雀荘荒らしの咲   作:ロクナナエイト

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毎回思いますが、誤字脱字があったらすいません。


第3回戦(後半戦の結果)

 

___「・・・ううん・・あれ、私・・」

 

 ゆっくりと目を開けると、そこはトイレの個室でした。

 

(あれ?・・私、何で・・確か、咲さんに急いで来るように言われて・・)

 

 そう、咲さんが私と大人の階段を上りたい・・みたいな事を言ってきたものですから、たまらず応じてしまいましたが///

 

「・・咲さんは一体何処に・・?」

 

 それから何があったのか・・イマイチ思い出せない私は、取り合えず今の時刻をスマホで時間を確認しました。すると・・

 

「・・え!?もう後半戦が始まってるじゃないですか!?」

 

 反射的に立ち上がって急いで控え室まで戻りました!廊下は走ってはいけない、などと言っている場合ではありません!

 

 タッタッタッタ!

 

 バァン!

 

「はぁ、はぁ・・今どんなですか!?」

 

「・・ちょっと和、貴女までドアバンする側の人間になっちゃった訳?」

 

 部長がいつもの軽口で返してきましたが、それどころではありません!

 

「はぁ、はぁ、部長!下らない事言ってないで早く教えて下さい!」

 

「(下らないって・・)・・えっとね、今はね・・丁度東3局に入ったところよ。」

 

「さ、咲さんの様子は!?」

 

「順調も順調よ!前半で最下位まで落ちたのが嘘みたいに点をガッポガッポ稼いでるわよ!」

 

(ガッポガッポ・・部長、その表現はちょっと古い気がするなー。)

 

「・・ちょっと何よ京太郎、その残念なものを見るような視線はー。」

 

「いえ!何でもないですぜ部長殿!(おーこえー!)」

 

(・・取り合えず、咲さんは大丈夫なんですね。良かったー。)

 

 咲さんが調子を取り戻したらしくて良かったです。トイレで会った時に少し辛そうな顔をしていたので心配でしたが、もう大丈夫のようですね。

 

「・・そんな事より、いつまでも入り口に突っ立ってないで、こっちに来てTVで観戦したらどうだ・・原村。」

 

 着席を促す加治木さんに、それもそうかと思い、ゆっくりとTVが良く見える位置に腰掛けました。

 

(・・いや流石っすね咲ちゃん。序盤で翼を片方失った時はどうなる事かと思ったっすけど・・まさか、こんなやり方があったなんて。)

 

 和が真剣な顔でTVに噛り付いている傍ら、桃子は改めて咲のオーラに関する知識と技術に関心していた。しかし、それは桃子だけでは無かった。

 

 

 

___同時刻、会場内の食堂にて

 

「・・おお、さすがサキ。やっぱりはやりさんが鍛えただけはありますね。」

 

「はややー、でもこれは・・ちょっと凄すぎるっていうかー。」

 

 誰もいない静かな食堂で仲良く談笑し合う女性が二人。二人の名は戒能良子と瑞原はやり・・どちらもプロ雀士として名を馳せている二人は、たまたま今日の解説の仕事がひと段落して、どこかで休憩を取ろうと歩んだ結果、食堂の入り口でばったり合流。

 

 お互いにプライベートでも仲の良い二人は、こんなところでも通じ合うものがあったというのか。といった具合でテンションが上がっているはやりを、良子がバッサリ切るという不思議なコンビとして麻雀界では通っていた。

 

 そして、そんな2人に特に可愛がられていたのが・・カンドラこと宮永咲である事も、プロ雀士達には筒抜けであった。

 

「やっぱり咲ちゃんは違うよねー。なんて言うか、戦う覚悟があるって言うかー。」

 

「・・そうですね。流石、あの年で麻雀協会から広告塔の役割を任せられただけの事はありますよ。」

 

 その言葉に分かり易く顔を曇らせるはやり、しかしこれは私達が決して忘れてはならない事実でもあった。そう思ったからこそ、良子はあえて言ったのだ。

 

