雀荘荒らしの咲   作:ロクナナエイト

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Q.約1万文字だけど、長くない?
A.すいません、今後は6000~7000文字を基準に投稿しようかと思います。


豊音と二十面子の出会い2

 

 

「まずは倒れている人の救助が先かな。」

 

「え?・・え?」

 

(不審者が何かしようとしてる!?怖いよ!?誰か助けて!?)

 

 この時の私は、みんなが倒れたショックで幼児退行みたいな症状まで発症してて、もう自分1人じゃ何もできないような状態だったなぁ。

 

「取り合えず・・」

 

 パチンッ!

 

 不審者の見た目をした少女が指パッチンするのと同時に、この部屋全体に温かい何かが満ちた。その何かが私やみんなを優しく包み込んだ結果、倒れているみんなの呼吸がだんだん楽になっていって、それを見た私も少し落ち着いた。

 

「これで取り合えず衰弱死する事は無くなったね。さて・・」

 

 一仕事終えた少女は、この事態の元凶である私の元へと歩み始めた。

 

「貴女は、この人達の知り合いですか?」

 

「え!?・・は、はい!?」

 

 反射的に返事をした。先程の少女が使った能力が何かは分からなかったけど、能力の効果から、たぶん悪い人じゃないと思ったので、一旦はそのまま少女の言う事を聞く事にした。

 

「じゃあ、この人達とは仲良しですか?」

 

「はい、出来ればずっと一緒に居たいくらい・・です。」

 

「あーなるほど、それで暴走してるんだ。いやでも・・この感じ、暴走というよりも本来の使い方がこっち?」

 

「・・?」

 

「・・えっと、貴女って能力とかオーラとか、オカルトって信じたり?」

 

「っ!はい!私もここのみんなも能力に関しては普通の人より詳しいと思います!」

 

「おお、それはありがたいですね。では率直に言いましょうか。今この場で起きている最悪の事態、それは貴女が原因です。」

 

 その宣言に少しばかり動揺して泣きそうになった。それも、みんなに言われるのならともかく、こんな明らかに不審人物の特徴をした女の子に言われるなんて・・と、みんなを助けてくれた恩人に対してすごく失礼な事を考えていた。

 

「それで、この事態の解決を図る為に貴女に1つお尋ねします。本当は能力者相手にこのような質問をするのはご法度なのですが、事態が事態ですのでご容赦を。・・では聞きます。貴女がこの事態を引き起こしたであろう能力について、詳しくお聞かせください。」

 

 その質問に答えようか一瞬迷う。塞曰く、見ず知らずの相手に能力を教えるのはご法度である、特に相手が雀士であるのなら尚更だ、と。確かに私達はインターハイの団体戦で良い結果を残したいから、こうして練習しているし、他の高校の人達に手の内を知られないように努めていたわけではあったけど、さすがにこの非常時にそんな事は言っていられない。塞も許してくれるだろうと、私は自身の能力を明かす事にした。

 

「えっと、私が使ったのは仏滅っていう能力で、麻雀での効果は相手の配牌を物凄く悪くする事です。」

 

「へー、なかなか使い勝手の良さそうな能力ですね。じゃあ麻雀以外で使ったらどうなるのですか?」

 

「え!?いやその、諸説あるんですけど、仏滅の元々の漢字は虚亡と書いて”勝負なし”という意味があったらしくて、私の能力はそれが一番近いなって思ったらしいので、先生が仏滅って名前を付けてくれました。麻雀以外で使ったら、そもそも勝負にすらならない、という状態まで相手を追い込むんです。だいぶ昔に人に向かって使った事がありましたが、その時は相手がこっちの事を絶対に勝てない相手だと思い込んで逃げていきました。でも今日はなんでこんな事に・・」

 

「・・なるほど、分かりました。では最後に、貴女は今能力が思い通りに使いこなせていない状態なのですが、使いこなせるようになりたいですか?」

 

「っ!はい!完璧に使いこなせるようになって、みんなに謝りたいです!そして・・もう一度みんなと一緒に遊べるようになりたいです!」

 

 その言葉を聞いて少女の眉が笑う。おそらくマスクの中はすごく良い笑顔なのだろう。

 

