雀荘荒らしの咲   作:ロクナナエイト

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Q.台詞ばっかりじゃない?

A.すいません、出来るだけ台詞を少なくして小説っぽく書きたいのですが、
やっぱり色んなキャラがワイワイやっているのを中心にしたいので、
これからも台詞が中心になると思います。


咲の習慣

「ゲッ!?サトハ!?」

 

 思わぬ乱入者にせっかく纏っていたオーラを霧散させてしまうネリー。それにつられて衣も臨戦態勢を解き、控え室は元の安寧を取り戻した。

 

「ね、言ったでしょ部長。二人の戦いが止まったら話すって。」

 

 そしてまるでこうなる事が分かっていたかのように、優雅にペットボトルのお茶を飲みながら天を仰いで一人笑う咲。たまらず久がツッコむ。

 

「咲、貴女この人がこのタイミングで入って来るって分かってたの?」

 

「いや?でも微かに覚えのあるオーラを纏った人物がこちらに近づいて来ているのだけは分かったので、私の覚えのあるオーラが使えて、なおかつこの部屋に入って来る用事がある人物といったら、おそらく勢いで控え室を飛び出してここまでやって来たのであろうネリーさんと同じチームメイトか監督ぐらいだろうな。って思っただけです。」

 

 そう言われてみれば確かに、と久は納得せざるを得ないと感じた。初対面の久からしてみても、ネリーが慌ただしい性格なのは彼女の言葉使いから見て取れたからである。

 

「ではここで二人の自己紹介をさせて頂きます。皆さん!こちらのお二人は私達清澄高校の次の対戦相手である臨海女子の代表メンバーの内の二人!先鋒、辻垣内智葉さん!大将、ネリー・ヴィルサラーゼさんです!」

 

 相変わらずのテディベアスタイルのまま、大声で元気よく彼女達の自己紹介を代弁する咲。そして突然の自己紹介にビックリして固まる智葉、反対にエッヘン!と胸を張るネリー。

 

「ふふん!ご紹介に預かりました!ネリー・ヴィルサラーゼです!清澄高校の皆さん、次の対戦ではお互いスポーツマンシップを発揮して、正々堂々とした試合を楽しみにしています!」

 

 突然の咲からの自己紹介の振りに、今自分ができる最大限のかっこつけを発揮してアドリブで答えたネリー。そのアドリブを聞いた智葉は、

 

「いや、お前敬語使えたのか。というかスポーツマンシップと正々堂々は同じ意味だ、意味がダブってるぞ。」

 

「うっさい!せっかくカッコ良く決めたのに後ろからごちゃごちゃ言わないで!」

 

 そして始まる臨海女子コンビのいつものやり取り、この二人のやり取りを目撃した他全員は、普段の二人っていつもこんな感じなんだなぁ、と察する事となった。

 

「それで辻垣内さん、ここに来た理由はネリーさんの回収ですか?」

 

「え?ああはい、そうなんですよ。TVでそこの荒川憩が咲さ・・宮永さんの腕に抱き着いた途端に急に立ち上がって何処かへ走り去ってしまったので・・」

 

「サトハ・・今カンドラの許可なく下の名前で呼ぼうとした?」

 

 ジロリと目をゆっくり動かして威圧するネリー。

 

「(いちいち突っかかってくるなよ、話が進まないなぁ。)それで会場中をあちこち手分けして走り回っていたら、丁度白糸台の連中が去っていくのを目撃して・・」

 

「それでここが分かったと、いやぁ素晴らしいですね。敵である私とお姉ちゃんの関係をちゃんと把握していて、尚且つその情報を生かす”運”にも恵まれているとは・・ネリーさんは随分と貴女を気に入っているようですね。」

 

 その発言にポカンとした表情を浮かべる智葉、反対に図星を付かれた事で赤面して俯くネリー。

 

「・・えっと、では宮永さん。」

 

「ふふふ、下の名前で呼んでも構いませんよ。というより下の名前でお願いします。宮永だと姉と被って分かりづらいので。」

 

「では、咲さん。」

 

「呼び捨てで構いませんよ。というより上級生が年下をさん付けで呼ぶのは違和感しかないのでやめて下さい。」

 

「(強いのに驕<おご>らないんだな。)・・咲・・ちゃん、でいいかな?」

 

 おそるおそるちゃん付けで呼んでみる智葉、瞬間ギロリと睨みを効かせるネリー。しかし咲は、

 

「いいですね!ぜひちゃん付けで呼んで下さい!その方が”怖がられない”で済むので。」

 

