【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「で」
「うん」
僕の前の僕が、砲台の先を指す。
「巨大質量兵器も……浪漫だよね」
「ロマンだね」
この前のときはいきなり連れてかれて撃ったから実感こそなかったけども……今から思えば、すっごくおっきなおじゃるさんをひっぱたいたあの砲撃って、すごかったんだよね。
「で、またこういう場所に来たってことは?」
「……僕たち、また、撃てるの?」
目の前の僕の瞳が、輝いている。
「うん。しかも――今度のは、何発も。大きくは壊れずに」
「この前は2発が限度だったのに?」
「改良型なんだって」
「おー」
たぶん、僕の瞳も輝いている。
「キャシーさんたちが、がんばってたから」
「へー」
「詳しくは言っちゃだめって言われてるけど……みんなも、ね」
「へー?」
よく分からないけども、僕と同じ僕がそう言うんならそうなんだろう。
世の中ってば、知らなくても案外になんとかなることも多い。
社会人経験のある僕は、それをそれなりに理解しているんだ。
「じゃ」
よく見ると僕の手元にあるのよりもっと薄汚れて汚くなってるきちゃない袋さんへ狙撃銃をしまっている、目の前の僕が、言う。
………………………………。
家に帰ったら、きちゃない袋さん、洗おっと。
洗剤を多めに入れた洗濯機に放り込んどけば綺麗になるだろうし。
「撃ってみよっか。こっちこっち」
てててっと、結構なご機嫌で歩いていく金髪がふわふわと浮いている。
「? あ、でも、銃は1つだけ……交代で撃つ感じ?」
「ううん。これ」
僕も後を追って、てててっと小走りでたどり着いた台座。
何倍にも大きく複製されたらしい、僕の手に馴染んだ狙撃銃。
それを見上げると――――――あ。
「……トリガーが、2個?」
「1個だと足りないから、2個なんだって」
「へー」
左右に並んだ引き金。
よく見るとフロートウィンドウが銃全体を取り囲むように、何十個も浮いている。
……かっこいい。
「複座って、浪漫……ない?」
「ある」
こくこくこく。
僕たちはうなずき合う。
「よっと」
目を輝かせながら背伸びした目の前の僕が、ごとんと引き下ろしてきた――あ、銃を据え付けてる台座って、角度も方角も簡単に動かせるんだね――左右から握る形の引き金を、僕たちの胸元まで下げた。
「背が低いって、めんどくさいよね」
「めんどくさいよね」
「『便利なこの体』になってなければ、わりと最初から詰んでたよね」
「わかる。料理も洗濯も、生活のなにもかもが成人の身長が前提だもんね」
「『この体になって最初からダンジョン関係のスキルとレベルがあった』おかげでなんとかなっただけで、実際に幼女にTSするとか……普通、人生詰むよね」
「だよね。ダンジョンに潜ってて個人事業主できてなきゃ、とっくにしち面倒くさい説明とかをして見つからないようにして母さんのとこ帰らないと、お巡りさんに捕獲されてたもんね」
こくこくこく。
僕たちは、改めて難易度が高すぎた「TSしたて」のころに想い耽る。
「最初、なにがなんだかさっぱりだったよね」
「とりあえずちっこいし生えてないってことが分かって」
「それでとりあえずで外に出てダンジョンに潜って」
「小さくなって勝手は違ったけど、なんとかやれるって分かって」
「隠蔽スキルで町中を歩いて」
「ちゃんとお酒も買えてほっとして」
「会社はクビになって」
「最初は理不尽だと思ったけど、よく考えたら楽だって思って」
「なぜかアパートの人たちが引っ越してて静かになって」
「まぁ隠蔽スキルでどうともなったとは思うけども」
「お酒を呑んでるとき、ふとそのあとの将来を考えてげんなりしたけど」
「肉体的には幼くなってるし、スキルはあって稼げるし、まぁいいかなって思って」
懐かしい、あのころ。
それを想いながら、僕たちの両手が――引き金とグリップに、添えられる。
「……改めて、ダンジョンっていいとこだよね」
「うん」
「潜れば潜るだけ稼げるし」
「じめじめして居心地良いし」
「自生してるきのことか食べれば節約になるし」
「ピクニックみたいな気分で探検できるし」
「僕自身のペースで、好きなとき好きなだけ潜れるし」
「会社だったら、何日もサボったと思えば自主的に残業とか今どき無理だし」
「なによりも人間関係がないってのがすばらしいよね」
「口うるさい人が居ないだけで天国だよね」
「ひとりぐらし」
「最高」
トリガーの金属に、グリップのゴム。
しっとりと、肌にフィットする感覚。
見上げると、周囲が明るくなっている。
銃口。
すっごく大きな銃の中の、そこそこ大きな銃を構えた僕たちの前が、金色の段になっていく。
◇
「……『座』にて、『両女神』が射撃管制システムのコントロールに入りました」
「シンクロ率。………………………………ええと……計測の不具合が生じていないとすれば……」
――――――「ぴこん」。
『彼』ならそう表現する電子音。
それとともに、文字列が広がった。
【sync 90000%】
【座標:完全固定】
【新旧ハルシステム】
【stand by】
【ready】
【……】
【ダブルハル=お得】
【♥】