A.すいません、キャラを登場させすぎました。
頑張っていい感じに終わらせてみせます。
・・きっと。
「はぁ、はぁ・・カ、カンドラ!」
照と咲、両陣営のトップがオーラでの軽いぶつかり合いを繰り広げ、ついに一触即発となったこの状況で、思わぬ来訪者が現れた。
「・・えっと、TVに映ってたのを見たけど、すごくカッコ良かったよ。・・///」
その者の名はネリー・ヴィルサラーゼ。控え室内に満ちている殺伐とした空気を一瞬にして無に帰す事に成功した、唯我独尊を地でいく強者である。
「・・おや、こんにちはネリーさん。時間ぴったりですね。」
時間ぴったり?その部分に加治木は困惑した。前もって咲の予定を本人から聞かされていた加治木からしてみれば、ネリーの来訪は予定外でしかなかったからだ。
加治木と同じように衣、荒川、桃子が困惑の表情を浮かべるが、とうの咲はネリーとあらかじめ約束をしていたかのように振舞って会話を続ける。
「・・え?時間ぴったり?」
「そうですよ、ほら、最後に会った時に私言ったじゃないですか。2回戦が終わった後にもう一度会いましょう、今度は私のお友達も紹介します、って。」
もちろんそんな約束はしていない、むしろネリーの方が一方的に約束を取り付けて出て行った側であった。当然ネリーは動揺した。
しかし、ネリーは天然ではあるが決して馬鹿ではなかった。一瞬動揺する素振りを見せたが、部屋の中に明らかな異物が存在している事に気づいたネリーは、すぐさまオーラを剣のように鋭く尖らせて照に向けた。
「・・うん、そうだよ。ネリーは言われた事はちゃんとこなす、お利巧さんだから・・だから、カンドラの傍に立つに相応しい存在だって、少しずつ証明していく事にしたんだ。」
すぐさま咲の発言に合わせるネリー、ついでに咲の理解者アピールも欠かせない。しかしこの状況、一見ネリーがいつものように咲に自分をアピールして、チマチマ好感度を稼いでいる様に見えるが、実はこの時、咲からかなりの好感度を稼げていたと言っても過言ではなかった。
その理由として、そもそもネリーが元々持っている後輩キャラ感が高い事が上げられる。先輩である咲を慕ってトコトコ後ろから付いてくる可愛い後輩が、先輩がピンチになった時に丁度いいタイミングで登場して場の流れを変え、最後は先輩と後輩との見事な連携を見せて流れを掴むという、有能後輩ムーブをかまして見せたのだ。
この事から咲の中のネリーの評価が、将来有能株の一人、というところから、私の後ろを任せられる有能な後輩、というところまで一気にランクアップした。
話を戻して現在、ネリーが乱入して場の空気を壊し、そこからネリーと咲が土壇場の連携を披露して場の流れを掴む。これは照側からしてみれば、まさに最悪の状況であった。ただでさえ能力者達との全面戦争になりかけていたのに、ここで背後から強力な援軍が到来したのだ。しかも照は、ネリーの登場さえ咲が仕組んだのではないか?という可能性まで考え始めていた。
先程の咲とネリーの会話から、二人が元々待ち合わせていたと完全に信じ込んでしまった、照率いる白糸台の面々は、
「・・テ、テル。流石にヤバいよ、これ。」
「淡の言う通りだ照。私達の目的は悪魔で団体戦優勝、ここで倍以上の能力持ちと命がけの戦いをする事じゃない。」
と完全に逃げる事しか考えていなかった。それほどまでに退路を塞がれたというのは、彼女達にとっては致命的だったのだ。そして二人の説得も相まって、流石の照も、ここは引こうと決断する。
「分かった、今回はそれだけ聞いて満足してあげる。でもこれだけは覚えておいて、咲!私は貴女に勝つ!団体戦でも!個人戦でも!勝って今度こそ証明してみせる!私はあの頃の私とは違うと!もう貴女の手の上で転がされるだけの矮小な存在じゃないと!証明して見せる!(・・だから、お願いだから、元の優しかった頃の貴女に戻って・・もう私の手の届かないところで危ない事はしないで・・光を失って・・今度は貴女まで失うなんて事になったら・・私・・。)」
