雀荘荒らしの咲   作:ロクナナエイト

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これを書いてる私も一旦状況を整理したいので
この話を挟みました。


虎姫による状況整理

 

「失礼しました。」

 

 日曜日、それは普通の学生ならゆっくりとベッドの中で布団に包まって身体を休めたり、友達とショッピングなどに行って精神の休息を取ったりする為に使われる、貴重な休みの日である。

 

 しかしこの宮永照は違った。昨日あれだけ行くなと言われた雀荘に、虎姫のメンバー全員を連れて行ってしまい、あろうことか同じ大会に出場するネリー・ヴィルサラーゼと口論になるという問題行動を起こしてしまった。

 

 その件で朝早くに麻雀部の顧問と教頭に呼び出され、1時間みっちりとお叱りを受けて、やっと解放されたというのが今の状況である。

 

「終わったか、照。」

 

 照が職員室から退出した瞬間を見計らって菫が労いに来る。そもそも最初は虎姫のメンバー全員がお叱りを受けていたのだが、15分程経って照以外はもう帰っても良い、と教頭が言い放ち、抵抗する間もなく照だけを残して職員室から追い出されてしまったのだ。

 

 もちろん虎姫のみんなは頑張って残ろうとしたが、顧問の珍しい怒り顔と有無を言わせない圧に屈してしまったのである。

 

 そんな中、今回の件で少し責任を感じていた菫は、照へのお叱りが済んだらいち早く照を励まそうと、こうして職員室前でスタンバっていたという訳である。

 

「菫・・ごめん、私のせいで迷惑かけて。」

 

 いつも無表情な照だったが、この時ばかりは申し訳なさそうな顔をしていた。

 

「気にするな、元をたどれば原因は私にある。」

 

(そう、そもそも私が昨日の昼、教頭の話を蒸し返さなければそれで済んだんだ。それなのに、わざわざ話を蒸し返して、その結果照を暴走させる事になってしまった。今回はさすがに私が悪い。)

 

 そんな罪悪感を抱えながら、菫は部室に行くまでの間ずっと照を励まし続けた。その甲斐あってか、部室前につく頃には照の表情も、元の仏頂面に戻りつつあった・・が、まだ完全には戻らない。

 

(よし、私がフォローできるのはここまでだな。あとは淡が照に甘えれば、アニマルセラピー的な効果で元気になるだろ。)

 

 虎姫の大事な大将を畜生扱いしながら、菫は部室の扉を開けた。

 

「今戻っ...」

 

「だーかーらー!教頭の頭は絶対カツラだって!」

 

「いーや!!アレは絶対植毛してるって!」

 

「私は両方やってる可能性が一番高いと思うよ。」

 

 部室の扉を開けた瞬間入ってくるバカみたいな会話の内容に、思わずフリーズしてしまう菫部長。

 

「...お前ら、何を話してるんだ?」

 

「スミレ!おかえりー!」

 

「「お疲れ様です部長。」」

 

「聞いてよスミレ!セーコが教頭は植毛してるって言って引かないんだよ!」

 

「いやだから、アレは絶対植毛実感コースだって!」

 

「私は頭頂部がカツラでサイドが植毛してると思う。」

 

 そんな虎姫の馬鹿話を黙って聞いていた照だったが、

 

「・・ふふ。」

 

 思わず笑ってしまった。そして同時に虎姫のメンバーに対して、新しい信頼感のようなものが芽生えた。

 

(虎姫のみんなは普段通りだね・・昨日あんな事があって、そのせいで日曜日を潰されちゃって、私に怒っていると思ってたのに・・みんなには、話しておこうかな。)

 

 改めて虎姫の結束力の硬さを再認識した照は、自身の過去に何があったのかを話す決意をしたのだった。

 

「だから絶対カツラだって・・テル?なんか良いことでもあったの?」

 

 淡の言葉に反応して他の面々も照の方を見る。その顔は、淡の言う通りとても爽やかな顔をしていた。

 

「みんな、まずはごめん。昨日は私の我儘につき合わせちゃって。」

 

「いや!そんな気にしないで下さい!私だってカンドラさんに会いたかったんですし、私としては結果オーライですよ。」

 

「そうですよ、というより虎姫のみんなは大なり小なりその子の事が気になってたんですから、結果的にはプラマイゼロなのでは?」

 

