雀荘荒らしの咲   作:ロクナナエイト

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決勝戦編スタートです。





決勝戦開始

 

「・・・ふふ、いよいよですね。」

「・・そうじゃのう。」

「・・そうだじぇー・・」

 

 場所はいつもの清澄の控え室。そこに集ういつもの清澄の部員・・しかし、その表情は皆真剣であった。真剣にTVを見ていた。

 映されていたのは、この東京の中で今最も白熱しているであろう試合が繰り広げられている会場。それが元世界ランク2位の小鍛冶健夜による解説付きで生中継されている。

 その中継を・・互いに感慨に耽りながらジーッと見つめていた。

 ただいまの時刻は午後3時、既に決勝戦は佳境を迎え、副将戦の後半戦に差し掛かっていたところである。

 

「・・さて、そろそろ行きますか。」

「咲ちゃん・・もう行くのかじぇ?」

「ええ・・もうここで出来る事はありませんから。」

 

 そう言って彼女はゆっくりと立ち上がる。いつも通り堂々と・・そこに不安や緊張の色は全く見えない。

 

「はは・・最初のおどおどした様子がまるで嘘のようじゃな。久が咲を大将に据えると言った時はどうなる事かと思ったが・・いやはや、今はその判断が正しかったと言わざるを得ないのぉ。」

「ふふ・・私も、貴女方がここまで使い物になるとは思っていませんでしたよ。」

「言うではないか。・・でもまぁ、実際その通りじゃしの。和や優希は兎も角、京太郎やワシは大して役に立っておらん。やっぱり能力や実力がハッキリしとる方が、咲も気楽で良かったりするのかえ?」

 

 自分が何も特筆した能力を持っていない事を気にしていたまこは、いつもの癖で自身を卑下しながら咲に笑いかけた。そんな笑みを見た咲は・・

 

「まこさんっ・・・・ゴホンッ!今日が団体戦最後の日だから言います。他の人がどう思っているかは知りませんが、私は貴女が同じチームメイトで本当に良かったと思っています!」

 

 ハッキリと好意を口にした。そしてそこには、いつもの他者を見下すような嫌な感じは微塵も感じられなかった。

 

「私は知っています!貴女がこの数か月間、あの雀荘で美味しいご飯を作って私達がやる気を引き出せるように気を配っていてくれた事を!ついでに・・私はそういう影で頑張っている人が特に好きですから・・だから!もっと胸を張って下さい!貴女はカンドラに認められる程の素晴らしい女性だと!他でもないこのカンドラが保証します!」

「んお!?・・そ、そうかえ。それは・・ありがとうね///」

 

 その真っすぐな思いに、つい顔が赤くなってしまうまこ。

 

「それと優希ちゃん!」

「だ、だじぇ!?」

「優希ちゃんも本当に良く頑張ったよ!最初は計算が全く出来なかったのに、頑張って勉強して点数計算も出来るようになったし、能力だって!2回も天和を繰り出せるまでに精錬したのも凄い事だよ!だからもっと胸を張って!優希ちゃんは間違いなくこの部のエースだよ!」

「!?・・・うん・・うん!ぐすっ・・ありがとう・・咲ちゃん!」

 

 咲に認められて思わず涙ぐんでしまう。優希も白水と同じく、咲と自分を比べて傷ついてしまっていた一人だったのだ。その原因は、優希は2年で咲は1年、互いに先輩と後輩の関係だというのに、気づけば後輩に後始末を全て任してしまうのが当たり前になってしまっていた自分の弱さであり、それが嫌いで嫌いで堪らなかったのだ。

 そんな、自分よりも明らかに格上の後輩から、この部のエースとして認められた事で・・ようやく、優希も顔を上に上げて良いのだと・・自分を許せたのだ。

 

「そして京ちゃん。」

「おう!最後だから出来るだけ影を薄くしていたけど、その気遣いは無用だったみたいだな!」

「うん、それで京ちゃん。いつも雑用ありがとう、あと優希ちゃんや部長のメンタルケアの一員として活躍していたのも、私は覚えているからね。きっといつか良い主婦になれるよ。」