そう言うと照は踵<きびす>を返して控え室を後にしてしまった。慌てて照を追いかける4人、しかし誠子は、
「・・えっと、カンドラさん!その・・私は白糸台の代表メンバーで、照先輩側の一人なんですが・・それでも!照先輩と同じくらい、カンドラさん、いや咲ちゃんの事は応援しているので!どうか頑張って下さい!」
ペコリとお辞儀をする。そして顔を上げた途端、猛ダッシュで控え室を後にして行ってしまった。
そして少しの間、静寂が控え室を支配する。・・20秒経った頃に咲が口を開いた。
「・・ふぅ、みなさんお疲れ様でした。特に能力持ちの皆さん、ちゃんと私とお姉ちゃんの会話を聞いて、状況に応じた行動を取って頂いて助かりました。おかげであの猪みたいな姉を上手く追い返す事ができました。本当にありがとうございます。」
そう言って頭を下げる咲の姿を見て、ようやく緊張が解けたのか、全員がフゥと深く息を吐いて脱力してしまった。
「つ、疲れたっすーー。先輩頭撫でて欲しいーーっすーー。」
「おーよしよし、あのプレッシャーの中よく私達をオーラで守ってくれた、えらいぞ桃子。」
「ふぅ、私の能力で塞ぐまでもなかったわね。」
「いや、あのスピードで突っ込んでくる竜巻を咄嗟に塞ぐのは無理でしょ。出来たとしても後で滅茶苦茶身体がダルい事になるよ。」
「ウン!ハヤカッタ!ハンノウ、デキナカッタ!ムネン!」
「そういえば姫様、姫様は特に何もせずに涼しい顔をしていましたけど、もしかして宮永照が早々に帰る判断を下す事を、あらかじめ知っていたりしたのですか?」
「いいえ、でも他でもない咲さんがこうして堂々としていらっしゃるんです。だったら私が慌てる必要はないって、信じただけですよ。」
「(えー小蒔さんすごい。私なんて六曜の力があったのに常にあたふたしてばかりで・・)うん、私ももっと頑張らなきゃ。」
それぞれが会話に花を咲かせ始めた頃、今回の照撃退のMVPでもあるネリーが、音を出さないようにゆっくりと咲へと歩み寄った。そして咲の目の前まで来たと思ったら、途端に四つん這いになって、咲と目線を合わせて口を開いた。
「カンドラ・・その、ネリーは役に立てたかな?」
「・・ええ、もちろん。大いに役立ってくれましたよ。」
感謝を言葉で伝えると同時に白のオーラを展開、ネリーを中心にオーラが集まっていき、ネリーは恍惚とした表情を浮かべ始める。
「ふへへ、カンドラー///」
そのまま目を閉じたかと思うと、今度は咲に向かって顔をゆっくりと近づけていく。俗にいうキス待ち体制というヤツだった。
「じぇ!あ、あれって・・///」
それに気づいた何人かがネリーの方へ顔を向けて赤くなる。もはや咲とのキスは秒読みといった距離まで顔が近づいたその時、
「はい、そこまでやね。」
横にいた荒川と和に両肩を掴まれて止められてしまう。がしかし、それでもネリーは止まらない。両肩が動かないので、今度は自身の腕を伸ばす事で、咲の顔を掴んで引き寄せてキスしようとする。なおも進もうとするネリーを、今度は衣が
「いい加減にしろ、フェイタライザー。」
そう言ってネリーの顔面を思いっきり鷲掴んで止める。もちろん両手を使ってである。余りの激痛に我に返ったネリーが
「・・ん!?ぐっぎっ!?いったああああああああ!!!?」
大声で叫びながら後ろにひっくり返ってゴロゴロと転げまわった。
「ふんっ!今回はお前が良いタイミングで咲の危機に馳せ参じたから、その分だけ近づくのを許しただけだ。だが咲の唇まで奪うのは頂<いただ>けん。理解したか?フェイタライザー?」