「分かりました。ではその方法を教えましょう。」

 

 そう言うと少女は床に蹲っている私の手を優しく取ると、私の身体の中にエネルギーのような何かを流し始めた。

 

「方法を伝える前に言っておきます、貴女のオーラ・・というより霊力ははっきり言って異常です。普通の能力者なら気力をオーラか霊力に変えたり、あるいはそのまま能力を発動するのに使ったりするのに対して、貴女の身体は何故か、一旦霊力に変換してから能力を使うという手順を取っています。これでは霊力に変換する時間と手間が無駄です。でも貴女の身体にとってはそれが普通の事で、つまるところ、霊力でなければ能力を発動できない何かしらの”縛り”が、貴女の中にあるのでしょう。」

 

 少女が分かりやすく私の身体の解説をしていました。でも残念な事に私はこの時、手から入ってくる温かい力が気になって、あまり話が頭の中に入ってきませんでした。

 

「ですので、私は能力を制御する方法をいくつか知っているのですが、そのほとんどが効果が出ない可能性が高いです。」

 

 でも最後の部分だけは何故かちゃんと聞き取れて、それを聞いた私は大いに焦りました。

 

「そ、そんな!?じゃあどうする気ですか!?」

 

「落ち着いて下さい。私は知っている方法のほとんどが駄目だと言っただけです。全部駄目だなんて言ってません。」

 

 少女の若干の苛立ちを感じ取った私は、ここは一旦落ち着こうと思い直し、大人しくなって少女の手を握り直した。

 

「・・分かりました。じゃあこれから何を?」

 

「・・これからする事を物凄く簡単に言うと、私の小手先の方法では対処できるか不安なので、貴女自身に今この場で成長して頂こう、という事です。」

 

「・・へ?」

 

「私のオーラによる観察の結果、貴女は自身が持っている能力に対して精神が未熟過ぎます。要は貴女からその能力を使いこなす”覚悟”がまるで感じられないという事です。普通の能力者なら、能力の覚醒に伴っての友の喪失、肉体への障害、社会的孤立などの経験を経て、初めて能力を使いこなす覚悟が決まります。能力を持ってしまった以上、その能力と一生付き合って生きていかなければいけない。その為には命を賭けてでも使いこなす必要がある!という覚悟です。今までの貴女に、そんな覚悟がありましたか?」

 

 そう聞かれてハッとする。確かに私が持っている”六曜”の力は生まれつきのモノだった。物心が付く前から当たり前のようにあって、特に制御の訓練をするなんて事もしてこなかった。だって暴走した事なんてさっきまで無かったから。でも今は違う、自分でもよく知らない力を使ったせいで、みんなが死にかけている。というより、この人がいなかったら、間違いなくみんなを殺してた。・・そして後を追っていただろう。

 

「・・それは駄目です!私はみんなとずっと一緒に居たいだけ!みんなを殺したいなんて以ての外!」

 

 質問を無視しての、私の突然の独白に、何故か少女は満足げに頷いた。

 

「OKです!では貴女の中のオーラを目覚めさせてあげます!」

 

 そう高らかに宣言するのと同時に、少女は握っていた手から流し込んでいたエネルギーの量をさらに増やしだした!その濁流の如きエネルギーの波は、私の中の何か大事な部分に入り込んで、少女の声を本能的に理解できるよう手助けをしてくれた。

 

「「「想像して下さい、最高の自分を。」」」

 

 頭の中で少女の声が反響、いや木霊する。想像すると言ってもどうすれば良いのか・・取り合えず目を瞑って自分の姿を想像してみた。すると、頭の中にもう一人の自分が立っているイメージが沸いた。その自分は部室でみんなに囲まれて、嬉しそうに笑っている。それから数秒して、唐突に部室が森になり、みんなの前に熊が現れる。熊を見たみんなは、怯えて私の後ろに隠れてしまった。そんなみんなに振り返って私は優し気に微笑むと、熊の方をまっすぐ凝視した。それから一瞬、熊は泡を吹いて絶命した。熊を視線だけで殺したのだ、当然みんなから怖がられると思っていたけど、逆にみんなは私に感謝している。もちろんそこに相手を利用して喜ぶ邪悪さは全くなくて、そんなみんなの純粋な笑顔に囲まれている私には、何故か角が生えていた。

