【書籍化決定】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。 ~レンジャースキルで「ヘッドショット系幼女」って呼ばれたりダンジョンの秘密に囚われたりする配信~   作:あずももも

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こちらは本日2回目の投稿です。まだの方は前話からお楽しみください。



95話 始原会議Ⅴ

 

「――済まない、止められなんだ」

「アンタはよくやったよ。 済まないねぇ、アタシも若ければもっと食い止められたろうに」

「歳を取るというのは辛いの」

「仕方ないさね、アタシも引退した身なんだし」

 

「ちょっとテレビ! ネットニュース! これどーなってんの!?」

 

いつぞやの円卓。

 

憔悴しきった「会長」に「マザー」という年寄りが2人。

そこへ最初に駆け付けたのは「姉御」だった。

 

「安保理とか……フェイクニュースってやつっしょ!? そうよねぇ!?」

「残念ながら本当のことさね」

「はぁ!? たかがダンジョン1つで国連が動くぅ!? そんなの」

 

「姉御、君は当時――ダンジョン事変の当時は学生だっただろう?」

「あ、おっさん」

「……一応コードネームでお願いしてもいいかな……」

 

「あーごめん、おっさんはおっさんって言うとめっちゃ喜ぶのとめっちゃ落ち込むのしかいないもんね」

 

ぜぇぜぇ言いながら入って来たのは酒臭い中年の男性こと「社長」。

 

「ダンジョン事変。 当時は……そりゃあ大変だった」

「らしいっすね。 私はあのとき高校……だっけ、で、1ヶ月くらい休校だったんで、友達んちで遊んでただけだけど」

 

「ダンジョン事変」。

 

10年前に世界中へダンジョンが「染み出してきた」「災害」のことを指す用語。

 

「あのときは何カ国も――物理的に消滅した。 世界中の軍隊が、予備役まで総動員して退けた」

 

「退けられなかった国が消滅した、とも言えますがね」

「あ、メガネおじ」

「……部長だ」

「おじ、嫌?」

「……ここではコードネームで統一しています」

 

くいっとメガネを押し上げながら入って来た彼が腕を振ると、円卓の中央にある円筒形のモニターへ情報が表示される。

 

「あ、さっき観てたニュース」

「そしてこれらが各国のそれだ」

「えっと……JAPAN、DUNGEON……EMERGENCY UN FORCE……」

 

「『ダンジョン決議』。 つまり安保理が危険と判断したダンジョンに国連軍を銘打った軍隊が好きに突撃できるってこと」

 

「あ、ショタきゅんとガキ」

「……ショタはやめてくれ、これでも高校生なんだ」

「私も中学生なんだけど……」

「あ、めんご。 私口悪いから」

 

気が付いたら居た幼い男女――「首席」と「天才少女」。

 

「っつーか、あれ? あんたたちハルきゅんの配信にいたっしょ?」

「姉御、ちゃんと観てた……? 僕らは昨日ギブして帰還したよ。 戦闘職じゃないし」

「私も。 まー、ハルちゃんに『クレードル』使ってもらうためと各種データ収集のためだったし、引き時ってことでねー」

 

「そ。 で、クレセントちゃんとプリンセスちゃんはASMR配信中だし……これで全部?」

「今来られるのはね」

 

「会長」「部長」「マザー」「社長」「首席」「天才少女」、そして「姉御」。

 

7人が「500階層攻略RTA」の8日目、午前3時に集結していた。

 

 

 

 

「単刀直入に言う。 合衆国と旧連邦が結託し、こともあろうかノーネームちゃんを『スタンピードを引き起こすダンジョンの核となる存在――かつ、意志を持つ未確認生命体』認定しおった」

 

「スタンピード?」

「要は今みたいに管理できる形になったダンジョンじゃなくて、10年前みたいに無差別に被害出すやばいやつって名指しされたってこと」

 

「お、さすがは天才少女、すらすら出るねぇ」

「……なんか腹立つ」

「え? あ、マジごめん、ほんっと口悪いだけで普通に褒めてるから」

 

円卓の中央に表示されている数十の画面。

そのいくつかでは軍艦やヘリ、戦闘機が映し出されている。

 

「つまり……ノーネームちゃん、ピンチ?」

 

「ノーネームちゃんだけならいいんだけどね」

「どうでもいいけどここでも『ノーネームちゃん』呼びなの?」

 

「だってかわいいじゃろ?」

「かわいいわよね?」

「かわいいでしょう?」

「かわいいだろう」

「かわいくない?」

「かわいいだろう?」

 

「あ、うん。 いつものノリでなんか安心したわ」

 

ほぼ同時に帰ってきた反応に……今さらながら実況の最中にこの事態を知り、すっぴんのまますっ飛ばしてきたことに思い至る姉御。

 

「奴ら――ハルちゃんまで最優先ターゲットにしおった」

 

「――――――――あ?」

 

「姉御姉御、顔顔」

「姉御、声怖いよ」

 

「ノーネームちゃん」こと「呪い様」ならまだ分かる。

 

――でもなんでハルきゅんが?

