雀荘荒らしの咲   作:ロクナナエイト

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Q.誤字脱字が多すぎない?
A.本当にすいません。リアルが一段落したら、直すと思います。・・たぶん。


六曜の本来の力

 

 

 後半戦南2局 

 

    宮守女子  91700 東

    姫松高校 127500 南

    清澄高校  93700 西

    永水女子  87100 北

 

 

 まず最初に変化に気付いたのは咲、数秒差で遅れて霞が気付き、最後に手牌を確認して末原が気付いた。

 

(これは!手牌が全てバラバラで、牌の一つ一つに霊力がべったりとくっついている!これが姉帯さんの場の支配の全力!)

 

 霊力をふんだんに使った場の支配、その霊力の多さに最初こそ霞は驚嘆したが、しだいにそんな霊力のごり押しとも呼べるやり方に少しの疑問を抱き始めた。

 

(でも待って・・今この場で能力を使えるのは姉帯さんと咲さんだけ。私は恐ろしいものに霊力を持っていかれてガス欠の状態だし、末原さんに至っては能力の存在を知っているかどうかすらも怪しい・・じゃあこの霊力の量は何?咲さんの場の支配に拮抗する為?でも咲さんは特に能力やオーラを使っているわけでもない。じゃあどうして?)

 

 普段から霊力やオーラを可視化できる霞は、いつも通りに雀卓の霊力の流れを確認する。やはり場を支配しているのは豊音の能力で、それを恐ろしいものが後ろから補強しているような状態だった。特に咲の霊力やオーラは見られない。

 

 そんな霞とは対照的に、豊音は咲のオーラによる不意打ちを警戒していた。今回初めて咲と同卓した霞と違って、豊音は何度も咲と同卓している。故に咲のやり方も知っていた。

 

(宮永さんのやり方、それはオーラの砲弾を使った支配の破壊。)

 

 豊音は7か月前の咲との闘いを思い出していた。当時の咲が雀卓に座って最初にやる事といえば、オーラを自身の指先へと集中する事である。そして対局が始まって、誰かが能力を発動する時に咲は動く。指先に貯めたオーラを相手の方へ向けて放ち、能力発動の出だしを挫く。挫かれた能力は効果が弱体化して簡単に破られるようになる。

 

 もちろんそれは場の支配でも例外ではない。場の支配の場合は、指先10本の霊力を全て打ち出して、雀卓の中央で爆破。雀卓を囲っている場の支配は爆破の衝撃により、音を立てて崩れ去る。豊音はこの戦法を今まで一回も破れた試しがなかった。しかし、

 

(今回はそうはいきませんよ!今までは自分の能力をコントロールする事にばかり集中していたから、貴女に遅れをとっていました。しかし!今回は母上がいます!母上がコントロールを手伝ってくれている今なら、貴女の破壊弾を防ぐ事に集中できる!)

 

 恐ろしいものの力を惜しげもなく使って勝利を欲する豊音、しかしそんな豊音の警戒とは裏腹に、咲は支配を破壊しようとはせずに普通に自模って普通に河に捨てた。というより、今回咲は豊音と同卓してから一度も指先にオーラを貯める素振りを見せた事は無かった。そんな咲の様子を一通り振り返って、結果豊音は混乱した。

 

(・・あれ?何もしてこない?・・そういえば、いつもなら指先砲弾(シロ命名)で東1局から場を滅茶苦茶にしてくるのに、今日は特に何もしてこなかった。てっきり決勝までとっておく気なのかなと思ってたけど、違うのかな?・・もしかして!?実は最初から末原さんとは仲良しで、二人で結託して決勝まで進む算段を予め付けていた・・とか!?今の私と母上のように!?だから指先砲弾を使うまでも無かった!?そして今回も末原さんと協力して3倍満クラスの大物手をアガるつもりだった!?なら!)

 

 ここでまさかの咲が末原と協力していると思った豊音。何故このような少し飛躍した考えに至ったのか?恐ろしいものが憑依した結果であろうか?とにかく、一度熱く思い込んだ豊音は、咲を倒すべく新たな能力を発動する!

