雀荘荒らしの咲   作:ロクナナエイト

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Q.末原の扱いが酷い事になっているが大丈夫か?
A.先に謝っておきます。末原ファンの人ごめんなさい。

Q.豊音が原作よりも幼い感じがでているが大丈夫か?
A.原作ではカッコよさよりも可愛さが目立ってたからたぶん大丈夫。

誤字脱字あったらすいません。読み返して気づいたらサイレント修正しておきます。


カンドラ改め咲の全国初陣

 

「あ、あのー、すこやん。これは一体・・」

 

「見ての通りだよ、恒子ちゃん。」

 

 インターハイ第2回戦、2日目の最後のブロック、その最後のトリを飾る大将戦が始まる直前の僅かな時間に・・まさかの事体が起こっていた。

 

 副将戦が終わって早々、試合会場にカンドラが参上。そこに続々と集う大将達。残りは最後の大将1人を待つのみとなっていた状況で、カンドラが自身の正体を明かすまさかの展開。その正体は清澄高校の大将こと宮永咲であった。ここまで約5分しか経っていないのだが、この怒涛の流れを見ていた視聴者は誰もが混乱していた。無論実況の福与恒子も例外ではなかった。そんな視聴者全員が混乱を極める中、ただ一人だけ恍惚の表情を咲に向けている者がいた。その者は恍惚とした表情を一切隠す事なく、本来の仕事である解説の業務を続けた。

 

「・・現在この試合をご覧になっている皆さんにお伝えします。先程試合会場に現れたカンドラさんの正体は、本人が宣言した通り・・清澄高校の大将、宮永咲選手で間違いありません。」

 

 その解説を聞いていた多くの視聴者は再び驚きの声を上げる事となった。

 

 

 

 その頃、肝心の試合会場ではカンドラのカミングアウトに一同驚きで固まっていた。しかし、固まっている理由はそれぞれ違っていた。

 

(やっぱりだ!二十面子さんの正体って宮永さんだったんだー!)

 

(これはこれは・・姫様が起きた時にどう反応するのか、見れないのが少し残念ね。)

 

(は・・はぁ!?カンドラが宮永!?どういう事やねん!?)

 

 

 一方、そんな混乱を引き起こした張本人である宮永咲は・・内心ホッとしていた。

 

(良かったぁー、これは完全にカッコよくTVに映ったでしょ。よし、これでカンドラの知名度は爆上がり間違いなし!比例して麻雀界そのものも話題沸騰になって新たな麻雀ブームの到来は確実!あとはこのインハイを余裕で制覇して新たな伝説を作るだけ。それが終われば取り合えず直近の仕事は終わりかな。)

 

 自身の正体を明かして話題作りをするという仕事をこなした咲は、次なる仕事に取り掛かるために自身の座る席に手を掛けた。ついでに咲の後ろにいた警備員は咲が散らかしたカンドラの変装用の服を拾う作業を始めた。とそこで

 

「皆さんどうかしましたか?」

 

 いつまでも固まっている皆を訝しんだ咲が声をかけた。

 

「・・いや自分の方こそどうした、と私は言いたいんやが。」

 

「末原さんが私を部外者だと疑ったので身の潔白を証明しただけですが、何か?」

 

(・・めっちゃ根に持っとるやん。というか警備員に脱いだコートとか拾わせんなや。)

 

((・・・!?・・・))

 

 若干怒りを感じる咲の物言いに思わずたじろぐ末原。しかしそんな末原よりももっと動揺していたのが他の2人であった。オカルトをあまり信じない末原には咲がただ怒っているように感じるだけであったが、2人は咲から一瞬だけ黒いオーラが放たれた事を感じ取れてしまったのである。そしてそのオーラは何故か熱を持っていた。

 

「・・ご理解頂けたなら、早く自身の席に着席して下さい。もう大将戦の開始時刻です。」

 

