それと今回はハーメルンのサイトの接続が不安定になっていると聞いて
急遽仕上げて投稿したものになります。
なので誤字脱字などが散見されるかもしれません。
「白水さん、貴女今何て言いましたか?」
「・・え?」
白水の言葉に確信を得た咲は、彼女からその言葉を再び引き出そうとする。
「何で誰も何も返してくれないんだと、そう言いました・・よね?」
「・・・?そ、そうばい!うちゃみんなばリザベージョンで助けちゃった!なんにみんな、うちになんも返さんで麻雀部から去って行った・・・やけんうちは高校からは・・」
「なるほど、だから高校からは鶴田さんだけにリザベージョンを絞って使い続け、ついでにオーラで価値観まで歪める事で絶対に自分に何かしらの利益が戻って来るようにしたと!そう言う事ですね!?」
「んな!?な、何でそこまで分かったと!?うちゃまだ中学までの事しか話しとらんとに!?」
「いえ、何となくそうなのかなと・・・いくらぬるま湯に浸かっていた白水さんでも、流石に自分が他人に都合よく使われている事に気づけば何かしらの行動に移ると思いました。で、私の頭に浮かんだ案を適当にそれっぽく言っただけなので、半分くらい当たっていれば良いなー程度の事だったのですが・・・まさか、今の全部図星だったんですか?」
「・・・・・そ、そうばい!何か文句ある!?別に能力者であるうちが能力ば最大限に使う為に誰か一人ば実験台に使うくらい、よござんしょう!?というより、沢山の能力者を教育ちゅう名目で、好き勝手に言葉で価値観ば弄りまくっとー咲ちゃんに、偉そうな事ば言われとうなか!」
顔を真っ赤にしながらプイッとソッポを向いてしまう白水。さっきまで情けなく泣いていた事もあり、だんだん彼女の事が幼子のように見えてきた咲。しかし咲はこの感覚はそこまで間違ったものでもないと一人納得していた。
(これで全てが繋がった!やっぱり白水さんは、まだ子供の頃から精神が成長してないままなんだ!最初から全部纏めると、まず初めに白水さんは生まれた時から能力が使えた。そして幼稚園児の頃には既に能力を自分の好きなように使いこなせていた!でもここで大きな問題が起こった。生まれた時からリザベージョンの能力に覚醒していたこの人は、それが当たり前の事なんだ”と思い込んだ”!これが高校生になっても抜けきらなかったんだ!)
そう、咲の思った通り白水は未だに能力が教えた価値観に囚われていた。彼女の能力リザベージョンは、簡単に言えば自分の結果を誰かが倍にして現実にする、というもの。だがこの能力は大前提として白水の成功が合って初めて発動するのである。つまり白水は元のスペックが物凄く高かった、それ故に気づけなかった。凡人は白水のようにポンポン成功する事など到底出来ない事に・・
(それに気づかないまま中学校まで何の苦労も無く昇ってこれた白水さんは気づけなかった!周りの人間が自分のレベルにもう追い付けない事に!なのにこの人は幼稚園の時と同じように、おそらく何かしらの代償を周囲に求めた。リザベージョンで美味しい思いをした分の代償を・・・)
咲の想像通り、中学まで上がった白水は幼少の時と同様にリザベージョンの対価を周囲に求めた。しかしその対価は幼稚園児の頃とは比較にならない程、大きなものになっていた。
幼稚園時代、ある時白水は綺麗な泥団子を100%作れる事を保障する代わりに、綺麗な華で出来た花冠を自身と姫子に献上する事を求めた。またある時は2匹のカブトムシを絶対に発見できる恩恵を与える代わりに、自身に姫子の大好きなイチゴ味の飴を5つ献上する事を求めた。
小学生時代、物の価値を覚え始めた彼女はある日、帰り道に100円拾える事を友達に予言し、その半分の50円分の価値のあるお菓子を駄菓子屋で買って自身に献上する事を求めた。またある日、彼女は自身の友人に今までのリザベージョン5回分の報酬として1000円はする、小学生にしては高価過ぎるネックレスを自身に献上する事を強要した。ちなみにそのネックレスは姫子にプレゼントした。