「おう!・・って主婦かい!」

「だって京ちゃん。龍門渕の凄腕執事さんの元で修行してたんでしょ?」

「えっ!?・・いや、まぁそうだけど・・」

「その甲斐あって料理や掃除、家事全般が凄く上手になったんでしょ?」

「お、おう!そうだぜ!」

「じゃあやっぱり主婦だね。子供は3人くらい生んでね、期待してるから。」

「いや俺が生むんかい!?」

 

 京太郎の見事なツッコミが木霊する。このやり取りももう何回目だろうか、なんやかんや言っても咲の中で京太郎は無くてはならない存在の一つなのだ。そんな彼が女性ばかりの麻雀部でムードメーカーとして頑張って最後までついて来てくれた・・咲にとって、それはとても大事な事実だったのだ。

 

「さて・・じゃあそろそろ行きますね。」

「おう!カッコよく決めてこい!」

「頑張りんしゃい、咲!」

「ぐすっ・・(ニコッ!)咲ちゃん!咲ちゃんこそ真のチャンプだじぇ!」

「うふふ・・みんなありがとう・・行ってきます。」

 

 皆との挨拶を済ませた咲は、カンドラの象徴であるコートを手に取りそのまま羽織る。そして控え室のドアを力強く開いて、決戦の地へと赴くのであった。

 

 

 それから5分後、既に試合会場の入り口前まで来てしまっていた咲は、まだ後半戦が終わっていない事もあって、入り口付近の自販機の前でベンチに座って瞑想をしていた。すると・・

 

「・・・ん?メール?」

 

 振動に気づいてコートのポケットからスマホを取り出す。画面には小鍛冶からの長文気味な応援メッセージが綴られていた。

 

(うわ、小鍛冶さんからだ。・・ああでも、これはただの応援メッセージか。なんだ、いつもの協会からの指示かと思って身構えちゃったじゃん。)

 

 無意味に力ませないでよねと内心舌打ちしつつ、応援メッセージを一読する。すると再び・・

 

「うおっ!?・・ああなんだ、はやりさんと咏さんから・・あれ?」

 

 プロ雀士の先輩達からの激励の言葉が送られてくる。そちらも読んで返信しなければと思い、一度メッセージアプリのホーム画面まで移動して・・気づいてしまった。

 

「・・・一昨日から色んな人達から応援メッセージが届いてる!しかも既読が付いてる!?・・・いや、そう言う事は先に言って下さいよ小鍛冶さん!?」

 

 そう・・スマホを今日の朝まで小鍛冶に預けていた咲は気づかなかったのだ!小鍛冶がこの2日間全てのメッセージを読んだうえで、あえて既読無視をしていた事に!

 

「しまったー。私が最後にスマホを持ったのっていつだっけ?大抵は小鍛冶さんか加治木さんコンビに渡しちゃってたからなー。いやでも最近は私が頻繁に持ち歩いていたような気が・・・いやでも今日の朝は小鍛冶さんから加治木さん経由で貰ったし・・・まぁとにかく、全員に謝罪の連絡を・・・いや今から全員に!?面倒だよ!嫌だよ面倒くさい!・・・あ!」

 

 咲がカンドラになる前の、いわゆる素の性格の一つである面倒くさがりな面が出たところで、何か咄嗟に閃いた。

 

「そうだ!私に応援メッセージを送って来た人全員を片っ端からこのアプリのグループ機能で括りつけて、全員に一編に謝罪メッセージを送信しちゃえば良いんだ!」

 

 そうと決まれば善は急げといった塩梅に、宣言通り端から端まで1つのグループにぶち込んだ咲。そして肝心の謝罪メッセージの中身だが・・

 

「謝罪文は・・・考えるのも面倒くさいから、今日の打ち上げの会場に直接来て話し合いましょう!みたいなのでいっか。」

 

 まさかの謝罪すら未来に先送りするという、面倒くさがりの究極のような判断を下した。しかも謝罪相手をこちらの都合で特定の場所まで呼び出すという無礼の極みみたいなメッセージまで添えて。

 

「・・・よし、送信終了!まぁ、これで後は大丈夫でしょ!今日来れなかった人には後で直接電話なりなんなりして謝れば良いし。でも多分全員来るよね?この顔ぶれなら・・」

 

 そう言ってようやく、応援メッセージを送って来た人物の顔と名前をしっかりと確認し始める。とここで・・

 

 ビーーーーーーーーーーー!