 まるで先程のカミングアウトなど無かったかのように淡々と振舞う仕事人間の咲。彼女の指摘で自分達がそれぞれの高校の大将だという事を思い出した3人は急いで自身が座る席に着席した。そして試合開始の挨拶をしようとしたその時、

 

「豊音さん、霞さん。私は今日という日を心待ちにしておりました。お互い悔いの無いように全力で戦いましょう!」

 

 このタイミングで何故か2人に激励の言葉をかけた咲。急いでいた2人は軽く会釈をするに留めた。

 

「「「「よろしくお願いします。」」」」

 

 着席した4人が同時に挨拶をする。それと同時に試合開始のブザーが鳴り響いた。

 

 

 

 こうしてインターハイ第2回戦、2日目の最後を飾る大将戦の幕が切って落とされたのだった。

 

 

 

 永水女子  87100 東

 宮守女子  85700 南

 清澄高校  99600 西

 姫松高校 127600 北

 

 

 東1局 親 永水

 

 ブザーが鳴ると同時にそれぞれが牌を取って並べ始める。それはほんの僅かな時間ではあるが、その間に豊音と霞は今回のカンドラの行動について勝手な想像をしていた。

 

(二十面子さん、いや宮永さんはどうして今正体を明かしたんだろう?もしかしてこの3人の中に特別な相手がいて、その人には自分の全部を知って欲しい・・みたいなロマンティックな理由だったりするのかなー?)

 

(嶺上さん、貴女が何を考えているのか・・私には計りかねます。でも、もし私がこの勝負を制した時は、貴女を姫様の前へ問答無用で引きずって行きます。姫様の心にずっと残り続けている貴女への未練。今度はちゃんと、清算してからお出かけになって下さいね。)

 

 2人がカンドラへの思いを戦いに持ち込む中、カンドラの事など知った事かと勝負に集中している者がいた。

 

 (よし、なかなかの配牌やな・・宮永がカンドラやと知った時はビックリしたけど、その事については後や。今はとにかくリードを守って逃げに徹する。それだけに集中するんや。)

 

 試合開始早々、咲のカミングアウトによる精神的ショックから一速く脱した末原。そんな彼女に呼応するかのように、末原の手は配牌の時点ですでに対々和の二向聴、七対子の一向聴のような状態になっていた。

 

(よし、対子が4に暗刻が1。後は2回鳴いて対々和に持っていくか、有効牌を引き入れて七対子に聴牌するのを待つか・・いや、こういう時っていうのは大抵有効牌がすぐには来ないもんや。ここは一旦考えるのをやめにして、相手の捨て牌の方に気を向けるべきか。)

 

 そう考えていた矢先のこと、末原の1巡目の自摸で事は動き出した。

 

(・・え?あれ?これで七対子の聴牌・・やな。なんやあっさり張れたなぁ、なんか幸先ええわぁ。)

 

 末原の手牌は七対子の聴牌、ドラもすでに2個絡んでいる為この時点でロンなら6400、自摸れば2000,4000の満貫は確実。

 

(それに今はまだ1巡目や。という事は、今ならダブリーをする事も出来る!・・でもなぁ、ここでダブリーなんてしたら後半に響くやろうなぁ。)

 

 そう、今ここでダブリーをしてアガる事が出来れば2位以下とかなりの点差を広げられる事になる。しかしそれは諸刃の剣、そんな事をすれば後々3人から総攻撃されるのは目に見えていた。

 

(今ここでダブリーを見逃して安全な道に走るか、それともダブリーして最初から他3校に警戒されるか・・・・よし、ここはダブリーや!せっかくみんなが一位で繋いでくれたバトン、ここは最後まで一位で走り抜けて見せようやないか!)

 

 仲間の顔を思い浮かべながら末原はリーチをかける事を決断。ここで一気に点差を開き、後は早仕掛けの麻雀で逃げに徹する作戦1本に絞った!

