A.最初は「咲の在り方」ってタイトルでした。
次に「完全体豊音」か「パーフェクト豊音」で迷って
結果「豊音の邂逅」になりました。
世界が真っ赤で染まっている。中学生の自分が見慣れていた実家の風景は、あっという間に炎に焼かれて灼熱地獄と化していた。かつてリビングだった部屋は、もはやその面影を一切残していなかった。それでも私がその部屋をリビングだと思ったのは部屋の真ん中に置かれていたコタツだったものの付近に、まだ光ちゃんが取り残されていたからだ。
「光ちゃん!光ちゃん!」
「さ、咲!?私の事はいいから!咲だけでも逃げて!」
辺り一面の燃え盛る炎、その中心に中学生の少女が2人。だが2人の間には天井から落ちてきた無数の瓦礫が道を塞いでいた。なんとか彼女に近づけないかと、悠長に道を探していると・・
「光ちゃん!?危ない!!!」
「え?あ・・いやあああああ!!」
ゆっくりと倒れてくる、かつて我が家を支えていた柱の一つ。まるで意思を持って光ちゃんを道連れにしようとしている風にも見えた。光ちゃんという生贄を見つけた我が家は生贄を絶対に逃がさない為にその足を的確に大地へ固定した。ドンッと大きな音と共に光ちゃんの脚は灼熱に包まれる。
「光ちゃん!?光ちゃん!!」
「ああ!ああ!熱い!!痛い!!痛いよぉ!!!」
「光ちゃ・・・あ。」
今までの人生で聞いたことも無いようなリアルな悲鳴が私の脳に突き刺さる。その声の主は瓦礫の向こうで悶え苦しんでいる。この時、その情景が私の中にハッキリと焼き付いた。その情景と光ちゃんの悲鳴、そしてこの空間の低酸素という条件が重なったのが原因か。私はこの状況で、宮永咲が生きるという事は他者を踏みにじってでも大事な者を守る事である、そう自分の在り方を悟ったのだ。・・その悟りは
「あ、うあ、うわあああああ!!!」
悟りの通りに、私に彼女を守る為の力を発現させた。
「ああううう、くっ!光ちゃんを離せ!この死にかけが!」
悟りは私を攻撃的にさせ、超能力のようなモノまで与えた。私が叫ぶと同時に辺り一帯の瓦礫や炎は吹き飛び光ちゃんへの道が開ける。急いで彼女へ駆け寄るも肝心の柱が吹っ飛ばずに、いつまでも未練がましく光ちゃんの脚を炎で絡みとっていた。
「離れろって言ってんだろ!死ぬなら1人で死ね!光ちゃんは私のモノなんだよ!」
怒りが全身を支配していた私は醜い本音を撒き散らしながら柱を両手でスーパーマンのように持ち上げると、そのまま自身の横の床へ思いっきり叩きつけた。その衝撃で柱は枝のように細かく分かれ、そのまま炎に包まれてあっという間に燃え尽きてしまった。
「さぁ、もう大丈夫だよ。光ちゃん。」
「さ・・咲?」
燃えている柱を両手で持ち上げたのだ。当然やけどするのは覚悟の上だったが不思議な事に皮膚どころか服すら燃えなかった。
「ごめんね、助けるのが遅くなって。今から外まで送るから勝手に暴れたりしないでね。」
そう言って私は光ちゃんをお姫様抱っこして外まで運んだ。光ちゃんは抱っこしたら安心したのか、それとも火傷の痛みに耐えきれなかったのか、すぐに気を失ってしまった。
その後、私は光ちゃんを死なせずに光ちゃんのお母さんの元まで運び終える事が出来た。当然光ちゃんのお母さんは我が子の足に醜く残ってしまった怪我を見て激高。私を罵詈雑言で責め立てたが、私はそれが心底嬉しかった。
(当然だよ。私がもっと早くこの力に目覚めてさえいれば光ちゃんはこんな怪我を負わずに済んだんだから。出来る事なら自分で自分を殴り殺したい気分だよ。)
しかし、そんな懺悔の時間もお父さんが光ちゃんのお母さんを平手打ちした事によって終わりを迎える事となった。普段温厚なお父さんが人に暴力を振るった事実にびっくりしたその瞬間、私の意識は一気に暗転して、気づけば病院のベッドの上にいた。
「さ、咲!大丈夫!?私が分かる!?」
「お、おねえちゃん?」
どうやら私は、あの後気絶して丸1日ガッツリ熟睡していたらしい。気絶した私を診た医者曰く、極度の緊張からの解放によって脳が一瞬だけ貧血状態になっただけ、だから心配ないと。それでもお姉ちゃんは私の事が心配でたまらなかったらしい。・・全く、私の事なんかよりも光ちゃんの事を心配してよ。空気の読めない姉だなぁ。
