へー、主人公が好き勝手してらぁって感情で書きました。
誤字報告いただき大変助かります!!ありがとうございます!
「はぁ……」
明星宮に存在する一室にて明星ヒマリこと私はガラスに反射する自分の顔を見ながらひっそりと息を吐いていた。それもこれも全部私が原因だと思うと、今、私が抱えている気持ちは二律背反甚だしいし、もはや意味のない悩みもブラックホールにポイ捨てしまいたい気持ちに駆られる。もはや諦観に近い。
私がこの地に降りたってから100年、200年……。戦国時代、鎖国、幕末、そして開国と歴史は人間の流す血によって幾度となく塗り替えられ、都度その度に復興してきた。
およそ1000年が経過したあの日、2度目の世界的な大戦によって私の住んでいる日本は敗戦国となりGHQの占領下に置かれたりと色々な出来事が、『私の知る歴史』の通り繰り返されていった。そうしてこれからも歴史は繰り返される……そのハズだった。
誤算の始まりは1999年、7の月。預言書を現実のモノにしてしまおうとした狂信者集団によって核兵器を用いたテロが計画された──―ものの、計画の実行直前で1人の超能力者によってテロが阻止された。これによって世界は魔法の存在を認識した。同時に、魔法──私の齎した力によって私の知る歴史から決定的に逸脱してしまった日の出来事だった。そのニュースがスキャンダルとして世界で報じられた時、私こと明星ヒマリは珍しく意表を突かれた表情をしていたと思う。
私は同時に強い既視感に襲われ、もはや薄れかけつつあった前世の記憶を掘り起こし、気付いた。この世界は一瞬で『魔法科高校の劣等生』の世界線へと変貌し、私が原作に介入をしなければ司波達也を中心とした筋書通りのストーリーの通り歴史を刻み始めるだろう。
「とうとう、この時が来てしまいましたか」
皇居内に目立たないようひっそりと立てられている建物の名前は明星宮。名前からも分かる通り皆さんお察しの通り私の家だ。京都から東京に遷都した時、私を始めとした明星の人間はその約定に従い、神社を管理してくれている部下を残して皇居に移り住むことにした。無論、私の存在がうっかり露呈してしまうと大変な事になってしまうため表向きは(私が1000年以上前から集めている)超貴重な本を扱う図書館、という事になっている。がしかし秘密基地とは古来より地下に作る物だと相場が決まっている。明治天皇も少年心を発揮して色々な機能を私に提案してきた。すっかり女性として生きる事に慣れてしまった私は「あれも良い、じゃあこれはどうだ」と久しぶりに少年心を発揮して明治天皇と仲良く暴走。あとになって私の事情を知っている明治天皇の側近が卒倒した。まあSF顔負けの神様謹製秘密基地だし。そこらじゅうに未知なる技術や魔法的な防御機構が備えられているのは、少年心故の愛嬌だよね? 嗚呼、いとをかし。
だけど現状の世界情勢は、全くいとをかしくない。
何故なら皇居は今、侵略者の手から逃れようとした市民たちで溢れかえっている。つまるところ戦争だ。
原因はそう、急激な寒冷化に伴う食糧事情の悪化だった。人間の三大欲求の一つである食欲が満たされる事が無くなった後の世界は荒れた。最初はスーパーで売っている食料の値段が高騰を始めた。その後は簡単で、国同士の戦争になった。果てには政治は踊り狂い国の政治手段であったはずの軍は暴走、街は荒れ果てどこもかしこも食料を奪い合う人、食料にありつけなかった人が散見されるようになった。前世でもお目にかかる事のなかった地獄が世界のそこかしこで現実になった。
無論、明星宮の地下には天皇一家の緊急避難用の施設が一通り設けられているため食料の自給自足も問題なく行えるので飢える事はなかったのだがこの時、お腹を空かせた人間は本能に抗えないのだなという事実を目の当たりにして、転生してから一度も鳴いた事のないお腹の虫へ向けて呟いた。
職業別の就業人数の割合からして日本は慢性的に食料自給率が低いとはいえ、1億人が暮らしている先進国である。加えて災害の多い島国だから当然、消費期限の長い食料の備蓄も多い。それを飢えた獣に狙われた。
