牙守の一族   作:わんころ

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後半は、簡単なキャラ紹介を添えています










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 “サウザンドアイズ”から五人が本拠へと戻ってきた時、既に空は夕焼け空となっている時分だった。

 

「私は先にお風呂を頂くわね。汗でベタベタするもの」

 

「僕は、水樹の方に行ってくるよ。顔洗いたい」

 

 飛鳥を風呂へ、真司を貯水地へとそれぞれ見送り、黒ウサギはジンの下へと“サウザンドアイズ”の注文書や食料在庫の管理など相談へと向かう。

 残った十六夜と耀を出迎えたのは、二尾の豊かな尻尾を揺らした狐娘の少女だった。

 

「お帰りなさいませ、十六夜様、耀様…………あれ?飛鳥様と真司様は?」

 

「お嬢様は、先に風呂に行ったぞ。真司は貯水池に行ったな」

 

「魃がずっと傍に居たせいで蒸し暑かったから。でも、“サウザンドアイズ”で買い取って貰えて良かった」

 

「買い取り……?あ、えっと、お疲れ様でした!」

 

 コロコロと表情の変わる狐娘は見ていて小動物の様な癒しがある。

 

 ところ変わって貯水池。

 縁に腰掛けて、真司は大きく息を吐いていた。

 

「はぁ~~~~、涼しい~~~」

 

 風が吹けば水に冷まされた涼しい風が頬を撫でる。

 飛鳥に風呂を譲ったとはいえ、彼だって暑かった事には変わりない。それも、熱源であった魃を実際に持ち上げていれば猶の事。

 熱中症とまではいわないが熱が体に籠っていた。

 

 ただ、今回ここへとやって来たのは何もただ涼みに来ただけではない。

 顔を洗って立ち上がり、きょろきょろと周囲を見渡す。

 そして左手を背へと伸ばして、叢雲牙の鞘を掴んだ。

 背負っていた叢雲牙。それを徐に胸の高さまで地面と平行になる様に横向きで持ち上げて、そして唐突にパッと放す。

 当然、重力に引かれて妖刀は地面へと――――()()()()

 まるで宙から吊られているかのように、叢雲牙は空中へと留まっていた。

 浮かぶ叢雲牙。そこに真司は手を伸ばし、両手を鞘へと掛けると腕の力をもって体を鞘の上へと引き上げた。

 不安定な細い鞘の上。その上に、彼は二本足で立っている。

 

「おっとと……ちょっとは慣れてきたかな」

 

 腕と腹筋、背筋でバランスを取りながら真司は足元を見下ろす。

 ここ暫く練習していたのが、この叢雲牙を利用した飛行方法。その切っ掛けは叢雲牙からの思念だった。

 

 叢雲牙は、真司の思うとおりに浮かび、そして動く。裏を返せば、確りと頭の中で道筋を考えていなければ墜落するという事でもあった。

 夕暮れが過ぎた夜の帳の中、風を切って空を飛ぶ。貯水池の近くで練習しているのは、もし落ちたとしてもボロボロの家屋などに落ちて壊したりしないように。最悪貯水池の中へと落ちれば周りの被害もほぼ無い。

 水樹の天辺を少し超える程度の高さまで浮かび上がり、真司は周囲を見渡した。

 

「……広いなぁ」

 

 空を見上げれば、星が煌めく。地平線を眺めれば、夜でも活気を失わない街が確認できる。

 箱庭にやって来て、まだまだそれ程時間が経っている訳では無い。それでも、今の所後悔した事は無かった。

 

「まあ、最初の目的は失敗してるんだけどね」

 

 叢雲牙の鞘の上に腰を下ろして、柄頭に嵌められた水晶を撫でる。

 元々、この刀から逃げたかったからこそ、箱庭へとやって来た。だというのに、今ではこの刀の力に頼りっぱなしだ。

 次いで触れるのは、腰の左側に差した錆び刀。

 鉄砕牙もまた、この箱庭では何度も世話になっている。瘴気汚染などの問題で咄嗟に抜けない叢雲牙と比べて癖が少なく扱いやすいからだ。

 

 ()()()()()()()()()()()

 

「ここに居たのか、真司」

 

「こんばんは、レティシアさん」

 

 暫く月を眺めていれば、隣に翼を広げたレティシアがやって来る。

 

「夕食としよう。十六夜や耀は食べてしまったが、黒ウサギや飛鳥、私がまだだからな」

 

「了解」

 

「……それにしても、その妖刀は凄まじいな。飛行すらも可能とするのか」

 

「そうかな?……いや、そうだよね。刀って普通飛ばないし」

 

「それだけすさまじい力を有しているんだろう。…………」

 

「レティシアさん?」

 

 突然言葉の止まった吸血鬼の姫に、真司は顔を向けて首を傾げる。

 

「……いや、実は先程客人が来てな。君たちの魃討伐の顛末を聞いたんだ」

 

「あー……そっか」

 

「黒ウサギにも言ったが、素直に理由を話してみれば良かったんじゃないか?少なくとも、お説教を受ける事は無かっただろう?」

 

 問うてくるレティシア。

 視線を前へと戻した真司は、鞘の上に立ち上がった。

 

「確かに、そうかもしれないね。まあ、あくまでも僕の意見だけど……やっぱり、任された手前申し訳なくてね」

 

 顎を撫でる彼の顔には、苦笑いが浮かんでいた。

 

「魃の討伐よりも、情報収集に徹した方がコミュニティの利益になったことは確かなんだ。人助け、いやこの場合は馬助け?ユニコーン助け?まあ、とにかく理由はどうあれその利益を放り投げちゃったからね。一応、魃を売ってお金にはなったけど、長期的な儲けとして見るなら少し心許ないでしょ?」

 

 善行が、必ずしも正しいとは限らない。いや、正しい行動であり、称賛され、感謝されるかもしれない。

 だが、()()()()()()ならば組織運営としては赤点だ。

 それが分かるからこそ問題児たちも何も言わなかった。

 

「……ふっ、だが私は主達の恩情を受けてここに居る。確かに今回、コミュニティの利が多少削れたとしても、それでもやった事は決して間違いではなかった。違うだろうか?」

 

「……そうかな…………そうかもね」

 

 レティシアの言葉に頷いて、真司は大きく伸びをする。

 

「それじゃあ、行こうか。夕飯が冷めちゃうからね」

 

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《人物紹介》

 

来馬森(くるまもり) 真司(しんじ)

 

十五歳 男性

 

身長:173センチ

 

体重:64キロ

 

備考

箱庭に来たことにより、自身の素質を開花させたタイプ。そもそも、家系に秘密があるらしい

 

ギフト

 牙守(きばもり):妖刀に関するギフト

 

 叢雲牙(そううんが):太古の悪霊が憑りつく最悪最古の妖刀

 

 鉄砕牙(てっさいが):妖力ある人間、或いは半妖しか扱えない特殊な妖刀

 

 猿鏡牙(えんきょうが):腰鉈の様な形状の妖刀。その刀身に映した対象を模倣する

 

概要

 人間でありながら、妖刀に対する高い適性を有する稀有な存在。常に羽織っている真紅の羽織はギフトではないが、高い難燃性と防刃性などを持ち簡易的な防具にもなる

 性格は穏やかで人当たりの良いタイプ。事を荒立てるぐらいなら一歩下がる事も躊躇わない。その一方で自分の問題は一人で抱え込んでしまうタイプでもあり、加えて周りに一切漏らさないせいで、場合によっては手遅れになってしまう可能性も持っている。

 

 現状の実力差は、十六夜が頭一つ抜けており、真司が追随する形。ポテンシャルはある

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