最後をどうするかで迷ったりして、
思ったより時間が掛かってしまい
すいませんでした。
それでは続きをどうぞ。
あれから2年、恥ずかしくも美しいと思える思い出に浸っていた解説席の健夜。彼女の見る先には・・
「うふふ・・咲ちゃん、頑張って。」
「・・あのー、すこやん。言いにくいんだけど今本番中だから、解説役がそんな蕩<とろ>けきった顔を晒しながら、露骨に宮永選手を贔屓にするのはヤバいって。」
「・・え?あ!?ご、ごめんなさい!?今どうなってたっけ?」
「えぇ(呆れ)。今は宮永選手がリーチしたところだよ!問題はここからで、彼女がリーチしたと同時に、雀卓のあちこちから火が燃え上がり始めたんだけど、これって大丈夫なの!?」
「ああ(納得)、大丈夫ですよ。実際に燃えている訳ではありませんので。それに昨年のチャンピオンである宮永照選手も、腕から竜巻を発生させていましたし、麻雀ではよくある事です。(というよりこーこちゃん・・あれが見えるんだ。もしかしてこーこちゃんの中にも、眠っている能力があったりするのかな?)」
「ええ(困惑)、それ本当ですか?」
「はい。それにもし、本当に雀卓が燃え出してマズイ事になりそうになったら・・私が”やります”。」
いつもののほほんとした顔とは正反対の凛々しい表情をする健夜に、思わず固まる恒子。
(うお!?すこやんマジだ!?)
そんな恒子の様子から、もう質問は無いなと判断した健夜は・・
(・・うふふ、咲ちゃんは本当にかっこいいなー。)
表情はそのまま、内心は咲にデレデレの状態で大将戦の行方を見守るのだった。
宮守女子 103700 東
姫松高校 121500 南
清澄高校 90700 西
永水女子 84100 北
___そして大将戦、後半戦の南3局。咲がリーチして、豊音が追っかけようとした時。
(ど、どうしよう!?山が全部燃えちゃってるー!?・・でもそれにどんな意味が?)
豊音の理想としては、ここでリーチをして先負を発動。そのまま咲の捨て牌をロンするか、自身が自摸あがるのが最善だった。
(・・いや!ここは母上の場の支配がまだ効いている事を信じて・・!)
「リーチ!」
豊音もリー棒を出して追っかける。そして咲の自摸番になった・・その時!
(・・ワガイトシゴ。)
(母上!?もう、喋っても大丈夫なのですか!?)
(・・ワガイトシゴ・・コノスウヒャクネン・・ワタシハ、アタタカナキモチヲ・・ワスレテイマシタ・・)
(・・母上?)
(・・アリガトウ、アナタトデアエテ・・ホントウニ、シアワセデシタ。)
恐ろしいものからの突然の感謝、その意図が理解できずに固まる豊音。そんな2人のやり取りを、複雑そうな顔で見守る霞。そして咲は、
スッ!・・・コトッ
自摸上がる事はせず、自模った牌をそのまま捨てた。一発は乗らなかった。咲の自摸切りに少し遅れて気付いた豊音は、
(良かった・・一発が乗らなくて。)
そう思ってホッとしたのも束の間。今度は豊音の自摸番である。
(よし!山に触っても問題ないのは岩戸さんで確認済み!火傷の心配はご無用!)
さらっと霞を実験台にしつつも、一時の安心を手に入れた豊音は笑顔で牌を自模ろうとした。しかし・・
(ワガイトシゴ、モウスグワタシハ・・テン二、カエラナケレバ・・イケマセン。)
(え!?そんな、母上!?)
(ユエ二、コレカラサイゴノ・・ノウリョクヲ、ツカイマス。)
(・・最後の?)
(ワタシノ・・カコノキオクヲ・・アナタ二。)
その言葉に疑問符を浮かべる豊音、途端に視界が暗転。ビックリしてすぐに首を振り直すと途端に目の前が明るくなり、気づくと宙に浮いていた。自身の下には雀卓を囲っている4人がいて、霊力やオーラの微細な動きがハッキリと視認できるようになっていた。
(・・え!?なにこれ!?)