そして中学生時代、もはやリザベージョンの能力を有り難いとすら思わなくなっていた白水は、この能力で相手に社会的に大きな成功をさせてやる代わりに、自身に何かしら価値のある物を必ず献上させる事をルールとして設けようとしていた。そんな白水の恐ろしい倫理観から作られるオーラを一目見てヤバいと思った老婆は、急いで白水を麻雀協会の下で管理下に置き、能力と精神の成長を促そうとしたのである。
(そう言えば・・結構前に私が白水さんの境遇について同情した時に瑞原さんが何か言っていましたね・・・えっと確か・・・)
「咲ちゃん!確かに白水ちゃんの件に関しては協会のやり方は強引だったし、違法スレスレだったよ・・・でも、私は正解だったと思う!あの子を早い段階で協会の下に置いたのは正しかった!でないと絶対別の悪い組織に目を付けれて、それこそ暴力団みたいなところで都合の良いように利用される人生になっちゃうところだったんだよ!」
(って言ってたけど・・・うん、今なら何となく瑞原さんの言った事の意味が分かる。たぶんあのままこの人が協会へ加入しなかったら、間違いなく能力に精神を乗っ取られていた!中学の時点で既にオーラまで覚醒していて、倫理観もほぼ無いに等しかったらしいし・・・逆に良くこの程度で済みましたね!?)
その後、協会は白水に適当な雀士をあてがう事で、チームという分かり易い成功と対価の関係を覚えさせた。白水とペアになった子がリザベージョンで活躍し、その対価としてペアになった子は白水に感謝と献身を与える。そのような一昔前の御恩と奉公のような関係を強制させる事で、白水の価値観を矯正させようと何人かの協会の人間は頑張っていたのだ。
しかし、既に精神が成熟しリザベージョンという能力の化身に成りつつあった白水は、そのような広く浅い関係だけで満足する事など出来ず、もっと深く強い繋がりを求めた。それこそ神話に出て来る神様のように、若い女の身体や爛れた欲望を欲し始めていたのだ。・・・白水は子供の頃に呼ばれていた福をもたらす現人神という存在に、ほぼ成りかけていたのだ・・・
それを白水が中学2年に上がった際に察知した協会は、当然彼女の精神を元の純粋な子供の頃の様に戻るよう画策し、結果ゆっくりと白水から距離を取る様に同じ麻雀部の子供達に忠告した。
当然と言えば当然だが、その結果白水は飢えた。もうめっちゃ飢えた。とにかく彼女は飢えた。
(うちゃリザベージョンが使えるただ一人の人間なんやぞ!うちに仕えりゃ必ず成功するんやぞ!なして誰もうちば必要とせん!?・・・・クソッ!クソッ!・・・誰か・・うちば崇めんしゃい・・奉りんしゃい・・うちば必要としんしゃいよ・・。)
彼女が生きがいにしていた全てを奪う事で、彼女の中のリザベージョンの価値はどんどん下がっていき・・やがて彼女はリザベージョンなんか持っていても意味が無い、そんな意味の無い能力を持っている自分も無価値だ・・・と思い始めた頃。協会の人間は勝利を確信した。
白水が徐々に弱っていく中、唯一傍から離れなかった子が一人いた。その子こそ、鶴田姫子その人であった。協会は最後の仕上げとして鶴田を彼女の元へ行くようにこっそりと能力や使い魔で誘導し、学校内に彼女と鶴田だけの空間を短時間の間作る事に成功した。場所は屋上、綺麗な夕日が沈もうとしている中、二人は向かい合う・・・夕日を背に能力に頼って生きてきた白水は、1人暗い表情のまま項垂れていた。そんな彼女にゆっくりと近づく、努力だけで白水に追い付いてきた秀才鶴田。二人の間を阻んで来た周囲の取り巻きは、もういない・・・
これこそ協会が考えていた理想の展開であり、目指すべきゴールであった。後はこのまま白水が鶴田を受け入れ、子供の頃のような純粋無垢な少女に戻れるよう、こっそり影ながら応援するだけだと思っていた・・・ところが