中国は対馬を占領、橋頭堡として山陰地方へ侵攻、時を同じくしてロシアは北海道へ不意打ちで軍を派遣し備蓄していた食料を、作付けの悪くなった中でもなんとか育っていた食料を根こそぎ略奪していった。それで味を占めたのか、はたまた領土的野心からかなのか中国とロシアは頻繁に軍を派遣するようになり結果、数か月もしない内に日本全体が戦火に巻き込まれていった。戦争をしていたのに農地がほとんど荒れることの無かった類を見ない戦争だった。
当然私は現状を打破する事が出来る、がしかし私は──―否、私達は動かない。それは私が大昔に結んだ約定のためでもあり、また別の意図があって故の行動でもある。当然、私の手にかかれば寒冷化等一瞬で以前のように戻り大地に緑を芽吹かせる事も、瞬きの間に世界中の野原に作物を植え付ける事も出来る。だけどそうしてしまえば結局の所、どうしても困ってしまった時に私に頼る、という癖がついてしまうし人間は楽な方へと流される生き物だ。最終的には私無しでは生きて行けない世界へと変貌を遂げてしまうだろう。そうなれば人類に待っているのは神に見放された後の地獄のみ。私に待ち受けるのも、能動的に何もしようとしない、人間が人間らしい生き方の出来ない退屈な世界というもっともつまらない結果のみ。
だからこそ私の出番は少なければ少ない程この世界は面白くて、驚きに満ちている。それを安倍晴明を始めとした昔の人間は分かってくれたのだろう。私という存在の正体を知っていながら私に頼る事なく、縋る事なく一生を全うしてみせた。そして時代は移り行くのに彼らの行動は、貴い意思は変わらなかった。彼らの命の輝きは眩しく、尊いものだった。故に私は古くから続いて来た約定に従って、世界にさざ波を起こす決意を固めた。
とうとう国際法をも無視し始めたのか、BC兵器を搭載した多数の弾道ミサイルが皇居に迫っている。日本各地で稼働している一から十までの魔法技能師開発研究所と国防軍が対処するはずなのだが、どうやら核兵器を用いた全面戦争を避けるべく国際魔法へ強力な魔法師を取られてしまったらしく護国の手が足りないほどの物量だそう。このまま事態を座視すれば数発ほど撃破を免れたミサイルが皇居に着弾してしまう。そうすれば今上天皇を始めとした日本国民の象徴である血筋に大きな影響を及ぼすだろう。
「一条天皇、貴方との古き約定を果たすため、明星ヒマリおよび明星宮は力を尽くしましょう」
明星宮の人員には今回は何もしないで良いと命令してあるから、後は私が長らく研究してきたコレを発動させるだけ。やるからには本気、恐らく今の私の頭の上にはヘイローが浮かんでいる事だろう。数舜、瞑目したがある種の感慨を以て明星宮にて独自に開発したCADであるリボルバーの引き金を引く。
明星宮秘匿障壁魔法【
次の瞬間、白銀の半透明の障壁が皇居を中心に半円のドームを形成した。直後に訪れるミサイル群。障壁に触れた途端、大規模な爆発が大気を揺らし、その衝撃の大きさを物語る。後日、首都防衛の役目を担うことが出来なかった第十研が『秘匿魔法の術者を解剖しようとしているらしい』と聞いた私は元老院を通じて強烈なジャブを打ち込んでやった。
この魔法はお察しの通り前世の妄想の産物であった強制波動装甲を魔改造、障壁魔法として現実の物にしてやった。魔改造ポイントは障壁に加えられた衝撃をエネルギーへ変換し、魔法師のサイオンの代わりに魔法の維持のためのエネルギーとして消費してしまうところにある。現時点では一度に限界を超えた攻撃を受けるとCAD側にエネルギー流路の負荷に耐え切れずオーバーヒートしてしまう問題があるが、突き詰めていけば攻撃を加えられる頻度が高ければ高い程省エネで済んでしまうようになる。もちろんこれは容易に表社会へと流出させて良い技術ではないため、オーバーテクノロジー扱いの明星宮内の秘匿魔法として発動するタイミングは慎重に選ぶ必要がある。
こうして私の手によって皇居から旧東京23区全域を覆うように展開された障壁魔法が、都内および皇居の避難民を守り切り結果として死傷者は一人たりとも記録されなかった。事態を重く見た皇家は明星宮に各地の宮家の守護、という名目で障壁魔法の術者を各地に派遣することを依頼。明星宮は開発した秘術を秘匿する事を条件として各地に術者を派遣。術者たちはひっそりと日本各地の人口密集地で防衛に当たり日本国内において死傷者数を減らす大きな要因となる。が、これらの活動が公式の記録に残される事はなかった。