 まさかの好印象、その咲の反応に智葉だけでなくその場の全員が驚いた。・・ただし、咲を良く知る者達は別だった。

 

(ああ、光ちゃんを意識してんねやな。そりゃそうか、もうカンドラの皮を剥いだんや。これからは光ちゃんに見られる可能性も考慮していかなアカンからな。)

 

 一方で咲にちゃん付けする事を許された智葉に、今度は驚愕の視線を送り始めたネリー。もちろんそれを見逃す咲ではなく、

 

「ネリーさんも、私の事をちゃん付けで呼んで構いませんよ。」

 

「え!?ホント!?」

 

「はい・・いえ、ネリーさんが私をちゃん付けするのに、私がさん付けはなんか違和感がありますね・・私もネリーちゃんって呼んでも良いですか?」

 

「も、もちろんだよカンドラ!あ、いや、咲・・ちゃん!」

 

「ふふ、別に外向きには咲って呼び捨てにしても構いませんよ。二人一緒の時だけちゃん付けとかでも、それはそれで悪くないですし。」

 

「ふ、二人っきり!!??・・ふへへ、あいや何でもない何でもない。・・うん、分かったよ咲。ありがとね!」

 

「ふふ、いえいえこれくらい。」

 

 ニコニコと笑い合う二人だけの空間。最初に部屋に入って来た時はどうなるかと思っていた智葉であったが、二人の仲睦まじい姿を見て、来て良かったな、と少し微笑む。そうして良い感じの雰囲気が流れたところで智葉は、

 

「よし、じゃあいい加減行くぞネリー。」

 

 撤退の合図を切り出してきた。途端に表情が暗くなって俯いてしまう、分かり易いネリーであったが、

 

「・・うん、次の対戦に備えないとね。」

 

 そう言って顔を上げたその表情は、眼前の敵を屠る戦士の顔つきへと変わっていた。その変化に一同もつられて気が張ってしまう。

 

「じゃあね咲!お互い決勝までいけると・・お互い3回戦を全力で戦おうね!」

 

 そう言い残すと智葉を押しのけて先に控え室を後にして行ってしまった。そのネリーの去り際を見た久は、

 

「はー、なんだか嵐みたいな子だったわね、まこ。」

 

「そうじゃの、清澄にはいないタイプじゃったな。」

 

 と零<こぼ>していた。そんな久とは違い咲は、

 

(ふーん、3回戦から全力で来るつもりなんだ。でもなー、ネリーちゃんには決勝戦で私と一緒に大星さん達に”能力者としての格の違い”って奴を見せつけたいんだよねー。その方が観客も盛り上がるだろうし、その為にわざわざ末原さんを3回戦まで進めさせてあげたんだけど・・ま、いいか。正直言って3回戦の大将全員、私と相性が良いのは事実だし、誰が決勝に来てもそれなりに”協力”できるしねー。)

 

 ネリーの発言の真意を汲み取って、次の戦いに備えて今後のプランをどうするか再検討していた。

 

 そして、ネリーが先に出て行った事実に若干フリーズしていた智葉だったが、

 

「・・は!じゃ、じゃあ私もこれで!次の3回戦、楽しみにしている!」

 

 そう言い残していそいそと控え室を後にしたのだった。

 

 

 

「お、いたいた!おーいネリー!」

 

「ん、サトハ?どうしたの?帰り道なら分かるよ。」

 

 清澄の控え室を後にした智葉は、急いでネリーを探した。一回ここまで来て道を覚えているネリーと違って智葉は道が分からないのだ。

 

「いや、お前は分かっているだろうけど、私は知らないんだから・・」

 

「ああそう言う事、それは悪かったね。」

 

 そう言ってスタスタと歩き出すネリー、慌てて追従する智葉。

 

「・・なぁネリー。」

 

「道の分からない智葉を控え室に置いてって悪かったね。」

 

「え!?・・いや、私がこれから言う事を先読みして謝ったつもりだろうけど、別に私はお前に怒っているわけではないぞ。」

 

「じゃあ何?」

 

「その・・お前、随分あっさり引き下がったじゃないか。」

 

「・・ん?どこで?」

 

「清澄の控え室から引き上げる時だ。お前の性格なら、是が非でもあそこに居座る可能性の方が高いと思っていたんだが・・」

 

「なんだそんな事か。」

 

「そんな事って・・お前、ウチの控え室から飛び出した時はあんなに興奮していたのに、一体何があった?」

 