 

(咲さん!貴女が私にオーラの指導をしてくれた数日間!私達がインターハイの本戦まで能力を隠しておきたい気持ちを汲み取って、貴女は能力を無理やり暴く様な事はしてきませんでしたね。あの時はありがとうございました。おかげでこうしてインターハイ本戦まで能力が他校にバレる事なく、勝ち進んでくる事ができました。ですがそれもここで終わりです!貴女には六曜の全ての力をぶつけます!)

 

 そう心の中で決意すると同時に、先勝と赤口を発動した。途端に豊音の自摸には無駄自摸が一切なくなり、あっという間に三色同順の1向聴。しかもドラが3つ絡んでいた。

 

(先勝は名前の通り早い者が勝つ事を現実に反映させる能力!赤口は相手にとっての死となるものを自らに呼び込む能力!雀士にとっての死の象徴、すなわちドラ!麻雀では手牌にドラを集める能力となる!)

 

 仏滅、赤口、先勝・・能力を新たに3つも発動させた豊音、その勢いに乗る形で、自摸上がる。

 

「自摸!三色同順!ドラ3!6000、3000」

 

 このアガりが1番響いたのは、現在トップの末原。

 

(くっ!やっぱり宮守の能力かいな!他家の配牌を悪くして、自分だけ配牌を良くするタイプの場の支配か?なんにせよセコイ能力やで!これだから能力者は!もっと私らを見習って素の麻雀技術だけで勝負しろや!なぁ宮永!)

 

 相変わらず咲の事を無能力者だと勘違いしている末原は、1位のまま逃げきれそうな余裕も相まってか、このタイミングで咲にいい笑顔を向ける。それに気づいた咲は、とりあえずニコッとほほ笑んだ。

 

(ふふ、いい笑顔やで宮永。やっぱりお前は笑顔が一番似合うタイプや。サングラスなんかしないで、普通に雀荘巡りでもすればええのに。ホンマもったいないわぁ。)

 

 そんな2人のやり取りを見た豊音は、

 

(やっぱりそうだ!2人は最初からグルで私達を嵌めようとしてたんだ!最初に末原さんが宮永さんと険悪なムードを演じて、いざ前半戦が始まったら露骨な振り込み。次に休憩時間での好きです宣言!挙句の果てには今の夫婦のような笑顔でのやり取り!これは確定だ!2人はグル!)

 

 そこまで考えた豊音は次に2人がどう動くかを予測する。

 

(この2人がグルだと分かった以上、間違いなく末原さんは宮永さんを助けるために動くはず。かといって露骨な振り込みなんて末原さんは絶対しないだろうし・・やっぱり安い手で早上がりするのが一番有り得そうかな。そして宮永さんの方も間違いなく速さ優先の打ち回しをするはず。だって7か月前に言ってたもん。)

 

 7か月前・・

 

『麻雀で勝つために大事な事?まぁそんなの全部大事に決まってるんですけど・・それでも一番を決めるなら”相手が嫌だなと感じる打ち方をする”ですかね。』

 

『アイテノイヤナウチカタ?』

 

『そうです、相手が大きい役を作ろうとしていたなら、それより先に早い手でアガってしまえば良いんですよ。あと相手が親番の時とかね。とにかく相手のペースを乱すような打ち方をしつつ、自分の打ち筋を整えていくっていうのが、能力者の基本のやり方ですかね。』

 

(って自信満々に言っていた。でもその手は私に通用しない。何故なら私は今母上の霊力に守られている、指先砲弾も撃ったところで弾かれるだけ。もう宮永さんは私の能力を絶対に破れない!だけど・・私がこの局で仏滅、赤口、先勝の組み合わせを使ったのは十中八九バレてる。友引と先負も既に使ってバレてる以上、残っているのは大安だけ。でも大安の能力は守り専用、攻撃には使えない。つまり、母上の防御が破られれば、私は今度こそ本当に終わる。こっちはもう切り札を晒している状態、でも宮永さんには末原さんがいる。)

 

