かなり迷ってしまい投稿が遅れてしまいました。
たぶん次からは大丈夫だと思います。
では本編どうぞ。
「えーっと、宮永照さん・・貴女は何か根本的に勘違いされていると私は思うのですが、そもそもの話として、何で私が貴女に自身の個人情報を喋らなければいけないのですか?」
すぐには答えない。代わりに照の怒りに比例して、全身からオーラがどんどん溢れ出ているのが、誰の眼からも見て取れた。溢れたオーラは照の右手に収束し、いつでも竜巻をぶつける事を咲に見せつける。そんな臨戦態勢をとる照を見ても、全く動じずに咲は無表情を貫いた。
そんな咲の態度と長ったらしくも落ち着き払っている返答も相まって、流石の照も勢いだけではどうにもならないと悟り、一旦オーラを霧散させて会話に集中する事にした。
「それは・・貴女が、私の妹だからよ!」
「ふーん、ですが貴女は今年の春ごろに、私に妹はいません、とインタビューで答えていましたよね?あれはどういう事で?」
「それは・・」
姉妹喧嘩が始まって早々、痛いところを付かれた照。そもそも照の予想では、まず最初にお互いが今まで思っていた事を言い合いまくってヘトヘトになった後、なんだかんだお互いに謝る感じの雰囲気に持ち込んで、そこで初めてインタビューの真実について語ろうと考えていた。それが開幕早々、咲が会話のペースを握っている状態で話題に上がるとは思ってもみなかったので、思わず言葉が詰まってしまった。
質問に答えずに苦虫を嚙み潰したような顔をする照をいい事に、更に追い打ちをかけるが如く咲が口を開く。
「というより何で貴女は私を妹だと思ったんですか?私が貴女と同じ苗字だからですか?それとも髪の癖ですか?・・まぁ何でもいいですが、私は貴女の妹などでは決してないですので、そこのところはお間違え無く。」
自身が妹ではないと徹底的にアピールする咲、一方で咲の怒涛の否定を黙って聞いていた照は、このままでは駄目だと思い、話題を逸らす作戦に打って出る。
「じゃあこうしましょう!貴女は私の妹ではない!それならそれでいいわ!(本当は良くないけど・・)だからお願い!何で貴女が雀荘荒らしなんかをする事になったのか!それだけでも教えて!それさえ聞ければ帰るから!」
ここで宮永照!まさかの取り引きを持ちかけるという会話の最終手段を早々に打って出た!しかも取り引きの内容も照側が一方的に有利な条件!どこまでも妹を下に見る発言に、黙って聞いていた外野の顔は険しい表情に変わっていく!
(はぁ!なんやその条件!?どう考えてもアンタが一方的に有利やないかい!何様のつもりやねん!・・というか、こんなんが明日のウチの相手かいな。・・叩き潰したる、絶対に。)
(あらあら、それってつまり、聞きたい事が聞けたら帰ってやるからさっさと言え、って事ですよね~。・・どうか姫様が怒りを爆発させませんように。)
(えー!?チャンピオンさんってこんなに横暴な事を言ってくる人だったのー!?ううー、何か怖いよー。)
照の要求の内容と纏うオーラの強さから、思わず身体が強張ってしまう豊音。すぐ後ろの豊音の微細な変化を感じ取った咲は、すぐに自分ごと白のオーラで包み込んで落ち着かせる。
一方で、そんな咲の優しくも力強さを感じる白のオーラを初めて近くで感じ取った白糸台の4人は、それぞれが違った感想を抱いた。
(ほう、これが照の妹である咲ちゃんのオーラか。TVで見ていた時も思ったが、本当にオーラの使い方が上手いな。うん、この点は照や淡にも見習って欲しいところだな。というか咲ちゃんの周りが凄い事になっているな。TVで咲ちゃんに抱き着く天江を見た時は嫌な予想が当たったと思ったが、これはその比じゃない。千里山に龍門渕、それに鶴賀、永水、宮守。そして清澄か・・これは、私の財力だけじゃどうにもならないな。照、頼むからどうか穏便に事を運んでくれよ。)
(ふーん、これがサキの白のオーラ。・・でもTVで見た時はもっと凄かったよね、やっぱり大将戦の後だからガス欠気味なのかな。いやでもそうだよね、あれだけオーラを馬鹿みたいに使っておいて、まだ余力を残しているとしたら化け物だよ。うん!これなら私でもなんとかなるかな!ふふふ、決勝戦が楽しみ!)
