ちょっと今後の展開について迷っていました。
東京のとある場所、照りつける真夏の太陽がアスファルトを焼き続けて約6時間が経った頃。クーラーのよく効いた車内で透華の横に座っている少女は、ポツリと呟いた。
「・・世話をかけるな、透華。」
「え?・・急にどうしたの衣?」
「いやその、こういう祝い事の準備に関しては・・衣は不得手ゆえな。こうして透華に全て任せる事になってしまって・・本当に申し訳なく思っている。」
時は少し遡って・・咲達が就寝する約半日前。咲が決勝戦で勝つ事を全く疑っていない衣は、彼女達清澄の団体戦優勝を盛大に祝う為の宴会場を、会場の近場で見つける為に朝から車で出かけていた。
幸いにも、既に候補は2つに絞れており、後は実際に行って比べるだけとなっていた。
しかし衣は、それに酷く罪悪感と恐怖を覚えていた。
まず最初に・・今回の祝勝会の会場探しは、龍門渕家に連なる使用人達に全て任せており、それも透華が、衣の為にもやって欲しい、と透華の父親にお願いした結果である。当然その分のお金は全て透華の父が出している為、少なくとも会場の確保という点においては衣は全く役にたっていない。次に会場の飾りつけであるが、これも使用人達がほとんどやる為、衣の出番はない。じゃあ衣はその分龍門渕の為に働いているのかと言われれば・・当然NOである。そもそも透華の父親は、6年前に両親と死別した衣を引き取った時に衣のオーラに恐怖を感じており、それからずっと衣とは距離をとって暮らしてきたのだ。
つまり、現龍門渕家の当主である透華の父親は、天江衣の事を腫れ物扱いしており・・家の為に外で働くよりかは、家の中でずっとニートしながら死んでいってくれた方がまだまし!という考えでいる。
故に衣が龍門渕家の為に働くなどというのは夢のまた夢であり、また自立しようにも龍門渕の名前に傷が付く恐れを危惧してか、現当主は衣にニートしていて欲しい・・と思われている事を、衣本人もなんとなく察している。
・・まぁ、庶民からすればすごく羨ましいと思われるような状況だが、今の衣にとっては最悪であった。
「別に気にしなくて良いのよ?私だって咲さんには、色々と私の知らない日本全国の話を聞かせてもらっていたのだから・・もう私と咲さんは友人と言っても差し支えない関係よ!だからこうして、祝勝会の準備をするのだって、友人として当たり前の事だから・・・でも、まさかあの温和な咲さんが、裏社会を駆ける伝説のギャンブラーとして有名なカンドラだったなんて・・・その事を事前に教えてくれなかったのだけは、ちょっぴり不服ですけどね!」
「そうか・・・その事に関してはすまなかったな。だが、カンドラの正体がインターハイ前にバレる事態だけは、どうしても避けたいとの本人たっての希望ゆえな。そこは理解してくれ。」
「はいはい、分かってますわ。・・・でも、今思えば確かに・・・・咲さんがカンドラだっていう証拠のようなものは、そこかしこに散らばっていましたわね。」
「?・・・例えば?」
「いや、例えばって・・・衣、貴女の態度の変化よ。」
「は?・・・衣の態度?」
「そうですわ!そもそも貴女ねぇ!インターハイの予選が終わったあたりから、急に態度が変わったじゃないの!いつもの達観した態度はどこへやら!怒りに駆られて手あたり次第に使用人達を不思議な力で痛めつけたじゃないの!」
「ああ、そんな事もあったな。」
「あったなじゃなくて!ホント、あの後色々大変だったんですからね!そして1週間後に咲さんを我が家に招待してから貴女は更におかしくなった!朝早くから、咲さんを倒して見せる!って息巻いてから約8時間!咲さんがお帰りになるからとお見送りに来てみれば!『咲様ー!お願い帰らないで!衣とずっと一緒にいてー!』って泣きじゃくっていた貴女を発見して・・・もうあの日は一日中、何が何だか訳が分かりませんでしたわ。」
「・・・言われてみれば確かに・・・咲がカンドラたる根拠が、そこかしこにある・・・な。」
透華の、咲に会ってからの自身の変化、を具体的に指摘される事で、衣の意識は再度過去へと向けられる。