 

「・・っ!?今のは!?」

 

「「「見えましたか?」」」

 

「・・私がみんなを助けて、助けた私は嬉しそうで・・でも角が生えていて・・。」

 

「「「ならそれが、貴女の無意識の理想の姿です。」」」

 

「え!?」

 

「「「貴女が何者なのかは私も分かりませんが、貴女の本質は間違いなく鬼や物の怪の類のもの。貴方は今までその力を無意識に任せて使っていた。だから今回も無意識が能力を使って貴女の仲間を殺そうとした。」」」

 

「なっ!?そ、そんな・・私が・・?」

 

「「「貴女はそこで転がっているみんなを愛していた。そんなみんなとずっと一緒にいたかった。でもそれは無理だって分かっていた。だから殺してみんなの魂だけでも自分の物にしようと無意識が判断した。そういう事だと思います。」」」

 

 少女の言葉にまたもやショックを受けてしまった。私がみんなを無意識の内に殺そうとしていたなんて・・でも確かにその気はあった。というより昨日1人で麻雀牌を何時間も並べている時に思ってしまったのだ。

 

(もしみんなと離れ離れになる事になったら、その時は”やって”もいいよね?だってもう独りは嫌だもん。そうだよ、私の”中”でみんなを飼ってあげれば、みんな幸せだよね?・・・・・え?今私・・中って何?)

 

 なんて冗談めかしで思った事。あの時はみんなと会えない辛さが変な妄想をさせたと思っていたけど・・本当だったんだ。私は無意識の内に知っていたんだ、自分の能力でどんな事が出来るのかを。

 

(もしかして、仏滅でみんなを衰弱死させた後、友引でみんなの魂を私の中へ幽閉しようとしていた?)

 

 無意識の私が何をしようとしていたのか、自分の事だからスラスラと予想がついていき、段々自分の能力が怖くなってきたところで、

 

「「「弱気にならないで、確かに今までの貴女は自身の無意識に遅れを取っていました。でもこれからは違います!今の貴女は自分を知った!なら後は進むだけ!道は私が分かりやすく照らしてあげます!」」」

 

 頭の中に響く少女の力強い声。その声に乗って流れてくる少女のエネルギーは、炎の如き熱い想いを伴って、私の中の無意識や恐怖といった存在を、明確に浮き彫りにしてくれた。

 

「「「集中して、無意識の貴女に貴女自身を重ねて・・まず最初に、貴女はみんなと一緒にいたい?」」」

 

 その問いに心の中で”はい!”と返事をすると、さっきと同じように、私が部室でみんなと一緒に笑っている無意識の自分のイメージが沸いた。ただ、さっきと違っているのは、無意識の自分が私の方をじーぃっと見つめているのである。まるでTV画面に映っている人が、視聴者の方を見て笑うように、私の方をただ見つめているのである。

 

「「「じゃあ次に、無意識の自分と貴女自身の違いは何?」」」

 

 違いは何?・・と聞かれても、見た目だけなら角以外は自分と全く一緒で、違うとすれば、それは中身?

 

「角と、な、中身・・だと思います。」

 

「「「具体的には?」」」

 

「無意識の私は熊を殺しましたが、私なら殺したりしません。追い払うか、可能なら友達になりたいです。あと本物の私に角は生えていません。」

 

 そう答えた途端、無意識の私が恐ろしい形相になって私を睨んできた!?しかもみんなを振り払って、どんどんこっちに近づいてくる!?

 

 無意識の私がズンズンと床音を鳴らしながら近づいてくる姿に恐怖した私は、急いで頭の中のイメージを消そうとしたが、

 

「「「消しては駄目です!それと本物とか言うのも駄目です!今の貴女も無意識の貴女もどっちも本物です!そして無意識の貴女に一見無意味に思える角が生えているのは、その角が!貴女が生きる上で酸素と同じくらい大事な物だからです!安易に要らないなどと思わないで下さい!」」」

 

 頭に響く少女の解説を聞いて一瞬戸惑ったけど、すぐに納得して気持ちを切り替えた私は、無意識の自分に向き合った。向き合うと同時に周囲が暗くなって、完全に無意識の私と2人っきりになった。

 

(無意識の私、あの人の言った事は本当なの?私にはその角が必要なの?)