国内は良いとして、現在進行形でこの星の人口は急速に減少している。
30億人──―それが全知たる私の頭脳が予想する、この戦争が終わった後の世界総人口。
世界群発戦争、そう呼称されるようになった戦争が終結した時、私の予想は現実の物となった。
世界総人口30億人といえば1960年頃と同等の数値であり、同時に戦争前の半数以上の人間が何らかの要因で命を落としたのだ。
世界各国は戦争で疲弊、全面核戦争を阻止した組織──国際魔法協会の地位向上も相まって魔法師は国家の暴力装置である核兵器の代わりとなると国の指導者に認識され、各国の魔法師の開発・研究が加速していく大きな要因となる。それは同時に魔法が使えない一般市民からすれば得体の知れない生物として恐れられるという社会の大きな歪みを生み出すことになるのであった。
◇◇◇
「ヒマリ様、理由をお聞きしていませんでしたけど、今になってどうして高校などに通われるおつもりなのでしょう?」
明星宮に所属している私の古参の部下、黒髪ロングに和装が似合う14、5歳程度に見える少女、
おや、何やら聞き覚えのある名前。それもその筈、彼女たちは歴史書に登場する有名な歌人である清少納言と紫式部本人なのである。
え? 何で生きているのかって? イヤですねぇ……そんなの勿論、彼女たちに心置きなく物語を執筆してもらうために決まっているじゃありませんか。まあ当時は色々と悩みもしましたが、少女といえる年齢で路頭に迷っていた二人を保護し、色々世話を焼いていたら情が移ったと言いますか……はい、彼女たちには神である私の巫女となって貰う事で悠久の時を生きる存在となってもらったのです。まあ他にも数人ほど歴史では死んだとされる人間が巫女だったり武術指南役として私に仕えているんですが……。
「まあ付き合いの長い貴女達になら話しても構いませんか……紫、【
「承知しましたヒマリ様」
そうして数分後には明星宮の地下5階にある私の私室に全員が集合した。
守る、と書いて
「
キリッとした表情でこちらはジーパンにダウンベスト、白のロングTシャツとシンプルな服装の少女が報告をする。うん、巴御前です。
彼女たちは生きている中で私に何かしらの恩を感じたらしく、私が籠っていた神社へ急に訪れては身も心も捧げると言われたから仕方なく巫女にしたのだけど最初は仰々しくて大変だったのですよ。あの手この手で娯楽という文化を教えたり各自に神様崇拝以外の趣味を持ってもらったりした結果今ではご覧の通り、私の部屋に用意されているコタツに吸い込まれてリラックスしている姿が見られるようになったのです。
彼女たちを沈めようと思うと戦略級魔法を5,6発は連続で打ち込まないといけないから過剰戦力だということは分かっているんだけど、どうしても未来のための備えとして保険を掛ける意味合いでも1隻でも多く!! って思ってしまう。いや、やめよう。いつの間にか日本が世界の海上封鎖をしかねない程の大戦力を有してしまう事になり得る、それも天皇にも国民にも内緒で。でも私は諦めていない。巴には言っていないけど実は艦体のナノマテリアル化は終わっている。あとはユニオンコアを接続さえしてしまえばメンタルモデルが発生することだろう。だけどそれは今ではない。私は待つ事が出来る神様なのだ。
「ヒマリ様、感慨深げにしていないでそろそろ事情をお話いただきたいのですが……」
末っ子的ポジションでありながら、実はしっかり者の朝日に促される形で、私は私の知る未来の話を始めた。
要約すると、『2095年に司波達也っていう世界を滅ぼす力を持った四葉の少年が第一高校に入学する。私としては世界を滅ぼされると今後何十億年もの間娯楽が無くなってしまうのでそれを避けるため、彼の周囲で密かにイレギュラーの発生に対処しつつ世界を守る』という事だ。
「ヒマリ様は四葉に色々と命令出来る立場じゃないですか」と紫。
「い、いやぁ……」
「ヒマリ様、汗をかいていらっしゃるようですが、いかがしました?」と清。
「ヒェッ……」
「でもその司波達也って人間の魔法にもヒマリ様は対処できますよね?」と朝日。
「ウッ」
