A.すいません、更新頻度を重視した結果、例え話は即興の思い付きで書いてます。もっと良い例えが浮かんだら、こっそり修正しておきます。
「・・ここからは咲の独壇場か。」
「もう、勝つのは確定っすね。」
「そうだな、さて!私達もそろそろ迎えに行ってやらないとな。」
パンッと膝を打って立ち上がる加治木、次いで桃子と衣が立ち上がり、そのまま控え室を後にしようとする。そんな彼女達を慌てて久が止めに入る。
「ちょ、ちょっと待って!?まだ聞きたい事が・・」
「咲ちゃんの能力やオーラについては、もう話せる事は全部話終えたっす。」
「これ以上知りたいなら咲から許しを得てからだ、竹井久。」
咲が3倍満をアガってから十数分、3人が咲の能力とオーラを解説し終えたところであった。その内容に清澄一同はただただ驚愕するだけであったが、その話を聞いても、まだお腹一杯になっていない人物が、竹井久であった。久は肝心の咲が雀荘荒らしになった理由を聞けずじまいでいたため、3人をなんとかしてこの場に留めておきたかった。
しかし、そんな久の願いは桃子と衣に一蹴されてしまった。
「先輩、荒川さんも途中で拾わないといけないっすから、そろそろ別れの挨拶を・・」
「じゃあな、清澄のみんな。君達が宮永の期待以上の力を発揮する事を願っているよ。」
加治木の別れの挨拶と同時に桃子が能力とオーラを発動する。桃子のオーラに包まれた3人はあっという間に消えてしまった。
「おおお!私達が見ている前で消えてしまったんだじぇー!?」
「部長、どうするんです?私としては、咲さんが衣さん達に迎えを頼んでいるという点から、ここは引き下がるのが妥当だと思いますけど。」
和の指摘に少し揺れる久。しかしどうしても咲の過去を暴きたいという知的好奇心が抑えられなかった久は、
「いや!ここは引かずに押すのみよ!」
そう言って控え室の入口に陣取ってしまった。
「さすが部長!能力持ち相手にも怯まない!俺ならそんな無謀な事はできねぇぜ!」
京太郎の煽りにも聞こえる激励を受けて少し笑う久。しかしそんな久を悲劇が襲う。
「・・!?な、なに・・これ・・!?い・・息・・息が・・」
そう呟きながら苦しそうに喉を抑え始めた久。その様子を見て一早く駆け寄ろうとまこが向かうが、
ドタッ!
という音と共に久が床に倒れそうになる。幸いな事に、まこがスライディング気味に地面と久の間に割って入り、久の下敷きになったため、実際には
ボフッ!
という軽い音と少しの衝撃で済んだのである。
「う・・ぐう・・」
「久!?久!?しっかりせんか久!?」
倒れてもなお呻く久に本気で心配なるまこ、そんなまこに何処からか声が届く。
「安心しろ、少しの間河底に引きずり込んだだけだ、じきに快方に向かう。だがな竹井久、もし次に同じ事をするのであれば、今度は海底に沈める!」
そう言い残して声の主は消え失せた。本当にいなくなってしまったのか、優希がキョロキョロと確認すると、いつの間にか3人が脱いでいた靴が消えていた。たぶんもうこの部屋の中にはいないのだろう。そこまで事態を把握できた清澄の面々は、能力を使う者達との圧倒的な力の差に、ただ茫然と立ち尽くすだけだった。
清澄の控え室を後にした3人の方はというと、控え室前に陣取っていた報道陣の間を縫うようにして抜けて、今は控え室と試合会場の中間地点付近まで来ていた。
「・・うーん、まだまだだな。」
「何がだ、天江?」
「衣の河底のオーラについてだ。海底の方は物心ついた時からの能力ゆえ、扱いは完璧なのだが、肝心の河底のオーラがイマイチ上手く扱えん。」
「そうっすか?私からは圧倒的なオーラで蹂躙できている風に見えたっすけど。」
「それでは駄目だ。衣は咲が万が一暴走した時の為の”関門”なのだぞ。その関門が扉を細かく調整できなくてどうする?・・咲が熱くなった時、丁度よく熱を冷ましてやれなくては、咲の理性役として顔が立たなくなってしまう。」
咲の事で弱気になっている衣、そんな彼女を見た加治木は思う。
