【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~ 作:あずももも
「――つまり。僕は、弱くなっているんだね」
「厳密には『元に戻っている』らしいね」
「そうなんだ?」
「そうらしいよ?」
「……男に?」
僕は、下を見る。
何もない、平坦なお胸。
子供らしい寸胴な体つきを、白い布が巻いている。
「………………………………」
僕は、おもむろに裾をめくり上げてみる。
ひやりとした風が、おまたに吹き付ける。
そういや僕、ぱんつ穿いてないんだった。
まぁいいや、相手は僕だし。
男だけども幼女になっている僕だから、遠慮は要らないんだ。
「どう?」
「生えてないね」
「そっかぁ……」
僕は、もそもそと裾を直してひどくがっかりした。
「男のときの、『泉』に向かったとき。あれよりちょっとだけ強い――レベル25程度の強さ……や、弱さになってるらしいよ」
「そっか」
僕は、まだとてもがっかりしている。
……せめて。
せめて、小さくても細くても良いから、生えていたなら。
せめて、この肉体のままでも良いから、生えていたなら。
そう、思ったのに。
やるせない僕は、魔力での筋力強化をしてみる。
……やってみると、確かに「弱い」なって感じるにぎにぎをして実感する。
「そっかぁ……」
「残念だけども。男には戻ってないのに、弱さは男のときらしいね」
「それは、ノーネームさんが『星』を使ったから?」
「や、それは今かららしい」
「そうなんだ」
「そうらしい」
僕たちは文句をつけるべく、ここに居ないノーネームさんを無意識で探すも、やっぱり居ない。
「でもさ」
僕は、見上げ続けていたら首が痛くなりそうな高さにある銃口を――その先の半球状のガラスの窓、さらにその先のすっごくおっきな円筒状の巨大構造物をしげしげと観察しながら言う。
「今の僕じゃ、これで撃ってもたいした力は出せないんじゃ?」
「うん。だから」
――――――ぎゅっ。
僕と同じサイズで僕と同じあったかさで僕と同じぷにぷに感のある両手が、僕の両手を握ってくる。
「僕が、一時的に同期するんだ」
「同期?」
「うん」
「男のときみたいな弱さになってるのに、できるの?」
「大丈夫」
目の前の僕が、目を閉じる。
「――『そこから、強くなり直したから』」
◇
『――その見た目で20年以上生きてる? なんだ、エルフの子供――』
『成体でその背丈ならドワーフ――ほら、クラフトとかして手先とか器用――』
『イイニオイ――知らないケモノだから獣人――』
『――精霊――?』
『――サキュバスと思ったらインキュバスも……あれ?』
『いやいや、人間って――神様って、いつも冗談が――』
「………………………………」
僕は、知らない人たちを眺めている。
知らない人たちが話しかけてきたり、僕を囲んで話していたり。
見下ろされたり見上げられたり、這いつくばられたり。
あ。
『――いやぁ、ハルんところは良いよなぁ……酒が飲み放題で』
『「神様」への奉納だから、ハルくんへのじゃなくったってもらいたい放題なのよね♪ 私、さっき通りがかりの人から奉納されちゃったわ』
母さんと父さん――どっちも、相手からの自称だけども――が、実家の居間で酒盛りしてる。
テーブルにはこれでもかと酒瓶が並んでいて、その隙間を埋めるように料理も並んでいる。
『……春海? この人たち……せめて月1程度にしてくれないかって、頼んでくれないかい?』
その声に、振り向くと。
「……母さん」
エプロン姿で台所から煮物を持ってきていた母さんが、居る。
僕を見下ろして困った顔で――――――でも、なんだか嬉しそうで。
『……まぁ、いいけどね。だって――――』
ことり。
母さんがお皿を置いて――速攻で菜箸を手に取るニュー母さんが視界の隅っこに映っている――僕を見て、しゃがんできて。
『――――――春海。あんたが、こうして帰ってきて――――――』
◇
「………………………………」
「ごめん。ちょっと同期し過ぎちゃったみたい」
まばたきをした瞬間、僕の前に居たのは……さっきまでの、僕。
「そこから先は、自分で見るものだから」
あったかくなっていた手が、解かれる。
「自分で……」
「うん」
自分で、見る。
実家に帰って……幼女になるずいぶん前からめんどくさくって顔も合わせていない、母さんの顔を。
「こっち」
「……うん」
「体、軽くなってるでしょ?」
「……そうだね」
「引き金。握ってみて」
ひと足早くに銃の反対側に回っていた僕は、すでにその両手をさっきみたいにトリガーとグリップへ添えている。
「………………………………」
僕は、小さな手のひらを眺める。
――小さいのに、でも、さっきまでとは違って。
ここへ連れてこられる前に戻ったような――――――ううん。
「ここへ連れてこられる前よりも、ずっと研ぎ澄まされた感覚」を抱えたまま、僕を見てきている僕と鏡映しになるように、
――――――ぎゅっ。
「あ……」
握っただけ。
ただ、それだけで、理解する。
「じゃあ、思い出して」
――――――ぐぃぃぃぃぃん。
僕たちの足元が、うなりを上げ始める。
「僕たちが――――還るべき場所を。それが、最後のトリガーなんだって」
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