「別に・・ただ、私と咲の連携でチャンピオンを追い返す事が出来た。今はそれで満足なだけ。」

 

「チャンピオン?・・え、もしかして、さっき白糸台の連中が慌てて走っていったのは!?」

 

「へー、チャンピオン慌ててたんだー。それはいい事聞いちゃったなー。」

 

 ニヤニヤと頬を緩めるネリー。その姿を夕日が赤く染める。そこでふと外を見れば、丁度日が落ちかけている光景が目に入った。この会場は大きなドームのようになっていて、その外周を一面のガラス張りで囲っている為、外の光景が廊下から丸見えであった。

 

 そんな一面のガラス張りを通って降り注ぐ夕日の光は、どこか私達の行く先を祝福しているようだと、珍しく智葉は感慨に耽ってしまった。

 

「・・そう言う智葉こそ、何か良い事があったの?」

 

 くるりと振り返って愛くるしく笑うネリー、夕日に照らされた異国の少女は、まるで絵画のようだ、と智葉は思った。

 

「・・いいや、何にも。」

 

 単純に質問を返しただけのつもりだろうが、振り返りながら自分に芸術的な笑顔を向けるネリーに、思わず笑い返してしまった。

 

(・・もしネリーと私の立場が逆だったら、こんな風に良い笑顔を向ける事は私には出来ないだろうな。)

 

 それは、常に自信に溢れているネリーと比べて、何処か自身を信じきれない、自身とネリーの違いから来る、ネガティブ思考故の感想だった。

 

 

 

 

「そういえば咲、一ついいかしら?」

 

「はいなんでしょう?」

 

 場面変わって清澄の控え室、相変わらず控え室内は咲の白いオーラで満たされ、そのオーラに感化された咲の仲間達の穏やかな会話で賑わっていた。そんな中、不意に久が咲に尋ねた。

 

「その、ゆみと東横さんから聞いた話なんだけど、咲が指先にオーラを溜めて打ち出しているって話・・本当?」

 

「(ゆみ?・・ああ、加治木さんの事ですか。)本当ですが、何か?」

 

「それって普段の生活でも使ってたりする?」

 

「普段の生活?・・!?、いえまさか!基本麻雀でしか使いませんよ。」

 

 いつも通りの笑顔で返す咲、しかし久は返された言葉のトーンが僅かにブレていたことを見逃さなかった!

 

「(ニヤニヤ)・・さ~き~。貴女普段からその技を使って悪い事してるでしょ!正直に言いなさい!」

 

 大声で糾弾する久に控え室内の全員の視線が咲に集まってしまう。

 

「あらあら、これは随分と面白い話題ですね姫様。」

 

「はい!咲さんの清澄高校での振る舞い!すごい気になります!」

 

「お、なになに私が名付けた指先砲弾の話ー?あれすごい便利そうだよねー。」

 

「指先砲弾、お母さまの力を使ってようやく完封出来た技ですねー。それがどうかしたんですかー?」

 

 全員の視線を一心に浴びて、何故か冷や汗をかき始める咲。

 

「いや、皆さんそんな、変な事なんて何も・・」

 

「ふっふっふ、なら衣が言っても良いか、咲?」

 

 なにやら訳知り顔で口を挟んできた衣、それを聞いて分かり易く狼狽える咲。

 

「ちょ、いやホントに!衣ちゃんは黙ってて!」

 

 ここまで劣勢に立たされてもなお話そうとしない咲、そんな咲に加治木がゆっくりと立ち上がって近づき、

 

「・・宮永、もう諦めろ。というより、あの技はそんなにヤバい事が出来るって訳でもないんだろ?ならいいじゃないか。話してやれ。」

 

 まるで刑事ドラマのワンシーンのように咲を諭した。諭された本人はガクンと項垂<うなだ>れた後に、しぶしぶ話始めた。

 

「・・まず最初に、部長の言う指先からオーラを打ち出すという技ですが、私にこの技を教えてくれた小鍛冶さん達はフィンガーショットと呼んでいました。」

 

「フィンガー・・ショット!」

 

「・・指先砲弾。」(小声)

 

 真名を聞いて何故か反芻する胡桃、そして自身の付けた名前の方が良いと小声で主張するシロ。

 

「オーラの操作をある程度極めた人なら誰でも使える技で、有名どころなら小鍛冶さん、咏さん、はやりさん。私達学生の中なら衣ちゃん、桃子さん、荒川さん・・とかですかね。」

 

「え!?東横さんも出来るの!?」

 

