ですのでリハビリもかねてほぼ会話だけの文での形を取りました。
読みにくかったらごめんなさい。
準々決勝が始まる前日の夜。次のステージへと駒を進めた各校は、明日か明後日に各々が戦う事になる高校の選手たちの情報を、改めて整理していた。そんな中、何故かインターハイとは全く関係のない人物の噂が各校の間で囁かれていた。
大阪代表 千里山女子高校の生徒が泊っているホテルの一室にて
「なぁ怜。」
「なんや竜華・・もしかして膝枕のし過ぎで痺れたか?」
「いや、まだ膝枕してから10分や。流石にそこまで軟じゃない。」
「そっか。」
「せや、いや違うくてな。ウチが言いたいのはカンドラさんの事や。」
「カンドラさん?あの人がどないしたん!?まさか会ったん!?」
「いや、ただ何となくあの人の事で気になる情報があってな。」
「気になる情報?」
「せや、どうもカンドラさん。ウチらが会場で試合してる時にこっそり観戦しとったらしいで。」
「ええ!?それホンマの話!?」
「ホンマや・・いやな、ウチらの試合見てくれるのは嬉しいんやけど、せめて一言感想が聞きたかったなーって。」
「・・せやな。あの人には世話になりっぱなしやったからなぁ。ウチらの成長、どう感じてんのか気になるわぁ。」
「世話になったと言っても数回会っただけやけどな。」
「その1回1回が毎回大きすぎたわ、会うたんびにウチに必要なモンをくれる。・・あの人は救世主や、ウチにとっては。」
「ウチだってそうや。あの人がいなかったら、今頃怜は病院で寝たきりだったかも知れへんからな。」
「いやあん時はウチも悪かったって・・でもな、ふと思ったんや。ずっと能力を発動し続けたらどうなるんやろうなぁって・・」
「それで人気の無い道の真ん中で雨ん中ぶっ倒れて・・ウチすんごく怖かったんやで?親友が道の真ん中でいきなりぶっ倒れて、周りには誰もいないし、救急車呼ぼうにも怜の手がすんごい勢いで冷えていくのが怖くてもうパニックになって・・」
「はは・・せや。ウチの好奇心で竜華を1人にしてしまうとこやった。」
「そんな現場に颯爽と現れたんがカンドラさんやったな。」
「ウチは意識が朦朧としてたからよく覚えとらんけど、あれは能力やったんか?」
「いや、あれもオーラらしいで。」
「ホンマか?」
「ホンマや、ウチが最後に会った時にこっそり教えてもろたんや。ついでにウチも同じ事が出来るように鍛えてくれたで。」
「え!?・・でもこの間は愛の力がどうこうって・・」
「スマン、見栄張ってもうた。ホントはカンドラさんがウチにオーラのいろはを教えてくれたんや。」
「・・いや、見栄張るのは全然ええんやけど、なんで白状する気になったん?」
「もうカンドラさんに会う事は無いって思っとったから・・教え子が見栄張ってるなんて本人に知られたら恥ずいやん?」
「・・なぁ、もしウチがカンドラさんに会うた時は、その事バラシてええか?」
「別にええで、そん時は怜も見栄張ってた事バラすから。」
「いやそれはアカンて、バレた時の恥ずかしさが桁違いやって。」
「倒れる前まではシングルが限界やったのに、今はダブルまで平気になったんやろ?それはカンドラさんが怜の未来視をオーラで補助する方法を教えたからやって本人に聞いたで。そん時は怜が見栄張ってるってバラさんかったけどな。」
「いやでも気持ちは分かるやろ?能力を酷使して倒れた結果、さらにパワーアップして帰ってくるっていうのは熱い展開やん?それを専門家に教えてもらいました、なんて真っ当な理由で白けさせたくないのが人情やん?な?」
「はぁ、あのなぁ?ウチは怜にこれ以上無理してほしくないねん。怜がまた倒れて冷たくなっていくのを想像しただけで・・怜がこの世からいなくなるなんて考えたらウチ・・怖くてしかたないねん。だからな、周りに嘘をつくのはええけど、ウチにだけは嘘つかんといて、な?」
「竜華。・・分かった。金輪際、竜華にだけは嘘はつかん!」
「・・それホンマか!?」
「ホンマや!ウチが竜華に嘘ついた事なんて無いやろ?(笑)」
「なんですぐ嘘つくん?(笑)」
同時刻 奈良代表 阿知賀女子学院の生徒が泊まっているホテルの一室にて
「・・カッコいい!」
「・・急にどうしたの、しず?」
「これこれ!この雑誌に写ってる嶺上って人!憧は知ってる?」
「知ってるも何も、去年からずっと麻雀関係の雑誌やラジオで取り上げられてたじゃない?何を今更そんなに興奮する事があるのよ?」