(・・・今にして思えば、そもそも衣がこんな風に透華・・いや、龍門渕家に媚びを売っている全ての原因は、カンドラこと咲がこの衣の心を奪ったからに他ならない。)
咲は地区予選で衣に翻弄されているように演じてみせて・・その実、全ては咲の手の平で転がされていたという事を、衣本人に試合終了後に言葉で突きつけていたのだ。
当然そんな煽りを受けた衣はキレた。予選が終わってから1週間後、衣は咲を朝早くから邸宅に呼び出して、二人で特打ちをしようと迫った。そしてその提案に咲は乗り、二人はその日一日中麻雀をやり続け・・結果、咲が邸宅から出てきたのは、咲が入ってから8時間後の午後5時であった。
その8時間の間に何があったのか・・ザックリ言ってしまえば、衣は咲の好みに合わせて調教されてしまったのだ。
「おやおや、また衣さんの負けですね。」
「ぐぬぬ・・まだだ!私が勝つまでヤる!」
このように、最初こそ威勢よく吠えてはいたが、それは咲のオーラによって思考を誘導されていたからに他ならず・・
「よし!このまま海底までずっと1向聴で終わるがいい!」
「残念でした・・・自摸!一盃口です!」
咲のオーラで熱くなっていた衣は、必要以上に自身の場の支配を強固にして力を見せつけるゴリ押しスタイルを使い続け・・ただ無意味に貴重なオーラを浪費し続けた。一方咲は衣の身体に自身のオーラを少しずつ注入していく事だけに集中して、彼女が”自分から”オーラを無駄使いするように、軽く怒りの感情を刺激するだけに留めた。
その結果・・
「はぁ・・はぁ・・クソッ!もう一度!場の支配を・・・・え?あれ?嘘・・オーラが、もう出ない。」
もう戦えない事を自覚した衣は、途端に力が抜けたのか・・背もたれにもたれ掛かって脱力してしまった。それを見た咲は、頃合いだと思い自身もオーラを霧散させた。
自分の中から他人のオーラが抜けていく感覚に初めて気づいた衣は、ここで初めて自分が咲のオーラで熱くなっていた事を知った。
そして同時に心からの敗北を受け入れた。衣にとって本当の意味での始めての敗北だった。少し前までの衣だったら負けを認めずに駄々をこねていただろう。しかし、自分以外でここまでオーラを自由に動かす事が出来る存在を出会うのも生まれて始めてだったいう点もあり・・この敗北を己の糧とし、これからは油断せずにいこう、という小さな改心を起こさせるくらいにまでは、この敗北は大きかった。
しかし・・これで終わりではない・・むしろ、衣の地獄はここから始まった。
「・・・もうよい、衣の負けだ。宮永咲・・確かにお前は強かった。インターハイでのあの勝利は、決してマグレなどではなく、お前本人の実力なのだな・・・」
「・・あの、もう帰っていいんですか?」
「ああ、よい。それと帰りについても心配するな。この別宅を出れば、すぐに誰か使用人が・・」
「いえ、そうではなく・・・私が言いたいのは、貴女が満足したから、私が帰っても良い・・って事なんですか?」
「・・・ああそうだが?確かに衣はお前に負けたが、それは衣に技術が足りなかったからだ。技術をちょっと磨きさえすれば、またお前など簡単に倒す事が出来る。故に待っていろ、宮永咲!近い内にお前に再戦の約束を取り付ける!その時が、お前の命日だ!」
ここが天江衣の運命の分岐点であった。ここで素直に反省して頭を下げていれば、あそこまで咲に歪まされる事はなかっただろう・・・
「・・貴女、随分と偉そうですね。」
「な!?え、偉そうとは何だ偉そ・・・ひっ!?」
言葉を続けようとしたが思わず黙ってしまう、だがそれも仕方がない事。咲の背後から大きく伸び始めた黒いオーラは、まるで捕食の機会を伺うようにゆらゆらと揺れては時折り鋭利に尖る。それは生まれて始めてガス欠状態に陥っている衣にとって、恐怖そのものであった。
「ふふ、貴女が今まで他人にやってきた横暴の分以上の暴力を、貴方自身に刻み付けてあげます!」
そう言ってニヤッと笑ったが刹那!衣に向かって黒のオーラが雷の如く迫る!無論いきなり殺したりはしない。この時点では、咲は衣を拘束しようとしているだけであった。しかし、そんな咲の手加減など知らない衣は、このまま咲に嬲り殺されると思って反射的に逃げだした。
ガタタッ!