「っつう・・ああ、今のはネリーが悪かったよ。でも!」
自身が夢心地で咲に不用意に近づいた事を理解して反省したネリー。しかし今度は別の問題がネリーの中で浮上した。
「アンタ達がカンドラの腕や足に抱き着いているのは頂けないね!」
そう言うと今度は咲の周りにいる衣、桃子、加治木、小蒔、姉帯、そして和にオーラを向けた。
「そこの桃子とその隣にいる奴!それから百歩譲って姉帯と小蒔!そいつらはまぁ良いよ。桃子の実力はよく知ってるし、その隣にいるアンタは多分桃子が言っていた愛しい先輩って奴でしょ?なら桃子以上の実力者ってわけだ。カンドラの横にいる権利は十分ある。」
(いや、別に私はオーラや能力による攻撃が効きにくい雀士ってだけで桃子より強いという訳では・・いや、今日はもう疲れたし、黙っていよう。)
「小蒔と姉帯については、さっきのTVでの戦いぶりを見る限り、姉帯はかなりの実力者なのは認める。小蒔の方も、咲と戦った霞って奴の親分的な立場なんでしょ?なら霞以上の強者って訳だ。咲の隣に立つのに不足はない。」
「試合を見てくれて上に名前まで憶えてもらえるなんて!感激です!後でサイン下さい!」
「(お、親分・・)そ、そうですか!?ありがとうございます?」
「でも、アンタ達二人!特に原村!」
キッ!と鋭い視線を和に向けるネリー、その視線に和はキョトン?とした表情を浮かべた。
「試合を見てても思ったけど本当にムカツク!ネリーが言えた事じゃないけど、アンタカンドラの正体が同じチームのメンバーだって事を知ったのって、ついさっきでしょ!」
「!?・・どうしてそれを?」
「がああああ!やっぱり!TV越しでも何となく分かるカンドラのオーラ!アンタはそれを全身に薄っすらと纏っていた!にもかかわらずアンタはカンドラの正体に全く心当たりが無かった!そうでしょ!」
「ま、全くという訳ではありません!なんとなくですが、疑ってはいました!」
「でも知らなかったんでしょ!それは彼女がカンドラだっていう決定的な証拠を、貴女が持っていなかったからでしょ!」
「うぐ・・それは。」
「ネリーがカンドラに最初に会った時には一目で分かったよ!この人は普通の人とは全く違うって!だって纏っているオーラの質も精度も全然違うんだもん!でも貴方は、いや貴女達清澄のメンバーは知らなかった。それってつまり貴女達は、相手のオーラや能力を感知する術<すべ>を何一つ持ってないってことでしょ!違う!?」
その言葉が和も含めて黙って聞いていた清澄のメンバー一同にグサリと突き刺さった。確かに彼女の言う通り、自分達の何人かはかろうじて能力を使える者もいるが、肝心の相手の能力を感知する程の技術を持った人材を持ち合わせてはいなかった。
唯一感知が出来るのは咲だけであったが、そもそもの話として自分達は、例え能力者を相手にしようとも絶対に勝つ!という熱意が、咲に比べて欠けていたのかもしれない。相手が超常の力を使ってくるのだから負けてもしょうがないと、何処かで諦めていたのかもしれない。・・要は今まで咲に頼りすぎていた面が大きかった事を再確認したのだ。そんな慢心と共に今の自分達のチームの偏りを、改めて清澄のメンバーは実感するのであった。
「そうじゃのう・・すまんかった咲!今までお前さんには随分と裏で気苦労をかけていたのかもしれん!」
「言われてみればそうだじぇ、いつも迷子になってるからどこか頼りないと思ってたけど、肝心の麻雀ではすごく頼りになるんだじぇ!それに甘えて私はどこかで失点しても大丈夫・・って勝負に真剣に取り組めていなかった気がするじょ。悪かったじぇ咲ちゃん!」
二人につられて和も竹井も京太郎も、どこか申し訳なさそうな顔をしながら咲の返答を待っていた。それに気づいた咲は、