私が起きた途端すごい勢いで抱き着いてきたお姉ちゃんの頭を撫でながら、お姉ちゃんへの感謝よりも光ちゃんへの関心を優先していた私。だからこそ、私はすぐにお姉ちゃんに聞いた。
「お姉ちゃん、光ちゃんは?」
「ッ!・・光は・・その・・もう、会えなくなった。」
「・・は?」
ほんの数時間前の事だった。火傷の手術が終わって入院措置となった光ちゃんはこことは違う・・・もっと大きな病院へ入院する事を、光ちゃんのお母さんが決めた。
その病院の場所も当然個人情報に該当するので教えてもらう事は出来ず、結果的に私と光ちゃんは・・その日を境に離れ離れとなってしまった。
「・・おい宮永、お前の自摸やで。」
「おっと、ぼうっとしてました。失礼しました。」
「ふん、この状況でボケっとするとか、随分と余裕やないか。」
「そう言う末原”先輩”は、随分と追い詰められた顔をしていますが、大丈夫ですか?」
「うっさいわ、はよ自摸れや。」
やれやれ、今日は試合開始前から多忙で疲れていたという理由もありますが、やっぱり自分自身のオーラには要注意ですね。自分の中から出ているものだから大丈夫だなんて慢心は、オーラの操作に致命的なエラーを起こしかねません。やはり私もまだまだ未熟、この程度の疲労で自分のオーラに取り込まれないよう、日々精進しなくては。
現在試合は後半戦の南1局。前局で咲がおそらく豊音の能力を無効化して、3倍満をアガるという離れ業を達成。これにより、1位と最下位との差は僅か2万点。先鋒戦から始まったこの試合も、残りあと4局。その最後の最後でまさかの接戦にもつれ込み、観客達は大いに盛り上がっていた。
宮守女子 91700 東
姫松高校 103500 南
清澄高校 93700 西
永水女子 111100 北
(ど、どうしよー!南1局でビリになっちゃったよー!)
(大丈夫、恐ろしいものの支配はちゃんと継続されている。まだやれる!)
(アカン、このままやと何の能力も持っとらん自分が標的にされてまう!何とかして早上がりせな!)
3人が3人とも焦っていた。それも当然で、末原は単純に最下位転落の可能性を、他2人は自身の能力の無効化を理由に焦っていた。特に豊音は深刻で、東4局に自身の先負を咲に回避されて、いや無効化されてしまったのだ。一応まだ他にも見せていない能力はあるが、今日使えるのは先負と友引だけであった。故に、残っている能力は友引だけとなり、豊音は他の2人と比べてさらに弱気になっていた。
「ポン!」
(先負が通じない以上、ここからは友引で早アガりする事だけに全てを賭ける!)
豊音が鳴く。咲に先負が通じない以上、早アガり出来る友引でごり押すしかないと判断しての事だった。この判断はことこの場においては正しかった。今この場を支配しているのは霞の恐ろしいもの。この存在の能力は、霞以外の自摸を全て絶一門にすること。反対に霞の手は一色で染まる事となり、普通では考えられない程の速さで清一色を作る事が出来るのが、この存在の在り方であった。
だが当然、それこそが弱点でもあった。自分の手が一色で染まり、他家にそれ以外の牌が集中するという事は、当然鳴きによる早上がりの麻雀が出来ない事を意味し、霞は自身の自摸のみで清一色を作らざるを得ないという事である。反対に霞以外の3人には他の色が集中している為、鳴きたい牌がどんどん河に零れているのが現状であった。これでは簡単に混一色《ホンイツ》や断么九《タンヤオ》、全帯么九《チャンタ》などの役を鳴いて早上がりされてしまう。そんな中、鳴き麻雀特化の能力を持っていた豊音にとって、これ以上の得意なフィールドは無いと言わんばかりであった。つまり、豊音の友引と霞の恐ろしいものの支配は、かなり相性が良いのである。
(それだけじゃないですね。前半戦でも気にはしていましたが、やっぱりこの人のオーラはどこかおかしい。能力を使う時にオーラと一緒に霊力まで噴き出しています。この特徴、確か本家の資料室を整理していた時に、初美ちゃんが見つけた退魔士の・・まさかこの人、半人半妖!?)