「ひぃ!?来るな来るな来るなーーー!?」
みっともなく椅子から転げ落ち、それでも必死に逃げようとして床を這いずりながら遠ざかる。一歩咲から離れる毎に目から涙が零れ落ちる。
「あれあれー?衣ちゃーん?何処に行ったのかなー?」
(はぁ、はぁ・・!?、此奴!目を瞑っている!?手加減のつもりなのか、それとも人殺しすら娯楽の一種だとでも言うのか・・ダメだ、今は逃げなくては・・・)
出来るだけ音を立てないように、ゆっくりとした動きで部屋の隅まで移動する。後は声を押し殺してじっと耐えるのみ・・衣がここまで行動を終えるまで約5分が経っていたが、その一方で、咲の方は未だに衣が座っていた椅子の辺りを触手で探っており、そこから触手を動かそうという気配も無かった。そんな咲を見た衣は、
(はぁ、はぁ・・どうやら、此奴の触手の動きは此奴自身の視界に強く依存するらしい。現に奴はさっきから同じところをベタベタと何度も触っているが、そこに何もない事になかなか確信が持てぬ様子。これは行幸!このまま誰かが来るまで逃げ切ってみせる!)
勝ち筋が見えて表情が明るくなる。だが・・・
「・・今、逃げ切れるとホッとしました?」
瞬間、ドキリと心臓が跳ねる。まさか、そんな・・と。
「・・く、くふふ・・あはははは!大丈夫ですよ!別に見えてる訳じゃありませんから・・だからそんなに震えない下さい。さっきから居場所がバレバレですよ。」
言われてハッとした!
(し、しまった!声を抑える事ばかりに気を取られて・・)
時すでに遅し。咲は勢いよく立ち上がるとそのまま真っ直ぐ衣の元へと向かって歩き出す。もちろん目を瞑ったまま。
「仕方ありませんね、本当はこのお遊びをあと1時間は続けるつもりだったのですが・・貴女がいけないんですよ、逃げるのが下手だから。」
強い口調で責めながらあっという間に衣の前まで移動する。当然恐怖心を煽る為にわざと大きな足音を立てる事も忘れない。そして咲が迫り来る中、衣は必死になって叫ぼうとする自身の口を手で塞いでいた。
(駄目だ!叫んでは駄目だ!叫べば此奴を喜ばせる事になる!)
せめてもの抵抗が自身の恐怖心を抑える事・・そんな惨めな立場まで一気に転落してしまった自身の情けなさに、再び涙が零れそうになるも何とか堪えた。そして目の前まで来た咲をキッと睨みつける!