 豊音が色々考えている間にも時間は進む。既に全自動卓が南3局に向けて、卓の中で牌を攪拌している最中であった。ここで豊音は末原の方へと意識を集中する、すると豊音の中に、ある一つの疑惑が生まれた。

 

(・・もし、もし本当に宮永さんがどうしようもなくなったと思ったその時の為に・・末原さんはいる・・のかな?。)

 

 恐ろしいものが憑依した結果か、今の豊音にはかつての人懐っこさが薄れ、代わりに相手の本性さえも計算に入れて予測する冷徹さが備わっていた。そんな彼女は恐ろしいものと同調する事で、相手のオーラや霊力の量をかなりの精度で感じ取る事が出来るようになっていた。そしてその恩恵はさっそく現れた。

 

(今の私は母上が憑依しているおかげか、かなり調子が良い。だからこそ末原さんは能力者ではないと分かる。だって末原さんの気力が全く動いてないもん。でも末原さんは、人の中では最高峰の分析力を持っているんだね。でもその技術も宮永さんにオーラで曇らされている・・感じがする。つまり、末原さんは宮永さんに魅了されているって感じかな?じゃあ宮永さんが一方的に利用してるだけ?・・・)

 

 ここで豊音、嫌な想像をし出す!

 

(え?・・もしかして宮永さんって結構腹黒い?え?違うよね?私を救ってくれたのって、本当に貴女が親切だからだよね?もしや打算!?打算在っての人命救助だったの!?)

 

 自分と愛しい咲との出会いが虚構だったのではないかと思った豊音は、途端に恐怖で身体がガタガタと震えだす。そんな豊音に恐ろしいものがすかさずフォローに入る。

 

(ドウシマシタ、ワガムスメ、ワガイトシゴ?)

 

 恐ろしいものの呼びかけにハッと我に返った豊音は、我に返ったついでにある事を思いつく。

 

(母上!今の私は誰の能力の影響も受けていないんですよね!)

 

(?・・エエ、ワタシガマモッテイマスカラ?)

 

(なら大丈夫です。少なくとも私が末原さんみたいな事になってないって分かっただけでも良かったです。)

 

 その返事に取り合えず納得した恐ろしいものは、また豊音の後ろに憑いて戻った。

 

(・・うん、一旦この事を考えるのはやめにしよう。今は目の前の勝負に集中しないと。)

 

 嫌な想像を振り払って勝負に集中し直す。それと同時に全自動卓が山を築き、それぞれが山から牌を取って手牌を作ろうというところ。

 

(・・よし、やる事は決まった。私はこのまま能力を使って宮永さんを追い詰める!たぶん宮永さんは特に抵抗したりはしないはず。だってここまで能力やオーラをほとんど使ってこなかったんだもん。そこから決勝まで隠しておきたい魂胆が見て取れる。でも私が追い詰めれば、今度は末原さんから点棒を奪いに動くはず!そこからは私と宮永さんどっちが早上がりできるかの勝負になるね。つまり!ここからは如何に早くアガるかのスピード勝負になる!)

 

 4校の点差がほぼ均等になってしまった以上、早上がりした者が勝つ!そう考えた豊音は仏滅と赤口、そして先勝を発動させた。

 

(この3つの能力を使って早上がりで高打点の手を作る!状況に応じて先負や友引も使えるようにしておく!やっぱりこれが一番だね!)

 

 そうして豊音が場を制す中、南3局が始まった。

 

 

    宮守女子 103700 東

    姫松高校 121500 南

    清澄高校  90700 西

    永水女子  84100 北

 

 

 南3局、相変わらず3人の配牌は悪い、てんで纏まりを欠いていた。そんな豊音の仏滅の能力に、霞は観客気分で感嘆していた。

 

(やはり姉帯さんの能力は底が知れませんね。彼女が神代の巫女でないのが本当に悔やまれます。)

 

 勝負を諦めていた霞は豊音の情報収集に徹する事にした。そんな彼女のどこか諦めた表情を見て内心ガッツポーズの豊音。

 

(よし、能力はちゃんと発動している!宮永さんも何もしてこない!これはイケる!)