「部長・・・久しぶりに、二人っきりですね。少し前までは、部長もうちも周りに取り巻きが沢山いて、ついでに学年も違うたけん・・・こうして二人っきりなんは、ほんなこつ久しぶりで・・・」
「・・・・・姫子。」
「・・・はい。」
「姫子は何があったもうちから逃げん?」
「はい、もちろんです。」
非常に重い束縛の匂わせ・・・しかし姫子は即答した。どうせ姫子も自分を置いて何処かへ行ってしまうんや、と思っていた白水にとって・・・この答えは希望そのものだった。
そしてそれは、この一部始終を使い魔や式神を通して本部から覗き見していた協会の連中にとっても希望となった。これでもう大丈夫だと、後はこの二人が互いに支え合って生きていくだろうと、都合の良いハッピーエンドを夢想していた。しかし・・・
「ほんなこつ?うちが寂しかって思うたら、すぐに来てくれる?」
「はい、もちろんです。」
「じゃあ・・・姫子がうち無しじゃ生きていけんよーに”しようとしたっちゃ”・・・うちから逃げん?」
「(しようとしたっちゃ・・・?)ふふ、うちゃもうとっくに部長んもんばい。なんも心配する事なんかなかですよ。」
その姫子の返答に・・・ニタリッと笑う白水。項垂れて鼻から上は見えないが、口だけが異様なまでに大きく裂けた笑いであった。・・気づけば夕日も沈み始め、辺りはもう暗くなりかけている。そんな中での白水の狂気じみた笑みに、流石の姫子も少し後ずさりしてしまう。
「そうか・・・じゃあ・・・決まりやね。」
狂気な笑顔を作ったまま。白水は姫子にゆっくりと近づく。流石に恐怖を感じた姫子であったが、
(今ここで逃げだしたら今度こそ部長は独りぼっちになってしまう。・・・やけん今がチャンスなんや!傷心の部長が、うちを唯一残った存在として特別視してくれとー!今まで部長の取り巻きでしかなかったうちが、部長の唯一の特別に成れるチャンスなんや!やけん絶対に逃げん!)
そう思い恐怖で震える身体が目立たないように、今自分が出来る最高の笑顔を見せつけてアピールする姫子。その笑顔を見た白水は・・・
「姫子、うちも愛しとーよ。やけん・・一つになろう!」
そう言って姫子に思い切り抱き着いた!一瞬ポカンとする姫子であったが、すぐに顔を赤面させて抱き締め返す。その場の誰もがそのまま幸せな終わりを迎えると思った・・その時!白水がオーラを開放してその全ての限りを注入して姫子の精神を浸食しようと動いた!当然何の心構えも出来ていない姫子はたまらず叫んだ!
「え!?あ!?・・あ、ああ・・ああああああああああああ!!!???」
いきなり自分の中が他人の記憶や価値観で上書きされていく恐怖で精神が崩壊に向かっていく。幸いにも、それを見た協会の人間が急いで止めに入った為、事態はすぐに収束した。その後、式神や使い魔にオーラと能力を封じられ簡易的に拘束されてしまった白水は、そのまま姫子と一緒に協会本部まで連行され裁きを待つ身に成り果ててしまったが・・・
「全ては部長の心ば増長させてしもうた取り巻き達が悪いんです。そしてその取り巻きん中で一番悪かとはうちです。やけんどうか・・部長ばこんまま解放してくれませんか!代わりにうちが一人で部長ば満足させてみせます!部長はただ独りぼっちが嫌なだけなんです!やけん・・うちが一人で部長に沢山の愛と献身をあげりゃあ・・きっと昔みたいに優しか人に戻ってくれると思うんです!」
という姫子の懇願によって、なんとか許しを得て自由を得たという経緯であったのである。その後は知っての通り、高校に入ってからは基本的に姫子にしかリザベージョンを使用しない事を条件に、姫子の精神を汚染する許可を特例で認められる。当然白水は以前と違って周りに他人を侍らせる事が出来なくなってしまった為、まぁまぁのペースでイライラが募ってしまうのだが・・・
「部長、今日もうちの心と身体を好きにして良かとばい。やけん他人に目移りせんで、うちの事だけ見て欲しいなって。」
