【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「………………………………」
ぎゅっ。
見慣れているのにでっかくって心なしかかっこよく見える、僕の狙撃銃。
そのトリガーとグリップを両手で握りしめた僕は――――
「……?」
何かの違和感を覚える。
「?」
首をかしげてみる。
手元をのぞき込んでみる。
「??」
その原因はさっぱり分からない。
「………………………………」
何かを間違えた可能性を考えた僕は1度両手を離して。
にぎにぎして。
ぐー、ぱー、として。
「………………………………」
引き金のしっとりとした金属部分。
持ち手のきゅっとしたゴムの部分。
両方を慎重に、いつも通りの感覚で手のひらが覚えた形に添える。
軽く力を入れて、握りしめる。
「?」
でも、やっぱり違う。
こう……普段みたいなしっくり感が、全然ない。
だから僕の中の何かが、すごくションボリしているんだ。
銃身こそでかくて長いし、足元の台座から伸びている支柱からフリーアングルな接続をされている握るところ――銃の形とかで「銃把」とか「グリップ」とか「ストラップ」って呼ぶらしいね、ダンジョンで初めて銃を拾ったときに調べたんだ――は確かに太いんだけども、その中に僕たちの小さくなっている手がちょうど握りやすい程度のサイズにくり抜かれた感じの……考えるのめんどくさくなってきたから、んーと。
「巨人さんの持つような狙撃銃を、人間の幼女でも普通に握れるように地面に固定してくれた上で、トリガー部分だけ人間サイズに加工してくれてるやつ」でいいや。
――それはどう見てもどう握っても、普段通りの僕の狙撃銃と同じ形なのに、何かが違う感じがする。
だから僕は、僕の反対側から同じように握り込んでいる僕――あ、僕に合わせてわざわざ普段とは逆手で構えてくれてるんだ――へ、文句を言う。
「これ、パチもの?」
だって、これ。
「『撃てる感覚』が、ない。これは弾を発射できない、ただのおもちゃじゃ? ニセモノじゃない?」
「そう感じるよね。うん、僕もそうだった」
あ、やっぱり?
「でも、違うんだ」
「そうなの?」
「うん。だって」
注文をつけた僕と同じように両手を話して向き直った目の前の僕が、
「――『男の体で初めてダンジョンに潜って、最初に銃を手に取ったとき』も、そうだったでしょ?」
初めて?
………………………………。
「……あー」
「最初のは特にエンチャントもない、低品質の……弾が数発で使い捨ての拳銃だったよね」
「あー」
「でも、ずっしり重くって怖かった」
「あー」
そういやそうだ。
ずいぶん懐かしい記憶で、すっかり忘れてたけども。
「そもそも平和だった現代社会では、銃なんて……そりゃあまあ、ダンジョンの中とかダンジョンがあふれてパニックになってる場所ではよく見かけるけど、普通の町中じゃ」
「うん、映画とかでしか見たこともなかった」
「もちろん、手に取ったことなんて」
「まぁうちの国じゃ一般人は持っちゃいけないもんね」
「だから本当は……防具はともかく武器、特に銃は」
「ダンジョンゲート前のロッカーに……そういやそうだった」
いろいろと思い出す。
「すっかり忘れてたね」
「すっかり忘れてたんだよね」
「遠距離攻撃スキルとか狙撃スキルが育ってからは、これだけ馴染んだけども」
「その前は……そうだったそうだった」
こくこく。
僕たちはうなずき合う。
同じ記憶を共有しているから。
「――武器をダンジョンから持ち出すようになったのは、幼女になってから」
「あー、そうだった。ロッカーとか……隠蔽スキル使っても他人にじろじろ見られたら、もしかしたらって」
「『この体』になったときは、僕なりに混乱していて……だから、家に置くようになったんだよね」
「そうだった」
「――いざってときの防衛手段として。軍隊に追われても、ダンジョンへ逃げ込めるまで反撃できるようにって」
「そうだった」
懐かしい思い出。
一般会社員成人男性としてのんびり暮らしていて、ダンジョンにもちょっと潜るようになって――なんだか肌が合ったから週末とかは全部籠もるようになったり、有給にももちろん喜んで潜るようになったダンジョン生活。
そこからある日――――――『泉』から帰った、翌日に。
「なんで武器をアパートに持ち込んでるんだって九島さんに問い詰められたとき、こういう話したの、覚えてる?」
「あー……んでもっと怒られると思ったら、そうでもなくって」
「時間が経ってみれば分かるんだ。あのときの僕は、怯えていた。男が幼女になって――その直後にクビになるとかいろいろあって、僕以外の全てを信用もできなくなっていた。全部が、敵だったんだ」
「確かになぁ」
今、思い返せば。
あるいは――うん、九島さんが本気で怒ったりしなかった理由。
それは、「ある日突然にダンジョンの中の不思議な何か――ノーネームさんの仕業だろうけども――で、肉体が変わった僕」を、こうして客観的に観察してみると……分かる気がする。
「……怖かったんだ」
「うん」
「本当は、ダンジョンにいつまでも潜り続ける生活は……や、できはするし、るるさんと出会わなければ何十年だって余裕だったけども……その、社会的には無理だった」
「何年かに1回は大家さんも来るだろうし……なにより、何年も経つ前に」
「「母さんが来るもんね」」
「「………………………………」」
僕たちは、おでこに手を当てる。
「……初めてバレた相手がるるさんたちで」
「心底、良かったよね」
「相手が母さんだったら」
「「………………………………」」
僕たちは。
「……はぁー……」
盛大なため息をついた。