(うお!これがカンドラさんの白のオーラ!すごい、本当にオーラを手足のように操ってるんだ!・・それに比べて私は・・そもそも、私は麻雀部に入って照先輩の指導を受けるまでオーラの概念すら知らなかった。今こうしてカンドラさんのオーラを感じる事が出来るのも、照先輩や菫先輩が1年近くかけて形になるまで鍛えてくれたからで・・はぁ(溜息)私って、本当に才能が無いんだな。)
(ふふふ、これが咲ちゃんの白のオーラかぁ。生で見るのは始めてだけど・・いいね!咲ちゃんの白のオーラに包まれながら、ゆっくり日向ぼっこしたい!確か咲ちゃんって照先輩曰く、小学生まで本が好きだったんだっけ?同じ文学少女繋がりで、決勝戦後に仲良くなれないかなぁ。)
「・・私が雀荘荒らしになった経緯なら、今まさにTVで小鍛冶プロが解説している最中ですが?」
「あれは咲の過去じゃない!大人達が自分達の都合の良いようにアレンジした作り話でしょ!私は咲の口から!何があったのか!本当の事が聞きたいの!」
「別に小鍛冶さんが今話してるカンドラのお話も、そこまで嘘でベッタベタという訳ではないのですが・・」
「でも嘘が混じってるんでしょ!それじゃ納得出来ない!私は貴女の口から!嘘偽りの無い真実が知りたいの!」
その照の台詞から少しの間が開く。咲はオーラを使いながらも思考していた。自身がどうして雀荘荒らしをする事になったのか、その経緯を姉にどこまで話すべきか迷っていた。無論話さないでのらりくらりと躱し続ける作戦もあったが、それだとせっかくみんなが集まったのに、くだらない問答の所為で会話の時間が減ってしまう。そう考えた咲は、さっさと答えて姉には早々に帰ってもらう方針でいこうか考え始めた。
考えた末に咲は、
「貴女が知りたいのは私が雀荘荒らしになった理由ですか?それとも成り行きですか?」
と、なにやら謎かけのような事を言い出した。それに照は、
「え?・・な、成り行き!」
成り行きを選択した。
「なるほど、ならいいでしょう。」
姉の性格や癖を知っていた咲は、いつも通りに言葉を巧みに使って、姉を自身の思う通りに誘導する。
そして咲は自身の過去の簡単な説明を始めた。
「さっきも言いましたが、私の過去は今TVで小鍛冶さんが話しているのとほぼ同じです。私は麻雀協会の人達に日本中で雀荘荒らしをする事の”許可を得ました。”これは私の二つの目的を達成させるのに必要な事で、一つはカンドラという広告塔を演じ切る為。もう一つは私の個人的な目的を果たす為。」
ここまで静かに聞いていた一同だったが、咲がカンドラになった経緯を話すと聞いて、急に目の色を変えたのが竹井久であった。竹井は咲を清澄麻雀部へ半ば強制的に入部させた事を負い目に感じていた。故にこの話は自分が一番知っておくべき事だと思っていた彼女は、実の姉である照よりもこの話の続きが気になっていた。
「・・咲の個人的な目的?」
思わず照の代わりに答えてしまう久、そんな久の介入に顔色一つ変える事もせずに咲は続ける。
「はい、皆さんには先程説明しましたが、白糸台の方達の為にもう一度簡潔に説明します。まずカンドラという広告塔を演じる目的についてですが・・これは流石に白糸台の皆さんも察しが付くと思いますが、要は麻雀協会の社会的地位を上げる為に、麻雀自体をもっと盛り上げる必要があり、その為の広告塔としてカンドラが活躍する必要があった・・という事です。」
「うん、それはさっきも聞いたわ。」
同じ事を説明されて余計に気が急ってしまう竹井、そんな竹井とは対照的に白糸台の淡と誠子は、え?そうだったんだ!という顔をした。
「私がカンドラを名乗って日本中で雀荘を荒らせば、荒らし行為を省みない私を倒そうと雀士達が雀荘へ足を運ぶ事となり、結果として麻雀の人気は少しずつですが上がります。ついでに本当にヤバい雀荘とかを協会に連絡して潰してもらう事で、治安の安定化を謀ったりもしていました。」
その事実に咲と付き合いの浅い小蒔や豊音などが驚きの声を上げる。ちなみに誠子は、かっこいい!という尊敬の眼差しを、照の後ろからガッツリ咲へと送っていた。
「そのような事を1年近く繰り返す事で、カンドラの噂はもはや麻雀界では知らない人がいない程のモノへと成長し、結果として麻雀界の発展へと深く尽力する事になったのです。」
そこまでの出来事をまるで童話を読み聞かせるTVのアナウンサーの様に語った咲。そしてここまで聞いていた一同は、改めて咲の凄さに感嘆の声を上げていた。とここで、ちょっと気になるところがあったのか、和が質問を挟んだ。
「一ついいですか咲さん。」
「ん?どうしたの和ちゃん?」