姫子の身体を張った頑張りによって白水の心はなんとか落ち着きを取り戻していったのであった。信仰を忘れた人々に怒り狂っていた現人神は、取り合えずの人身御供を手に入れる事で理性を取り戻したのである。
そんなある日、麻雀協会に新しい風が舞い込んだ。その日、たまたま協会本部に用が会った白水は、当たり前のように姫子を連れて本部へと向かった。用事の内容は能力のデータ取りといくつかの必要書類の記入だった。内心面倒だと思っていた白水だったが、自分の物である姫子をみんなに見せびらかす事が出来るせっかくのチャンスだと自分を納得させて、なんとか社交辞令の笑顔を自然と作れる程まで機嫌を良くした。そんな日の終わり、思ったよりデータ取りが長引いて帰りが遅くなってしまった白水は、帰りの電車の心配をしながら急ぎ足で本部の中を移動していた。まだ時刻は午後3時であったが、予定では既に姫子と一緒にレストランで食事をし終えていたであろうタイミングである。
(参ったなぁ・・こげん事やったら書類は家に帰ってから書いて、明日の朝に郵送すれば良かった。)
己の判断の誤りを嘆きながらフロントまで急いでいると・・・その途中、廊下の曲がり角で出会ってしまった。
「さ、咲ちゃん・・ちょ、ちょっと待って・・へぇ・・へぇ・・」
「・・普段どれだけゆっくり歩いてるんですか?小鍛冶さん?それでも世界2位ですか?」
「いや、世界2位は関係うおっごほっ・・ぜぇ、ぜぇ・・へぇ・・へぇ・・」
「うわっ、ちょっと汚いなぁ・・ほら、私の分のお水です。有り難く飲んで下さい。」
「へ、へへへ・・ありがとう・・ごくごくごくごく・・・」
「へへへじゃないですよへへへじゃ。何短パン履いた小学生みたいな笑い方してるんですか。」
・・明らかに場違いな二人が居た。いや、場違いなのは会話の内容であった。何故この二人は陸上部の練習上がりのような会話をしているのだろう?それもよくよく見て見れば、片方は元世界ランク2位にして最年少八冠を記録した生ける伝説、小鍛冶健夜ではないか!?それが何故こんなところに!?・・・そんな事を思っていると、咲が白水に気づいて話しかけて来る。
「・・ん?ああ、すいません。通行の邪魔でしたね。・・えっと、貴女はもしかして・・ここの協会で働いている人ですか?」
「えっ!?・・まぁ、そうなるとかな?」
「(とかな?)へーそうなんですか。では貴女は私の先輩って事でよろしいのでしょうか?」
「えっ先輩!?・・じゃあ、もしかして貴女も能力者やったり?」
「(方言・・もしかして博多弁?)はい、と言う事は貴女も・・」
「うん、うちん名前は白水哩。高校2年生ばい、よろしゅうね。」
「(博多弁だ・・すごい。)よろしくお願いします白水さん。私の名前は宮永咲、中学3年生です。以後お見知りおきを。」
「(宮永?何処かで聞いたような・・まぁいっか。)うん、お見知りおきなー。」
これが咲と白水の出会いであり、現人神と大天使の邂逅と呼べるもの。また白水にとっての大きな転換点でもあった。この時咲と遭遇した白水は、咲の境遇について彼女自身の口から簡潔に知る事となったのだが、そんな事よりも自身の関心を引く事が在り、それがまた自身の心を大きく揺さぶったのである。
(・・な、なんで?なんで小鍛冶さんともあろうお人が、こげん子供のオーラで縛られとーと?)
そう、白水は感知してしまったのである。この二人は自分程では無いがオーラで相手と繋がっている・・・ある意味でのカップルである事を。しかし白水は別に二人がオーラで繋がっていた事に驚いたのではない。白水が驚いたのは・・・この二人の内、明らかに年下であるはずの咲の方が、年上である小鍛冶に首輪を付けている方だったというところである。
その事実に驚きつつ咲の話を最後まで聞いて・・更に白水は驚いた。なんと咲は自身の番いである光という少女の為に協会で働いていると言うではないか!?じゃあその首輪は何だ!?何故光ちゃんとは全く関係の無い小鍛冶さんにオーラでマーキングを施しているんだ!?浮気か!?浮気なのか!?アンタ最低だな!?