「そうっすよ竹井さん、というか何で加治木先輩は呼び捨てで私にはさんづけなんすか?」

 

「(いや、私がゆみに話しかける度に露骨に機嫌を悪くするのはそっちじゃない。)私の気分よ、気にしないで。ってそうじゃなくて、じゃあ東横さんは地区予選の時も和相手にフィンガーショットを使ってたって事?」

 

「うーん、まぁ使ってはいたっすけど、全然効かなかったっすね。」

 

 そう、咲の教えを受けていた桃子と加治木が、地区予選で咲に敗北したのは決して手を抜いていたなどという訳ではない。本来なら、鶴賀は清澄ともっと大量の点差をつけて大将戦に持ち込めるはずだったのだ。その予定を狂わせたのが、外ならぬ和であった。彼女は咲からオーラや能力といったオカルトに関する知識や技術を何一つ教わってはいなかったのだ。

 

 しかし、それ故に彼女は本来の力を思う存分出し切って試合に臨むことが出来たのだ。彼女は”オカルトなどは存在しない、全ては確率の元に在る。”という強力な無自覚のオーラのドームを展開していたのだ。しかも自動回復能力も高いときた。

 

 それが桃子を抑え込んだのである。桃子のようなステルスタイプの打ち手にとっては、相手のオーラのドームに閉じ込められるというのは死刑宣告に等しい事である。ドームを割ろうにも、フィンガーショットを使えば自身のステルス能力が弱まり敵に見つかる可能性が出て来る為、そんな危険は頻繁に冒したくなかったというのが桃子の当時の思いであった。要は今の桃子ならともかく、当時の桃子には荷が重かったという事である。

 

 

(しかも咲さんのオーラがドームを補強しているとあっては、流石に白旗を上げざるを得ないっすよ。ホント、あの時は疲れたなぁ。)

 

 苦い過去を振り返った桃子は咲の方を振り向いて、さぁ続きをどうぞ、と促した。

 

「・・それでこのフィンガーショットなんですが、この技はオーラが使えるプロ雀士の間で階級のようなものとしても扱われています。」

 

「階級・・じぇ?」

 

「はい、まぁこの技が使えるならプロ雀士として食べていける、程度のものですけどね。」

 

 ここまで静かに聞いていた久だったが、はぁ!?と大声を上げて喰いついた。

 

「いやそれってすごい事じゃない!?要はそれが出来ればトッププロの人達からプロとしての活動を認められるって事でしょ!?滅茶苦茶大事じゃない!?」

 

 久のオーバーとも言えるリアクションに外野も沸き立つ。咲からして見ればオーラの指先操作など、ただの通過点でしかないのだが、将来プロを目指している者達からしてみれば、喉から手が出る程習得したい技術であった。

 

「咲!そのフィンガーショットってオーラが使えれば誰でも覚えられるの!?」

 

「さ、塞?どうしたの、何でそんなに喰いつくのー?」

 

「いや、それさえシロが覚えれば、卒業後もちゃんと就職出来て安泰だなって思って。」

 

「ゑ?私?」

 

「それってそんなに凄い事なんですかね?姫様と六仙女は全員出来ますよね。」

 

「初美ちゃん、私達と姫様が出来るのは幼い頃から訓練を積んでいるからでしょう?あんまり普通の人と比べてはいけないわ。」

 

「そうですよ初美ちゃん!あとそうやって霊力で誰かを直接攻撃するのは本家から禁止されているので、そもそもそういう発想をしないように!」

 

「ぶー、分かりましたよ。」

 

「なぁ竜華、ウチも頑張れば出来るかな?」

 

「なんや怜、プロ雀士になりたいんか?」

 

「うん、ウチと竜華がプロ入りすれば、ずっとカンドラさんと同じチームで活動できるかもしれへんやろ?」

 

「!・・怜、アンタやっぱ天才や!」

 

 それぞれがワイワイしている中、久は咲に話を続ける。

 

「それで咲!そのフィンガーショットの話の続きなんだけど・・」

 

「はい、それで部長が聞きたいのは、この技を私生活で使う場合の話・・ですよね。(はぁ、話したくないなぁ。絶対部長小言言ってくるもん。)」

 

「ええそうよ・・咲、貴女その技で一体どれ程の悪行をしてきたのかしら?正直に言いなさい。心当たりは全員あるのよ。」

 

 まるでようやく追い詰めたと言わんばかりの悪い笑顔を見せる久、久に合わせて他の部員達もうんうんと頷くが表情はあまりパッとしない。しかし咲も自分で墓穴を掘るような甘い雀士では無かった。