「・・うん、本当なら私達の世代が麻雀界を盛り上げなきゃいけないんだよね・・。」

 

「はい、それをサキは・・金銭的な取引があったといえ、一人でその役目を全うしています。」

 

 更に表情が暗くなるはやり。自身がアイドルとして活動している手前、余計に自身の、人を惹き付ける力の無さ、を痛感してしまう。

 

「うん・・でもこれって、人身御供ってやつ・・だよね?」

 

「はい、だからこそ・・私達が支えてあげなければいけないのです。本来の役目をあの子に押し付けて、責任から逃げて人生を楽しんでいる私達が、あの子の傍にいてあげなきゃいけないんです。」

 

「・・そうだね、小鍛冶ちゃんは記者会見で矢面に立ったし・・咏ちゃんや理沙ちゃんも、咲ちゃんが出来る限り安全に雀荘荒らしが出来るように裏から手を回していたし・・」

 

「ふふ、でもサキがピンチになる事なんて、ほとんどありませんでしたけどね。」

 

「いやでも神代を相手にしたって聞いた時は本当に怖かったよー!?神代の姫様を誘拐して一夜を共にしたんだって聞かされて・・もう本当に頭がどうにかなりそうだったんだからねー!」

 

「あははは!でも姫様はそのおかげで光を取り戻せたようですし、私としては結果オーライですけどね!」

 

「全くもう・・でもなー、あの時最初に出会った時には、ここまであの子に惹かれるなんて思わなかったんだけどなー。」

 

「ほう・・そういえば、私はまだその時の話を聞いていませんでしたね。よければ聞かせていただいても?」

 

「もちろん!えっとねー、まず最初に小鍛冶ちゃんが咲ちゃんに児童買春を・・」

 

 

 

  臨海 約140000 東

 

  清澄  約70000 南

 

  有珠山 約80000 西

 

  姫松 約110000 北

 

 

 

___少し時間は巻き戻って・・第3回戦、後半戦開始時点

 

(さて、始めるとしますか。)

 

 珍しくやる気になっている咲、そんな咲の心情の変化を、咲が無意識に放つオーラの微細な動きからネリーは感じ取っていた。そして同時に訝しんだ。

 

(うん?・・なにこれ?何で咲から原村の匂い・・というよりオーラを感じるの?)

 

 このネリーの疑問は、同じ対戦相手である獅子原も抱いていた。獅子原はカムイが手元に一人でも残っていれば、ネリーと同様にオーラや霊力を感知する事が出来る。だがこれは裏を返せば、カムイがいなくなれば獅子原は目が見えなくなるようなものでもあった。

 獅子原がカムイ達と交わした契約は、1,カムイの力が借りれるのは一度だけ。2,一度使ったカムイは北海道の然る場所に一旦帰る。3,再び力を使いたいなら北海道まで会いに行く必要がある。4,再契約の際に気力を前払いする必要があり、その代わりに力を使う際の気力の消費はゼロ。5,カムイはその時の気分によって勝手に行動する事もある。

 という内容のもの。複数の神の力を借りれるのはありがたいが、一度使うと勝手に帰ってしまうのが、この契約のやっかいなところである。

 

(永水の人達みたいに好きな時にカムイを呼べたらいいんだけど、私にそこまでの霊的才能は無い。あるのは中途半端な正義感だけ・・でもカムイ達は、私のこの青臭い正義感とやらが大好物らしいから・・まぁそこは感謝してるよ。でもやっぱ使い勝手が悪いよなー、せめて3回くらいは働いて欲しいんだけどなー。)

 

 神に向かってもっと働けと思う、なんとも豪胆な心を持っている獅子原・・だからこそ、カムイ達も力を貸しているという訳でもあった。

 

 ここまで自身とカムイの関係性について見つめ直していた獅子原であったが、末原の

 