 

「リーチ!」

 

 このリーチで場の空気は一気に張り詰めた。カンドラの事を引きずっていた2人はこのダブリーに気圧され逃げの一手を決意。霞が手牌で暗刻になっていた中を河へ、それに続いて豊音も天性の直感で安牌を選び捨てた。当然咲も安牌を捨てる・・と思われていたが、

 

「・・・・・」

 

 コトッ 

 

 咲が捨てたのは、末原のアガリ牌である一索であった。

 

「ロンッ!!!」

 

 当然末原が見逃す訳もなく、見事に撃ち抜かれてしまった。

 

「七対子、ダブリー、ドラ2、1発。12000点の跳満や。なんやガッカリやな、巷で噂のカンドラが跳満に振り込むとか。自分、大したことないんとちゃうか?」

 

 ここぞとばかりに煽る末原。本来の彼女であるならば、このような煽りは絶対にしなかったであろう。しかし今回に限って言えば最初に煽ってきたのは咲の方である。いわば自業自得であった。

 

「ふふふ、その通りかもしれませんね。」

 

 しかし咲は適当に返事を返すだけで煽りが効いている様子は全く無かった。

 

「・・まぁええ、次いこか。」

 

 そう言う合間にも全自動卓は勝手に動いて自動で山を築いていた。この時に末原自身が今のダブリーを疑っていれば、結末は違っていたかもしれない。

 

 

 

 東2局~東4局

 

 その後、波に乗った末原は他校、特に清澄との点差をどんどん広げていった。だが同時に、咲に対する疑念の芽が出始めた。

 

「ロン!純チャン、リーチ。8000!」

 

「はい。」

 

 

「ロン!タンヤオ、ドラ2。5200!」

 

「はい。」

 

 

「ロン!平和、一気通貫。親、5800!」

 

「はい。」

 

 

 最初は気分よく打っていた末原だったが、流石にこの状況の異質さに気付いて冷静さを取り戻す。

 

「・・ひとつええか宮永。」

 

「なんでしょう。」

 

「何で私に振り込むような真似するん?」

 

「気のせいじゃないでしょうか。」

 

(絶対嘘やろ・・ここまでで合計31000点を私に振り込んどいて偶然って線は絶対にない。いやまぁ確かに麻雀初心者ならこういう事もあるやろうけど、私ら県の代表やで?そこんとこホントに分かっとるん?ていうかこの会場が妙に暑いのはなんなん?)

 

 たぶん誰が見ても明らかではあるが、末原の予想通り、咲は末原に点棒をわざと振り込んでいた。しかし肝心の振り込む目的は対局している3人には分からない。そんな中、何故か本気で咲の事を心配している者がいた。豊音である。

 

(宮永さん大丈夫かなー。お腹の調子が悪いのかなー?もしかして振り込みも計算の内だったりするのかなー?)

 

 咲がわざと振り込んでいると断定しない豊音。ここまで彼女が咲を悪く思わない理由は、咲との出会いが彼女自身にとって、とても素晴らしいものであったからなのだが。

 

(うん!あんなに他の人の事を思って行動できる人が、そんな怪しい事するはずない!たぶん末原さんが本当に強いんだ!)

 

 やはり人を疑わない豊音は、今回も咲を疑ったりはしないのであった。そんな豊音とは対照的に、霞はこの状況に違和感を覚えていた。

 

(嶺上さんの目的は以前として不明。でも間違いなく、この振り込みは自身を有利にする為の布石。自分を有利にするのに一番の近道・・やっぱり能力の発動かしら?

 ならこの振り込みは能力を発動するのに必要な条件の一つ?それなら、嶺上さんからオーラや霊力がもっと溢れているはず。でも彼女からは緩い場の支配しか感じない。じゃあ一体何を・・いやもしかして!?)

 

 ここで霞は試合が開始する直前の事を思い出す。

 

『豊音さん、霞さん。私は今日という日を心待ちにしておりました。お互い悔いの無いように全力で戦いましょう!』

 

(まさか・・1位を姫松に譲って私達3人で2位争いをしたいって事!?早々に貴女とは他人の末原さんを除け者にして、関わりのある私達3人だけで勝負を楽しみたい!?そういう事なの!?)