(ふ、あの天江衣が誰かの関門・・ストッパーとしての役割に徹するとは、やっぱり宮永は凄いな。こうも簡単に能力者の心に入り込むとは、でも私も入り込まれ、いや自ら受け入れたんだったな。)
そんなこんなで話に花を咲かせながら歩いていると、
「お、皆さんこんにちはー!」
「あ、荒川さん!どうもこんにちはっす!」
「おお、荒川。相変わらずのナース服で、なんだか安心したぞ。」
「荒川憩か、会うのはこれで3回目だったな。」
昨年のインターハイ個人戦2位の荒川憩が現れた。
「そうやねー、確か最後に会ったのは先月の28日とかやったっけ?」
「夏休みに入って1週間くらい経った頃っすね。その時に長野の古い雀荘の中で会ったのが最後っす。」
「いやー、あの時はホンマにきつかったわー。せっかくウチと宮永はんが出会ったっちゅうのに、お互い個人戦に出場するっちゅう理由で対局できひんとか、ホンマ大会本部はケチやな。」
「フッ、宮永への敬愛も相変わらずか。」
「そりゃそうっすよ!あの人がいなかったらウチ死んでたんすからね!」
「そうなのか?」
「そうっす!・・そういえば、まだ皆さんにはウチと宮永さんとの馴れ初めを聞かせて無かったっすね。」
「!?いや、別に無理して言わなくても・・」
「何遠慮してんすか加治木さん!ええってええって、気なんか使わなくて!」
「いや・・別に・・」
「さぁ!宮永さんを迎えに行く道中、たっぷりと惚気たるでー!みんなもちゃんと付いてきやー!」
「うーっす。」(平常心)
「・・うむ。」(呆れ)
「あ、ああ。」(げんなり)
___ところ変わってその頃の試合会場では、
(は、母上!?大丈夫ですか!?)
南3局7巡目、豊音が恐ろしいものを心配していた。それも当然で、恐ろしいものは自身の身体を構成している霊力を使って場を支配していた。その支配にひびが入るだけなら問題無いのだが、今発生しているのはひび割れだった。この2つの違いはドームに裂け目が出来るかどうかで通常時なら大して問題には成らないのだが、今回はそれが大問題になっていた。
少し遡って南3局の4巡目、この時までは豊音の支配はまだ効いていた。発動した3つの能力も問題なく働いていた。がしかし、ここで恐ろしいものに変化が現れる。
(グゥ!?・・コレハ・・マズイ!)
急に言葉を発したかと思ったらそれ以上言葉を繋げる事もなく、ただの独り言とも取れる内容だった。しかし豊音は彼女と繋がっている為、彼女の身に何が起こっているのかがすぐに分かった。
(母上の霊力そのものが・・漏れ出ている?)
何が起こっているのかを確認する為に、再度雀卓をイメージする。するとそこには、雀卓を囲うドームがボロボロにひび割れている様子が映った。それ自体は先ほど見た光景と大差はないのだが、さっきと違う点として、ドームをビシバシと叩いていた触手達が叩くのをやめて、代わりにドームのひび割れた部分へ触手の先端を押し付けていた。
それは黒い芋虫がドームに喰らいついている様にも見えて、一瞬恐怖で奇声を上げそうになったが、よくよく見るとそれは、ゆっくりとドームその物をドロドロと溶かしているようだった。注意深く観察してみると、豊音が触手だと思っていた黒い物体は、黒煙を纏った炎そのもので、その炎が黒煙の先端から顔を出してドームをゆっくりと高熱で溶かし始めていたのだ。
(これは・・まさか!?)
豊音は反射的に手牌を確認する。するとそこには、自身の手牌が全て炎で包まれている現状が在り、手牌の上半分は既に燃え尽きていたのか、触れた途端炭になってボロボロと零れて無くなった。豊音の手牌の萬子、筒子、索子は既に上半分が炭化してボロボロと崩れ落ちており、牌としての役割を終えていた。
(これが宮永さんのオーラの正体!?)
咲のオーラによる牌の支配、恐ろしいものが豊音に託した最後のヒントであった。その意味を豊音は、なんとなくだが理解し始めた。だがそれもフワッとしたもので、正解には程遠かった。
実はそんな豊音よりも、もっと早く現状を理解出来ている者がこの場にいた。
(これが・・咲さんのオーラ?成りたい自分像?)