「尭深の言う通りだ。さっきも言ったが、そもそもあんな話題を話し始めた私が悪かった。だからそんなに気に病むな。」

 

 照の珍しい謝罪の言葉に揃ってフォローする虎姫の面々

 

「みんなありがとう。本当に感謝してる・・だから、あの子の事についても話しておきたいんだけど、問題ない?」

 

「あの子の事っていうのは、昨日あった嶺上ちゃん・・お前が咲と呼んでいた子の事でいいんだよな?」

 

 この言葉で場の空気は一気に張り詰める。みんなやはり気になっていたのだ。インターハイチャンピオンの宮永照と、例の雀荘荒らしとの関係を。

 

「うん、結構長くなるかもしれないけど、お昼までには終わると思う。」

 

 その言葉を聞いて尭深はお茶を汲みに席を立った。誠子は何か摘まめる物を探してお菓子の入った棚を漁りに行った。余った三人は二人の準備が終わるのを待つために、来客用の豪華なソファーセットの方へ移動したのだった。

 

 

 

___「さて、どこから話そうかな。」

 

 このソファーセットは6人が対談できるような作りになっていて、まず中心に大理石で出来た長方形の机が鎮座しており、その横に2人用の高そうな横長ソファーが対面していて、余った面に豪華な椅子が対面するような形で配置されているのが、このソファーセットの特徴である。

 

 照はそんな豪華な椅子に座って天井を見上げながらポツリと話し始めた。

 

「あれは、私と咲がまだ一緒に暮らしていた頃の事。私達はいつも一緒にいた。私と妹の咲、そして従姉妹の光の3人で。」

 

「え?照って従姉妹がいたの?」

 

「うん、お母さんに兄妹がいてね。そっちの一人っ子の従姉妹で咲と同い年。小学校の頃に事故にあって車イスに乗るようになっちゃったけど。」

 

「車イス!?・・それは、辛かっただろうね。・・あ!もしかしてその子も麻雀してたり・・」

 

「ちょっと待て淡、今は先に妹の方を照に話させてくれ。」

 

 そう言われて淡はちょっと不機嫌になったが、渋々承諾してくれた。

 

「分かった、咲を中心に話すよ。・・咲は、いや私達は小学生の頃からよく麻雀をして遊んでいた。理由は前にも話したと思うけど、私達の家では毎年お正月にお年玉を賭けて麻雀していた。私はそれがあまり好きじゃなかった。」

 

「確かに、普通に考えたら子供に与えたお年玉を、親が麻雀で力づくで奪うっていう虐待に見られてもおかしくない事ですからね。」

 

「というより教育に悪いです。子供にほぼ違法賭博じみた事を強要するなんて!私だったら離婚も視野に入れますよ!」

 

「ふふ・・実際に私の両親は別居する事になったしね。ある意味尭深の言う通りだよ。」

 

 その自虐じみた言いぐさに空気が重くなる。だが言った本人はスッキリした顔をしていた。

 

「とにかく、そんな最悪な家族麻雀で生き残る為には強くなるしかなかった。まぁ最初はそんな理由で遊び始めた麻雀だったけど、2か月くらいで私達はお父さんをトバせるくらいにまで強くなった。そして練習を始めてから最初の家族麻雀で、私達はお母さんと互角に戦った。私が6年生くらいの頃には2人で難なく勝てるようになってた。」

 

「・・あれ?お前のお母さんって、確か元プロだよな。」

 

「うん、まぁ遺伝したんだろうね。色々と・・」

 

「へーー!妹の名前ってサキだっけ!?元プロ相手にテルと二人で共闘して倒したんだ!その子そんなに強いんだね。」

 

「その咲って子は、もしかして、今年の長野代表の清澄高校の大将の?」

 

「うん、宮永咲。多分今年の決勝まで這い上がってくると思う。」

 

 その言葉に淡は驚く。照がそこまで相手の事を評価するような事を言ったのが初めてだからだ。淡はますます咲への関心が高まった。一方菫は何故か首を傾げていた。

 

(ん?でもこの前のインタビューの時に同じことを聞かれて照は..いやそれは後だ。まずは話を全部聞こう。)

 

「ふーむ・・今のところ順調だな。家族麻雀の諸悪の根源である両親を姉妹で力を合わせて打倒。しかも小学生の時点で。ここからどうなったら2人、いや3人か。3人が離別するのか想像つかないな。」