「リーチ!」

 

 という言葉で強制的に現実に意識を戻される。

 

(おっと、今は試合に集中しないと・・で、やっぱり警戒するべきはカンドラさんだね。臨海の方はプリカンダの牙が刺さっているから良いとして、カンドラさんの方は自分で自分の翼を切り落としちゃったからなー。オーラの量はかなり減ったけど、能力が普段通りに使えるのには変わりない。さて、どうしたものか。)

 

 幸いにも、獅子原にはまだカムイがそれなりの人数と雲が一つ残っている。点棒も試合開始時点に比べれば、かなりの余裕である。故にここは・・

 

(よし!ここで姫松を狙い打って確実に点差を広げる!姫松の大将は今、二人が能力を使わない事を良いことに勢いでごり押している!その隙を突いてデカいのを一発確実に決める!)

 

 そしてまた雀卓の端に手を広げて雲を召喚した。試合開始前に3つ残っていた雲は、ここまでの戦いで既に白い雲がふわふわと呑気に浮いているのみになっていたが、獅子原にとってはこの雲一つで十分であった。

 

「ポン!」

 

 がしかし、まだ使わない。獅子原は雲を出しただけで使う事はせず、まずは鳴いて聴牌を作った。

 

(なんや、リーチして即鳴くということは・・向こうも聴牌か。あー、しもたなぁ・・こっちは咲ら二人の油断を突く為の字牌単騎なんやけど・・あっちの方が速そうやなぁ。)

 

(よし!姫松の表情が暗くなった!でも念には念を入れて・・ラプスカムイ!)

 

 本日3度目の怪異の出現にネリーと咲は、またかぁ、ともう慣れていた。特に咲にいたっては、次は何をして私を楽しませてくれるのだろうか、という漫画の敵キャラみたいな事を思っていた。

 

 呼び出されたラプスカムイと呼ばれる神様は、一見するとめちゃくちゃ大きなカラスのような見た目をしていた。ここで先程見たホヤウカムイと似たような翼を持つ事に気づいたネリーは、

 

(どうせまた翼だけを残してどっかに消え去るんでしょ。さっさとどっか行きなさいよ。)

 

 と、野良猫を見るような眼つきでラプスを睨みつけ・・完全に神様を舐め腐っていた。

 

 ところがラプスカムイは、そのまま大きく翼を広げて獅子原の真上に移動すると、他の3人に目掛けて、バサリバサリと翼をはためかせて風を送り込んできた。

 

 そのラプスの行動に本能的にヤバいと感じ取った咲は、即座にオーラの壁を作って身を守る。咲の咄嗟の行動に習い、ネリーも慌ててオーラで繭を作って身を守る。

 

 ラプスは4回程風を送り込んだ後に、獅子原を一瞥して何処かへと飛び去った。ラプスが完全にいなくなった事を確認してガードを解く二人・・そして気づく。

 

(げっ!あの風って・・また相手の能力を下げるタイプのヤツか!)

 

(はぁ(溜息)、今度は自摸運を悪くするタイプの場の支配ですか。確かにこれなら、今局は誰もアガる事は出来そうにありませんね。でもよろしいんですか?そんなにポンポン神様を使っちゃって・・これでは決勝戦でまともに戦えませんよ?)

 

 咲の疑念は対戦相手側からすれば当たり前の事であったが、獅子原はもう決勝戦に出る事などは眼中に無く、プリカンダの牙を自身の翼を折ってまで防いで見せた咲を倒す事しか頭になかった。

 

(ははは!やっぱりチャンピオンを倒すよりも、今話題沸騰中のカンドラさんを倒した方が注目が集まるよね!少なくとも私はカンドラさんを倒したい!それにプリカンダの牙を見事防いで見せたのは、カンドラさんが初めてだし!)