「そして司波達也という男の近くに居る必要もないです」それに続くように望。
「クッ」
「要するにいつもの衝動でヒマリ様がただ高校に行きたくなっただけ、という事ですね」ヒマリにトドメを刺すように巴。
「…………………………ヒン」
はぁ、と巴がため息を吐いてコタツに常備してあるミカンに手を伸ばすと、他の4人もそれぞれ好きな物をぱくつき始めた。一気にシリアスな雰囲気が散ってしまった。
「わァ…………ぁ…………」
神様泣いちゃった。
2095年2月の末日、四葉本家へ訪れた使者によって一通の手紙が届けられた。
「………………奥様?」
四葉家当主 四葉真夜殿と達筆な文字の踊る手紙を開いた瞬間ピシリと音を立てるように固まってしまった自身の仕える主の様子に、失礼とは思いつつも四葉家筆頭執事である
「葉山さん、こちらを」
「よろしいので?」
「ええ、貴方にも関わる事だから問題ありません」
極東の魔王、夜の女王の異名を持つ主人がこうも動揺するという事はただ事ではない、葉山は気を引き締めて真夜から手紙を受け取り──―真夜と同じく固まった。ただ事どころの騒ぎではない。
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四葉真夜 殿
拝啓
春の兆しを感じる季節となりましたね。真夜は変わりありませんか。
私は日々紫や清を始めとした巫女と庭を染め上げる
さて、久方ぶりに筆を取った訳ですが、真夜と恐らく横に居るであろう葉山を驚かせてしまう事を先に謝っておきます。この度、明星ヒマリこと私は霧乃ヒマリとして国立魔法大学付属第一高校へと入学することをここにお知らせする次第です。
どうやら外なる者の手によって年中一杯は嵐が吹き荒れる予感がします。朝日には護衛代わりに四葉家で世話になるよう言いつけています。一度話しがしたいので、葉山か朝日を宮まで寄越して都合の良い日を教えてください。その後は深夜と穂波も誘ってお茶会をしましょうね。元造もですが、二人も貴女に会いたがっていますよ。
それではお互い素敵な春を迎えられますように。
かしこ
明星ヒマリ
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「これは……」
「ええ……今年はどうやら大変な事になりそうです。それにしても深雪さんと達也さんが本家から離れる年だというのに何と間の悪い事でしょう」
「例の家の周囲の警備を増やしましょうか?」
葉山が主の表情を伺うように見ると真夜も同じことを思ったのか、しかし首を横に振ってあまり見たことのない表情で深々とため息をついた。
「いえ、あまり不確定な要因に惑わされたくないわ。それはヒマリ様とのお茶会が終わった後決めましょう。葉山さん、直近でヒマリ様の下へ伺える日はいつだったかしら」
「そうですな、ヒマリ様の都合にもよりますが入学式当日の午後からスケジュール調整が可能ですな」
「そう、それではそのように朝日様に伝えてくださらない?」
「かしこまりました」
葉山が恭しくお辞儀してから部屋を退出した後、真夜は考える。
(はぁ……私も早く当主を引退して巫女になれないかしら。そうすればヒマリ様と一緒に高校に通う事も出来るというのに。姉さんは四六時中一緒に居られてうらやましい限りです)
◇◇◇
四葉家はとある事件以降、明星ヒマリ及び明星宮に対して多大な恩義を感じている。四葉との邂逅は2095年より32年ほど
正直に言うと物語で非常に重要な役割を担う事になる四葉家と関係を持つつもりはなかった。ただ、1999年の一件でこの星に司波達也が生まれてくることは確定したようなものだったので、元々持っていた明星宮としての権力を活かして元老院の調停者として君臨することを老人たちに認めさせた。四大老の一角に座っている霧乃の巫女を介して四葉家が暴走しないよう元老院を通してコントロールしていくつもりだった。明星宮としても明星ヒマリとしても、はたまた京都にある私のために建てられた霧乃神社を通して関わっても多方面へ及ぼす影響が大きすぎる。良くも悪くも確実にストーリーラインに影響を及ぼす。それを嫌った私は天才美少女たる頭脳を活かして裏から手を回す事を考えていた。