 

「はは・・私が中学2年の時に火事があったんだ。」

 

 唐突に起承転結の転をぶち込まれてその場にいる全員が目を見開いて照を見つめる。

 

「・・え?」

 

「その火事が起こる前の日に、もうすぐお正月だからって急におばあちゃんが家に来てね。それを知った光の両親が「今年のお正月は盛大に祝おう!」ってすごく張り切って。私達の家に光の家族も呼んで盛大に祝う事になったの。」

 

「まさか、その火事で照さんの家族の誰かが・・」

 

「うん、おばあちゃんと光の父親が亡くなった。」

 

 その事実に皆が沈黙した。

 

(父親を亡くした従姉妹か。まず従姉妹が離れて行って、それを機に家族もバラバラって事か?)

 

「それでサキ・・じゃなくて、家族のその後は?」

 

「光の家族は崩壊、車イスだった光は火事の時に逃げ遅れて動かない足に酷い火傷を負う事になった。・・ちなみにその時、逃げ遅れた光を救ったのが咲。」

 

「なるほ・・えっ!?すまん、もう一回言ってくれ!?誰がなんだって!?」

 

 あまり大きな声で話したくない内容なのは分かっているので、耳を澄ましてしっかり聞いていた菫だったが、思わず耳を疑う発言が飛び出たのでとっさに聞き返してしまった。

 

「?だから、咲が光をお姫様抱っこしながら、燃え盛りながら倒壊する家を掻い潜って、英雄の様な佇まいで救い出したんだって。」

 

 その回答で菫の中の咲のイメージが大きく変わる事になった。具体的には文学少女から体育会系女子くらい変わった。

 

「他の方はその時何を?」

 

 この尭深の質問に、照の顔に影が差す。

 

「お父さんは消防を呼んで、お母さんは光のお母さんを落ち着かせようと必死だった。光のお母さん、燃え盛る家に戻ろうと必死だったから・・私はただ茫然として何もできなかった。」

 

「テル・・」

 

「それで消防に連絡し終わった時くらいに、咲が気絶してる光を担いで、倒壊し始めた家から出てきて、光の足に酷い火傷が出来てしまった事を泣きながら光のお母さんに謝り始めて・・そしたら錯乱した光のお母さんが咲を責め始めて・・お父さんが光のお母さんの頬を叩いて・・」

 

「・・もういい、その辺りの事情はよく分かった。」

 

 聞いている方が参ってくるような悲惨な話を照は淡々と続ける。そんな照を見て精神が軋む虎姫の面々。

 

「それで、最後はどうなったの?」

 

「光のお母さんは宮永家と関わった事を後悔してすぐに音信不通になった。当然、今光が何処にいるのかも分からずじまい。咲は光の足に酷い火傷が残った事で激しく自分を責めた。咲は光の事ばっかり考えるようになって、麻雀にも全然集中できなくなっていって・・そんな咲に私は全く勝てないでいて・・」

 

「・・ん!?え!?今勝てないって言いました!?」

 

 誠子の言葉に虎姫の皆はハッ!とした。インターハイで無双したあの宮永照が全く勝てない相手。それが妹の宮永咲だと本人が認めた事に驚いてハッ!としてしまったのである。

 

「うん、あの子は嶺上開花を手足のように自在に使って点数調整して、私を勝たせ続けて・・いつも私は麻雀で勝って能力で負けていた。・・分かってる、あの子が点数調整する理由もお年玉が減らずに、みんなが楽しく麻雀する為にするにはそれしかなかったって事も。でもそんな人を馬鹿にするような麻雀を、光があんな事になった後でも続けてたから・・私は感情に任せて、取返しのつかない事を言っちゃって・・大喧嘩して・・咲と顔を合わせるのも辛くなって、高校入学と親の仕事を理由にあの子から逃げた。・・これで大体の内容は話せたかな。」

 

 そこまで聞いて誰も次の言葉を繋げず一度沈黙するチーム虎姫。重たい沈黙が部室を包み、外のそよ風の音が鮮明に聞こえる・・そんな中、各々が頭の中で推測を交えて過去の宮永家の惨劇を整理していた。

 