突然の浮遊に驚く豊音だったが、恐ろしいものの言っていた事を即座に思い出して理解した。
(・・あ!もしかして過去の記憶って・・)
そう、豊音は恐ろしいものが先程まで見ていた景色を、頭の中で追体験しているのだ。
(え?でもこの時って、ドームがドロドロに溶けだして、私がそれを止めようとして・・)
そう、この後豊音は炎の触手に押さえつけられて、強制的に咲の方へ向かされる。その過程を上から見続ける豊音。
(うわぁ、やっぱり宮永さんかっこいいなー。不敵な笑みも様になってるー。)
そんな割とどうでもいいところに目がいっていると・・急に咲の心臓部に、白と赤の光が灯った。
(・・ん?光った?)
光は最初こそ、ただそこに浮いているだけだったが、数秒で互いが互いを殴り合っているかのような激しいぶつかり合いをし出し、最終的にミキサーみたいにグルグルと絡み合って回転し始めた。・・その動きと何か関係しているのか、咲から放たれていたオーラの動きが、ほんの少しぎこちなくなり始めた。その光景をただじっと見ているだけだった豊音だったが・・
(・・もしかしてこれが!)
とそこで視界が暗転、次に目に入ってきたのは、自分が牌を自摸ろうと手を伸ばしている現実だった。
(母上、今のは・・)
(ワガイトシゴ、イマナラ・・ワカリマスネ?ワタシガ・・コレカラ・・ナニヲスルノカ。)
恐ろしいものが確認を取ってくる。彼女がこれから何をしようとしているのか、その結果どうなるのか、そこまで理解しているのか、それを知りたがっていた。
(・・はい、母上が自身の現界時間と引き換えに伝えてくれたこの情報、ありがたく使わせて頂きます。)
(ヨロシイ!デハイキマスヨ!)
(ちょっと待って下さい!最後に母上、一つ言わせてください。)
(ゑ!?ドウシマシタ?)
最後の出だしを挫かれて少し動揺する恐ろしいもの。そんな彼女に豊音は伝えた。
(・・ここまで私の為を想って行動して下さり、ありがとうございました。誰が何と言おうと、私だけは・・貴方の味方ですよ。)
恐ろしいものが心の底から欲しかった子孫からの感謝、それを聞いた彼女はまさに天にも昇る気持ちだった。
(!?・・・アア、アリガトウ!アリガトウ!ワガイトシゴ!アナタノシアワセヲ・・エイエンニ・・ネガッテイルワ)
恐ろしいものとの最後の挨拶が済んだ豊音は、これからくる最後の時の為にも!と思い、力強く牌を自模る。しかし、自模った牌を確認して僅かに顔を歪ませた。
(・・あー、やっぱりこうなっちゃうかー。)
豊音が引いたのはおそらく萬子であろう牌、だがその牌も案の定上部分が炭化して、ボロボロと崩れ落ちてしまっている為、牌としての機能を失っていた。
(・・うーん、私の待ちは筒子だから違うのは確かだけど・・これが宮永さんのアガリ牌って線は・・ないよね?)
数巡前まで恐ろしいものが場を支配していたと認識している豊音にとって、いくら咲が強いと言ってもたった数巡でここまで場を操作する事はできないと・・そう考えていた。
(いや、そもそもリーチをしたから自摸切りするしかできないわけだし・・考えるだけ無駄か。)
恐ろしいものの力が弱まったせいか、先程までの冷徹な思考は弱まり、代わりに生来の人懐っこさが僅かに戻ってきている豊音。そんな彼女は『大丈夫だろう』といった感じで牌を捨てた。
コトッ・・
「・・・・・」
(やっぱり、宮永さんは動かない!)
先程見た過去の記憶から何かのヒントを得ていた豊音、はたしてそのヒントは咲を倒す一助になりえるのだろうか!?
そして隣に座っていた末原が牌を自模って捨てた。そこでも咲は動かなかった。変わりに動いたのは、
(イマデス!スベテノレイリョクヲ、テンニ!)
(もちろんです母上!)