 

 自分の能力がちゃんと効いているのをしっかり確認して、この勝負に勝てると希望を抱いて、ようやく自分の配牌を見た豊音、がしかし・・

 

(・・え?なにこれ?)

 

 豊音の表情が瞬く間に曇る。その変化に霞も気づく。

 

(?どうしたのかしら、さっきまであんなに楽しそうにしていたのに?)

 

 そう思って霞も豊音の手牌の方を見る。すると・・

 

(え!?牌の上半分が黒ずんでいる!?どういう事!?・・まさか!?)

 

 急いで自分の手牌を確認して、豊音と同様に霞も曇る。手牌の上半分が、豊音の手牌と同じように黒ずんでいるのだ。だが霞は、この現象には心当たりがあった。

 

(これは、咲さんが3倍満をアガった時に感じたあの違和感!牌に誰かの黒いオーラが僅かに付いていたから、あの時は咲さんだと思って確認したけど、まさかここまでオーラをべったりくっつけていたなんて・・一体いつの間に?)

 

 そう、霞はオーラや霊力を視認できるため、誰かが能力を発動しようものなら一発でバレる。動きがバレるだけならまだ良い方で、オーラや霊力の流れから相手がどのような効果を持っているのかまで推測できるのが、可視化の驚異的な部分なのである。そんな霊力の可視化の監視を掻い潜っての、咲のオーラによる場の支配に霞は素直に恐れを感じた。

 

(えー、どうしよう。というより何で?いつの間に?)

 

 この急展開についていけない豊音は恐ろしいものに尋ねる事にした。

 

(母上、今この場を支配しているのは誰ですか?)

 

(ムロン、ワタシデス。)

 

(ではこの牌の変化は?)

 

(ソレハ、アノモノノ、オーラニヨル”ハイノシハイ”)

 

(牌の支配?)

 

(・・ワガイトシゴ、コレイジョウハ・・クルシイ・・)

 

(え?母上?)

 

 そう言い残すと恐ろしいものは再び豊音の背後に戻ってしまった。恐ろしいものの急変を疑問に思う豊音だったが、何故恐ろしいものが会話を切り上げたのか、場の霊力を感知してすぐに察する事が出来た。恐ろしいものが築き上げた場の支配、その支配に変化が生じているのだ。

 

(・・母上の場の支配が、破られそうになっている!?この場をドーム状に包んでいた壁が、内側から黒いオーラで押されている!?)

 

 そこまで感知した豊音は、さらに意識を集中させてオーラの流れをイメージしようと目を瞑る。途端に辺りは真っ暗になり、自分達4人が卓を囲っている姿が頭に浮かぶ。4人はドーム状の支配に囲われているが、それを内側から黒いオーラが触手のようにビシバシとドームを叩きまくって、あちこちからひび割れが発生していた。

 現状を理解した豊音は、急いでドームを補強しようと恐ろしいものの霊力に自身のオーラを絡ませようとした。がしかし、それを黒い触手が遮った。

 

(・・くっ、邪魔しないで欲しいのですが!)

 

 邪魔された豊音はやり方を変えた。今度は自身のオーラを剣のようにして黒い触手に突き立てた。だがそれは全く効いている様子はなく、逆に他の触手の注意を引いた。複数の触手が豊音の頭をグルグル巻きにして、無理やり首の向いている角度を変えようとしてくる。頑張って抗う豊音だったが、それでも触手の力は強く、触手に無理やり正面を向かされる。

 

(・・!やっぱり宮永さん!貴女でしたか!)

 

 その目線の先には、抗う豊音に不敵な笑みを送る魔王、宮永咲の姿があったのだった。

 

 そこでイメージは炎に包まれる。4人が唐突に炎に火あぶりにされるイメージに驚いた豊音はハッと目を開けた。そこにはイメージの中と同じように笑う咲の姿があった。

 

「さぁ、南3局の開始です!」

 

 そう宣言して牌を河に捨てた咲、南3局は彼女の親番であった。

 

 

つづく

 

 

 

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