 

 貴重なカムイを惜しみなくどんどん使ってアドレナリンが出まくっている獅子原は、もはや由暉子の事も忘れかけて・・ただ目の前の試合を楽しむだけのわんぱく少女と化していた。

 

 ・・そしてそのまま乗りに乗ってアガった。

 

「自摸!タンヤオ、500、300。」

 

 点数は低いが、これで末原のリーチは流れ、局は進む。全自動卓が牌を回収して山を築く。ここでついに・・

 

(今だ!白いの!)

 

 浮いていた最後の雲をガシッと掴んで机に叩きつける!すると獅子原、配牌の時点で既に緑一色の2向聴。他家に比べて圧倒的に有利な滑り出し!

 

(本当は親番まで待ちたいけど、そのやり方は向こうだって警戒して対処してくるだろうし、ここは不意をつく形でいく!)

 

 最後の雲を使ってもう後が無い獅子原、ここで後半戦の流れを掴みたい・・が、

 

(・・さて、そろそろアレ、やりますか。)

 

 咲が動く。咲の身体からオーラが放出され始めた事で、他2人は警戒態勢に入った。

 

(うお、ついに来たか!)

 

(咲・・本当に大丈夫なの?)

 

 翼が片方しかない事を案じるネリー。ついに本気になったかとワクワクする獅子原。能力者二人は咲の出方を注視していた、はたしてどの能力を使ってくるのか、点数調整か、嶺上開花か、白か、黒か、赤か・・それら全部なのか、と・・

 

 しかし、次の瞬間・・二人は驚愕に包まれる事となった。

 

「・・ホヤウカムイ。」

 

 そう呟くのと同時にバサッと翼を羽ばたかせる咲、そして驚きで固まる二人。しかしそれも当然で、咲は前半戦で片方の翼を自ら切り落としたのだ。だが目の前の現実はどうだ?咲の両翼にはちゃんと翼がついているではないか!そしてこの事実に一番驚いたのは、咲の事を心配していたネリーではなく、咲に怪我を負わせた獅子原の方であった。

 

(いったいどういう事だ?なんで翼が・・ん?あれ?・・あの翼・・まさか!?)

 

 獅子原が気づいたのと同時に、咲の後ろから大きな翼を持った蛇のような存在が、ひょっこり顔を出した。その顔を獅子原はよく知っている。

 

(ホヤウカムイ!?なんでカンドラさんに・・)

 

 理解が追い付かない獅子原、すると頭の中に声が響いた。

 

(爽・・聞こえるか?)

(!?・・もしかして、ホヤウカムイ!?)

(そうじゃ・・こうして話すのは久しぶりじゃのぉ。)

(一体どういう事なんですか!?何故カンドラさんの方に・・)

(何故もなにも、そういう契約だったじゃろう?力を使えば然るべき場所へ舞い戻る。再び力を使いたくば、供物をもって頭を垂れよと。そして我が舞い戻る際に何処へ寄り道しようと、我の勝手だと・・そういう契約だったはずじゃが?)

 

 確かに!・・そう思ってしまったのもあってか、ホヤウの毅然とした態度にここまハッキリ言われてしまっては返す言葉も無い、といった感じで黙ってしまう獅子原。黙った獅子原を良い事に、ホヤウは更に追い打ちをかける。

 

(くふふ、この娘・・咲といったか?此奴とは、とても良い取引ができたぞ爽よ。咲はお主と違って交友関係がとても広い。故に我に極上の生贄を見繕うなど容易い事だと、そう豪語するだけの事はあった。)

 

(生贄って・・まさか!?)

 

(安心せい、お主と同様に生気を吸っただけの事よ。しかしあの小娘の生気・・お主とは別格の美味さじゃったのぉ。次に会うた時は正式に我専属の巫女にするのもやぶさかではない・・か。)

 

 そして気持ちの悪い高笑いが頭の中の響く。ホヤウはカンドラさんが用意した生贄に甚くご執心のようだ。

 

(・・それで、なんでカンドラさんが貴女の翼を?)