ここで仕掛けた豊音と恐ろしいもの!二人は互いの霊力をドームの最高地点に集中、そのままドーム全体を一瞬で補強し直すと同時にドームを縮小!その過程で雀卓中に散らばっていた咲のオーラを、咲自身に押し返すという力技をやろうとしていた。
(さっき見た宮永さんの心に宿っていた炎と光、アレはたぶん宮永さんの中の矛盾が形になったもの!希望的観測をするなら、宮永さんは私・・というより親しい人物に対して暴力的にオーラを振るう事に、僅かな葛藤を抱えている!だから宮永さんの戦略には準備がいるんだ!いきなり相手を殴るような方法は良くないと、少しずつ相手を慣らすような方法で、トラウマにならないように手を抜いている。・・すいません宮永さん!その優しさ、勝つ為に穿させて頂きます!)
一方咲の方はというと、突然のドームの収縮に目を見開くと同時に、即興の指先砲弾で対抗するがドームに穴を開けるまでにはいたらず、そのまま自身のオーラで鮨詰め状態になっていた。オーラや霊力が見えない人からは、突然咲が胸を押さえて息切れを起こしたように見えるのだが、当然その原因は分からない。故に末原からの援護は期待できなかった。徐々に咲が弱っていく姿を見た豊音は作戦が成功した事を確信して素直に喜んだ。
(やった!これで宮永さんの支配は消滅!牌も元の綺麗な状態に戻る!)
この予想は”半分”正しかった。豊音の言う通り、あれだけ目立っていた卓上の炎は線香の煙の様に掻き消え、体感温度も元の常温に戻りつつあり、牌にべったりと纏わりついていたオーラも消えた。傍で見ていた霞も豊音と同じような予想を立てて、同じような反応をしていた。だが・・
(凄い、これが姉帯さんと恐ろしいものの連携!これほど強力な、最早結界と呼べる程の支配で押しつぶされては、流石の咲さんでも・・え?)
ドームの維持に集中している豊音は気づけないが、それを横から見ている霞は気づけた。現状の違和感に・・
(牌が・・まだ炭化したまま?この炭化は咲さんのオーラが見せている幻視のはず。実際に牌が燃えた訳ではない。なら何故この牌達は元に戻らないの?)
残された謎に苦戦する霞。そんな中、今度は勝利を確信していた豊音の方に異変が発生。
(よし、あとはこのまま母上に制御を任せて、私は先勝の能力の方へ・・んぐっ!?)
突如として豊音を襲った圧迫感!まるで後ろから誰かに首を掴まれているかのようだった、このままでは自模る事すらままならない。首の感触からして人のもの、当然母上のものではないと分かっていた豊音は、ゆっくりと首を右横へ向ける。そのまま目線は後ろへ流れ、豊音の背後にいる人物の姿が露わになった。
(あ、貴女は!?)
後ろにいたのは___角を生やした豊音自身だった。
(ワガイトシゴ!?・・ハッ!?シマッ!?)
いつまでたっても豊音が次の行動を起こさない事を心配した恐ろしいものが、慌てて豊音の無事を確認しようと”意識を逸らした”。その僅かな瞬間を狙って咲が光と炎のオーラを同時開放!徐々にドームを押し返し、炎に触れたドームの一部を融解させ始めた。
それを確認した角付きの豊音は、途端に脱力して元の霊力の塊に戻ってしまった。霊力はそのまま豊音の中へと吸収され、豊音の中にある神社の本殿へと帰っていくイメージを伝えた。そのイメージの最後に、豊音の周りに配置されていた燭台に灯る、小さな炎が妖しく揺らめいていたのが・・豊音の心に深く残った。
(まさか・・最初に会ったあの時から既に!?)
気づいたところで時すでに遅し、咲は確実な勝利を手に入れるために最初から準備をしていたのだ。例えその結果友情を失う事になったとしても、それでも咲には叶えたい願いがあるのだ。その覚悟に気づけなかった豊音の作戦負けである。
そして咲は自模る。
「カン!」
その瞬間!咲の宣言と同時にドームはバラバラに吹き飛び、卓上を激しく渦を巻く炎が躍<おど>った!その渦はどんどん大きくなっていき、あっという間に卓一杯に広がった。
瞬く間に大きくなる炎を見たその刹那、豊音は悟った。___もう自分では勝てないと。そう思った次に耳に入ってきたのは、恐ろしいものの断末魔だった。
(アアアアアア、ワ、ワガイトシゴォォ!!!)
(は、母上!!!)
霊力の大半を急激に失った恐ろしいものは、最後の力を振り絞って自身の霊力を圧縮し、豊音に渡した!