 

 そんな結論にたどり着いてしまった霞はチラと咲を一瞥する。それに気付いた咲は、霞にいい笑顔でウインクを返した。

 

(・・そう、決勝戦まで待てないのね。今すぐここで本気の戦いがしたいのね。・・私達だって決勝に行きたいのに、ここで貴女の楽しみの為の贄になれ、だなんて。ふふ、貴女のそういう傍若無人なところに姫様は惹かれたのでしょうね。)

 

 いいでしょう、その勝負・・受けて立ちます! そう決意した霞の行動は早かった。

 

  東4局 一本場

 

この局の始め、この場から僅かに感じ取れる咲の白いオーラに合わせるように、霞も霊力を少量開放。2人の意思が絡み合い、調律のとれたバイオリンの音のように空間を走っていく。

 

「ロン。平和、一本場で1300点。」

 

「はい。」

 

 霞に咲が振り込む。ここまでの一連の流れを何も知らない人が見れば、咲がこの場の3人に弄ばれている、という風に思う事だろう。しかし麻雀経験者から見れば、今回の振り込みはこれまでのものとは全く違うものだという事が分かってしまう。

 

(これで末原さんの親は流れました。局は進みます。)

 

 

 永水女子  88400 東

 宮守女子  85700 南

 清澄高校  67300 西

 姫松高校 158600 北

 

 

  南1局 

 

 ここで前半戦の南入りとなったのだが、ここまではどの高校の大将も本気で戦ってはいたものの、能力どうしのぶつかり合いという程のものは起きていなかった。何故なら、そもそも能力を持っている人間の絶対数が少ない上に、それを自在にコントロールできる人間は本当に稀だからである。がしかし、今日ここに至っては話が別であった。

 

(私が麻雀で使えるのは、オーラや霊力の可視、私自身の霊力を使った弱い場の支配、そしてもう一つ”恐ろしいもの”による場の支配。)

 

 先程使ったのは霞自身の霊力を使った場の支配で、自摸がちょっと良くなる程度の弱いものであった。

 

(恐ろしいものを使えば嶺上さんとも互角に戦える。でもそれは後半に入ってからにしましょう。前半で使えば時間経過で身体を乗っ取られてしまう可能性がある。)

 

 そう、恐ろしいものは本来人間に降ろしてよいものではない。むしろ出来る事なら何処かに封じ込めておくのが良い、そんな厄介な存在なのであった。故に恐ろしいものを安全に使役して咲と本気の戦いをするためにも、さっさと後半戦へ持ち込みたいのが霞の本音であった。

 

(・・でも、嶺上さんはそんな超常の存在にも平気で立ち向かっていけるのよね。)

 

 ・・少しセンチな気分になった霞は試合の最中であったが、数秒の間だけカンドラとの過去を振り返る事にした。

 

(朝学校へ行って、終わったら本殿へ帰って神職の仕事の手伝いや巫女の修行をする、終わったらそのまま就寝。そんな学生とは程遠い生活を何の疑問も無く送っていた私達の前に突如として現れたのが嶺上さんだったわね。)

 

 霞と咲の出会いというよりは小蒔と咲の逃避行という題名が正しかった。その日の咲は九州での雀荘荒らしの活動を前回で終えて、その記念に思い出旅行をしようと考えていた。土日を使った2日間の旅行だった事も相まって、朝から行きたい場所をしっかりと決めていた咲はとある有名な神社を最初に訪れる予定でいた。そう、その神社で神主の手伝いをしていたのが他でもない小蒔であった。咲は一目見て小蒔が神様を宿すための器である事、その器が壊れないように周りの大人達が小蒔を監視し続けている事を見抜いた。そんな小蒔の眼は仄暗く、顔は常に愛想笑いが張り付いていた。普段から小蒔の周りにいる人間には当たり前に見えるだろうが、鋭い人が見れば小蒔が疲れ切っている事がよく分かる状態であった。そんな小蒔をしばらく見続けた咲が最初に沸いた感情は、小蒔をこんな風にした神台への怒りだった。