 

(くふふ聞いて驚くなかれ!なんと此奴はな・・良き生贄を献上した上に、生贄を味わう為の現身の役割までその身で全うしてくれたのじゃ。この意味・・お主なら分かるよな?)

 

(!?・・なんて危険な事を、自分と血縁の関係があるならともかく、見ず知らずの霊的存在に身体を明け渡すなんて!?乗っ取られて好き放題やられてもおかしくなかったのに・・)

 

(くふふ、そこがお主と此奴の差じゃな。お主は自身の能力の高さ故の誇りが邪魔をして、他者に助力を求める事が出来ん。比べて此奴には、自身が暴れても助力してくれる対等の友がおるし、おらんなら成長を促して作る事も出来る。だからこそ我に身体を預けられたのじゃ。ならもう結果は明らかじゃろ?確かにお主の青臭い正義感は美味じゃ。じゃがな・・それで他者を自身よりも格下だと断じて、一方的に救済しているようでは・・此奴には遠く及ばないだろうのぉ。)

 

(な!?・・そんな事!)

 

(ならお主に他者を成長させる力があるか?一方的に救うだけでは、助けられた者はまた同じ過ちを繰り返すぞ?此度のお主の救済対象である由暉子とやらも・・ただお主の言う事を妄信して動いているにすぎん。あれでは偶像に祭り上げたところで、すぐに堕ちるのが目に見えておるわ。)

 

(!?・・ユキが・・そんな、でも・・ユキは強い子で・・)

 

(くふふ、まぁせいぜい楽しむが良い。我は先に阿寒富士の寝床で待っておるぞ。)

 

 言うだけ言ってホヤウは今度こそ北海道に帰ってしまった。・・全く、自分勝手なのは変わらないなぁ。

 

 久しぶりのホヤウとの会話を楽しんでいた獅子原、そんな彼女とホヤウの会話が終わるまで待っていた咲であったが、

 

 バサリッ!

 

 ホヤウが去ったのと同時に翼をはためかせ、大きな風を起こす。途端に場に残っていたラプスカムイの場の支配と白い雲の力が消し飛んでしまった。

 

(!?、まさかここまでホヤウの力を完全にモノにしているなんて・・でもねカンドラさん、その風を起こすのに、貴女はどれだけのオーラを使ったのかな?貴女が貰ったのはホヤウの翼だけ、その翼に気力を充填させるのは貴方なのに変わりはない。さっきの翼の消失と今回のホヤウの能力の使用で、おそらくカンドラさんの気力は底をついたはず!ならまだ勝機はある!)

 

 まだ勝負を諦めきれない獅子原、しかし・・

 

「自摸!」

 

 やはり咲には及ばない。せっかく白い雲で揃えた緑一色の2向聴も、咲の平和によってことごとく潰された。

 

「ロン!」

 

 そこから咲は止まらなかった。ホヤウの力が効いているのを良い事に、どんどん点棒を積み上げていき、気づけば5本場まで場は進んでいた。そして清澄の点棒は11万まで積み上げられ、1位の臨海に迫る勢いであった。

 

(くっ!流石カンドラさん・・でも!)

 

 ここで獅子原、ホヤウの効果が切れかかっていたこのタイミングで、幸運にも配牌で既に1向聴。

 

「ポン!」

 

そのまま鳴いて聴牌し、

 

「自摸!」

 

平和を自模る。場は流れた。

 

(よし!これでホヤウはもう使えない!ここで!)

 

 ここで新たにカムイを発動しようとした獅子原、がしかし、

 

「・・ホヤウカムイ!」

 

 東3局に進んで今度こそと意気込んだが、またしてもホヤウを発動されてしまう。その事実に加えて、ホヤウを再び使っておいて、依然として疲れている様子の無い咲を見た獅子原は、

 

(な!?まだ気力が?・・!、はは、そっか。カンドラさんには頼れる仲間がいるんだった。大方ホヤウに捧げた生贄の子から、ついでに気力も徴収したんだろうなー。はは・・ホント、敵わないなぁ。)

 

 

 咲と自身の格の違いを自覚し、戦意を喪失した。・・が、

 

(よく分かったよホヤウ、確かに私はカンドラさんには及ばなかったよ。でも!)