半人半妖。霞の推察通り、豊音は妖怪の血と人間の血のサラブレットである半人半妖であった。何故豊音がそのような存在なのか?その理由として、豊音の先祖はかつての退魔士であり、今の九州地方を中心に活動していた。しかしある時、1人の退魔士が退魔の力を強める為に妖怪と交わる禁忌を犯し、結果として半人半妖の子を産みだす事となった。この事実に当時の退魔士達は激怒して、禁忌を犯したその退魔士を遠野の地へと追放したのである。その時に半人半妖の子供も一緒に遠野の地へと送られ、そのまま山の奥で細々と暮らしながら代を重ね、結局豊音の母の代まで山奥で暮らしていたというのが、姉帯家の大まかな歴史である。
この事実を豊音本人は知らず、知っているのは、今もなお山奥に籠っている豊音の母と、宮守女子麻雀部の顧問である熊倉トシの2人だけであった。
「チー!」
(鳴くたびに霊力がどんどん強くなっていってる!姉帯さんはこのまま単騎待ちの能力だけで押し切るつもりね。ならここは!)
取り合えず緑一色を目指していた霞だったが、ここで作戦を変更。この局は豊音にアガってもらい、少しでも咲の点棒を減らす作戦に切り替える。最初は豊音から倒す腹積りであったが、4校の点差がほぼ平らになってしまった以上、もう形振り構っている状況ではない。恐ろしいものは、霞の意思を汲んで字牌をそれぞれ一つずつ、霞の手に集め始めた。
(これである程度は姉帯さんの鳴きの手助けが出来るわね。末原さんはともかく、咲さんの手牌のオーラは整いつつあるわ。間違いなく1向聴、でもオーラの大きさはそこまで無いわね。ただの全帯么九《チャンタ》かしら?なんにせよ、もう時間が無い。ここで姉帯さんに親を続けてもらわないと厳しいわ。)
それからの霞は咲と豊音の手牌のオーラにずっと注意を続けていた。豊音がいつでも単騎待ちに移行できるように、咲が聴牌した時にすぐ対処できるように。そしてその忍耐が報われる時が来た。
「チー!」
豊音が鳴く、これで3回目の鳴き。
(よし、姉帯さんの方が早い!そして残った手牌から感じる字牌の大きな気配!そして河に落ちている字牌から考えて、姉帯さんの持っている字牌はおそらく・・コレ!)
霞が中を河へ落とす。その牌を豊音は
「カン!」
まさかのカン!残念ながらドラは乗らなかったが、これで単騎待ちに移行する事が出来た。待ちは七萬、自模れば中、混一色の3200ALL、ロンなら7700の親連荘である。
(ふふ、後は姉帯さんの能力で咲さんが直撃を喰らうか、それとも姉帯さんが自模るか。どっちかしらね。)
自身が豊音の能力の対象外だと、霊力の流れから理解していた霞は、もうこの局を豊音が制する事を確信していた。後は豊音がどっちのアガり方をするのかだけを見守っていればいいと思っていた。それはこの卓に着いていた末原と豊音自身も同様であった。ところが・・
(はぁ、この局は宮守の能力勝ちか。まぁ・・しゃあないか、所詮私は凡人やしな。せめて私が振り込まないように祈って牌を捨てるだけ・・え?)
ここで末原、まさかの白を引き聴牌。しかもこの手!筒子メインの混一色であった![123456789 99 白白]北
(ここで聴牌!?・・けどなぁ、確かに白、一気通貫、混一色の跳満でロンなら12000点やけど、相手はあの宮守やで?いくら手が良いからって馬鹿正直に張ったところで、次巡でアガられるのは確定してるようなもんやし。やっぱここは下りで・・ん?)