霊力やオーラの可視化が可能な霞である。霞はわざわざ頭の中でイメージしなければオーラの流れを把握できない豊音とは違い、瞬き一つで視界を切り替える事が出来る。故に咲が黒いオーラではなく、真っ赤な炎のオーラを操る”紅白のオーラ使い”である事は、豊音よりも数巡前に把握出来ていた。さらにここで、豊音よりも能力者としての経験を積んでいるが故の差が露骨に現れる事となった。
(オーラは成りたい自分という理想像を現実に強制させる、人の純粋な向上心から生まれる能力の一種。本人のやる気に常に左右される為、安定して力を発揮する”遺伝や環境由来の能力”とは別のカテゴリーに分類されるもの。神代ではオーラを、非常な不安定さゆえ魔の存在に付け込まれやすい脆弱な力、として使用を禁じられている能力。
唯一特例としてオーラの使用を許されているのは、歴代の6仙女と姫様のみ。まぁ偶に全く関係ない人にも許可が下りる場合もありますが、とにかく基本は不安定で制御が難しいのがオーラの欠点。オーラを安定して使うには、常に心にブレない信念を置く必要がある。
では咲さんの信念とは一体?この炎の何処に信念が?確かに歴代の6仙女にも、魔を払う護摩の炎をオーラで再現していた人がいたらしいですが、少なくともこの炎に清廉な気配はまるで感じません。感じるのは邪魔者を排除する敵意のみ。ではあの白いオーラは一体?)
霞には見えている。咲の周りを黒煙を纏った炎達が、まるで神に祈祷の儀を捧げる巫女の如く、激しく踊り狂っているのを。そんな咲の身体を包む、甘く柔らかな白き光を放つオーラを。
(咲さんはオーラを2つ持っている・・と考えるのは些か早計でしょうか?別に理想の自分像が複数ある人は珍しくありません。ただそういう人は大抵、両方の理想を叶えようとして唯の器用貧乏の凡夫で終わるのが関の山。ですが咲さんは違います、咲さんは間違いなく一つの目的があって行動している。その為にわざわざ雀荘荒らしまでして、一歩間違えれば二度と日の当たらない人生を送るリスクを背負ってまで大金を手にしようとしていた・・あの歳で。)
そこまでは想像出来た霞だったが、そこまでだった。霞は咲の過去を知らない為、この不可思議なオーラの正体を看破する事が出来なかった。
そして2人が咲への思考に囚われている間でも、時間は待ってはくれない。
「リーチ。」
咲が点棒を場に出してのリーチ。これに思考を重ねていた豊音が現実に引き戻される。
(ここでリーチ!?なら私の先負で・・)
すでに赤口、先勝の能力で聴牌していた豊音は、ここで先負を発動して運を自分に引き寄せようとした。先程は躱されてしまったが、今は母上の支配がまだ残っている!そう考えて追っかけリーチをしようとした。がしかし・・
(・・え!?あれは!?)
先負を発動する為に点棒ホルダーを開けようとした手が止まる。ホルダーへ目線を移す時にチラと見えてしまったのだ、豊音が1巡後に引くであろう牌、それが置かれている山が・・燃えているのを。
___ところ変わって臨海女子の控え室、控え室の中では現在5人の人物がTVを見ていた。それはネリーを含む臨海女子の代表メンバー達だった。当初はこの試合に全く興味を示していなかったネリーだったが、カンドラが出現した途端にTVに噛り付き、カンドラの正体が咲だと分かった時にはめっちゃ鼻息を荒くしながら奇声を上げていた。
「はあああああああああああああああああん!!??」
『うがああああああああああ!?ど、どうしたネリー!?何があった!?』
「カ、カンドラが脱いだ!?」
『・・そうか、良かったな。・・頼むからいきなり叫ばないでくれ。こっちは廊下で両手に缶を持ちながら歩いてるんだ。肩電話しながらだと色々と・・』
「がああああああああああああああああ!!??」
『だーーもう今度は何だ!?』
「警備員がカンドラの脱いだ服を拾ってる!?」
『・・まぁ、それが仕事なら・・いいんじゃないか?』
「私もアレ拾いたい!?あわよくば着たい!?」
『分かったから静かにしてくれ。というか他のみんなは何してる?なんでお前はわざわざ私に電話を掛けてきた?』
「サトハが大将戦が始まったら電話しろって言ったんじゃん。」
『・・そうだったな、そこは私が悪かったな。だからなネリー、もう少し静かに・・』
「ほわあああああああああああああ!?カンドラが脚を組んで座ったああぁぁぁぁ!?しかも笑ってるぅぅぅぅ!?写真撮らなきゃ!(使命感)ごめん切るね!」
『おいちょ・・』
ピロンッ!