 

「ふーん、じゃあ一人ずつ言ってってもらいましょうか。」

 

 清澄のメンバーに一人ずつ顔を合わせて一対一形式で話そうとする咲、これで運が良ければ五回の指摘で済む、と考えての行動であった。

 

「まず最初に部長、どうぞ。」

 

「えっ私?・・私は、いや私というか、咲が和や優希になんかイタズラしてるなーっていうのを偶に見かけるぐらいで、私個人に咲が何かしたっていうのは特に・・あっ!一つあった!」

 

「ほう、それはいつ?どこで?」

 

「今日よ今日!貴女私が中堅戦に行こうとした時に後ろからデカいの一発撃ったでしょ!」

 

そう言われて、ああアレか、とどこかホッとした表情になる咲、本人からしてみればそこまでヤバいネタという訳ではないようだ。

 

「ああ、アレですか。アレは部長が何故か凄く緊張していたので、緊張をほぐしてあげようと気を利かせたつもりでしたが、余計でしたか?」

 

「んぐっ!・・いやまぁ、喰らってから試合が終わるまでの間は何か背中が熱いような違和感がしたけど、おかげで自分のペースを崩さずに打てたのも事実だから・・まぁ、ありがとう?」

 

「はい、どういたしまして。」

 

「いやでも次からはちゃんと一言言ってからやってよね!はい私からは以上!次は和!」

 

「えっ!私ですか!?」

 

「そうよ、ていうか私から見れば和が一番被害を被ってる気がするんだけど!」

 

「それははい、そうですね。清澄の部員の中では一番ちょっかいかけてますね、個人的には。」

 

「ほら、犯人が自白してるんだし!思いのたけを叫びなさい!この清澄麻雀部部長である竹井久が許すわ!」

 

 珍しく自らのイタズラを認めた咲、今度も大した事はしていないようだ。

 

「えっと・・咲さん。もしかして麻雀の練習中に、何か?しています?」

 

 和の指摘にニヤッと笑う咲。

 

「ええ、なんか暇だなって時は和ちゃんの猫みたいな可愛い声で癒されたいなぁ、と思ってつい、首筋を狙ってこう、ね。」

 

「いやそんなオッサンみたいな事してんじゃないわよ!あれやっぱり咲の仕業だったのね!おかしいと思ったのよ!窓を閉めてるはずなのに毎回風が何処からかやってきて、その度に和が声を上げるんだから!それも京太郎のいない時に限って!明らかに咲が何かやってるっていうのがバレバレだったわよ!」

 

「え!?俺ハブられてたの!?」

 

「京ちゃんには悪いけど、私は楽しみを静かな空間で味わうタイプの人間なの。ほら、京ちゃんが和ちゃんの嬌声を聞いたりなんてしたら、絶対うるさく騒ぎ出すでしょ。」

 

「そりゃそうだろう!だって俺男だし!」

 

 その発言で控え室中の女性陣から冷たい視線を浴びる事となった京太郎。当の本人は気づいていない。

 

「・・それで、部長は何で私が犯人だと思ったんですか。」

 

「あのねぇ、風が吹くたびに和の方を見てニヤニヤ笑ってるのを見たら誰だって分かるわよ。」

 

「・・そうでしたか、顔に出てましたか。私もまだまだですね。」

 

「・・いや何勝手に〆の体勢に入ってんのよ!肝心の和への謝罪は!」

 

「ああそうでしたね。・・ごめんね和ちゃん、普段のストレスから和ちゃんの声に癒しを求めちゃって。これからは自重するよ。」

 

「いえそんな!咲さんが望むのでしたら全然いいんですよ!むしろバッチ来いって感じで!」

 

「そう?じゃあこれからも色々とよろしくね。」

 

「はい!いつでも私に頼って下さいね!」

 

 そう言って咲の足に抱き着きながら笑う和、そんな和に笑顔で対応する咲。案外この二人はこれで良かったりするのだろうか?一部始終を見ていたまこは首を傾げた。

 

「じゃあ次!まこ!」

 

「お!いよいよわしか!と言いたいところじゃが、わしは特に思い当たる節はないのぉ。」

 

「うーん、俺もないな。」

 

「私もないじぇ!」

 

(え?優希ちゃんも無いの?和ちゃんと同じ首筋ショットを週1で優希ちゃんにもやってたのに気づいてないの?・・まぁいいか、結果オーライだね。)