 

 ユキの為にもと気力を奮い立たせ、視線をカンドラからネリーへと移動させる!

 

(ホヤウの能力無力化は使用した本人を中心に発動する!なら私からネリーさんへカムイで攻撃する分にはそこまで障害にはならない!)

 

 そう思ったらもう手が動いていた!呼び出したのはパコロカムイ!

 

(行けパコロ!生意気な留学生に一太刀喰らわせてやれ!)

 

 獅子原の背後に現れた新たなカムイ、その名はパコロ!パコロは一旦地面に溶け込むと瞬時にネリーの横へ移動して、そのままネリーの背後からガバッと抱き着いた!咲のホヤウの能力に意識を向けていたネリーは、反応が一歩遅れてしまい、そのままパコロに飲み込まれてしまった!

 

(・・え!?う、うわああああああああ!!!???)

 

 絶体絶命かと思われたネリー、がしかし!

 

 

(・・あ、あれ?この感じ?私のオーラと似ている・・?)

 

 パコロにもろに飲み込まれたはずのネリー。しかしその表情はどこか余裕を感じさせるものがあった。反対にパコロをネリーへけしかけた獅子原の方は、いつまで経ってもネリーの中から出てこないパコロに嫌な予感がしていた。

 

(あ、あれ?パコロ?・・もしかして、貴女も裏切る・・のかな?)

 

 そう思った瞬間、ヒョイッといった感じでネリーの背後から顔を出したパコロ。その姿に一瞬安堵しかけたが・・

 

(・・パコロ、なにその”本当に申し訳ない”って顔。)

 

 ネリーから完全に離れたパコロは獅子原にすまなそうに手を合わせると、そのまま地面に溶けて北海道へと帰って行った。その一部始終を見ていた獅子原は、これはパコロのデバフ効果も期待できないか、といった諦念に包まれた。

 

 パコロが帰るのを見届けた後、獅子原は今の自分に残っているカムイを確認する。

 

(残っているのは、フリカムイとアッコロカムイ、そして麻雀では使えないパウチカムイ・・うーん、参った!もうどうしようもないわこれ!)

 

 今度こそ完全に戦意を喪失させてしまった獅子原。しかし、それも彼女の本来の目的を考えれば、まぁ当たり前の事と言えた。

 

(しょーがない!今回はユキを目立たせる事が目的だったし、うん・・ここは明日の5位決定戦の為にも残しておくかな。)

 

 そう、獅子原の目指している結果はこの場にいる他の選手とは違うのだ。故に、敗北が確定した今となっても・・彼女の表情は、試合前と同じで明るいままだった。

 

 そんな彼女の明るい表情と同じくらい、嬉しそうな表情をしているのが、彼女の正面に座っているネリーだった。

 

(・・なるほどね、ありがとう有珠山・・いや、獅子原。貴女のおかげで、私のオーラの本当の使い方が理解できたよ。)

 

 

 

__その後、新たに手に入れたホヤウの力を試し打ち感覚で連発して場を支配し続けた咲。そんな彼女の手の平の上で踊る3人の雀士達という構図が、後半戦が終わるまで続いた。もちろんネリーは最後に咲へ挑もうと、一応オーラで咲に伝えたが・・

 

「・・・・・」

 

 前半と同じで呆れた表情を返されたまま終わった。その表情の真意が気になって仕方ないネリーは、ここは自重しよう、といった思いで標的を末原に変更。役満クラスをぶち込み、一気に頂上へ返り咲いた。

 

 結果、1位臨海、2位清澄、3位有珠山、4位姫松、といった感じで、無事に咲の思惑通りの展開になったのだった。

 

 

つづく

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