 

「うお!?・・ああ、副将戦が終わったんですね。」

 

 副将戦終了のサイレンが鳴り響く。いよいよ自分の番だと気を引き締め直して立ち上がり、入り口へと向かった。その途中で、

 

「「「「ありがとうございました!」」」」

 

 戦い終わった副将達の挨拶が、ハッキリと聞こえた。

 

(ああ、本当に和ちゃんの番が終わったんですね。そして私の番が来て・・それで団体戦は終わり。まだ個人戦も残ってはいますが、団体戦ほど盛り上がりはしないでしょうし・・・本当に、祭りが終わるのですね。)

 

 この戦いが終わる。それは咲にとって、一つのお祭りの終わりを意味していた。祭りは誰にとっても楽しいもの・・とどのつまり、咲はこのインターハイを思いの外楽しんでいたという事である。

 

(ふふ、今になってこんな感傷的になるだなんて・・私もまだまだ子供ですね。)

 

 そうして感傷に浸ってると・・

 

「あ!?咲さん!わざわざ待っていてくれたんですね!」

 

 和が心底嬉しそうな表情で咲の元へと駆け寄って来る。その様子はさながら犬のようだ。

 

「・・・!?、おおっと和ちゃん!副将戦お疲れ様!よしよし、よく頑張ったね!」

 

 声を掛けられてハッと現実に戻った咲は、そのまま和の頭を撫でる、いや撫でまわす。撫でられた和は見事に破顔しトロトロっとした表情をあられもなく晒した。そんな和の飴のような表情を眺めていると、またしても咲のスマホが振動した。しかしこの振動は電話である。

 

「ん?またスマホが動いてる・・えっと、どれどれ・・ああ部長からだ。」

「にへへぇ・・・ん?え?部長からですか?」

「うん、たぶん病院からだろうけど・・まさかお婆さんを庇って骨折するなんてね。何も問題無いといいけど・・・もしもし部長?」

「おお、咲ーー!傍に和いる?」

「いますよ。っていうか部長の方こそ怪我は大丈夫ですか?」

「ええ大丈夫よ!あの後咲がオーラ?を使ってくれたおかげで、試合中もいつも通りに腕を動かして戦えたし、お医者さんからも数か月で治るってお墨付きが出たわ!」

「それは良かったです。和ちゃんも喜んでいますよ。」

 

 久の快報を聞いて和はちょっと涙目になっていた。

 

「ありがとう。それと・・ちょうど二人に紹介したい人がいるのよ!」

「私達二人に?」

「そう!だから一旦ビデオ通話に切り替えて頂戴!」

「え!?・・えっと、これ?」

 

 久の唐突な要求にあたふたしながら画面を操作する。傍で見ていた和は少し顔を傾けて不思議そうな表情をしながら咲の顔を見つめていた。

 

「これでOKですか?」

「えーっと・・うん、OKよ!じゃあ後はよろしくお願いします。」

 

 そう言うと画面内から久の顔がロストし、周りの病院内の様子が映し出される。それから景色がグルッと一回転して元の位置に戻ったかと思うと・・・そこに女性が一人、ピースしながら立っていた。そしてその女性を、二人はそれなりに知っていた。

 

「「・・・っ!、春日井さん!?」」

「正解!二人とも、私の事覚えててくれたんだ!」

 

 春日井真深、かつて世間を賑わせたアイドルであり、瑞原はやりのアイドルとしての師匠でもある。

 突然の春日井の登場に驚き、取り合えず挨拶を返そうとした咲だったが、彼女の顔を久しぶりに見て興奮した和に先を越されてしまった。

 

「もちろんですよ!初めて真深さんに会ったあの日からずっと覚えてます!いつまでも変わらない美貌だって、母とよく話しています!」

「あはは、ありがとう。でも変わらない美貌って言ったら、私よりもはやりちゃんの方が凄いわよー。」

「はやりさん・・瑞原はやりさんですか?」

「そう!あの子の肌って赤ん坊のソレと大差ないからね。ホントもう羨ましいを通り越してヤバいって感じよ!・・あ、あと副将戦1位突破おめでとう!あの時のみんな全員、和ちゃんの事応援してたんだからね!」