 

 咲は怒りに身を任せて一目散に彼女の元へ走り寄ると、そのまま彼女をお姫様抱っこしながらすごい勢いで帰り道を爆走したのである。当然近くにいた神主は姫様が誘拐されたと思って慌てて本家に連絡を入れた。事の起こりを知った本家の人間は陰陽の力などを使って咲の居場所を探り当てると咲を倒すために式を放った。

 

 一方、咲と小蒔はこの特殊な状況を楽しんでいた。もちろん小蒔は最初の内は戸惑っていたのだが、

 

「小蒔ちゃん、貴女は神様や誰かの道具じゃない。貴女は人間なの、ただ言われた事だけやっていれば良いだけの奴隷じゃないの。貴方には自由を謳歌する権利と責任がある。今日と明日の間、それをみっちり教えてあげる。」

 

 という咲の強引なところに感化されて、咲と一緒に九州地方の旅行を楽しむ事になった。その間に本家から飛ばされた式神が襲撃しにきたり、本家に雇われた黒服のオッサンが襲撃しに来たり、薄墨初美が空間移動して襲撃しに来たりとスリリングな体験をする事になったのだが、その日の夜に

 

『霞ちゃんへ:今嶺上さんと一緒のベッドで寝ています。明日の午後5時にはちゃんと帰るのでこれ以上邪魔しないで下さい。神様達もそう言っています。 PS:明日は六仙女の皆さんを嶺上さんに紹介したいので朝8時にこのホテルの前で待っていて下さい。』

 

 という内容のメールを送った為、神がそう言うのならばと本家は納得して襲撃するのをやめた。なお、このメッセージの『一緒のベッドで寝ています』という一文がどっちの意味なのかで神台は少しもめた。また『朝8時にホテルの前で待っていて下さい』という文言に六仙女の狩宿巴は

 

「姫様・・少し見ない間に随分ふてぶてしくなりましたね。」

 

 と零していた。しかしそう零す巴の顔は、心からの笑顔であった。

 

(結局、姫様の心を救ったのは六仙女とは何の関係もない嶺上さんだった。あの日、駅で嶺上さんと別れる時も姫様は彼女の胸の中でずっと泣いていた。そんな姫様をあやしながら、『霞さん、これからも小蒔ちゃんの手を離さないで下さいね。』なんて・・ほんと、私なんかではどこまでも敵わないわ。)

 

 過去の振り返りが済んだ霞は目の前の現実に意識を切り替える。目の前には自身が成りたかった存在であり、ずっと越えたかった存在でもある宮永咲がそこにいた。

 

(例え何一つ、私が貴女に勝ってるところなんて無かったとしても、例え姫様の中の一番が貴女だとしても・・いえ、だからこそ!今日ここで、私は貴女を越える!)

 

 そう意気込んだ霞は、最終局目に向かうために着々と手を進めるのだった。

 

(嶺上さん・・いえ、咲さんに勝って決勝に進むのは私達、永水女子高校の六仙女です!そのためにも・・)

 

 後半戦に臨むにあたって、どうしても確認しておきたい事があった。

 

(姉帯豊音さん、この人は一体何者なんです?かなり特殊な・・オーラ?霊力?なんでしょうこの違和感、まるで魔に憑かれた者を相手にしているような・・どこか私に似ているような・・やはり今のうちに能力だけでも暴いておいた方が良さそうですね。)

 

 後半戦で咲と一騎打ちを果たすためにも、先に横槍をいれてきそうな豊音を牽制できる何かが欲しいと思った霞。故に、この南場は豊音に好きに動いてもらう事に決めた。

 

 コトッ

 

「ポン!」

 

 コトッ

 

「チー!」

 

「ボッチじゃないよー。」

 

 南場に入って早々、豊音は鳴きに鳴いてあっという間に裸単騎となった。通常裸単騎は待ちを読まれやすい為、流局狙い以外ではやらないのがセオリーであった。

 