 

「姉御。 ハルちゃんは、なぜこのダンジョンへ潜っているか覚えていますか?」

「え? そりゃあノーネームちゃんから……あ」

 

「そう。 ハルちゃんはノーネームちゃんに求愛もとい執着」

「いやその言い間違いおかしくない?」

「だまらっしゃい」

「だまらっしゃいとかリアルで初めて聞いたわ」

 

「……ハルちゃんや視聴者と、ノーネームちゃんはコミュニケーションを何回か取った」

「あー、確かに」

「視聴者はともかく、ノーネームちゃんが最優先にしていて言うことを聞くのはハルちゃんです」

「確かに」

 

「――だから、『ノーネームちゃんとハルちゃんは関係がある』。 そういう屁理屈も通るわけなんだよ」

「はぁ!? んなのおかしいっしょ! 誰だってこの配信観てたら」

 

「左様。 だがそれは裏を返すと『この配信を』『99%が日本語で書かれたコメントや掲示板、SNSで観ている視聴者』だけじゃな」

 

「……あっ」

 

現在、国内の話題は「500階層攻略RTA」が総なめだ。

 

しかしそれは、あくまでローカル……かつ、海外であってもダンジョン配信や日本に興味のあるユーザーしか認知されていない事象ということでもある。

 

「つまり大多数の一般人は事情を知らないって訳さ。 日本だって……いいところで2割から3割。 ハルちゃんとノーネームちゃん、この配信の目的をちゃんと分かってるのはね」

「や、そりゃあそうだけど……」

 

「で、だ。 常任理事国は、ノーネームちゃんの本体がこのダンジョンにあると仮定した」

「まぁ確かに、いきなりポップして500階層まで持ってるわ、中のモンスターは100階層辺りから新種ザクザクだわでいろいろおかしいしな」

 

「――つまり」

 

「レベルの高いダンジョンを欲する各国としては」

「敵と共同してでも手に入れたいものになる」

 

「敵に独り占めされたり」

「未確認のままで終えるよりは、ずっと良い」

 

「そう判断したということだ」

 

しん、と静まりかえる地下室。

 

『……んにゅ……』

 

「!!!!!」

「!!!!!」

「!!!!!」

「!!!!!」

「!!!!!」

「!!!!!」

「!!!!!」

 

中央のディスプレイ、ハルやるる、えみやリリ、九島ちほの画面から響いてきたその声に全員が反応する。

 

「……ふぅ……」

「……国内に駐留している各国大使館、軍は辛うじて抑えてある」

「アタシの顔を使っているからね……何日かは食い止められるはずさね」

 

「え、マジっすか?」

 

「うん。 マザーは政界に顔が利くから、合衆国と旧連邦内、共和国の派閥をかき乱したんだって」

「そうじゃなかったら、今ごろここの上空も合衆国の旗掲げたヘリで埋め尽くされてるんじゃない?」

 

――首都圏上空が。

 

いくらニュースや国際情勢に疎い姉御と言えど、それを想像しただけで血の気が引くのは仕方のないこと。

 

「期限は、7日」

 

「美食の国と貧食の国の軍隊が到着して合流してから侵攻の予定なんだって」

「あの国は、最近は良くなってるんだ……でもやっぱり料理が壊滅的なんだ……」

「まぁ対岸のだって高く止まってるし」

 

「こほん。 とにかく、期限は7日――1週間」

「あのー、それって確か」

「うむ。 ハルちゃんの攻略期限、だの」

「マジっすか」

 

無茶振りでしかない、2週間で――国内どころか世界でも最難関のダンジョンを500階層攻略しろというミッション。

 

その期限が、このダンジョンの属する国家の主権が脅かされる日と同日なのは偶然か、それとも。

 

「――幸いなことに欧州連合の工作により、伸びる可能性はある」

「マジッすか」

 

「マジマジ。 姉御も薄々分かってるでしょ?」

「あのハルちゃんにべったりな――『プリンセス』」

 

プリンセス。

 

欧州の、ダンジョン事変以後に独立した小国。

 

「……マジかよ」

「マジマジ」

 

「ここに居る全員、持ちうるコネクションでできるだけ……ぎりぎりまで工作する予定よ。 ハルちゃんが無事『泉』にたどり着いて……ハルちゃんの願いを言って、戻って来るまで」

 

「その後のことはそのあとじゃ。 奴らだって『幼女なハルちゃん』が存在しなければ諦めもつくじゃろうて」

「あー、幼女じゃなくなっちゃうのは残念だけどそうなのね」

「うん、まさか彼らも幼女が成人男性に『戻る』だなんて思わないし、信じもしないよ」

 

「ハルちゃんの正体については始原と、絶対に信頼の置ける数人止まりですからね」

「……………………………………そっか」

 

「まあ姉御は並べてるワインでも呑んでてよ。 あ、でもネットでの工作は」

 

「ふぅっ」と息を吐き、ぱんっと両頬を叩き――スマホを取り出す姉御。

 

「……私もやってみるわ」

「え? いえ、しかし貴女は一般人で」

 

彼女のスマホ画面には、とあるチャットサービスのロゴ。

それを全員に見えるよう掲げる彼女。

 

「あんたたち、私の発言も観てたっしょ?」

「え? ええ、まあ」

 

「……私の『ハルきゅんショタっ子萌え萌えきゅん』サーバー」

 

「うわぁ……」

「うわぁ……」

「その言語センス……」

「ノーネームちゃんでさえ……」

 

「聞きなさいって」

 

ととととっとタップしまくる姉御。

 

「――ね。 知ってる? 私のショタっ子大好きサーバー。 ――いるのよねぇ……公には名前出せない立場のご令嬢、奥様方たち。 もち、海外のも」

 

そう、凄みのある笑顔を見せるOLを見た一同は、思った。

 

――――――ショタコンはやばい、と。


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