 

 迫りくる無意識の私に、真正面に向き合って語り掛ける。無意識の私、いや、私の半身は、コクリと頷いた。

 

(・・分かった、ならその角は受け入れるよ。だからお願い、自分の欲望の為だけに、何かを傷つけるのだけはやめて!今はみんなが離れていかなくても、そんな怖い事を続けていたら、いずれ恐怖が私達を引き裂く事になっちゃうよ。それは嫌でしょ?)

 

 こんな感じで良かったのだろうか?私の半身が、この言い分に納得したのかは分からなかったけど、私の想いを聞いた半身は、穏やかな顔になって幽霊のようにスーッと薄くなったかと思うと、そのまま私の方へ歩み寄り、私に身体を預ける形で倒れこむ。

 

(うわっ!?ととっ!?)

 

 思わず抱きしめようと手を伸ばすが、手が届く前に、半身は私の中へと溶けて消えていった。

 

(・・え?これ・・どうなるの?)

 

 そう思った瞬間!

 

(ぐ!?頭が!?割れそうに痛い!?痛いいたいイタイ!?)

 

 ものすごい激痛が走った、思わず顔を伏せる。痛みはなかなか治まらず、次第に耐えられなくなって、私は収まらない頭痛から逃げようと必死に身体をくねらせた。当然握っていた手を離しそうになるけど、少女の方がガッチリと捕まえていてくれた。さらに私の中に流れるエネルギーに何かしたのか、エネルギーが頭の方へ流れていく感じがして、途端に痛みが弱くなった。でも痛いのには変わらないわけで、尚も続く痛みに耐えかねていると、少女の声が力強く頭に響いた。

 

「「「貴女は自身の能力のコントロールを無意識から託されました!その痛みは貴女が能力を理性でコントロールし始めた成長痛のようなものです!」」」

 

「成長・・痛・・?」

 

「「「貴女は今、霊力の代わりにオーラで能力をコントロールしようとしています!どうも貴女の身体は、霊力以外での能力の使用を酷く拒む体質らしく、燃料を霊力からオーラに代えたせいで不具合を起こしている状態です。」」」

 

「つ・・つまり・・どう・・すれば?」

 

「「「もう一回イメージして下さい!今度のイメージは、自分自身を縛るイメージです!鎖でもロープでも何でもいいので、とにかく自分の能力を弱らせる事をイメージして下さい!」」」

 

 少女のアドバイス通りに、まずは理想の自分を思い浮かべる。すると何故か、角が生えた自分が浮かび上がった。無意識を受け入れた影響だろうか、この時はただただ頭が痛かったので、あまり深くは考えなかった。そして次に、封印する場所を思い浮かべた。場所は神社の中の本殿、中心に自分が立っていて、周りには蝋燭が揺らめいている。

 

(よし・・そのまま・・座って・・)

 

 そうイメージすると、頭の中の私は大人しく座ってくれた。座った私は、そのまま目を閉じて瞑想に入った。そしたら後は神社の扉を閉めて、扉の前に立派なしめ縄を飾る。最後に京都にある千本鳥居をイメージする、途端に大量の鳥居が降って、そのまま地面に刺さった。最後にそれらを潜る様にして神社から離れていく。段々と神社が遠のいていき、完全に見えなくなった所でイメージは消えた。それからは暗い静寂が続いた、とそこで、

 

「・・あれ?頭痛が治まってる?」

 

 あれだけ辛かった頭痛が嘘のように消えていた。戸惑う私に、少女が道を照らした。

 

「「「おめでとうございます。貴女は自分の能力を弱体化させる事で、理性で操れるようになりました。さっそく能力を使って、貴女の無意識が奪った生命力を皆さんに返してあげて下さい。」」」

 

 頭痛が治まって疲れがどっと押し寄せてきていた私は、少女に促されるままに能力を操作してみようとする。

 

「えっと、こうかな?」

 