 

 何も思い当たる節のないまこ、それに便乗して京太郎も優希も特にないと答える。

 

「あらそう?じゃあ被害者は私と和だけ?思ったより何もしてなかったのね。」

 

「当たり前ですよ。さっきも言いましたが、この技は使えるのが凄いってだけの技なので、実用性は皆無です。使ったとしても、相手の注意を逸らす程度にしか使えません。注意を逸らしている間に何かしようにも、たった数秒の間に出来る事なんてたかが知れてますよ。」

 

 勢いで捲し立てて早く話を終わらせようとする咲、正直もう話す事もないし、と久もそろそろ別の話題に移ろうと思っていた。がしかし!ここに来て咲を刺す思わぬ伏兵が!

 

「ふっふっふ、咲よ。まだ話していない事があるのでは?」

 

 天江衣、咲と同じくオーラをある程度自在に操る事が出来る彼女であった。

 

「こ、衣ちゃーん?な、何の事かなー?」

 

「とぼけずとも良いではないか、アレはオーラ使いの特権のようなものだろう?」

 

「い、いやー、アレを言うのは流石に・・というかイタズラって訳ではないんだし。」

 

 衣の指摘に明らかに動揺する咲、その隙を見逃すほど久は甘くなかった。

 

「ふーん。咲、貴女まだ何か隠してるの?」

 

「いや、それは・・」

 

 なおも粘ろうとする咲。そんな情けない様子を見た桃子が、

 

「・・もう面倒くさいので私が言ってもいいっすか?」

 

 この調子だといつまでも終わりそうにないと判断して、咲の代わりに喋ろうと前に出る。

 

「いやちょ・・」

 

「このフィンガーショットの一番のメリットは、遠距離からオーラをぶつける事が出来るという点です。その特性を生かして咲ちゃんは清澄のみんなに毎日オーラでマーキングしていたっす。」

 

 その発言に顔を真っ赤にして俯く咲、しかし肝心の清澄の面々は何が何だか分からないといった顔をしていた。

 

「・・?それをすると私達はどうなるの?」

 

「別にどうもしないっす。ただオーラを感知できる人間からしてみれば、この人は俺の物だからお前らはちょっかい出すな、程度の効果は期待できるっす。もっと女の子風に言うと、貴女達はもう私の所有物なんだから、勝手に私を置いてどこかへ行くのは許さない、って咲ちゃんから束縛されているようなもんっす。」

 

 そこで初めて意味を理解した清澄の面々は咲と同じく顔を赤らめて苦笑いをした。

 

「あ、あははー。そうなんだー、咲ってそんなに私達の事を大事に思ってたんだー、あ、あははは。」

 

 明らかに動揺する久、眼鏡の位置をしきりに直すまこ、どこか嬉しそうにお菓子を頬張る優希、顔を手で覆って天井を仰ぎ見る京太郎、恋に落ちた女性のように蕩けた表情で咲をガン見する和。

 

「別に良いではないか、衣は毎日龍門渕のみんなにやっているぞ。それに指先から飛ばせるのだからいちいち抱きついてオーラをくっつける手間も省けるしな。」

 

「ええそうっすか?私はちゃんと愛を込めているって伝えたいので、加治木先輩に毎日抱き着いてオーラをくっつけているっす。」

 

「いや、分かるわー桃子ちゃん。ウチも出来る事なら咲ちゃんに毎日抱き着いて、この溢れんばかりの愛をズゾゾー!ってこう、ね!いやーでもやっぱ個性が出るとこやねここ。そうそう愛と言えば、同じ大阪代表のお二人さん!お二人も抱き着く派?」

 

「そりゃもちろんやで!なぁ怜!」

 

「当たり前や!竜華とウチはズブズブな関係やで!」

 

「私達6仙女と姫様は、気づいた時にはもう神様の霊力を纏っていたので、そういうのはあまり無いですよね。」

 

「そうね巴ちゃん、でもある意味では、私達は一心同体っていう風に捉える事も出来るって思わない?」

 

「確かにそうですね(ニコッ)」

 

(春ちゃんが笑った!?そんなに今のフレーズが気に入ったんですかー?)

 

 控え室が一気に騒がしくなっていき、それにつられて赤面していた面々も徐々に元のテンションに落ち着いていった。

 

「・・えっと、つまり私達は咲から凄く愛されているって事でOK?」

 

「OKっすね。」

 

 咲は赤面して俯きながらも、しっかりと首を縦に振るのだった。

 

 

つづく

 

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