衣の眼に反抗心が宿った事を、衣の中に僅かに残っているオーラの変化から確認した咲は、
「・・・なるほど、丸っ切りバカという訳でもないようですね。なら予定は少し変更です。まずは貴女の成長を妨げている、その無駄に高いプライドをへし折ります。」
そして衣にとっての地獄の時間が始まったのだった・・・
「ちょっと衣!?私の話をちゃんと聞いていまして!?」
「んえ!?あ、ああ。もちろん聞いているぞ!」
過去に想いを馳せていた衣だったが、透華の声で意識を切り替える。
「全くもう!・・・でも本当に良かったわ。貴女が咲さんと友達になってくれて。」
「?・・・何故だ?」
「ふふ、貴女は気づいていないかもしれないけど・・・衣、貴女は昔に比べて表情が豊かになったのよ。咲さんと出会ってから。」
「・・・そうか?」
「そうよ。そして私みたいに不思議な力を持たない人にも、分け隔てなく接してくれるようになった。その成長が、私にとっては何よりも嬉しいのよ。」
そう言ってニコニコと笑う透華、それに衣も取り合えず笑って返す。そして思う・・
(そうだな。衣が透華達の事を認められたのも、衣自身が凡人の域を出ない矮小な存在だと、咲に教えられたからに他ならないからな。)
無論、あの高飛車な衣が自分は取るに足らない矮小な存在だと思い直す過程で、とんでもない恐怖体験を味わった事を、透華は知らない。
(あの後・・衣は咲の黒と赤のオーラによって徹底的に身体を切り刻まれた。切り刻まれたと言っても、痛みがあるだけで実際に切られた訳ではない・・だがその手加減が、衣の心をあっという間に壊した。最初は皮膚が裂けて焼けるような幻肢痛に泣き叫び、必死になって許しを乞うたが、咲は笑うだけで止めようとはしなかった。)
「ぐがっ!も、もうやめ・・いえ、やめて下さい。死んでしまいます。嫌です、死にたくないです・・」
「だからさっきから言っているでしょうが!口だけの謝罪なんか何の価値も無いと!私に詫びる暇があったら貴女が今までやってきた、ありとあらゆる罪を告白しなさい!そうすれば、私も何処を治せば良いのか分かりますから!」
(そう言われて必死になって思い当たる罪を告白し尽くした。でも既に気力が底をついていた衣は、次第に叫ぶ体力すら失い、もういっその事ショック死するレベルの重い一撃をやって欲しいと・・トドメを刺して欲しいと懇願した。そしたら・・)
「・・よし、こんなところでしょう。」
そう言って衣の横に寝転んで、そのまま衣を抱きしめる咲。
「・・ふえ?・・咲様?・・」
「よしよし、貴女は立派ですよ。だって私の言った事をちゃんと守ってくれましたもん。だからご褒美をあげちゃいます。」
子供をあやす様に喋る咲、そして広がる白のオーラ。オーラはあっという間に2人を包み込み、衣の心を癒していく。それはさながら、まるで既に亡き両親に抱かれているような感覚だと、衣は感じていた。
(褒美と称して白のオーラで衣を癒し始めた。当然衣はその優しくて暖かいオーラにあっという間に
「うう、ぐすっ・・・咲様、ありがとうございます。衣にお慈悲を与えて下さり、本当にありがとうございます・・・」
それは心からの感謝であった。擬似的にだが、衣は再び両親の温もりを得られたのだ。しかし、そんな想いも咲には届かない。
「ふーん・・本当に有り難く思っているんですかねぇ・・・」
「・・え?」
「じゃあこれからは、私の言う事を何でも聞いて実行して下さいね。」
「そ、それは・・・」
「はい、ダウト。」
(そしてまた嬲られる。今度は最初と違い、オーラがハンマーのような形をとっていた。故に先程までの切られる痛みとは全く違い、叩かれた箇所が燃えるように熱くなった後に無くなるような喪失感が衣を襲った。当然衣は許しを乞おうとしたが、それは逆に悪手だとすぐに思い直し、逆に口を開かずに痛みに耐えた。当然聡い咲の事・・・すぐに先程の衣とは違う事に気づいて嬲るのを止めてくれた。・・・最も、止めるまでに15分以上は掛かっていた気はするが・・・)
「・・・ふーん、私が何に怒っているのか、どうやらちゃんと分かっているようですね。」
「・・・はい・・もちろんでございます・・・咲様・・けほっ・・これは・・先程までの躾けと・・違って・・罰・・なのでしょう?・・・」
「ええ、そうですよ。じゃあもう分かりますよね?自分がどうすれば良いのか?」
そう言って倒れている衣を抱き起し、腕の中の衣に問う笑顔の咲。その背中には、天使のように大きな翼が生えていた。
(・・・ああ、衣は馬鹿だった。最初にこのお方を見た時に理解するべきだったのだ。原村が自身の分身を背後に投影したものと同じだと・・先入観に踊らされてしまった。このお方は原村とは・・いや、その辺の能力者とは全く違う。原村や衣のような能力者が天使だと仮定するのであれば・・・このお方は天使を統べる大天使・・アークエンジェル・・・そう、4人いるとされている特別な天使の1人・・炎の天使ウリエル!)