みたいなやり取りがありつつも、試合が始まればまるで借りてきた猫のように大人しくなって観戦に集中し出したネリー。部屋に帰ってきたサトハがネリーに文句を垂れるも全く耳に入らず、結局ネリーがいつもの調子に戻ったのは前半戦が終わった後だった。
「ふーーー、すっごい集中しちゃったなー。目がシバシバするよ。」
前半戦が終わって一息ついたネリー、備え付けられたソファーの上にボンッと座る。そんな彼女にサトハこと智葉が買ってきた缶を渡しながら声を掛ける。
「そうか、あの子が巷で噂のカンドラか。」
「そう!私の運命の相手にして本物の勝負師!いつかあの人の横に並ぶ為にも、今回の個人戦で優勝するのが取り合えずの目標!」
まるでわんぱく少年のように自身の夢を語るネリーに思わず笑顔が漏れる智葉。他の3人は相変わらずカップラーメンを食べたり、音楽を聴いたり、スマホを弄っていたりで慣れ合おうとはしなかった。
「そうか、出来るといいな。ところで話は変わるが、彼女・・宮永咲の能力についてだが・・」
「うん、私が知っている限りだと嶺上開花に点数調整、それに加えて1つのオーラを2つに分割する事による意識操作もできるはずだよ。」
「1つのオーラを分割しての意識操作?本当に1つなのか?」
「うん、1つだよ。これは私が直接体験した事だから言えるんだけど、みや・・さき・・カ、カンドラのオーラは相手の意識に強く作用するタイプ。」
「具体的には?(ふふ、まだお互いを名前で呼び合うほど仲が良いという訳ではないんだな。)」
「そうだね・・今回の試合を例にすれば、まず最初にみんなの前で正体を明かした時。」
「ああ、お前がめっちゃ叫びまくっていた時の事か。あれ凄いうるさかったぞ。」
「そんなのどうでもいいでしょ。それでカンドラは自分の正体を明かして、みんながカンドラに集中したあの瞬間を狙ってオーラを解放した。」
「ふーん、ん?ちょっと待て、じゃあ宮永は試合開始前から、既にオーラによる攻撃をしていたというのか!?」
「そんなの当たり前じゃない!一ついいサトハ!?サトハは確かに雀士としては優秀よ!でも私やカンドラはそれ以前にサバイバーなの!私もカンドラもいつ死ぬか分からない状況が当たり前の世界で生きてきたのよ!そんな世界に後先の概念なんかないわ!