(マ・・ダデス・・タトエショウブデマケテモ・・オモイダケハ!)
そう言って、散り散りになっていくドームの破片と同じように、彼女もただの霊力の塵となって天に帰って行った。豊音に最後に残ったのは、恐ろしいものから貰った想いのみ。
(母上の最後の言葉・・例え勝負で負けても・・思いだけは!)
その言葉の意味を理解した豊音は、そのまま目を瞑って雀卓を包む咲のオーラに自分の霊力を絡めるようにしてイメージする。イメージされたのは今までの戦いの舞台であった雀卓、だがその在り様は、最早雀卓とは呼べなかった。雀卓は天をも貫く炎の柱の燃料にされて、僅かに燃え残った牌が渦の中で踊らされていた。
そしてその光景を1人、白い翼を生やした少女が、椅子に座って悲しそうに眺めていた。それはさながら、年老いた老婆が僅かに残った暖炉の火種で、貧しく暖を取っているようにも見えて・・豊音は何故か無性に悲しくなった。
「・・宮永さん、どうしました?」
席を立って少女の隣に移動する。少女はこちらに振り向くと、申し訳なさそうに笑った。
「すいません豊音さん、あとそこで見ている霞さんも。本当なら、お二人とは決勝戦で戦いたかったのですが、私の大事な目的を達成するために、ここで本気でやり合う事になってしまって・・」
そう言って深々と頭を下げる咲、そんな咲を豊音は許した。
「いえ、いいんです宮永さん。私の方だって、最初は自分の力だけで戦おうと決意していたのに、いつの間にか母上の力に頼り切ってしまっていて・・」
豊音は自身の行いを改めて振り返り、恐ろしいものに頼ってしまった自分の力量の無さを恥じていた。そんな豊音の傍に、ゆっくりと霞が近づいてきた。
「ふふ、姉帯さんはあの存在を母上だと慕っているのですね。神代では恐ろしいものという名前で畏怖されている存在だというのに・・」
2人が自身の麻雀に対するプレイスタイルに関して気にしているのに対し、霞は今までの恐ろしいものとの過去の方を気にしていた。生まれたときからずっと、恐ろしいものは忌み嫌うべき存在だと刷り込まれてきた霞にとって、今回の彼女の温かい霊力に触れる事は、今までの自分の認識を改める良いきっかけになっていた。そして、その機会を与えてくれた豊音と咲には、更に特別な感情を抱いていた。
「そうだったんですか・・いや、心の中の私が鬼のような角を生やしているのです。そう呼ばれて当然の行いを、母上はしてきたのでしょうね。」
「そうでした、そちらの方もすいませんでした、豊音さん。貴女に最初に出会った時に、私は貴女の中に自分のオーラの残滓をセーフティとして残していたんです。・・貴女がまた暴走するかもしれないと思って。それをこんな形で使ってしまって、本当に申し訳ありませんでした。」
「いえいえそんな!元はと言えば、私が霞さんから母上を奪ったのが悪いんですから!そんな気になさらないで下さい。」
「あらあら、そうなるとそもそもの原因は、恐ろしいものを勝負事に持ち込んだ私に非があると思うのだけれど・・」
その霞の自罰的な発言を慌てて否定する二人、そこから数分間は互いが互いの悪い点をいやいやと否定して、今度は否定した人が自罰的になるという負の連鎖が続いたが、7回くらいの豊音の自罰発言を否定した咲が・・
「いえいえそんな、本当にそんな事・・ふふ。」
なんか突然面白くなって笑いが込み上げてきた。
「そうですよ、咲さんの言う通りで・・ふふふ。」
つられて霞が笑い出し、
「まぁそんな、ありがとうございま・・ふっ!あっ!あはは!」
そんな二人を見た豊音が吹き出した。豊音が吹き出した事で、二人もつられて吹き出し、3人は燃え上がる雀卓を囲んで爆笑の渦に包まれたのだった。
「「「あはははは!」」」
3人とも、色々と反省点はあったが、その反省点を出し終えた後に残ったのは、3人が3人とも、この試合を全力で戦えた事に対しての感謝と喜びだった。
霞は嬉しかった。咲に自分の全力をぶつける事が出来て。最後まで戦う事は出来なかったが、豊音と恐ろしいもののコンビが負けたのだ。自分と恐ろしいものが全力を出しても、勝つ事は出来なかっただろうと、自分の中で区切りをつける事が出来た!