「そうだったんですか!?ありがとうございます。おかげで無事に1位で突破する事ができました。」

「うふふ・・うん、ありがとう。それと・・咲ちゃん、元気だった?」

「はい・・えっと、私に何か?」

「あ、あれ?随分他人行儀ね、もしかして緊張してる?それともそっちが素だったり?前に会った時やはやりちゃんから聞いてた普段の咲ちゃんの話とだいぶ違うけど・・」

「ん?その口ぶり・・もしかして、はやりさんは私の私生活やら何やらを普段からベラベラと口外しまくっているのでしょうか?」

「え?あ!?・・いや・・その・・」

「・・・はぁ、まぁいいです。それで?私に何か言いたい事があったのでは?」

「そうそう・・あのさ、今度はやりちゃんに会った時でいいからさ。私の事を話題に上げてくれない?ほら、私最近あの子に会ってなくてさー、もしかして避けられてたりって勘ぐっちゃったりしちゃってね。何か悩みでもあるんじゃないかって心配で。」

「ああそういう・・構いませんよ。私ももう一度、はやりさんと貴女と私の3人で楽しくお茶を飲みたいと思っていたので。」

「ええ本当!?うふふ・・若い子にそう言ってもらえるだけで、おばさんすっごく嬉しいわ!うん、また今度3人で会いましょう・・あ、出来れば和ちゃんも一緒にね。」

「ええ・・ではまた。」

「うん、大将戦頑張ってね!」

 

 その言葉を最後にブツッと通話が切れる。後には通話アプリの素朴なメニュー画面だけが残された。

 

「うふふ・・真深さん、元気そうで良かったです。」

「そうだね・・一応昔よりはだいぶ元気になったみたいだけどね。」

 

 通話を終えた咲はスマホをコートでは無く自分の履いているスカートのポケットに仕舞う。仕舞う為に下を向いて丁寧に確認しながら手を動かした。

 

「あ、そのコート・・」

「和ちゃんも全力で戦って疲れたでしょ?そろそろ控え室に戻って・・」

 

 仕舞い終わって再び顔を上げて和の方を見ようとした瞬間、身体に大きな振動が走った。

 

「咲さん!」

「うわっとと・・どうしたの、和ちゃん?」

 

 和が急に抱き着いてきたのだ。しかしこういった事態には衣や荒川で慣れていた為、動揺は少なくすんだ。

 

「・・これから咲さんは大将戦に向かうんですよね。」

「うん。」

「そしてオカルト的な力を使って、圧倒的な大差をつけて優勝するつもり・・なんですよね?」

「・・・(少し違う計画なんだけど)うん。」

「・・そしてこれからはカンドラとして、麻雀界の為に自らを犠牲にして広告塔の役割に専念していく・・そうですよね?」

「・・・それが私の望んだ結末だからね。後悔は無いよ。」

 

 強がりでも何でも無い。咲はカンドラとして生きる事を自分から望んだのだ。それが例え、二度と普通の人生に戻れない・・辛い未来に繋がっているのだとしても・・・

 

「・・・咲さん、もう何回も言いましたが改めて言います。スーッ・・もし咲さんのご迷惑で無いのでしたら・・私を・・咲さんの相棒として、一緒に働く事を許して下さい。」

 

 これが、和の覚悟でもあり想いでもあった。和は咲がカンドラとして活動していたという疑惑を持ったあの日から、ずっとカンドラの事を追っていた。そしてその都度咲とカンドラを比べていた。無論、情報の中には嘘や偏見も含まれていた為、結局先日までカンドラの正体を看破する事は出来なかったのだが・・・全てを知った今、和は純粋に咲を応援していた。無論、未だに咲が何のためにカンドラとして金を稼いでいるのか、その部分は知らないままだが・・それでも咲の不器用な人柄を愛し、傍で支えてあげたいという想いに・・・少しのブレも無いのである。

 

「・・ごめんね、返事はまた今度に・・」

「咲さん・・どうか、今この場でお返事を!この告白は、昨日まで私が言ってきた友達同士との口約束とは違うんです。本気で咲さんを・・貴女を傍で一生!支えて生きたいのです!さぁどうか!」

(あはは・・まさか和ちゃんがこのタイミングでそんな事言い出すなんて、完全に予想外だなー。でもそういうところが・・すごい好きなんだよね///)

 

 この土壇場での告白に流石の咲も頬を赤らめて口ごもってしまう。このまま時間ギリギリまで口ごもってしまうのかと思われ・・・そうになったその時!

