れていく。
「けどノーネームさん、ノームさん。作戦って……」
「このへん?」
「んぅ」
「あとさんめーとる、みぎ?」
「ん」
こくこくこく。
よく分からないけども、2人の作戦のために何やら正確な座標が必要らしい。
「いっぽさがる」
「はい」
「ひだりあし、ななせんちまえ」
「はい」
「じゅうしん、すこしだけうしろ」
「はい」
結構細かい指示が2人から浴びせられる。
そこまで必要な作戦……んー、なんだろうね。
「……ここ」
「たってる」
「はいはい」
何度目かの微調整を終えて――ちなみに最後は履いてるサンダルの左足を2センチ後ろにすることだった――僕から離れる2人。
【――――――同期】
【開始】
ぴこぴこ。
【座標固定】
【因果律・・・確定】
【多次元空間】
【接続開始】
――――――ぶんっ。
2人の繋いだ手の後ろに――――見たこともないような、立体的な魔法陣が。
まるで毛糸で編んだ球のように、ひたすらに細かい魔法陣が編み込まれた魔法陣――魔法球が、みるみる間に膨らんでいく。
それは、ほんの数秒で直径が5メートルを優に超えていて。
見ていると、なんだか吸い込まれそうな濃密な魔力を貯め込んでいて。
【えっ……】
【まって】
【ノーネームちゃんたち】
【なにしようと】
【なに、これ……】
【こわいよ、ノームちゃんたち……】
ぴこぴこぴこ。
ぴこぴこぴこぴこぴこぴこ。
すごい速さで話合っているらしい2人の目は――僕を見ていて、僕を見ていない。
――――――ぴこ。
やがて、そのぴこぴこが止まり。
【受信】
【送信】
「はる」
「はい」
ノーネームさんが――――視線を僕に戻して、尋ねてくる。
「ほし」
「つかって」
「いい?」
「? 星?」
【「★」】
ぴこん。
すっごく久しぶりに見た気のする記号。
「★10」。
かつて、僕が伝えられた「なんかおかしいレベル表記」。
……この2人が言うんだ、きっとそのことだろう。
何も分からないままに「幼女/女神」ってのになっていた僕と、一緒にあったらしいモノ。
それを、2人は使えるらしい。
「……はい。お願いしま――――――」
◇
――――――カランッ。
カラカラ。
1つが音を立て、遅れて2つが床と重なる。
ハルが居た場所に遺されたのは――軽い音を立てて転がる金属の輪だけだった。