【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~   作:あずももも

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9話 僕の家に不法侵入したるるさんと救護班さんとヘンタイさんと

男のひとり暮らしだった僕の前には3人の女の子がいる。

 

彼女も居ない僕が、まさか一気に3人もあげることになるなんてね。

……これで男の体だったらどんなに嬉しかったことだろう。

 

「はぁ……つまりはあなたが征矢春海さんと」

「そやはるみ……だから配信でもハルちゃん」

 

「はい。あ、配信にもたどり着いてたんですね」

 

「う、うん……あ、はい……その、頼りになってたえみちゃんがね……そうかもしれないって……言ってたんだけどね……」

 

「ヘンタイさんだったと」

「んふぅっ!」

 

赤い十字の腕章を着けている……ダンジョン関係の救護班ってひと目で分かるためにお仕事中は外でもこの服装らしい子と、僕が助けた覚えがある深谷るるさん。

 

で。

 

「その……私も、こんなえみちゃん初めて見て……正直どうしたらいいか……」

 

「ヘンタイさんだったんですか?」

「ふんんん!!」

 

「ヘンタイさんだったんですね」

「んふっ!!」

 

なんか目がやばかったから「その人怖いです」って言ったら……錯乱した人に慣れてるのか、そっと救護班さんが近づいたと思ったらきゅきゅっと包帯で両手両脚縛ってお口も包帯で巻かれた可哀想な人。

 

……二重の意味で。

 

でもこの人多分僕みたいにレベル高いんだろうし、分かってて簀巻きにされたよね。

 

まだちょっと残っていた理性が光る。

偉いね。

 

「あ……だからえみちゃん、よく孤児院の依頼とか受けて……」

「ふんんんん!?」

 

「あと、小学生の子たちの体験ツアーとかも、積極的に」

「ふむむむむ!? むむむむん!!」

 

「えみちゃん……」

「むうううう!!」

 

なんかそこは違うっぽいけど……あー。

 

僕はなんとなくで1歩下がる。

 

だって今の僕、幼女だし……。

 

「と、とりあえず三日月さんから征矢さんに話、戻しましょう……?」

 

「あ、そうですね。とりあえずえみちゃんのことは……うん……」

「ふんんんんっ!?」

 

なんか背も高くて格好いいのに残念な人が三日月……えみさん、と。

 

近づかんとこ……なんか怖いし……。

 

男だった前の僕なら「ヘンタイさんだー」って一緒に笑う立場だったけども、今はそのヘンタイさんに何かされる立場だから実害あるし。

 

「こほんっ。そや……はるみさんっ」

 

「ハルで良いです。『この姿』だとそっちでしか呼ばれたことありませんし。まぁリアルでは見られたことないですけどね」

 

征矢。

 

珍しい名字って苦労するよね。

 

名前が1発で分からない仲間と苦労話で盛り上がった若い記憶。

 

「じゃあハルちゃん!」

「……まぁ良いです、今は女の子ですし」

 

でも年下の子からハルちゃんは……ねえ……?

 

いや、良いけどさ。

 

僕の布団の上に女の子が2人、部屋の隅っこにヘンタイさんが1人っていうものすごいことになってるのは気にしないでおく。

 

気にしても無駄とも言う。

 

うん、姦しくって良いね。

 

「改めまして……助けてくれて、ありがとうございました。私、ハルちゃんが来なかったら間違いなく生きてませんでした」

 

第一印象は明るい子。

 

明るい色合いでくせっ毛な髪の毛で……中学生くらいの子。

 

深谷るるさん。

 

中学生なのに丁寧に指までついて……三つ指っていうやつをしている。

今どきの子って礼儀正しいんだなぁ……僕より10以上、下のはずなのに。

 

今の肉体年齢じゃ僕が下になってるけどね。

 

「僕自身の命は大丈夫だって確信してのでしたから」

「で、でもっ、あんなに危険なことさせちゃって!」

 

「あれは違うんです。ドラゴンを一撃で仕留めきれなくって……下手にヘッドショットしたばかりに君の方に倒れそうになっていたから。 助けるのが下手だった僕のせいです」

 

「でも!」

 

ばっと顔を上げる、るるさん。

 

やっぱアイドルさんだから目鼻立ちが整ってるねー。

今の僕には……じゃないじゃない、この考えはいけない。

 

「そこから、命かけて助けてくれましたっ」

 

「………………………………うん」

 

思わずで顔を背けちゃう。

 

だって、こんなにまぶしく見つめられたらなんか……だめじゃん。

 

僕はそういうの、苦手なんだ。

救助要請で見つからないようにしていたのってそれも理由だし。

 

ほら、電車とかで席譲って「ありがとう」って言われても無愛想にしちゃって、次の駅で別の車両に乗り換える気持ち分かるでしょ?

 

「だからお礼させてください!」

 

この子的にはダンジョンでやばいときに助けてくれたってことになる。

けども、僕的にはそこまで危険じゃなかったし……損はしたけども。

 

「ドロップ」

「え?」

 

「ふんんんん!」

 

もぞもぞ蠢いているヘンタイさんを眺めて癒やされながら、テーブルに広げてある家計簿を指差す。

 

「あのとき倒したモンスターのドロップ。あれがあれば僕は良いんだ。……です」

 

「あ、そう言えばハルちゃんってそんなにちっちゃいのに大人なんですよね! 良いです良いです、楽に話してもらって!」

 

るるさんの代わりに救護班さんが見ているらしい、僕の家計簿。

 

「はぁ、マメですねぇ征矢さんって。ダンジョンに潜る人って大体家計簿付ける性格じゃ……。………………………………?」

 

「はい、僕、細かいことが好きなので」

 

「……え、ええっとぉ……その……」

「? どうしたんです?」

 

まぶしい笑顔で熱くなっちゃった顔がようやく冷えてきたから、自然なフリしてるるさんを通り越して救護班さんの顔へ。

 

あ、この子のポニーテールの結い方良い感じ。

この子もまだ高校生くらい?