 

「キエアアアアアアアアッ!!!原村和アアアアッ!お前何考えてんだアアアア!!??」

「っ!?こ、この声!?このオーラは!?ネリーちゃん!」

 

 臨海女子の大将、ネリー・ヴィルサラーゼが鬼の形相で廊下の向こうから全力ダッシュで迫ってきていた!?

 

「公共の場でオーラをカンドラにこれでもかと絡みつけやがってエエエエエエ!!ぶっ潰してやらアアアァァ!」

 

 咲を目視で確認してもスピードを緩める事はせず、狙いを和に定めてひた走る!そして2人との距離が10メートルにまで近づいたその瞬間、そのまま勢いを付けて飛び蹴りをかまそうと足を曲げた・・その時!ちょうど会場入り口前まで、ネリーが襲い掛かって来た方向とは反対の方から来ていた大星淡が・・

 

「ちょ!?何々何!?ええい取り合えずっ!?何処かへ吹っ飛んじゃえーー!?」

 

 自身の能力である宇宙空間を身体の周りに展開!それをオーラでこの周辺一体まで広げる事でネリーのバランスを崩しにかかる!

 

「くたばれえええ、えっ!?え、え?ええあああああああいいいい???」

 

 無重力に包まれたネリーはそのままジャンプしてしまい・・結果的に和では無く天井に向けて蹴りを放つ事になってしまった。このままでは天井に激突して大怪我を追ってしまう・・が、そこは流石のネリー・ヴィルサラーゼ、いち早く自身が無重力状態になっていると理解した彼女は即座に蹴りのフォームを直してきちんと両足で天井に着地する。そしてそのまま天井を蹴って地面へと優雅に降り立った。その様はまるで忍者のようだと淡は感心していた。

 

「ふぅ、危なかった。」

「いや危ないのは貴女でしょ。何廊下で全力疾走した挙句、飛び蹴りなんてかまそうとしてんの?言っとくけどその子は副将だからね?大将じゃないからね?」

「そんな事は分かってるわよ!そもそもそいつがこんな場所で淫らな行為に及ぼうとしたのがいけないんでしょ!」

 

 唐突に自身の行いを淫らな行為と言われて、流石に弁解しようと慌てだす和。

 

「ご、誤解です!?私はただ咲さんにインターハイが終わった後の事について尋ねていただけで・・」

「いーや、絶対嘘だよ!だってオーラが完全に子ども作る時のアレだったもん!咲も気を付けなよ、大人しいふりして中身はドスケベだから、この子。」

「な!?そ、そんなオーラだなんてオカルト、私は信じません!言いがかりです!」

「あ、あはは・・ほらほら二人とも、もうすぐ試合が始まるから・・」

 

 試合と言われてようやく自分達が何をしにきたのか思い出したネリーと淡。慌ててスマホで時間を確認するが、まだ開始まで7分はあった。

 

「ふぅ・・まだ7分あるじゃん。驚かせないでよね。」

「おやおや、随分と余裕なんですね?ああでも、淡さんは今年の”牌に愛されし者”の呼び名を持つ一人でしたっけ?ならその自信も当然ですね。」

「そちらこそ、巷で噂のカンドラ様じゃありませんか。2回戦や3回戦では随分とギリギリの戦いを強いられていたようでしたけど、今日はその比じゃありません事よ・・・サキ、アンタは見っともなく苦戦した挙句、無様に負けるの!そして私の前に膝まづく事になるわ!」

 

 咲の軽い煽りに乗って、普段使わないお嬢様口調まで持ち出してガッツリ煽り、そして宣戦布告までしてみせた淡。その様子を見て流石の咲もイラっとするのではないかと心配そうな顔を浮かべる和とネリーだったが・・

 

「・・・ふふ。貴女、宮永照さんとは仲が良いのですか?」

「え?・・まぁ、気に入られているとは思うけど・・」

「でしょうね。貴女・・昔のやんちゃだったあの子に少し似ていますから。」

(はっ?昔のやんちゃだったあの子?)