(姉帯さんが5巡目で裸単騎に!オーラも活性化しているし、これは姉帯さんの能力で確定ね。)

 

 霞の予想通りこれは豊音の能力であった。豊音がボッチじゃないと言った一巡後、

 

「お友達が来たよー!」

 

 そう言って自摸アガリした豊音。役は混一色の1300、700であった。

 

 

 南2局

 

 局が進んで豊音が親になってからも彼女は躍進した。

 

「んー、追っかけるけどー。通らばーリーチ。」

 

「ロン! リーチ、一発、一盃口、7700。」

 

「はい。」(あちゃ~、まさか辺張に負けるとはなぁ。でも麻雀ってそんなもんやし、切り替えてこか。)

 

(ふーん、やっぱり豊音さんって能力を複数持ってたんだ。しかもまだ隠し持ってるね、今日はどこまで見せてくれるかな。)

 

 

 南2局 一本場

 

「ボッチじゃないよー。」

 

「ロン!白、中、ドラ1。5800が一本場で6100。」

 

「はい。」(また振り込んでもうた、もしかしてこれって宮守の能力だったりするんか?いやでも県予選や本戦1回目ではこんな事しとらんかったしなぁ。)

 

(うん、絶好調だねー。身体もポカポカだよー。・・でもいつもよりも暑いねー、なんでかなぁ?)

 

 

 南2局 二本場

 

「追っかけるけどー。」

 

「ロン!タンヤオ、三色同順、リーチ、一発。12000が二本場で12600。」

 

「はい。」(これはもう決まりやろ、宮守は何かしらの能力で私を狙い撃ちにしてん。能力が複数あるのか、それとも狙った相手を徹底的にハメる能力なのか、何にせよ発動するにはこっちのリーチが必要みたいやな。ならここからはもうリーチはせん。ダマで通す!)

 

 末原と同様に、ここまで豊音を泳がせた霞も同じような感想を抱いていた。

 

(これでハッキリしました。姉帯さんは能力の複数持ち、でもオーラを直接見る事は出来なそう。・・少しもったいなく感じますね、永水に来れば巫女として間違いなく大成すると思うのだけれど。)

 

 何故か豊音をスカウトしたくなってきた霞。そんなことを考えつつも、霞は既に豊音を封じる算段を付けていた。

 

(やはりここは姉帯さんの注意を引いて私に能力を使うように仕向けるべきですね。そして私が恐ろしいものを解放して姉帯さんを真正面から打ち倒す。そうすれば後は彼女も静観に徹するでしょう。)

 

 後はそのまま恐ろしいものを咲さんにぶつけるだけでいい。そう考えた霞は早速計画を実行に移す事にした。

 

 南2局 三本場

 

 「チー!」

 

 やはり今局も能力をフルに活用する豊音。そんな彼女を霞は狙い撃つ気でいた。

 

(一筒を鳴いて加えたって事は彼女の役は十中八九チャンタ!なら456あたりの牌が零れるはず。)

 

 そう思った霞はタンヤオを作る為に手を進めようとした。・・がしかし

 

「ロン!」

 

(え!?咲さん!?)

 

 咲も同じ事を考えていたらしく、先に豊音を撃ち抜かれてしまった。

 

「タンヤオ、ドラ3。8000が3本場で8900です。」

 

「はい。」(うう、やっぱ宮永さんすごい。)

 

 続く南3局では全員がノーテンで流局し、南4局では咲が一気通貫、ドラ1の5200を豊音から奪う形で終わった。そんなこんなで前半戦が終了し、各自休憩タイムに入る事となった。

 

 

 

 永水女子  89100 東

 宮守女子 100700 南

 清澄高校  80700 西

 姫松高校 129500 北

 

 

「はー、まぁこんなもんですかね。」

 

