【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「ざひょう?」
「おけ」
こくこくこくこく。
合流した女神たちは、うなずき合う。
「――みんなを」
「まもるため」
ぎゅっ。
烏よりも深い黒のドレスを着た少女たちは、空を見上げる。
『――――――ふはははは! 元・魔王様よ――この御方こそ、新たなる我らの真祖の血を引く魔王様ぞ!』
「お主ら……そのような童を、どこから引っ張ってきた……!」
「あー。傍系とか妾の子とか、神族でも昔はあったらしいし」
【あー】
【あー】
【そら神族を劣化コピー?して生み出されたのが人間だもん、そのコピー元がやらかしてることはだいたい想像つくわなぁ】
【草】
【王様なはずのおじゃるが、別の王族を旗印に排除……あの……これ、戦い、収まらないんじゃ……】
【血統での正統性で国家分裂、大戦……泥沼……南北朝分裂……うっ頭が】
【※世界史上、普通によくあることです】
【本当によくあることなんだよなぁ……】
【真偽はともかく「そういうこと」になれば、血統なんて……ねぇ……?】
【遺伝子検査がない時代なんか、もう言ったもん勝ちよ】
【逆に祖先を有名どころに合流させる荒技とかしょっちゅうだしな】
【それを国の起源ごととかも、ね】
【余り深く追求するんじゃない この配信は全世界から”観測”されているぞ】
【ひぇっ……】
【草】
「だれも?」
「きづいてない」
「「なら」」
魔王と女神が新たな魔王と退治する光景を眺めながら、黒髪紅目の女神は……揃って唱える。
「はる、は」
「もうすぐ」
「「――――『しげん』に、たどりつく」」
◇
「ノーネームさん」
「ん」
【What?】
【何?】
【Was?】
【Quoi?】
【Quid?】
【Ti?】
「あ、違います。ノーネームさんだけです。おっきいノーネームさん」
声をかけた瞬間に、何十ものぴこぴこ。
……そうだね、みんなノーネームさんではあるもんね。
【小?】
【貧 is not justice?】
【sad】
【アアアアアアアア】
【↑哀……】
【本体特権】
【下克上?】
【不可】
【ショボン】
しばらくぴこぴこがすごかったけども、じきに静かになる。
「むふん……」
「?」
なぜか嬉しそうなノーネームさん。
そんな彼女の長い髪の毛と裾は、静かに地面へ下ろされる。
「僕たち……どこへ向かっているんです?」
「もくてきち」
――すっ。
そういえばだけど袖もやたらに長くって、なんなら腕を真横にしても袖が地面についている彼女は、僕のつま先が向かっている方向を、指し示す。
「すぐ、そこ」
「そうなんですか」
たぶん、ノーネームさんは――説明するのが、とてつもなくめんどくさい。
そう、感じてる。
なら、今詳しく聞こうとしたって、どうせ答えてはくれない。
「じゃ、このまま行きましょうか」
「ん」
【招集】
【マタァ?】
【御前席、無】
【ソンナー】
ぱたぱたぱたぱた、わらわらわらわら。
ふたたびにノーネームさんの周りが真っ黒になって、またまたノーネームさんの広げているのが持ち上げられる。
「けど、どこに行くのかとか教えてくれません? や、なんにも知らないと心の準備とかできないので」
とか言いつつも、僕は半分以上……ほとんどは諦めてる。
ノーネームさんって――実は、人をびっくりさせるのが好きなんじゃないかなって。
「ん」
だけれども。
彼女は、その深紅の瞳を広げて――僕の脳みそを直接見ているような視線を送ってきて、
「――――ざひょう」
「?」
またよく分からない言葉を発した彼女の後ろを――――何歩か歩いたのまでは覚えていて、
「……ん」
僕は、意識を取り戻したらしい。
この体になってから、そしてるるさんたちと1度はお別れしてから何度となく経験した、この、世界が途切れ途切れになる感覚。
僕は割と順応しているから、そんなに嫌な感じじゃない。
むしろ、妙に懐かしくって――――
「おはよう」
「え?」
誰かの声が、降ってくる。
「嫌な感じ、しない?」
「え、あ、はい。しないですね」
「そう。じゃあ」
――その声には、心当たりがある。
いや。
あり、過ぎる。
「僕同士だから、普通にしてくれる? や……自分に距離取られるのって、なんか変な感じになるからさ」
「あー」
「わかるでしょ?」
「けっこうわかる」
「だよね」
「うん」
その、顔は。
幼い女の子になっている、「僕」――――だった。
◇
【速報】
【”座”】
【邂逅】
軽い電子音とともに、存在する全ての人々の前に表示された、簡潔すぎる情報。
「女神よりの通知を確認しました」
「予定の3%ほど早い到達のようです」
「「命令を」」
「――――――うん。主砲、発射準備。我々は、当作戦の最終フェーズへ移行する」
その空間の中心に立つ銀髪の少女が、帽子をかぶりながら宣言した。
決して大きな声ではない。
だが――人々は、それを待っていた。
「……主砲発射準備シークエンスを開始します」
「機関へのエネルギー伝達、スタート」
「各連結部分のモニタリングを厳にしてください」
「各艦の動力炉、セーフティーを解除してください」
「『目的地』の座標、間もなく定まる見込みです」
重低音が、その空間を包む。
「『砲塔』を構成する全艦、異常は確認されていません」
「次発装填装置、問題ありません」
「予備ユニット、通電開始します」
「……座標、定まりつつあります。舵の操作を……」
その空間――先ほどハルが存在した場所は無数の半透明な画面に埋め尽くされ、何重もの人々が「定められた手順」を進めていく。
「……ようやく、なんだね」
「もう少し、です。もうすぐ――」
「――――――ハルちゃんの、ところに」
「――――――ハル様と、再びに」
空間を満たすエネルギーが上昇していく、中。
壁際へ立ち尽くしている、白装束の姿の中から――ぽつりと、声が響いていた。