少年少女魔法師交流会の開催当日。そう、真夜が崑崙方院に拉致・強姦されてしまい達也が生まれる原因となるどす黒い情動を心に宿してしまうその日のこと。私は会場の様子を監視・私の能力によって私利私欲に満ちた下種な考えまで筒抜け状態であった。そして交流会が大漢の手の者によって襲撃され、真夜が誘拐されるのを静かに見送った。この時、私の心には迷いがあった。日本の魔法師研究を自国の欲を満たすため誘拐した大漢を消すべきか、それとも真夜という12歳の少女に物語の犠牲となってもらうのか。
否。断じて否。
ヒマリは皇居周辺への攻撃でもはや事態は静観するべからず、と決意したはずである。私は神様ではあるがそれ以前に宇宙の管理者である。ならばここで真夜を助ける事で司波達也が生まれない未来があるのではないか、そう自分を納得させることにした。それに今後の事を考えるとこの辺りで四葉と仲良くなっておくというのもある意味私の目的に沿った効果を得られるはず。
私が望むのは、地球が消滅する可能性の排除。もし地球が消滅しても私の能力で地球に限りなく似た星を創る事はできる。だがそれはもはや地球ではない。どこかに神の手が加えられている事自体が私のような人間臭い神様にとってみれば、我慢ならないのだ。神の手など存在しない、ただありのまま生きる姿を私は見たいのだ。天文学的な確率の上に成り立つ地球で、自然に誕生した生命の神秘、刹那の輝きを見たいのだ。
私が一条天皇との約定に基づいて人間同士の争いに手を貸してしまった時点で、私の中の優先順位は「地球そのものの消滅を防ぐこと<神である私が介入しないこと」から「地球そのものの消滅を防ぐこと>神である私が介入しないこと」と見事に逆転。
2062年某日、真夜の拉致から2日。
崑崙方院に真夜はいた。
「こいつが日本の魔法師か」
「クックックッ……これで我らの研究はまた一歩前進する!!」
真夜は実験台の上に手足を縛り付けられて身動きが取れないよう拘束されていた。
CADも取り上げられ、何も抵抗できない中ギラギラと欲に塗れた白衣を着た大人が少女を取り囲んでいる状況に真夜の目から涙が零れ落ちる。未だ男たちは
「助けて……お父様…………」
「ええ、この超天才美少女たる私が今助けてあげますとも」
「えっ…………?」
気配など全く感じなかったというのに、一体どうやって侵入したのか。
ふいにどこからともなく声が聞こえ、辺りを警戒しだす研究者たち。
気付いたら車椅子に乗った白銀の髪に白銀の目をした美しい少女が真夜の傍にいた。真夜は自分の身に降りかかっている状況が一瞬で頭の隅に追いやられ瞬きも忘れ、儚げな少女を見つめる。すると、真夜の視線に気付いたのか真夜とその少女の視線が交わる。
「かみ……さま?」
無意識に口をついて出た言葉。白い少女は少し驚いたような表情を浮かべる。
「おや、もしかすると巫女の適性があるのかもしれませんね……と、それよりもです。真夜、貴女を助けてあげましょう」
「お、ね……がぃ」
「ふふっ、安心しなさい。目が覚めるまで貴女の傍に居てあげますからね。」
少女の纏う雰囲気がそうさせたのか、真夜は極度の緊張から解放された反動で意識が薄れゆくのを感じた。そうして狭まる視界の中、真夜は一瞬だけ白い少女の頭上に天使の輪を見たような気がしたのだった。
男たちは真夜が眠りにつくまで、何もさせてもらえなかった。捕食者たる強大な存在に睨まれて身動きが取れなくなる小動物のように無様に身体をぶるぶると震えさせることしかできなかった。真夜が眠った事を確認した白い少女は口を開く。
「さて、それでは貴方たちには滅んでいただくとしましょうか」
少女は穏やかな笑みで、これが慈悲だと言わんばかりに告げた。男たちの鼓膜を揺らし、脳がその意味を理解した瞬間男たちの意識はまるで大気に溶け出すように薄れていった。研究者はまるで蒸発するかのように消え、床にはつい先ほどまで人間が着ていたような状態の衣服だけが残されていた。
「真夜、今はゆっくりとおやすみなさい」
かくして救いの手は伸ばされ、一人の少女の運命は音を立てて動き始める。
ざっくりとしたヒマリの魔法お披露目&四葉絡みの説明でした。詳しい話はまた次回以降のどこかで出来るんじゃないかと思ってます。