(なるほど、それで昨日咲ちゃんは照に対してあんなに敵対的だったのか。いや、でもこれは不幸が重なった悲劇としか思えないな。確かに最後、照が咲ちゃんを傷つけたのは、話の内容からして明らかだが、この時点では二人ともまだ中学生・・しかも火事のせいで光ちゃんのお父さんや実の祖母と死別、さらに兄弟同然に育ってきた光ちゃんと離別。本来ならちょっと重い兄弟喧嘩で済むはずだったのに、火事のせいで全部狂ってしまった・・ただただ悲劇だ。)

 

(そっか、サキってそんなに強いんだ。3年前のテルを手のひらで転がせるくらい・・でもテルには悪いけどサキとは本気で戦う!サキが何を思って雀荘荒らしをしてたり、インターハイに参加してるのか、てんでわからないけどインターハイの方は間違いなく優勝を狙ってるはず!うん!だったら私達の倒すべき相手だ!例えサキが優勝できなくて、結果的にテルが不幸になる事になっても、私は全力でいく!ただそれだけ!)

 

(うーん、気になる事が多すぎるなぁ。なんで咲ちゃんは雀荘荒らしなんて危険な事をしてまでお金を稼ぐのか?そもそも本当に昨日あったカンドラさんが咲ちゃんなのか?なんで咲ちゃんはあんなに実の姉との関係を否定したのか?いやそれは場所が悪かったからで説明がつくか・・確か臨海女子のネリーって子とも知り合いで・・ん?じゃあネリーちゃん?と咲ちゃんの関係って何だろう?・・・・駄目だ、謎が多すぎる。)

 

(うーん、やっぱりおかしいよね。昨日の咲ちゃんの”インターハイに間接的に関わってる”って言葉。咲ちゃんは清澄高校の大将として選手登録していて、この時点でインターハイに直接的に関わってるのは周知の事実。なのにネリーちゃんにはそう伝えなかったしネリーちゃんも知らなかった。なら二十面子さんと咲ちゃんは全くの別人?いやでも、照先輩へのあの噛みつきようは間違いなく互いに気を許した者同士のソレだった。少なくとも私の中では二十面子さん=咲ちゃんで確定。という事はネリーちゃんは二十面子さんの正体が咲ちゃんだと知らない!?なら二人の関係っていったい・・そういえば、咲ちゃんはあの時”今はお金に困ってない”みたいな事を言っていた。じゃあ二人の関係ってお金の関係?もしかして売春!?それはまずいよ!!まだ1年とはいえ・・いや1年だからこそ不味いよ!?相手は留学生だよ咲ちゃん!?何考えてるの!?国際問題になっちゃうよ!?)

 

 各々が勝手に想像を膨らませ、ある者は悲しみの表情を浮かべ、ある者は闘志に満ち溢れ、ある者は何もわからず、ある者は慌てふためいていた。そんな中、この変な空気になってしまった現状を打開すべく照が動いた。

 

「とりあえず、私達は予定通りにインターハイ本戦に駒を進めた。だから開会式で咲と会う事になっても不自然ではないはず。そこで私は開会式が終わったら会場の食堂で咲を出待ちする。昨日、咲が言っていた通りなら、あのネリーって子と話をする為に咲は食堂に必ず来る!その前に先に私が捕まえる!」

 

「現状、そうするしかないですよね。分かりました!私も可能な限りお手伝いします!私個人としてもカンドラさんの正体が本当に咲ちゃんなのか気になるので!」

 

 沈黙を破った照の発言に誠子が即座に同意する。それで一旦話は終わりに向かうかと思われたがここで淡が動いた。

 

「というかテル・・テルはなんでサキに会いたいの?」

 

 その質問を聞いた照は、反射的に肩を震わせた後、淡をギョッとした魚みたいな目で見つめる。

 

「・・分からないの?」

 

「う、うん。だって昨日、テル全く相手にされてなかったし・・あんな別れ方しちゃったし、サキを一方的に拒絶して東京に逃げたテルが、どういった理由で会いたいのかなって・・」

 

(うわ、はっきり言いすぎだよ淡ちゃん。照先輩の目がとんでもない事になってるよ。)

 

「確かに、私は中学生の頃咲を拒絶して逃げた。それどころか高校生になった後も、親に内緒で仲直りに一人で東京に来てくれた、中学2年生の咲を終始無視して長野に追い返した。」

 