「その・・今この場に集まっている咲さんのお知り合いの皆さんは、咲さんが雀荘荒らしをする中で出会っていった人達なんですよね。・・もしかして、それも協会からの指示だったんですか?」
この和の質問に、今まで笑顔の花を咲かせていた皆の顔から一気に笑いが散っていく。特に豊音は酷く、全身をガタガタと振るわせ始めた。試合の最中にも思ってはいたが、咲は皆に打算があったから近づいたのではないか?本当は咲は自身の事などどうでもよいのではないか?そういった不安が、皆の中で渦を巻き始めた。
そしてそんな質問を繰り出した和自身も、咲が麻雀部に入ったのは裏があったのではないか?という疑惑があったからこそ、この質問を繰り出したのだ。
そのような皆の変化を感じ取ってもなお、表情を崩さずに咲は力強く答えた。
「違います。私がみんなを助けたのは・・みんなが、どこか昔の自分に似ていたからです。」
咲の答えに思わず?を浮かべる一同。
「私がオーラに初めて覚醒した時、私はこの世で最も大事な人物との離別を経験しました。」
最も大事な人物と聞いて、思わず息を飲んだ咲信者一同。そんな彼女達をスルーして咲は続けた。
「その時の私は彼女との離別に耐えきれず、覚醒したばかりのオーラもコントロール出来ずに、いやコントロールしようとすら思っていませんでした。愛する半身と分かたれてしまった痛み、その痛みを理由に向上心を失ってしまったんです。・・そんなどうしようもなかった時の自分と、皆さんの姿が重なったから、なんとなく助けようという気になった。それだけですよ。」
そっけなく放った言の葉、しかしそこには確かに温もりがあった。それを感じ取って各々が勝手に納得し、それ以上咲に質問をしようとは思わなかった。
彼女達の中でも一際<ひときわ>満足気な表情を浮かべる和を確認した久が、続きを促すために口を開く。
「・・話を戻すわよ、それで咲がなんで雀荘を荒らしていたかだけど、きっかけは麻雀協会から咲の能力を見込まれて、何か大きな事を成し遂げてくれ!って言われたから・・でいいのよね?」
「うーん、まぁ・・それでいいと・・思いますよ?」
自身の事なのにイマイチ歯切れの悪い返答をする咲、おそらくまだ何か隠していると思った竹井は、ここで攻勢に出る。
「なるほど・・つまり咲は最初に協会から”方法は問わないから”好きな方法で麻雀界を盛り上げろと言われて、”あえて”雀荘荒らしの道を選んだ・・って事よね。」
この竹井の一言で場の空気は一気に熱を帯びた!咲から黒煙を纏った炎のオーラが漏れ出し、段々と控え室内の温度が上昇していく!分かり易く咲は怒っていた!
「・・部長?まるで私が進んで悪事を行うような”悪い子”、みたいに言うのはやめて頂けますか?」
まさかここまで怒るとは、流石の久も予想できなかった。しかし久は攻めるのをやめない。
「なら当然教えてくれるのよね?なんで咲が雀荘荒らしの道を”あえて”選んだのか?少なくともこの場にいる全員は、知る権利があると私は思うけど。」
更に室温は上昇していく!とここで、余りの熱さに耐えかねた淡が自身のオーラを展開して、熱を真空の宇宙という概念で塗りつぶすという見事なプレーを見せる!これによって白糸台の面々の周りは涼しい空間が広がっていった。
他の高校の者達も、それぞれがオーラや霊力を使って咲のオーラから身を守り、なんとか暑さを凌いでいた。そんな中、咲のオーラを真っ向から受けながら、それでもひるまず挑もうとする久の姿に、咲も徐々に冷静さを取り戻していき・・
「・・分かりました。最初は適当に嘘を混ぜて話そうと思っていましたが、そこまで私のオーラにひるまずに真っ向から挑んできた部長に免じて、特別に真実を語ってあげます。」
咲の心を動かした。
「私が雀荘荒らしをしたかった動機・・それは単にお金が欲しかった・・ただそれだけですよ。」
・・あまりにもあっさりと語られた動機、皆が皆静かに続きが語られるのを待っていたが、咲はそれから1分間沈黙し続けた。
まさかこれだけで終わるつもりなのか!?そう危惧した照が噛みつく。
「・・で?なんで咲はお金が必要になったの!?答えなさい!?」
「いや、もう語る事は語り終えましたよ?」
「・・はい?」
「貴女は私が雀荘荒らしを始める事になった”成り行き”が知りたかったんですよね?それならちゃんと今話し終えたはずですよ。さぁ、約束です。帰って下さい。」
そう言うと咲は豊音の身体に体を預けるように脱力して、スマホにポチポチし始めた。同時に部屋中に漂っていた咲のオーラも霧散していき、控え室は元の涼しさを取り戻そうとしていた。
・・もちろん、そんな自己完結を謀った咲を照は許さなかった。
「・・ふざけないで!」
ブワッ!
