【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「……だからね! この船はいろんな文明からの先進技術とかを導入して作り始めたの!」
「そうですか」
「プロジェクトの最初の方は、そりゃあもう私たちの技術力は貧弱だったわ。だって基本、みんな大規模な転移魔法か小型の核融合炉でのワープを実現してるんだもの。基礎科学技術から基礎魔法技術から、ぜーんぶ借り物で」
「そうですか」
「けどね、3世代目の建造からは自前になったの! ようやくに地球の政治と生産体制が一本化されたのもそれくらいね! だって外はみんなまとまっているんだもの!」
「そうですか」
「だから、この船は連絡があった通りに第7世代目の――」
「そうですか」
ふむ。
……目的地、遠くない?
そう思った僕は、途中から壁とか天井とかの不思議な模様――普通の四隅をビスで留めてあるような金属の板の溝に沿ってかくかくうねうねと走る光へ興味を抱いていた。
や、キャシーさんの話は聞いてるよ?
重要そうなところくらいはね。
その重要そうなところは1%くらいで、残りは全部繰り返しか、あるいは僕が興味持てない気がするから言葉を耳にしているだけだけども。
「?」
ぺちぺちと歩いていたところ、サンダルって意外と足首が冷えるんだなって新鮮な発見をしていた僕は、ふと気配を感じて顔を上げる。
「……?」
その先――長い長い廊下の、左右の壁。
そこには、
「ああ、あの人たちね!」
いろんな服を着た人たち。
いろんな髪型や髪色や、背丈や――角や羽が生えてる人も居れば、天井に頭が思いっ切りめり込む巨人さんとかロボットみたいなかっこいい人とか、針金で作った鳥の巣みたいな何かな人とかスライムっぽい人とかが居て。
そして……なぜかみんな、壁に背を向けて立って頭を下げている。
や、厳密に言えば半分くらいは地面に座り込んだりしている。
人――種族によっては、手も使わずに逆立ちしている。
なんだかすっごく回転してる人も居れば、ちかちかと明滅したり7色に光ったり……体がパーツごとに分裂してくっついてを繰り返したりしてる人も居る。
「?」
なんかすごいことになってるけども……なんで?
「あの人たち、船の乗組員よ。みんな、この時間帯の交代の権利、すっごいバトルで勝ち取ったの。このハワイだけじゃなくって、合体してる船の非番を勝ち取った人たち」
「へー」
不思議な乗組員さんたちだね。
どんなお仕事してるんだろう。
「……ハル様、びっくりしないのね」
「? びっくりするんですか?」
「え、だって、精霊族の人とか機械の人とか初めて見るんでしょ?」
「それはそうですけど」
精霊、機械。
よく分からないけども、ひとつだけ言えるのは。
「僕、いろんな知り合い居ますし」
正直、今さらかなって。
……ほら、謎の空間に居た自称第2父さんとか、テンションが高すぎてちょっと苦手な第2母さんとかに比べたら、ささいな違いかなって。
それに、僕たち人間よりでっかい巨人さんもひとつ目の巨人さんも知ってるし、それを言えばノーネームさんなんて最初は文字だけで、そのあとも人形みたいだったし。
「そうね! ハル様だものね! 懐の広さは世界で1番よね!」
「そうですか?」
むふん、と、なぜか自慢げなキャシーさん。
あ、でも、気がつけば昔みたいな話し方になってる。
「似合ってますね」
その話し方。
あと、結構人懐っこいしゃべり方とか表情とか。
……やっぱり子供のころの印象、そのままだね。
「でしょー!? この制服も私が決めたの! 私が!」
「そうですね」
ちょっと意思疎通が難しかったけど……喜んでるからいいや。
相手が喜ぶんなら、無粋な指摘はしないに限る。
勝手に勘違いして喜んでくれるんなら、その方が楽だもんね。
「アルム……」
「ハルム……」
「幾――年の尊き女神よ……」
「嗚呼、素晴らしき哉……」
「我ら種族を救い給う御方の……」
それなりに広い廊下だから、左右に大きめの人が立っていてもぶつかったりはしない。
なんなら体の大きな人とかは窮屈そうに壁とか床に張りついているくらい。
……けども、通りがかったところへお祈りだか呪文だか呪いだかを掛けられるのは、ちょっと……。
「みんな、ハル様が来るのを待ってたの」
「そうなんですか」
そうなんだ。
僕、来るのなんて知らなかったけど。
あ、そういや。
「ノーネームさん、来てます?」
そうだった。
ノームさんはアル姉さんの手伝いをしてそうだからともかく、ノーネームさんは?
「もう先に行ってるわよ」
「そうなんですね」
きっと、僕がいつまでもぼんやりしてるからさっさとふわふわ飛んでったんだね。
ノーネームさん、ときどき気分屋になるから……や、いつも気分屋か。
【♥】
「しゅきぃ……♥」