【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「………………………………」
夢から醒めていたって気づいたのは、いつからだろう。
目と耳に入ってきた過去が消え失せ、現在に戻ってきていたってのに気づいたのは。
「すぅ――――……んあ、起きた? あ、じゃない……起きました?」
ぼんやりした感覚から、けれども聞き慣れた声と――顔が、覗く。
「ハル様? 起きてます? まだ寝てる? ……んー、転送……じゃない、転移、見た目なら結構前から問題ないみたいだけど……」
燃えるような――人間の常識の範疇で――赤い、長い髪の毛。
僕は男だから女の子のファッションにはさっぱりだけども、高校生から大学生の女の子がフォーマルな場所へ行くときに着るような、落ち着いている上品な服装――リリさんに似合いそうなドレス。
そんな衣装を身につけた女の子……いや、女性が、僕の肩へその両手を置きながら、僕を後ろからのぞき込んできていたらしい。
「……うん、さっきまでとは違う。『認識阻害魔法』は解除されてる……なら」
そんな彼女は、僕がぼんやりしているのを横目で見ながら、耳に手を当ててつぶやき始めた。
「……連絡するわ。あ、じゃない、連絡します。――――『始原/はじまりの神』は、無事、記録にあった通りの座標へ訪れました。意識の覚醒を確認しました。……繰り返します。『H/A-RU』が――『過去』より……帰還、しました」
「………………………………」
……なんで女の子ってみんな、僕のことを後ろから抱きしめながら耳元でこしょこしょ話すんだろうね。
おかげで僕、耳がかなり敏感になっちゃった気がするよ。
◇
「………………………………」
「す――――――っ……」
寝起きは、ぼんやりするもの。
ましてやこの体は子供、だから余計に覚醒するまでのラグがある。
意識が戻っても、まだしばらく動きたくないんだ。
「すぅ――――――――――っ……」
それに、誰かがそばに居るときの僕は、だいたい撫でられたり添い寝されたり髪の毛を弄ばれたり吸われたりしている。
「すぅぅぅぅぅぅぅぅ――――……」
だから、もう気にならない。
気にしても意味がないとも。
………………………………。
「すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」
けども。
「……そろそろ良いです?」
それなりに好きにさせてあげたし、もうそろそろ?
「すぅぅぅぅぅ――――――――……」
だめらしい。
まぁリリさんみたいにはうるさくないし、もう少しこのままで。
しょうがない僕は目だけで周囲を見回してみる。
――目につくのは「神殿」って言葉でイメージするときに浮かぶような、柱。
世界史の授業でイオニア式とかドリス式とか、とりあえずで暗記だけした知識がふわふわと浮かんでくる見た目。
白い柱が何本も部屋を取り囲んでいて、それらは……たぶん2階分くらいの高さまで天井を支えていて。
天井には青い空に白い雲――あと、なんだかまるでノーネームさんと僕みたいな女の子たちが羽で飛んでいる、宗教画みたいな絵が描き込まれていて。
柱は柱でも、たぶん見た目だけのやつで、ていうか壁に沿ってかまぼこみたいにスライスされて貼りつけてあるやつで、その貼りつけてある壁は真っ白で。
けれどもよく見てみるとボルトとかナットで四方を留めてある四角い板――たぶん金属だろう――で、その中を、いつしか見たような光る線が走っていて。
足元に視線を落とすと、こっちはなんだか古い素材の……大理石とかなんだろうか、明らかに質感の違う「ザ・台座」って感じの場所。
かなり複雑な魔法陣が刻んであるけども、その溝も年季が感じられる。
僕、こういうの好き。
台座は2メートル四方くらい……んで何段かの階段が段々と地面まで伸びている。
見た感じでは10段くらい?
まさに「ザ・神殿」。
何かしらの儀式が行われてそうな場所だ。
たぶんだけど、これ、どこかにあったのをこの殺風景な広い部屋に運んできたんだろうなって感じ。
だって雰囲気とか全然違うもん。
つまり、僕が目を覚ました、ここは――――
「………………………………ふぅ……」
「あ、終わった」
だいたいいつも、るるさんが満足するような感じの声。
嗅いだあとのリリさんはいつも変な声出しながらへちょんってうずくまるし、えみさんは僕に触れただけでそうなるからちょっと特殊で、たぶん今みたいなのが普通に満足した声なんだ。
「で。君、キャシーさんですよね」
ようやくに動けるようになった僕は――そういや僕、立ったまま目を覚ましたんだよね、ここで――彼女へ、振り返る。
おじゃるさんみたいな物理的に燃えてるんじゃないけども明るい光に照らされると真っ赤な髪の毛は、記憶にあるよりもずいぶん長くて。
ドレスはドレスでも、素材は硬めだし体の左右にはポケットがいくつもくっついていて――あ、小さな銃が見えるね――あと、裾の方に謎の幾何学模様が編み込まれている上に、やっぱり細いけどその線に沿って光が流れている。
あとあと、たぶんだけどダンジョンドロップみたいに防御力とか高い服だね。
そういう服はいろいろとかっこいい名前とかがついてるから聞いてみたい気がする。
そんな格好のキャシーさん……いや、返事がない。
「……それとも、そっくりさん?」
いや、やっぱりキャシーさんだ。
僕がかつてダンジョンで拾ったときよりもずっと大人びているけども、この子はキャシーさんだ。
直感で、そう思うんだ。
……それにしても、大きくなったね。
そうだよね。
だってリリさんもビビさんも、アリスさんもアレクくんも……るるさんも、みんな、僕が知らないで過ごした時間を生きてきたんだから。
まったく成長できてないどころか何なら幼女になって縮んでる僕とは違って、普通の人間なみんなは普通に成長するものなんだもんね。