末原、何かに気付く。
(・・あれ?宮守のカンで開かれたドラ表示牌が8筒?・・私の手牌の9筒は3個。てことはドラ3?じゃあ16000の倍満手?・・あ!)
末原、さらに何かに気付く!
(・・ここでもし、さっきの宮永みたいにリーチ、1発が乗れば、24000の3倍満!また1位に返り咲く事が出来る!)
しかしそれはあまりに上手く行き過ぎた場合の話。そう思った末原は一旦落ち着く。
(・・いや落ち着け私、そんな上手くいく訳ないやん。これで相手が私と同じ凡人ならともかく、相手は能力者やで?上手い手を使って躱されるに決まってるやん。やっぱここは下りや、それがええ。)
そうして白に手を掛けたその時!何故か末原の頭の中に、咲の顔が浮かんできた。
(なんや、なんで今隣に座ってる奴の顔が思い浮かぶねん。もしかしてあれか?このまま3倍満を諦めたら、宮永には出来たのに、私には出来なかったって認めるのが悔しいんか?・・アホか私は?何をそんな宮永と競う必要がある?そもそも麻雀ってそういう競技やないで?あいつが天和出来たから自分も天和出来るって言っとるようなもんやで?現実を見ろ末原恭子!私は宮永みたいな能力者とは違う!ただの凡人なんや!そう、宮永は能力を使って・・)
そこまで考えて末原はある可能性を思いつく。
(ちょっと待てや、もしかして宮永は大将戦が始まってからずっと能力を使わないで戦ってきたんか?)
そう思って今までの咲の言動を思い返す末原。確かに咲は相手を煽りまくってはいたが、能力を使ったとは一言も言っていなかった。それどころか、再序盤で末原に振り込み続け最下位まで落ちていった。その後は要所要所でアガりを取ってはいたが、結局後半戦の東4局以外は目立った活躍をしてこなかった。
(そもそも宮永は県予選の時から自身の能力を一切使わずに戦っていた。唯一能力を使った疑惑があったのも、県予選ラストの天江衣が同席した大将戦だけ。でもあれだって、宮永が特別何かをしたわけじゃない。あの猫みたいな奴が天江に点棒を空にされた後だって、あいつ自身が天江に役満をぶち当てて点棒を奪い返したんや。それでいい感じに各校の点数がトントンになったところを、宮永が天江に跳満を喰らわせてたまたま勝った。やっぱり能力を使ったとは思えん。)
以上の点から末原は、咲の能力について一つの結論を出した。
(だとしたら残る可能性は一つ。コイツは最初から能力なんて持ってなかったんや!全ては生まれ持った天性の直感力!そしてそれを雀荘荒らしによって極限まで極めたんや!だから能力者相手にも全く引けを取らないんや!)
末原の推理は全く持って的外れであるが、その間違った推理を末原が展開する事が、咲の狙いでもあった。
(間違いない!だから私に噛みついてきたんや!宮永は私が同じ無能力者なのに、能力者から逃げる事だけを考えて麻雀してるのが気に入らなかったんや!だから私にわざとらしく振り込んで戦いに参加しろと間接的に迫ったんや!これだけ点棒があるんだから能力者に臆せず戦えって!・・そして前半戦終了時のあの好意的な台詞、わ、私のまっすぐなところが好きって台詞・・///。すまん宮永、お前の想いに気付いてやれなくて。でもこっからは違う!私はこの3倍満に届く手を、下りずにアガる!アガって見せる!同じ無能力者の”後輩”が見てるんや!せめて先輩らしい事の一つや二つ!見せてやろうやないか!)