 自分の中の・・何か暖かい物を・・こう・・外へ。

 

「「「うーん、全然駄目ですね。弱体化させてこれですか、これは前途多難ですね。」」」

 

 その言葉に少しムッときたので、今度は身体全体に満ちる少女のエネルギー事、外へ一気に放出する事をイメージした。

 

「「「そうそうそんな感じです・・やっぱり素質だけなら一流ですね。では今の感覚を忘れないで下さい、貴女が生まれつき得意な霊力も、これから教えるオーラも、身体から放出する事に変わりはないんですから。」」」

 

 その言葉を最後に少女は私から手を離す。途端に私の中を通っていたエネルギーの流れが途切れ、それにつられて意識も飛びそうになって、慌てて意識を集中させたから気絶はしなかったけど、身体はバタリと後ろに倒れそうになる。

 

「あ・・」

 

 情けない断末魔を上げながら、ゆっくりと景色が上へ上へと昇っていく。このまま天井全体を見上げる事になると覚悟したその時、

 

 ポスッ!

 

 と、誰かが後ろで受け止めてくれた。

 

「え?」

 

「お疲れ様です。よく頑張りましたね。」

 

 振り返ると少女が、まるで私が倒れるのを分かっていたかのように、背を支えてくれていた。

 

「ほら見てください、倒れている皆さんが目覚めますよ。」

 

 そう言って正面を見るように促してきた。言われた通りに振り向くと、シロも塞もエイスリンも胡桃も、みんな目を覚まして起き上がろうとしているところだった。

 

「貴女が皆さんを救ったんですよ。」

 

 ・・それは明らかな嘘だった、私はすぐに訂正しようとした。

 

「・・違いますよ、私はただの殺人未遂犯で、殺人を犯す前に貴女が止めたんです。みんなを救ったのは貴女です。」

 

(そう、本当ならそうなるはずだった。この人が運良く現れなかったら・・私はみんなを殺してた。やっぱり先生の言う通りだった、先生はこうなる事が分かってて、だからあんなにきつい言い方をしてくれたんだ。それなのに・・私は・・)

 

 騒動が終わって、改めて自分がやった事を思い返した私は、酷い自己嫌悪に陥ってた。

 

「・・まだ出会って10分位しか経ってないのですが、不思議なものです。私は背の高い貴女が、思ったよりも子供じみている事に何故か納得しています。」

 

 そう言うと少女は私を後ろから抱きしめてきました。

 

「姉帯豊音さん。」

 

「っ!?どうしてわたしの名前を!?」

 

「貴女に私のオーラを流し込んで循環させていた時に、貴女の記憶が少しばかり見えてしまいました。」

 

「っ!・・そう、だったんですか。」

 

「はい、貴女がずっと孤独で寂しかった事、能力を使える相手に出会えず退屈だった事、みんなと出会って嬉しかった事・・自分の生まれに疑問を持っていた事。」

 

 少女の呟きを1つ1つ噛み締めながら頷いていく。3度目の頷きで頬を涙が伝った、気づけば何故か泣いていた・・どうして?私は大好きなみんなを殺さずに済んだのに・・これ以上何を?

 

「もういいんですよ、豊音さん。」

 

 少女から白いオーラが放たれる。オーラは翼のように広がりながら、私と少女を包み込んでいく。

 

「貴女は独りに慣れ切ってしまっていたんです。もちろん独りでいる事は決して悪い事ではありません。それに貴女の場合はどうやら複雑な家庭のようですし、正直貴女が能力者じゃなかったら何も問題は無かったと思います。でも貴女は能力者・・というより魔の存在に近いです。」

 

 魔に近い・・その言葉でただ涙を流すだけだった私が嗚咽を始める。私はやっぱり人じゃないのだろうか?みんなと一緒にいちゃいけないのだろうか?