相手に先手を打たれたら終わり。運良く逃げられても手傷を負うか、自分の領土を相手に渡す事になる!麻雀みたいに時間になったら試合開始なんていう”公平性”なんか存在しないの!そんな世界で生きてきた人のやり方を、公式の大会でやるのは卑怯、だなんて言わないでよね!」
「・・ああ、言わないよ。そもそも公式のルールブックには、能力やオーラといったオカルトに関する規定は何一つ定められていないんだ。いつ能力を発動しようが構わないさ。」
「そう、ならいいけど。とにかくカンドラは、あの一瞬で強力な黒いオーラをぶつけた。それに気付いた2人はすぐに身構えたけど、段々とオーラが引っ込んでいくのを見て警戒を解いた。・・本当は白いオーラで攻撃され続けているとも知らずに。」
「白いオーラ?・・ああ、お前がよく『もう一度あのオーラに包まれたい。』って言ってるアレの事か?」
「そう!白のオーラは(たぶん)相手を安心させたり冷静にさせたりする効果で、黒のオーラは(きっと)相手を攻撃的にさせたり威圧したりする効果がある。カンドラが黒のオーラを放った後、すぐに白のオーラも出して黒のオーラを中和させた。これがカンドラの最初のオーラ攻撃の仕組みだと思う。」
「・・?すまん、せっかく先制攻撃を成功させたのに、それを自分で打ち消した意味は何だ?あの場にいたのは宮永以外に3人いて、一人はオーラの影響をモロに受け、2人は少しだけど確実にオーラの影響を受けたんだよな?宮永は何がしたかったんだ?」
そこまで真面目に議論をしていたネリーだったが、この智葉の質問に呆れた顔をした後に深いため息を吐いた。
「はぁぁぁ(溜息)、サトハさぁ・・それ本気で言ってる?」
「ああ。」
「・・はぁ(溜息)、いいよ。同じチームのメンバーだし教えてあげる。」
そう言うとネリーは既に半分程飲んでいた缶の中身を一気に飲み干し、カンッと大きな音を立てて缶を机に立てて言った。
「サトハはさ、水たまりを見た事ってある?」
唐突な水たまりという単語に頭に?を浮かべる智葉。取り合えずうんと頷いた。
「じゃあさ、まず最初にサトハの血が一杯に入ったコップをサトハが持っているとするでしょ。」
コクリッ
「それを机一面にバシャッって零すでしょ。」
「ああ。」
その状況を頭の中でイメージする智葉。
(・・我ながらなんて狂った事をしているのだろう。)
「そこに水が一杯に入った業務用バケツを持ってきてバシャッってするでしょ。」
「ああ。」
また頭の中でイメージして思う。
(この作業に何の意味があるのだろう?)
「当然血は水に溶けてほぼ見えなくなるでしょ?そして最後に残ったのは、薄っすらと血の紅が混じった水たまりが一つ。」
「・・なぁ、結局何が言いたいんだ?これが試合前に宮永がやった事だっていうなら、やっぱり無駄としか言えないぞ。」
ここまでネリーの説明を聞いて、結局何が何だか分からない智葉。そんな智葉にネリーは怪しく微笑む。
「ふふふ、ねぇサトハ。その水たまりってさ、”誰のモノ”?」
「はぁ?・・うーん、作ったという意味で、かろうじて私のモノ・・か?」
「じゃあさ、そこにサトハの血を数滴追加したとして、サトハは”濃くなった”って認識できる?」
「できるわけないだろ。少し血を垂らしたところで、大して濃くはならない。分かるようにやるのならもっと大量の血を一度に・・!」
そこまで言って何かに気付いた智葉。
「・・そういう事だよ、私の授業は分かりやすかった?智葉。」
ネリーのニヤケ顔を見て若干腹が立った智葉、しかし今は答え合わせをしたい気分で一杯だった。
「最初に黒のオーラをぶつけて、後から白のオーラで薄める。一見無意味にオーラを消費するだけに終わって見えるこの行為。だが実際は、黒も白もどちらも宮永自身のオーラそのもの!効果は無くなれど、オーラ自体はその場に留まる!」
「大正解!この時点でカンドラは場を制する準備が整っていたんだよ。オーラを可視化できる人間には、一見効果を失った気力の残滓が空間にぎっしり詰まっている風に見えるだろうけど、実際はいつでも敵に銃口を向けられるマグナムに包囲されているのと同じ!後はカンドラの指パッチン一つでオーラは黒にも白にも変わる!」
「なるほど、S極とN極が互いにくっついている状態の磁石に包囲されている感じか。しかもカンドラの指示一つで極はSにもNにも変わる。」
お互いが全く違うタイプの例えを出して若干気まずい空気が流れる。そんな空気を破ったのはネリーの方だった。
「と、とにかく!もうカンドラの勝ちは決まったようなもの!後は安心して後半戦を見られるってわけ。」
「お、おう。もちろん私も見るぞ!もし本当に彼女が勝ち残るのなら、次の第3試合で相まみえる事になるからな。」
そんなこんなで今後の予定を話し合っていると、TVからそろそろ後半戦が始まる事を知らせるアナウンスが流れてきた。
「お!もうこんな時間か!」
「ふふふ、さぁカンドラ!貴女の力を日本中に知らしめちゃえ!」
まるで子供のような純粋な笑顔でカンドラを応援するネリー。そんな様子を見た智葉は、
(ふふふ、今のネリーを見ていると、今年こそ優勝できそうな気がしてくるな。)
と、ネリーの姿に希望を見たのであった。
つづく