「見たからだよ!今日!」
「見たって何をよ?」
「嶺上さん本人をだよ!さっきコンビニにお菓子を買いに行った時に偶然すれ違ったんだよ!絶対本人だった!」
「・・そう、良かったじゃない、有名人に会えて?」
「えへへーいいでしょう!」
「・・はぁ、呑気なものね。明日はインターハイ2回戦目だって事分かってる?何度も言うけど、私達が和とインターハイで戦うには決勝まで進むしかないの。明日の試合だって出来る事なら余裕勝ちしたい。そうでもしないと和が私達に幻滅しちゃうかもしれないじゃない?しずはそういう不安はないの?」
「ん?ないよ?」
「なんでよ!?」
「んー、なんでだろうね?実を言うとさっきまでは私も憧と同じ気持ちだったよ。不安でいっぱいだった。」
「なによ、やっぱり不安なんじゃない。」
「でもね、さっき嶺上さんとすれ違った時に・・なんていうのかなぁ、ゾクゾクっていうかビビビンというか、とにかくそんな感じの何かを感じてさ!それからはもう負ける気がしない!どんな奴が掛かってきても大丈夫って気持ちが溢れてくるんだよね!」
「・・何それ、ハイになってるだけじゃない。」
「えー違うよ!そういうんじゃなくて!」
「はいはい分かったから、もういい時間なんだから騒がないの。」
「んもう、先に色々聞いてきたのはそっちじゃんか。・・いいよもう、雑誌の続き読もっと。」
「・・その霊力の向上、また私の手の届かない高みへ昇ったのね。・・やっぱり少し寂しいわね。(小声)」
同時刻 長野代表 清澄高校の生徒が泊まっている旅館の和室にて
「・・ロン!河底撈魚!ドラ2!」
「ぐはぁっまたやられたっす!?おかしいっすねぇ・・加治木先輩!私のステルスちゃんと発動してるっすよね!?」
「安心しろ桃子、ちゃんと発動している。・・まぁ、オーラをある程度操れる打ち手には効かないとは思うが。(頭を撫でながら)」
「うう、やっぱりオーラの操作がまだ極まっていないようっすね。まだまだ精進あるのみっす!次は負けないっすよ衣さん!」
「何度でもかかってくるがいい!衣は受けて立つ!」
襖(スーッ )
「・・ただいまー。やっぱりコンビニは夜行くのが一番だね。」
「あ!咲!(とてとて)」
「ただいま衣ちゃん。お菓子買ってきたよー。」
「うむ、感謝するぞ!・・本当は衣が直々に行っても良かったのだが・・」
「いや、衣さんみたいな学生が夜に出歩くのはまずいっすよ。」
「やはりそう思うか?衣のオーラは常人でも感知できる程大きい故、こっそりと活動する事は困難を極めるからな。」
(いや、桃子が言いたいのは多分・・いや、身長をとやかく言うのは失礼だな。やめておこう。)
「ふふ、いいんですよ衣ちゃん。私が行きたくて行ったんですから。」
「でも・・衣も何か咲の力になりたいぞ。」
「ふふ、衣ちゃんは本当にお利巧になりましたね。最初に会った時とは大違いです。」
「最初・・あの県予選の時の事か?あの時は私もびっくりしたな。」
「風越の池田さん・・でしたっけ?あの人の点棒が無くなった時は見てるこっちも冷や冷やしたっすよ。」
「そうそう、衣ちゃんが自分の能力で周りを威圧するような打ち方をしてね。あの時の衣ちゃんも可愛かったなぁ。」
(そんな衣さんを可愛いで済ます咲ちゃんが1番やばいっすよ。)
「・・あの時はすまなかった。今まで衣は自分の能力に胡座をかいていた。誰も衣の心を折る事などできないだろうと高を括っていた。・・だがそれは間違いだった。本当に反省している、許してくれ。(ギュッ)」
「ああ、衣さんがネガティブモードに・・」
(ふーん、麻雀で他人を蹂躙するのが当たり前だった彼女が随分としおらしくなったものだな・・そんな風に彼女を変えたのが目の前のあどけない少女なのだから、やっぱり人の出会いはどれも面白いな。)
「ふふ、大丈夫ですよ衣ちゃん。私はもう怒っていません、だから安心して?もう衣ちゃんは1人じゃない、沢山の家族がいて・・私という理解者がいる。私だけは何があっても衣ちゃんの味方ですから、だからこれからも、私の協力者でいて下さいね?(なでなで)」
「うん、ひっぐ、うう、咲大好き・・」
(うわぁ、咲ちゃんやり方がえぐいっすよ。白のオーラで包みながら甘い言葉を耳元で囁き続けるなんて・・私に加治木先輩がいて本当に良かったっす!)