(え、ちょっと照先輩、それはさすがに・・)

 

「挙句の果てには、この間のインタビューで長野県代表の宮永咲との関係性を尋ねられた時は”私に妹はいません”と存在否定までしてしまった。」

 

(・・え?テルってそんな鬼畜な事しまくった後に、昨日お姉ちゃん面してサキに話しかけたの!?雀荘荒らしはやめろって!?散々自分は好き勝手しといて、妹の好き勝手は許さないとか、普通だったら殴り合いの喧嘩になると思うけど・・)

 

「でもそれは!私が咲の姉として相応しくないと自暴自棄になっていたから!あの火事の夜!咲と一緒に光を真っ先に助けていればこんな事にならなかった!私が咲以上に強ければ咲が点数調整なんてする必要もなかった!私があの時ちゃんとお姉ちゃんしていれば・・咲と離れずに済んだんだよ。」

 

(うお!?急に熱くなったな・・照。)

 

「全部不甲斐ない私のせいなんだ。そう考えたら私は咲の家族を名乗るのも駄目なんだって思い始めて・・気づいたら、東京に会いに来た咲に酷い事をして嫌われようとしてた。もう私なんかに囚われてほしくなかった。だから終始無言でいて、そしたら咲は泣きながら駅のホームに消えて行って、それを見た私は心にぽっかり穴が開いてどんどん広がるような感覚に陥って・・それと比例するように麻雀の腕はどんどん強くなって・・気づけばインハイチャンピオンなんて呼ばれるようになっていた。」

 

(ああ、だから照先輩って麻雀で勝っても喜ばないんだ。超えるべき目標の咲ちゃんの影がチラついて、勝ったって実感出来ないんだ。なんか可哀想・・)

 

「昔の自分とは違う。今なら咲に点数調整なんてさせないって自分を誇れるようになった反面、今の調子に乗った自分を咲に見て欲しくなかったって気持ちが半分。だからこの間のインタビューの時も、咲に私の事を、もういない存在として扱って欲しかったから・・どうすればいいか迷った結果ああなったってだけ・・だから。」

 

 一気にまくしたてるように話した照の慟哭を聞いた菫は、ようやく納得の言った表情をした。

 

(なるほど、だからインタビューであんな事言ったのか・・全く、蓋を開けてみればただ自信がなかっただけ。それが随分と拗れたものだな。いや、最初から酷く捻じれていたんだ。むしろこれくらいで済んで良い方か。)

 

 

「だから昨日咲が雀荘から出てきた時は本当に驚いた。咲を目にした瞬間、なんでそんな危険な事してるのか問い詰めたくてしかたなかった。もしこのまま咲が雀荘を荒らし続けて、怖い人を怒らせて拉致されたりでもしたらと思うと怖くてしかたなかった。だから昨日はあんな感じになっちゃったけど・・本当は咲には幸せになって欲しい。私の事は忘れて・・楽しく生きて欲しい。」

 

「・・それを自分の口で直接伝える為に、咲ちゃんに会う・・って事でいいんだよな?」

 

 そこまで聞いて菫は念押しするように聞いた。照を信じていない訳ではないが、照は普段感情を抑えるタイプの人間だ。そんな人間が感情を爆発させればどうなるか。その点が不安だった菫は照に釘を刺す事にした。

 

「うん、もちろん咲の言い分もちゃんと聞く。そもそもなんで雀荘荒らしなんかしてるのか・・その部分がずっと引っかかってるから。」

 

「・・ふーー、なら良かったよ。テルの事だからそのまま咲を突き放し続けるかと思ったよ。」

 

「私だってあの頃とは違う。もう感情に任せて喋ったりしない。」

 

「でも昨日は感情に任せてましたよね?」

 

「昨日は不意打ちだったから仕方ない。」

 

「不意をついたのはこっちでは?」

 

「・・誠子、お菓子買ってきて。貴方の自腹で。」

 

「なんで私だけ!?」

 

 

 こうして虎姫の面々は宮永家の事情を知る事になった。同時に虎姫のインターハイにおける目的も変わった。以前まではただ優勝する事であったが、今度はそれに加えて”宮永姉妹を仲直りさせる”という目的が加わった。

 

 決意を新たにした一行は、これまで通りインターハイに向けて虎視眈々と練習に打ち込むのだった。

 

 

 

 

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