 まるで事務作業が一息ついたかのような調子で呟く咲。前半戦は無事に終わって休憩時間に入ったはずなのだが誰一人として椅子から立ち上がろうとはしなかった。そしてそんな咲に背もたれに体重をかけてぐったりしていた末原が噛みついた。

 

「・・随分気楽なようやけどホントに大丈夫なんか?あんだけカッコつけといて自分、最下位やで?」

 

「末原”先輩”の方こそもっと気楽にしたらどうです?2位とは3万点も差があるんですから後はただ逃げ回るだけで済むんですよ。何をそんなに気を張る事があるんです?」

 

 最下位になってなおも煽る姿勢を崩さない咲。そんな咲に末原はカチンときたので身体を起こしてついつい言い返す。

 

「フン!お前みたいな一匹オオカミには分からへんやろうけどなぁ、私らがここで座って戦えるのはここまで場を繋いでくれた仲間がおるからやで!お前は仲間に申し訳ないとは思わへんのか!?せっかく2位で繋いでくれたバトンをお前がミスったせいで4位まで落とす事になったんやぞ!?私だったらあまりの不甲斐なさに仲間に合わす顔がないわ!」

 

 普段の末原からは想像できないほどの熱が籠った発言に、その場にいた他の2人も、思わず何事かと顔を上げて気を張り詰めた。だが肝心の言われた本人は。

 

「・・末原さんは本当に根っこが真面目なんですね。好きですよ、そういう人。」

 

 唐突に好意を伝えられた末原は思わずたじろぐ。そんな末原に追い打ちをかけるように、咲はニコっと笑うと霞に見えるように白いオーラで末原を包み込んだ。白いオーラに包まれた末原は実家にいるような安心感を覚えるが、それは咲の笑顔を見たせいだからだと誤解してしまい、一気に顔が熱くなった。

 

(な、なんや。そんな可愛い顔もできるんかいな。・・いやちゃうくて!私は今何を想った!?この生意気な清澄の大将に、こ、恋してるみたいな風になってたような・・///)

 

 自分の急激な感情の変化についていけない末原。取り合えず一旦頭を冷やしてこようと席を立って何処かへ行ってしまった。それを見た咲は二ヤリと笑うと自身も席を立って何処かへ行ってしまった。

 

 残された霞と豊音。豊音は咲が出ていってから十数秒後に立ち上がって、大きく伸びをした後に何処かへ行ってしまった。最後に残った霞は改めて咲の能力の高さに驚いていた。

 

(やっぱり咲さんはすごいですね。会ったばかりの上級生をオーラと話術でああも自由に操れるなんて、やはり危ない橋を渡り続けるには相手を手のひらで転がすのが一番、なのでしょうね。)

 

 そこまで考えた霞は、何故咲が末原を1位抜けさせようとしたのかもすぐに連想する事が出来た。

 

(咲さん、貴女が末原さんを生き残らせようとした理由、それは彼女がこの4人の中で一番弱いからなのですね。弱い彼女を1位に押し上げれば、後は勝手に逃げ回って1位を死守してくれる。そして自分は2位で抜ければ彼女は貴女を下に見て必要以上に警戒したりはしなくなる。その為にわざわざ跳満に振り込んだりしたのね、自分を弱く見せるために。

 それを準決勝でも繰り返して、決勝の最後の最後で彼女から点棒を全部むしり取っちゃう感じかしら。今まで自分が見下していた相手に今度は自分が見下される番、自分はただ手のひらの上で転がされていただけ。決勝に来るまでの踏み台でしかなかったと最後の最後で知る。・・ふふ、普通の人だったら心が壊れちゃいますよ?本当は2回戦で負けてたのに、利用しやすい馬鹿という理由だけで決勝まで見逃されていただけの虫けらだった、なんて・・でもありがとう、ここで貴女を倒して決勝まで進むのは私達です。末原さんは私が利用させてもらいます。)

 

 こうして第2回戦の様相は、どの高校が勝ち残るかではなく、3人のうちの誰が末原という踏み台を勝ち取るかという椅子取りゲームへと変化していったのだった。

 

 

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