(あはは、本当に久しぶりだったわ!私が勝負に熱くなるだなんて!やっぱりいいわね、戦友って!戦友は姫様と6仙女以外にいないって思ってたけど、この2人は別。またいつか、今度は能力の方で戦ってみたいわね。)
豊音は幸せを感じていた。再びカンドラを巡り合えただけでなく、ずっと知りたかった自分のルーツを知る事が出来たのだ。しかもルーツの根源である恐ろしいものにも会えたのだ。これでもう自分の未来を悩む必要は無い!胸を張って、堂々と歩めるのだ!
(それに、まさか母上と共闘する事になるなんて!姉帯家の歴史の中でも他に類を見ない事だよ絶対!宮永さんに勝てなかったのは少し残念だったけど、でもすごく楽しかった!やっぱり宮永さんとずっと一緒に遊んでいたい!もちろん霞さんとも遊びたい!普段の母上がどんななのか?なんで母上の力を継承すると角として現れるのか?まだまだ母上と話してない事が沢山あるもん!・・でもやっぱり、次に会った時に最初にやる事は・・みんなで楽しく麻雀、かな。)
咲は楽しかった、再び友と巡り会える事が出来て。かつては他人をNPCとしてしか見ていなかった咲だったが、今はこの2人にも大きな絆を感じていた。そして自分が雀荘荒らしを繰り返す中で紡いだ絆は、消えずに残っていたと実感した。今はその事実だけで十分だった。
(あはははは!良かった!私が旅先でやってきた事は、無駄なんかじゃなかった!私は正しかった!だから大丈夫、これから先に何が起ころうとも、私は目的を達成出来る!そう確信出来た!)
___そうしてひとしきり笑い終わったあと、咲が一言。
「さて、残る局はどうしますか?」
「そういえば、まだ南3局の途中でしたね。」
「うーん、私はもう負けでいいかな。母上も天に帰っちゃったし、こうしてみんなでオーラや霊力を通して繋がる事も出来たし。うん、大満足!」
「私も負けで構いません。と言うより、もう私はガス欠でして、今こうして皆さんと繋がっているのも若干辛いと言いますか・・」
「分かりました。では最後に!私の十八番の能力である嶺上開花をお見せして、この戦いに終止符を打つと致しましょう!」
咲の宣言と同時に、豊音の意識は一気に現実へと引き戻された。あれだけ3人で一緒に笑いあっていた時間が、まるで嘘のように、咲の放った炎の渦が雀卓で激しく燃えていた。
そのまま渦はすぐに収縮し、そして一気に膨張して破裂した!その勢いに気圧された2人は、たまらず顔を腕で守る!炎が見えない末原は、「アッツ!?」と言いながら勢いよく顔を外へ反らした。
(ぐううう・・こ、これが宮永さんの十八番の能力!?)
顔の前を腕で覆っていた豊音、次第に炎の勢いが収まっていき、卓上の状態が露になっていく。
「・・え?」
そこにあったのは、卓上一面に咲く真っ赤な彼岸花。燃え堕ちた牌を養分にして咲き誇る、死を象徴とする彼岸花であった。
「自摸、タンヤオ、三色同順、嶺上開花、リーチ、ドラ4、親・・8000ALLです。」
咲が言い終わるのと同時に卓上の彼岸花もゆっくりと燃え始め・・そして消えていく。残されたのは、まるで業火などなかったかのように綺麗に並べられている麻雀牌。そんな牌達から死に化粧のような美しさを感じ取った豊音は気付く。
(・・これが宮永さんの能力とオーラの合わせ技、山頂を越えて咲き誇る華は、業火に焼かれた牌をあの世へと導く、しるべの彼岸花へと姿を変えた!)
___その後、咲の親は2本場までもつれ込んだが、その連荘を末原が得意の早上がりで止めて、そのまま南4局も末原が安い手で早上がりをする事で終結した。
結果として、姫松高校がトップを維持しての準決勝進出。その後を本戦初参加の清澄高校が追従する形で進出することが決定した。
つづく