この末原の推理は穴だらけである。咲に能力が無いのなら、東4局の豊音の先負を、咲はどうやって無効化したというのか。しかし、咲のオーラに充てられて、勝負に熱くなっている末原はこの事に気付かない。そのまま熱くなった末原は、自身の点棒ホルダーに手を伸ばし、
「リーチ!」
自信満々にリーチをかける。一見無謀にも思えるこのリーチであったが、普通の麻雀ならそんなに悪くはなかった。豊音の鳴いた牌はほぼ萬子、つまり豊音の待ちは萬子か字牌のどっちかだというのがバレバレであった。そして末原がリーチの際に捨てた北であるが、これも既に場に3枚出ているため、ほぼ安全牌であった。故に能力が絡んでいなければ、そこまで悪いリーチではないのだ。だがしかし、今回はガッツリ能力が絡んでいる為、このリーチは悪手としか言いようがない。そしてこの時、控え室にいた姫松のチームメイトは皆が皆こう思った。
((((なに考えてんやお前ぇ!!!?))))
動揺したのは姫松のチームメイトだけではない。同卓していた霞と豊音も当然驚いていた。
(えーー!?もう訳分かんない!?さっきは宮永さんに先負を無効化されちゃうし、今度は末原さんが私の友引を破っちゃうの!?でも特にそういったオーラは感じないし、他の2人も私の邪魔をするような素振りはない。・・もしかしてただのハッタリ?)
(これは咲さんのオーラによる誘導!このまま末原さんに大物手をアガらせて、また1位に押し上げるつもりね!しかも今度は姉帯さんからの直取り!でもちょっと待って、今は後半戦の南1局。ここで姉帯さんが落ちて末原さんが1位になれば、後は咲さんを落とすだけで済む!例え落とせなくても、このまま逃げ切れば2回戦を2位抜けする事ができる!当初の予定通り末原さんを1位にしたまま!・・仕方ないわね、ここで姉帯さんには落ちてもらうとしましょう。)
漁夫の利を狙う事にした霞は、いつも通り恐ろしいものにその意思を伝えて、豊音の自摸運を出来る限り悪くしようとする。・・ところが、
(・・え?恐ろしいものが動かない?)
いつもなら言う事を聞くはずの恐ろしいものが、今になって霞の言う事を無視し始めたのだ。急いで霊力やオーラの流れを確認するが、特に恐ろしいものに干渉するような動きは見られない。同様に恐ろしいものも、霞の頭上で雀卓上の霊力の流れをじっと見ているだけで、何もしないでいた。
(どういう事?もしかして恐ろしい者との契約違反を知らず知らずのうちにしていた?・・いえ、もしそうなら私の身体を乗っ取って好き勝手に暴れているはず。じゃあ何?対局している誰かが気になるの?でも恐ろしいものの興味を引く存在なんて、オーラのスペシャリストである咲さんか、かつて追放された退魔士と霊力の癖が似ている姉帯さんくらいしか・・まさか!?)
もう一度恐ろしいものの方を見る。間違いない、恐ろしいものは豊音の友引の霊力に惹かれている。霞がその事に気付いたと同時に、頭の中に恐ろしいものの思念が流れ込んできた。
(アア・・アイタカッタ、アイタカッタ。・・ワガイトシゴ。)
その言葉を最後に恐ろしいものは霞の元を離れ、代わりに豊音に取り憑いた。突然の恐ろしいものからの解放に、霞は脱力して雀卓に突っ伏しそうになる。反対に恐ろしいものに取り憑かれた豊音は、外からの大量の霊力の供給を受けて元気に満ち溢れていた。
「っ!?・・っはぁ、はぁ、はぁ。」
「ちょ、おっぱ・・永水の大将さん、大丈夫か!?」
「だ、大丈夫です。少し疲れただけです。」
(・・なんや、もしかして能力の使い過ぎでついにバテたんか?)
突然の対戦相手の息切れに、つい反応してしまった優しい末原。そんな末原とは対照的に、咲は豊音の方に楽しそうな笑顔を向けていた。
(わーお、まさかこんな事になるなんて、・・やっぱり麻雀は面白い。)
豊音の変化にワクワクし出す咲。そんな咲からの期待を向けられた豊音は、唐突な自身のパワーアップに戸惑っていた。
(な、何これー!?なんか凄く気分が良いんですけどー!?でも誰が・・?)
パワーアップに内心はしゃぐ豊音であったが、誰がこのような事をしたのか分からずに、一抹の不安を抱えていた。そんな時、
(・・ワガイトシゴ、ワタシガツイテイマス。トモニマイリマショウ。)
豊音の頭の中に、声が響くのであった。