 

 一瞬イラっとした淡。しかし、あの子という単語を聞き、頭でその意味をゆっくりと理解していき・・・そして、

 

「ちょっと!それってどういう意味よ!まさかテルがその子の影に私を重ねていて・・そ、その子!ヒカリの代わりに私を代役として仕方なく可愛がってあげてるっていうの!?」

「ああ、なんだ・・そこまで昔の事を話していたんですね。あの人にそこまで信頼されるとは・・いや、あの人は昔から何を考えているのかよく分からなかったし、そういう事もありえるんですかね・・」

 

 咲の思惑通り、分かり易く動揺した。これで試合中でもオーラを使って楽々誘導出来るだろう、という咲にとっての保険も作る事が出来た。ちなみに、照は淡に光の影を重ねてなどいない。というより、照の中で光はそこまで大きな存在では無い。確かに光も大事な家族だと思っているが、それでも・・もう会えないのだから仕方がないと、割と早い段階で光の事を諦めていたのだ。そして、そんな風に何でもかんでも割り切って考えてしまう姉の本心を理解しつつも、どうしても納得出来ない咲は・・照とは致命的に反りが合わないのだ。

 そんな風に淡が咲にキーキー突っかかっていると、淡の来た方の通路から一人の少女がトテトテと歩いてくるではないか。その少女は和が視界に入るやいなや物凄いスピードで迫り、和に抱きついた!

 

「おーーーーーい!和ーーーーー!久しぶりーーーーー!」

「きゃっ!お、お久しぶりです静乃さん。というより・・今朝の決勝戦の挨拶の後にも同じやり取りをしましたよね?」

「そうだけど!それでも改めて久しぶりって!」

「んもう・・ふふ、でもやっぱり・・静乃さんの身体はいつ抱いても温かいですね。」

「和こそ!相変わらずの大きなお餅ですごく安心したよ!」

 

 その少女の名は高鴨静乃、赤土コーチ率いる奈良県代表、阿知賀女子学院の大将であった。

 そうしてしばらく感動の再会を噛みしめ合っていた二人だったが、流石に時間が押してきた為、急いで咲が二人を引きはがしに掛かる。

 

「お二人とも!もう試合開始まで3分しかありません!そろそろこの辺で!」

「ああっとそうだった!じゃあね和!また後で会おうね!」

「はい!咲さんも静乃さんも・・二人とも頑張って下さい!」

 

 最後に二人を応援して控え室へと去って行った和・・・辺りには、最終決戦前特有の重い空気だけが残された。

 

「・・・じゃあ、皆さん行きましょうか。」

「言われなくても!宣言通り、アンタを徹底的に叩き潰す!テルの妹だからって容赦しないから!」

「くふふ・・咲!強くなったネリーの力!存分に見せてあげるよ!」

(や、やっぱりそうだ!あの夜にコンビニですれ違ったのって絶対この人だよ!うわああ!サイン貰っておけば良かったーーー!)

 

 それぞれの顔を互いに一瞥した全員が、ゆっくりと試合会場に足を踏み入れる。それを機に試合を中継していた実況兼アナウンサーの福与恒子が高らかに声を上げた!

 

「さぁ、いよいよ今年のインターハイ団体戦も大詰めだぁ!果たして栄光を手にするのは!?どの高校かぁ!?」

「・・・咲ちゃん、頑張って!」

「いや、ちょっとすこやん・・何度も言うけど選手一人に肩入れは厳禁だからね?そんな小声で可愛く応援しても駄目なものは駄目だからね。」

 

 かくして、今年のインターハイ団体戦の最後の戦いである決勝戦、その最後を飾る大将戦の幕が切って落とされようとしていた!

 

つづく

 

 

決勝戦はどんな展開を望みますか?

  • 能力を使った麻雀対決をがっつり書いて
  • 麻雀対決はあっさりでいい
  • 麻雀はいいから能力で直接戦って欲しい
  • 麻雀シーン少な目、キャラ同士の会話多めで
  • 試合中の回想シーン中に会話を多めで
  • 特になし、作者のお好きにどうぞ
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