 

そっか、この子たちの世代ってばダンジョンが出現した後で進路とか決めるから、もうこの歳からダンジョン関係のお仕事って……止めとこ、こういうのってダンジョンが生まれた時点で中高生だった僕には辛い現実だ。

 

「……その、ま、マイナス……」

 

あ、数字に慣れてないとゼロの多い金額とかって見づらいよね。

 

「2000万円ですね。今日のマイナス」

 

「せんっ!?」

「むうっ!?」

 

真っ青になる2人。

 

ヘンタイさんのはよく分からない……だってまだ赤いんだもん。

なんかうねうねしてるし……なんかこわいし……。

 

「最初に追われていたモンスターたちに使った弾が16、ドラゴンへ2発。見てのとおりの体でダンジョンに潜るわけで、特殊な弾をこういうとき用に作っていたものですので」

 

「あうあうあうあう……どうしよどうしよ、そんなお金……」

「むうむむむむうむむう、むむむむう」

 

「ごめんえみちゃん、何言ってんのかさっぱり分かんない……」

「むうっ!?」

 

いや、そりゃお口チャックされてたらねぇ……。

 

「厳密にはドロップとかの素材で手作りですから、そこまで掛かってません。あくまで時価にするとってことで、協会のホームページの素材の買い取り値段で帳簿作っただけですから。税金の計算用なので気にしなくても」

 

実際に使った金額は大したことないはず。

 

でもさ、ほらさ?

僕たちってば個人事業主でさ?

 

あと青色申告しなきゃな立場じゃん?

 

だからちょっとだけ盛っても良いでしょ?

そういう判断は必要でしょ?

 

時価だし嘘じゃないし?

 

「あと、それ……ほら、今の僕って魔力が底着いてますから。僕の不注意で無駄に全力使ったのもあって……だから復帰に1ヶ月くらいかかるって考えて上乗せしてますから、深谷さんに使ったのだけだと……1200万円くらいに減りますし」

 

「せんにひゃく……はぅ……」

「むぅぅぅぅ!?」

 

さっきからヘンタイさんがびったんびったん荒ぶっている。

 

なんかエビフライみたいだね、君。

 

「あ、ちゃんと別のページに素材の管理とか……ほぇー、まじめなんですねぇ――……」

「この通り、ひとり暮らしですし。それに」

 

僕はぱたぱたとシャツを振る。

 

「むうっ!?」

 

ヘンタイさん止めて……簀巻きにされてるのに腹筋だけで起き上がるの止めて。

 

「……はいはい、邪魔になりますからおめめも塞ぎますねー三日月さーん」

「むぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?!?」

 

うわすごい声……この人、そこまで僕見たいの……?

 

「あと、征矢さーん」

「はい」

 

またいつの間にかヘンタイさんと僕の間に入っていた救護班さんのポニーテールがひゅんって舞う。

 

「……私たち同性……えっと、肉体的な方ですけど」

「そうですね、今はそうなりますね」

 

「……ですが……その。征矢さんのその格好は非常に扇情的と申しますかー」

 

「? こんな子供なのに?」

「そ、そうですよハルちゃんっ!」

 

もはや三日月さんを見もしなくなった深谷さんが僕にばさっと……彼女が羽織ってたカーディガンを掛ける。

 

「さっきから言おうかどうかすっごく迷ってたんですけど! って言うか頭下げたときに見えちゃって正直私もどきどきして困るんですけど!」

 

「?」

 

「「――女の子の大切なところまる見えなのは行けません!」」

 

「あ、はい」

 

そういえば僕、お風呂上がって髪の毛濡れたままで体に張り付いてて。

で、とりあえずでシャツ着ただけだった。

 

つまりは裸シャツでお布団にぺたって座ってたわけか。

 

「でもいきなり家に入って来られたから……」

 

「ですから私、『着替えはよろしいんですか』って訊きましたよ!?」

「あ、そう言えばそうだった気がしてきました」

 

救護班の人はまじめさんみたい。

なんか委員長さんっぽいね、君。

 

「……でも僕、普段からこうですけど。ほら、女の子の体になったからなんかこうして穿かないで直接布団に座ると不思議と安心するって言うか」

 

「ダメですぅ! って言うか男の人だったんですよね本当に!?」

「うん、去年までは」

 

「……その豪快さは確かに男性らしいと言いますか……って、あのー」

 

もぞもぞうねうねしている包帯で真っ白になった何かさんをそっと壁際に押し付けつつ、救護班さんが訊ねる。

 

「――どうして男の人がそんなにかわ、……女の子に? あと、カードの写真じゃ髪の毛も目の色も……」

 

「ちょっとダンジョンの中の願いの泉的な場所でお願いを……したら、なんか曲解されちゃったみたいで……」

 

顔の赤い2人と真っ白な包帯で全く見えない1人。

 

彼女たちを前に、ようやく僕は隠れ続ける生活を止めることになった。

 

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