照の怒りに呼応して、部屋中に旋風が巻き起こる!風は控え室内全体に広がり、淡のオーラや永水の霊力などを纏めて吹き飛ばし、そのまま照の腕に集まって小さな竜巻を形作ると、その先を咲へと向けた。
「おい照!?」
菫が慌てて止めようと動くが遅かった。照は正拳突きの要領で腕を突き出し、そのまま竜巻を射出!鋭く鋭利な先端が咲めがけて突き進んでいく!
最初に風が部屋中のオーラや霊力を全て霧散させてしまった事も相まって、咲の周りにいた者たちは反応がワンテンポ遅れ、竜巻への対処が間に合わない!
これには咲をライバル視していた淡もビックリした。このまま竜巻がサキの身体を貫いて、赤い血潮が部屋中にまき散るんだ!と、猟奇的な想像をした淡がギュッと目を瞑る。
しかしそうはならなかった。竜巻が咲にぶつかる直前、バシッ!と何かが竜巻を弾いて霧散させてしまった。
恐る恐る目を開けてみれば、そこには二つの大きな翼を広げて、フンフンと鼻歌を歌っている咲の姿が淡の眼に映った。
「ふーん、天下のチャンピオンさんは気に入らない相手をオーラで叩き潰す様なお方だったんですね。ファンが知ったらがっかりするんじゃないんですか?」
ニヤニヤした顔で照を挑発して楽しむ咲、それを無視して照は続けた。
「咲!ふざけてないでちゃんと全てを話しなさい!私は貴女がカンドラになった過去の全てを知りたいの!」
「それは我儘ですよ。私はちゃんと確認しましたよ、貴女が知りたいのは”成り行き”か”理由”のどっちだって。それで貴女は反射的に成り行きと答えた。あそこで両方知りたいと答えていれば良かったのに、わざわざ成り行きだけで良いと回答したのは貴方の方です。ほら、そういう訳ですのでとっとと帰って下さい。」
咲の返答に更に顔を怒りで歪ませる照。これには咲側についていた内の数人も、狡い人だなぁと内心呆れていた。ちなみに菫は純粋に、頭がいいな!と感心していた。そして照は怒りに任せて言葉を放つ。
「いい加減にしなさい!そんな訳が納得出来るわけ・・」
「納得できたら帰れ、だなんて言ってません。そういう訳だから帰ってくれって言ってるんです。そもそもノックも無しに押しかけて来たのはそちらです。最初に無礼な態度をとったのもそちらです。なので、こちらの都合を無視してこれ以上ここに居座る気なら、こちらにも考えがありますよ。」
そう言うと、ここで初めて咲が立った。それと同時に咲の足元を中心に炎で形作られた彼岸花が咲き始めた。
それを見た菫は思う。咲は暗に、これ以上邪魔するなら能力を使って排除する事も視野に入れると言っているのだ・・と。
(どうする、最初は照の機嫌が少しでも良くなるのならと、ほんの少しだけ話し合うつもりで来たはずだった・・多分、ここを逃せば後は団体戦が終わるまで咲ちゃんと話し合う事は不可能だ。そうなれば照のコンディションが悪いまま決勝戦を戦う事になる。それは出来れば避けたい!でも、ここで咲ちゃんを怒らせるのはもっと避けたい!というか、私達はここから生きて帰れるのだろうか?この能力者達の包囲網から無事に?・・無理だな。)
色々考えて絶望している菫をよそに、照と咲が無言のまま睨みあう。もはや白糸台VSチームカンドラの戦いは時間の問題かと思われた。
その時!
バァン!
本日3度目の控え室の扉を思いっきり開ける音が、部屋全体に響き渡る。
全員が何事かと顔を向けると、そこには
肩で息をしながら、咲に良い笑顔を向けるネリーの姿があったのだった。
つづく