「いえいえ、そんなお気になさらず。というより普通はオーラや能力の感知なんて出来ないんですから、大将まで手番を回してくれるだけで十分なんですよ。」
「いいえ、それで良い訳がありません咲さん。私達は同じチームなんです、確かにチーム同士で仲良くするのは良い事ですが、厳しくする事も大事です。優希の言う通り、私達は心の何処かで咲さんに甘えていました。咲さんならどうにかしてくれるだろうと・・実際咲さんはカンドラとして、全国各地の名だたる雀士達を倒してきた実力があったのですが、それでも私達だって咲さんの、いえみんなの役に立ちたいんです!これからは、咲さん一人に後を任せるだけの打ち方は絶対にしません!もちろん今までもそのつもりでしたが、今後はもっと気合を入れて頑張ります!ですから咲さん、どうか私達を見限らないで下さい。」
咲の軽い返答に割とガチ目な返しをしながら、咲の腕に絡みつく和。そんな和を、相変わらず一途で可愛いなぁ、と心の中でニヤニヤしながら
「うん、分かったよ和ちゃん。これからは私も本気でみんなの事を考えて練習案を出すから、ちゃんと付いてきてね。」
できる限りの最高の笑顔を放つ咲、そんな咲の笑顔にウットリとした表情で見つめ返す和。
なんかいい感じの雰囲気が控え室内に流れ始めたが、当然ネリーはキレた。
「だあああああああああ!違う!そういうのじゃなくて!!!」
予想外の絶叫に控え室にいる何人かはビクッとした。
「原村!アンタはそこの姉帯豊音に麻雀で勝つ自信がある!?」
「え!?・・そんなのは、やって見なければ分からないのでは?」
「じゃあカンドラ!カンドラと戦って勝て、いや良い勝負に持ち込める!?」
「咲さん・・すごくオカルトじみた打ち方をするのは、さっきの試合で分かりましたが・・どうでしょう、ちょっと自信が無いですかね?」
「でしょう!ネリーが言いたいのはそこよ!貴女は明らかに能力的な面でカンドラに一歩遅れを取っている!なのに何でそんなにカンドラと距離が近いのよ!」
「?それは、私と咲さんが・・心からの友、だからですけど。」
「はああああ!?貴女が!?カンドラと!?心からの友ぉぉぉぉぉ!!??」
和の心からの友、という発言・・それを耳にした瞬間ネリーのオーラがブワリと大きく広がった。
「ぐぐぐ、原村和が、カンドラと、心からの・・」
そのまま顔を伏せてぶつぶつ呟き始めたネリー。その様子を見ていた衣が一言。
「ネリーとやら、其方・・随分と嫉妬深いのだな。」
その言葉で今度は衣を標的に選んだネリー。
「・・誰が、なんだって?」
「其方、我らに嫉妬しておるのだろう?特に原村、コヤツは咲と同じ高校ゆえ尚更<なおさら>・・な。」
その挑発的な文言に、ネリーは乗っかる事にした。
「衣・・天江衣・・確か去年の長野代表・・(ぶつぶつ)・・チャンピオンと同じ牌に愛されし者!」
衣が照と同じ肩書を持っている事を思い出したネリーは、ターゲットを変更してネリーにオーラの照準を合わせた。
「天江衣!アンタならオーラもちゃんと扱えるんだろ!」
「もちろんだが、ここでやるか?」
「何?、お仲間が心配?なら安心しなよ、ネリーはカンドラのオーラ操作を徹底的に模倣して、ほぼ完ぺきに自分の意思で自由自在に動かす事が出来るようになった!アンタ以外には当たらないわ。」
「そんな事は其方のオーラを見て分かっている、衣が言いたいのは・・咲の前でわざわざ恥を晒す気なのか、という事だ。」
その台詞で完全に臨戦態勢に移行したネリー。
「言ってくれるね。ならネリーが貴女の席を奪っても文句は無しだよ!」
「咲のお腹は衣のモノだ!決して渡さん!」
両者が合意し、互いのオーラが膨れ上がっていく!今まさに戦いの火蓋が切られそうになっていた!