「・・加治木先輩、私は咲ちゃんと衣さんがどうやって仲良くなったのか知らないんすけど、先輩は知ってたりしますか?(小声)」
「ああ、県予選が終わった後に宮永は龍門渕家にお呼ばれされたらしくてな。そこで天江を完膚無きまでにオーラと能力で叩き伏せたらしい。(小声)」
「ええ!?そんな事して大丈夫だったんすか!?(小声)」
「当然大丈夫じゃなかったな。天江は宮永の圧倒的な力を何度も味わい、やがて能力や人としての器で宮永には敵わないと悟ると・・宮永に心酔した。(小声)」
「えぇ(ドン引き)。それって私達が咲ちゃんを尊敬しているとか、そのレベルの話・・じゃないんですね。(小声)」
「私達とは段違いだろうなぁ。天江のアレはもう依存の域だ、宮永の為なら命だって差し出すと思うぞ。(小声)」
「えぇ(ドン引き)・・いや、もし私に加治木先輩がいなかったら・・私も衣さんと同じようになっていたかもしれないっす。(小声)」
「私だってそうさ、結局のところ凡人だろうが能力者だろうが人間である以上孤独には勝てない。宮永はそれを人一倍知っているからこそ、ああして孤独に震えている能力者を放っておけないんだろうな。(小声)」
「・・いやでもあの救済方法はなんか良くない気がするっすけど。(小声)」
「・・それは・・まぁ・・しょうがない・・で済ましても・・ダメか?(小声)」
「・・さてと!加治木さん、ネットでのカンドラの認知度ってどれくらいですか?」
「ん・・ああ、ざっと見た感じだと麻雀をやってる人間はみんな知ってるっぽいな。麻雀をやらない人間も名前だけなら知っているって奴は結構多い・・ってところか。」
「なるほど・・分かりました、報告ありがとうございます。では桃子さん、現在勝ち残っているインハイ参加校の選手はどのくらいカンドラの事を認知していると思いますか?」
「そうっすね・・会場の食堂で聞き耳を立ててただけなのでハッキリした事は言えないっすけど・・ほとんどの選手が知っていると思うっす。ただ注目はしていないでしょうね。」
「まぁ大会本番の最中ですし、そんなものでしょう・・報告ありがとうございます。」
「これで麻雀協会からの条件は達成した事になるのか?」
「はい、後は私が最後の仕上げをすれば大丈夫です。」
「・・なぁ咲、本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ衣ちゃん。カンドラの知名度はリアルでもネットでも十分、それに小鍛冶さんが解説の最中に何度も名前を出してくれたおかげで選手の人たちにも名前だけは伝わってる。作戦は完璧だよ。」
(ああ、小鍛冶さんが解説の最中にいきなりカンドラの名前100個言えるかなゲームをやり始めたのってちゃんと意味あったんすね。咲ちゃんの事で頭がいっぱいになってトチ狂ったんだとばかり・・)
「そうではなく・・咲がカンドラだと俗世にバレたら・・咲は一生カンドラとして麻雀と関わっていかなければいけないという事だろう?」
「・・はい。それこそが、私のような小娘が身に余る大金を手に入れた代償・・ですから。」
「・・咲、もし今後カンドラとして生きるのが嫌になったら衣に言ってくれ。」
「・・もし言ったらどうなるの?」
「衣が咲を死んだことにする。そうすれば咲はもう麻雀を無理に続ける必要がなくなる。後は衣と2人でゆっくりと生きよう。」
「・・ふふ、ありがとう。勇気を出して告白してくれて・・大好きですよ。」
「!・・うむ!(ニヤニヤ)」
(うーん、あの告白。・・私も桃子に同じような事を言いたいと思っていたが・・やはり財力の面で厳しいか。私も宮永のようにお金を稼ぐか?)
(うーん、あの告白。・・私も加治木先輩に同じような事を言いたいと思っていたっす。うん、私は財力の代わりにこのステルス能力で有言実行すれば問題ないっすね。よし!インハイが終わったら速攻言うっす!待ってて下さいっす先輩!)
カンドラの存在は、麻雀関係者の間ではもう常識に近いものへと変化していた。そして誰もが1度はこう思った・・一目見てみたい、と。
その時はもうすぐそこまで迫っているのであった。