 

「ふふ、大丈夫ですよ豊音さん。今日も合わせてあと3日、無理すれば4日の間に、貴女をそれなりのオーラ使いにしてみせます。そうすれば、今までと同じようにとまではいきませんが、能力だって自由自在に使えるようにもなります。それになにより・・貴女はそこにいるみんなと一緒にいても良いんですよ。」

 

 その言葉と同時に胸に安心感が広がる。少女のオーラが私に勇気を与えてくれる。それでもまだ不安な私は、少女の方へ思い切り抱き着いた。少女は優しく頭を撫でてくれて、それがまた幼いころにお母さんに甘えていた時のような気分になって・・私は少女の胸の中で大泣きした。

 

 これが私と二十面子さんとの運命の出会い。

 

 それからの3日間、二十面子さんは毎日朝8時に雀荘に来てくれて、私達みんなの麻雀の腕を磨いてくれた。能力を使える人には、能力者用の訓練もしてくれた。ちなみに学校のある日はお昼の3時には既に雀荘に来ていた。ついでにまだ中学生の二十面子さんに、学校に行かなくていいのか聞いたところ、

 

「一日くらいサボったって問題ありません、私は優秀なので。」

 

 と自信満々に返してくれた。私も実際そうだと思う。

 

 そして二十面子さんとの最後の対局、結局この時も全く勝てなかったけど、私のオーラと能力の精度は、最初の頃に比べてかなり上達していた。そんな私の成長を見た二十面子さんは、

 

「ふふ、もう私が教える事は何もありませんね、後は私が教えた練習法を定期的にやっていれば、自然と無意識に打っていた頃と同じくらいの力が出せるようになるでしょう。もちろん、誰にも迷惑をかける事なく、完璧に。」

 

 その言葉を最後に椅子から立ち上がってロングコートを羽織りだす。二十面子さんはそのまま雀荘を後にしようとしている。普通なら、二十面子さんにお礼を言って気持ちよく送り出すべきなのだろう。でも私は・・

 

「いや!行っちゃヤダ!」

 

 子供のように駄々をこねて後ろから抱き着いた。今ここで二十面子さんを離せばもう二度と会えなくなる!私と違って二十面子さんは日本全国を飛び回っている身なのだ。もしかしたら私の事などすぐに忘れてしまうかもしれない!それに、私にとって二十面子さんは、もうとっくに私達宮守の6人目の麻雀部員なんだよ!それだけじゃない!二十面子さんは私の先生で!家族で!・・お、お母さんで・・私の愛しい人///。だから・・失うのは・・嫌。そんな恐怖に支配されていた私だったけど二十面子さんは、

 

「豊音さん、私だって貴女達と離れるのは寂しいです。私にとって貴女達は、大切な教え子のような存在なので。」

 

 その言葉にまた泣き出してしまった私、いや私だけじゃない。エイスリンも塞もシロも胡桃も、みんな泣いている。だって私が二十面子さんに抱き着いている後ろから、鼻を啜る音が聞こえるもん。

 

「だから、最後に貴女達に宿題を出します。」

 

 宿題という単語に泣きながら疑問符を浮かべるみんな。でもその宿題は、私達の大きな希望となった。

 

「来年、いやもう今年ですね。今年の夏のインターハイ本戦に、私は裏方として大会に参加します。ですので皆さんは、今年の春の予選を突破して岩手の代表になって下さい。そうすれば、必然的に私に会える事ができます。」

 

 その内容にみんなびっくりした。でもその驚きはすぐに消えて、もう一度二十面子さんに会える事が出来る可能性に、みんなは湧き上がった。

 

「ほ、本当ですね!本当に、本当に!」

 

 二十面子さんに再び会える可能性に興奮していた私は、抱き着くのをやめて、代わりに肩を掴んで思いっきりゆすった。

 

「はい、本当です。ですので皆さん!」

 

 二十面子さんが号令をかける。毎日みんなが練習を始める時に気合を入れる為にやっていたやつだ!ゆするのをやめて背筋をピンと伸ばす!

 

「これからはインターハイ本戦に進むのが当たり前だと思って練習に励むこと!二度と『自分は役立たずだ』なんてネガティブな発言はしない事!いいですね!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

「・・もしインターハイで優勝する事ができたら、その時はまた一緒に、和風定食屋でお祝いしましょう。」

 

「「「「「っ!はい(涙声)」」」」」

 

「以上!解散!」

 

 そう言って今度こそ、二十面子さんは行ってしまった。残された私達は、みんな揃ってその場で泣き腫らした。

 

 

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