「・・ねぇ咲、さっきから黙って見るだけにしていたけど、そろそろ私達もヤバそうな気がするから聞いておくわ。この子誰?」
「少し聞くのが遅かったですね部長。もう少し早ければ私が説明したのですが・・その質問は、二人の戦いが止まってから知る事ができますよ。」
咲がお茶を啜りながら悠長に話している間も、双方のオーラはどんどん膨れ上がっていく!そして互いのオーラが風船のように膨らんで接触しそうになったその時!急激に互いのオーラが収縮!今度はあれだけ広げまくったオーラを全身に凝縮して纏い始めた。
(天江衣、オーラが液体のような形状と僅かな群青色・・からして、間違いなく水に関する能力持ち。これは前もってサトハから聞いていた、海底の能力者だって情報と一致しているけど・・この感じ、河底の方もオーラで使えるんだ。)
(フェイタライザー、咲からは運命に干渉する能力持ちだと聞いていたが、オーラを見るに能力とオーラの性質は全くの別口だな。通常、能力者がオーラに覚醒した場合、元々持っていた能力をサポートするようなオーラが生まれるのが多いと聞く。実際衣もそうだった、今は咲と出会って成りたい自分像が変わった故、海底が河底のオーラへと変化してはいるが、元々は衣も・・能力の出力が少し高いだけの凡庸な能力者の一人に過ぎなかった。)
そこから衣を成長させてくれたのは、やはり咲以外いなかったと今でも思うのだがな・・///と、少し照れながら咲の方をチラチラしてしまう衣。
(だがコヤツは違う。コヤツは咲との別れのショックからオーラを発現させた。それはつまり、コヤツの生まれ持った能力とオーラは全く関係無いという事であり、オーラの性質も本人自身ですら予想外のモノになっているという事。)
これに関しては、この控え室内においては天江衣が一番この事を理解していると言えた。衣が咲との出会いを経て河底のオーラを手にした時、自身の中に大きな異物感が生まれたのをハッキリと覚えていた。それは当然で、オーラとは結局のところ成りたい自分像の具象化。それがどんな形であれ他人の手によって歪められたとあっては、当然本能が異物として認識するのは自明の理だった。
それに衣自身が、このオーラの変化を未だ自分の中で許容できていないのも、異物としての理解に拍車をかけていた。
(そもそも衣がこのオーラに目覚めたのも、咲の想い人が河底の能力者だったと加治木と桃子に聞いた時からで・・つまりそれは、想い人の代わりとして咲に道具のように使われても構わない・・という衣の心の弱さの現れでもある気がしてならないのだ。)
そう、この疑念こそが天江衣の河底のコントロールを乱している根源であった。咲の最愛の人物である光という存在、その人物に成り代わる為だけの河底のオーラ。なら咲が光を取り戻した時、自分は捨てられるのではないか?そうなっても大丈夫なように、いつでも海底のオーラへ戻れるように保険をかけるべきではないか?
その迷いが、天江衣の完全なオーラの覚醒を妨げているのであった。
迷っている自分ともう一度比べる為にも、衣は視線を床から前へ向ける。目の前には自分の在り方を見つけて真っすぐ立っている存在が立ちはだかっていた。
(フェイタライザー、其方が羨ましい。形はどうあれ、咲のオーラを何度も味わったのは其方も同じはず・・それなのに咲と対等な存在になり横に立とうなどと”思いつく”時点で・・)
天江衣は察していた。目の前の異国の少女に、今の自分では勝てないであろうと・・だが
(だがなフェイタライザー、もし、もし咲が光を手に入れた暁には、衣の役目は終わりを告げるのであろうが、それでも!光を手に入れてなお!咲が衣を求めたならば・・衣も更に強くなる!決して無くならない帰る場所が衣に出来るのだ!その時には、其方との再戦、楽しみにしておるぞ。)
覚悟を決めた目でネリーを睨みつける。その視線を準備完了の合図と受け取ったネリー。
今まさに、能力者同士のオーラのぶつかり合いが、始まろうとしていた・・まさにその瞬間!
コンコンッ
「失礼しまーす。すいません突然、ネリーの馬鹿がここに来ていま・・」
今までの来訪者とは一味違う。まさに堂に入ったドアの開け方、堂に入った挨拶、それらを綺麗にこなして入って来た別格の存在。
辻垣内智葉、ここに参上。
つづく