結局その日は終始驚くばかりで、咲に一回も質問をする事が出来ずにバイバイしてしまったのであった。しかし白水は・・・
(まぁ・・どうせすぐに協会から逃げ出すに決まっとーやろう。あん浮気者が!)
と、まぁ咲の事を舐め腐っていたのであった。少なくとも自分が麻雀や能力勝負で負ける事は無いと思っていた。あんな風に番いを探すついでに他の女に現を抜かすようなブレブレの精神をしているヤツに、姫子一筋になったこの私が負けるはずはないと、そう思っていた。・・・しかし、白水の予想とは真逆に咲は協会の元で成長を続け、ついにはカンドラという名前まで世間に広める事に成功したのである。当然白水は嫉妬した。何故彼女ばかり成功するのか、何故他者を捨てて姫子一筋になった自分が無名のままなのか・・と。もちろん白水も中学の時から練習を続け、インターハイでは姫子とのコンビとして、ある程度有名にはなっていたのであったが・・・カンドラには遠く及ばない。
最初は小さかった嫉妬の炎、だが咲の活躍を耳にする毎に炎は大きくなり・・・インターハイが始まる頃には、カンドラの名前を耳にするだけで不機嫌になるまでに燃え盛っていた。
そんな彼女の炎に一撃で止めを刺したのが・・あの第2回戦最後の対戦での後。大将戦のあと、咲の周りに駆け寄って来た仲間達を見て白水の精神は大きな音を立てて瓦解した。
(嘘だ・・何で・・あんな、あんな奴が・・あんなに沢山の能力者に囲まれて・・尊敬されて・・慕われて・・愛されている!?・・だって・・中学までは・・うちだって・・あげん風に・・・・・くそおおおおおおおお!!!)
控え室でチームメイトと一緒に観戦していた彼女は、たまらずその場から逃げ出した。大好きな部長の急変に慌てて後を追う姫子であったが・・見つけた時には既に真っ白に燃え尽きていた。
「・・ああ・・ああ・・ちくしょう・・ちくしょう・・」
廊下の自販機に背中を預け天井を見上げながらブツブツ呟く部長を発見した姫子。自分の大好きな部長が壊れかけている事に危機感を覚え、どうにかして部長を癒そうとした姫子だったが・・
「あれ?・・何でうち、部長の事で分からん事があるっちゃろう?」
分からない、分からないのだ。普段からオーラで白水と同じ記憶や感情、価値観を共有していたはずなのに、なんで部長がこんな事になっているのか・・分からないのである。
しかし姫子は悪くない。姫子が白水の事を分からないのは当然で、白水は姫子に自分の都合の良い部分しか共有してこなかったのである。自分のカッコよい部分、自分にとっての誇りやプライド、そういった自分の強さしか共有してこなかったのだ。故に白水の弱さを知らない姫子は、遂に白水を癒す事は叶わなかった。
そして現在、自身のプライドの崩壊と同時に大事な姫子を信用し切れていない事が本人に知られてしまった白水は、全てがどうでもよくなり自暴自棄に陥っていた。精神的に不安定になっていた白水は、準決勝で一回も自摸る事が出来ず、姫子にリザベージョンキーを渡す事が出来なかった。その結果、ほぼ無名校の阿知賀の決勝進出を許してしまい、協会から課された任務を始めて失敗してしまったのだ。その事実にさらに打ちのめされた白水は、あれだけ姫子に庇ってもらったにもかかわらず、自分からリザベージョンの繋がりを解く事で姫子を自身の番いから解放してしまったのである。
・・任務の失敗はまだ許容できるが、さすがに番いの解放までは見過ごせない。あれだけオーラで精神を汚染しておいて、都合が悪くなったら野に返す。などという蛮行は能力者としてやってはいけない行為である。そう判断した協会の連中が、咲を通じて白水がどういうつもりなのか知ろうとしている・・・というのが簡単な白水の歴史である。
つづく