そう思うと同時に衣は悟った。この出会いは運命なのだと・・・彼女の下で仕える事こそが、衣が特別な力を持って生まれてきた・・意味なのだと。
「う・・・ぐ・・ふ・・」
身体中のあちこちが幻肢痛に
(このお方こそ、衣が仕えるべき存在!生まれ持った能力の誘惑に負ける事なく自身を律し、力に溺れて驕り高ぶる能力者達を正気に戻す・・・堕天した天使達を浄化する使命を背負ったお方!ああ、ようやく見つかった!衣を引っ張って、守ってくれる存在。・・・衣のお父さんとお母さんの代わりになってくれるかもしれないお方!)
「・・・私、天江衣は貴女の元に下ります。どうか至らぬ私を導いて下さい。」
(あれからまだ半年も経っていないというのに、不思議なものだ。遥か昔の事のように思えてくる。今思えばあの時の私は舞い上がっていたな。咲が両親の代わりだなどと・・・今は違う。今は、咲は衣の”お姉ちゃん”か”伴侶”になってくれるかもしれない存在!・・・だな。だがこの間のフェイタライザーの件もある。いい加減衣も、咲の大切な存在の真似事、からは自立して、自分だけの”咲の場所”をしっかり作っておかなければな!無論咲から離れる選択肢など無い!咲はこれからもなんやかんや理由を付けて仲間を増やすだろうし、私はその仲間達の一つの手本として、咲の傍に立ち続けるという仕事も残っているのだし・・・まぁ、当面の間は大丈夫であろう!)
衣が割と楽観的に今後に身の振り方を考えていると・・・
「・・・!、衣、そろそろ着きますわよ!」
透華の言葉で顔を上げる。すると遠くに大きな中華風のホテルが立っているのが窓越しに見えた。
「おぉ、アレがか・・・うん、中々良さそうだな。」
「ええ、あれだけ外装が綺麗なんですもの。きっと内装も素敵よ。」
そう言って楽し気に笑う透華。そんな透華の笑顔を見て衣は思う。
(・・・そういえば透華よ。先程『自分は不思議な力を持たない』と言っていたな?・・・それは違うぞ透華よ。透華には間違いなく異能が備わっている。それもとんでもない奴がな。だから咲はお主のところに足を運ぶのだ。お主がいつかその力を正気のまま使い始める日が来ると考えて・・そしてその力に飲まれるようであれば、咲は迷いなく透華を自身に依存させに来るぞ。そうするのが一番早くて安全だからな。)
そこまで考えて・・・途端に邪悪な笑みを浮かべる衣。
(あははは・・・楽しみだ!透華も衣と同じ様になるのが!咲の調教は激しいぞ!果たして透華は何分持つ?何分で咲を神格化する?くふふ・・・ああ、その時が楽しみだ!)
思わずくふふと笑い声を漏らす衣。純粋で優しい透華は、その笑顔すらも、これから会場の下見に行くのがワクワクして止まらない!という高揚感ゆえのものだと捉えるのであった。
「ふーむ。内装もなかなか良かったな。」
「ええ本当に!これなら咲さん達も満足なさるでしょう!」
会場の下見を終えた二人は後の事を使用人達に任せてその場を後にし、そのまま乗って来た車で別の場所へと移動していた。
「・・ねぇ衣、本当に大丈夫なの?」
「ん?何がだ?」
「いえその・・・本当に彼女を祝勝会に呼ぶの?」
「ああ、もちろんだ。むしろ彼女がいなければ祝勝会は始まらないと思うぞ。」
「そう・・・でも大丈夫?咲さん、怒ったりしないかしら・・」
「・・・まぁ、その時はその時・・・だろうな。」
透華が衣を不安視する中、二人を乗せた車は、東京の外れの方にある・・・とある病院の方へと向かうのであった。
つづく