後半戦は、滅茶苦茶能力が飛び交う予定です。
南3局
清澄高校 110400 東
阿知賀女子 87600 南
白糸台高校 89700 西
臨海女子 112300 北
時は決勝戦ラストの大将戦南3局、咲が穏乃に槍槓を喰らわせてから、しばしの時間が経ったあと。
先程咲が見せた異様な笑顔が気になる3人であったが、今は目の前の勝負に集中しようと切り替えて、山から牌を取って手牌を確認していく。
そんな中、いち早く手牌を整理し終えた淡は、再び咲の方へ目線を移す。
(サキ・・いよいよ本気を出すつもりなんだね。)
咲と目を合わせないようにチラチラ表情を窺うが、やはり彼女が何を考えているのかよく分からない。一体彼女はどんな戦術を出してくるのか・・・いや、心当たりはある。それは大将戦が始まる前のミーティングの際に、もしかしたらという僅かな可能性として頭に浮かんだものであったが・・・
時は少し遡って、大将戦開始前の白糸台の控え室にて。
「よし!今年も無事にここまで来たな!」
「はい!あとは優勝するのみ!ですね!」
全員を纏める者の立場として、戦いの前に仲間を鼓舞する菫。そして分かり易く後輩ムーブをする事で場の空気をそれっぽい感じにしようと頑張る誠子。そんな二人を静かに見ている照と尭深。そして一人で何かを考え込んでいる淡。
「そうだ誠子、私達は今年も優勝する。しかし、それは運が良いからなどという下らない理由では決して無い!私達が当たり前のように強いから勝つんだ!私達が優勝するのは当たり前の事なんだ!そう思って試合に臨め。そうすれば自然と能力の出力も強くなる・・・頑張れよ。」
「っ!はい!頑張ります!」
(ああ!・・はは、やっぱり誠子は素直でいいなぁ。他の3人ももう少し誠子みたいに場の空気に合わせて欲しいが・・・ま、いいか。それで能力の出力が上がるなら、もう何も言うまい。)
そんな事を考えながら、最後の戦いに挑む前の心の準備をしていた・・そんな時、
「あのさスミレ、ちょっといい?」
珍しく淡が声を上げた。
「お!お前もやるか!うんうん、やっぱりお前も16歳だしな!こういうのに憧れる年頃だよな!」
「違う、そんな事じゃなくて・・・」
菫の気遣いをそんな事と一蹴して真剣な顔で尋ねる、その表情から何か戦術面での悩みがあるのだな、と気づいた菫は態度を改めて再度淡に話しかける。
「っ!?・・どうした?作戦なら昨日の内に全て確認しただろう?」
「そうだけど・・その作戦って、私の能力がただのWリーチだけだと偽装するっていう・・それだけでしょ?」
「そうだ、本当ならお前には最初からガンガン暴れてもらいたいところだが、相手があの咲ちゃんである以上・・最初は様子見するしかない。」
「・・あの、思ったんですけど・・嶺上さんってそんなに警戒しないといけない相手ですかね?」
とここで、咲に温和なイメージを抱いている尭深が、あまり警戒し過ぎは良くないと暗に諭した。しかし・・
「尭深・・言いたい事は分かるけどそれは駄目。咲に無策で突っ込めば負けるのはこっち。」
咲の姉でありチャンプである宮永照が、尭深に言い返す。
「そうだ、照の言う通りだ。あまり認めたくは無いが、咲ちゃんの能力はハッキリ言って未知数だ。確認出来ているだけでも、指先からのオーラ攻撃、黒のオーラの挑発、白のオーラによる翼の防御、赤のオーラの攻撃、嶺上開花の能力、点数を自在に操れると言われる程の技術・・そして照曰く、これだけあってまだ奥の手を隠しているらしい。正直言って、真正面から暴れ回って勝てる相手じゃない。最初は様子見しつつ、運良く他の学校の大将とやり合って弱ったところを叩いたり、後半戦の南入り後に全力で場を支配して跳満を喰らわせ続けたりする、のがベストだと・・そう思う。」
それが白糸台部長である菫の出した勝ち筋・・要するに持久戦に持ち込んで相手の気力切れを誘う作戦である。この作戦が立案された時、照は即座に同意した。もちろん誠子も同意したが、尭深と淡の二人だけは・・同意しつつも、
((本当にこれで良いのかな?))
という一抹の不安を覚えていた。
「でもさー、その代わりの作戦内容がこれでしょう?」
「これとは何だ、これとは。・・まぁ確かに、あまり褒められたものでは無いが。」
「・・でもこれ以外に無くないですか?そもそも淡の能力って、Wリーチを掛けた後に山の最後までいって、そこで必ず暗槓してから自模る・・ですよね?」
「私が確認した限りではそう・・そしてその際に必ず裏ドラが乗ってWリーチのドラ4が確定する。ただし役はそれだけ、他は何にも乗らなかった・・・一昨日までは。」
「フフーン、何と昨日のテルとの練習中に出来ちゃったんだよねー!Wリーチした時点で他の役も絡める事が!」
勝ち誇ったような自慢顔でエッヘンと胸を張る淡。そう、彼女がやけに自信満々なのはこの所為だ。これなら咲にも通用するだろうと高をくくっているのだ。しかし、そんな素晴らしい成長を遂げた彼女でさえ、咲には勝てないだろう・・・そう照が思ったが故の、この作戦なのだ。
「それでもだ。咲ちゃんはその上を行く可能性が高い、だから序盤での無理な能力の使用は控えろ。やるんなら後半、彼女が息切れし始めた時だ。チャンスはそこを置いて他にない。」
「はぁ・・分かったよ。序盤は様子見するよ。」
「ああ。ただし、他の大将も含めて相手が何も動かない場合や向こうが挑発してきた場合は、敢えて挑発に乗っても構わない。」
「えっ?マジ?」
「マジだ。最初は本当に何もせずに後半戦まで待つか迷ったが、やはり軽くWリーチを掛ける程度に抑えて乗ってやれ。こちらがあまりに何もしないでいると、向こうも警戒して油断しなくなるからな。敵にこっちが馬鹿だと思われる為にも、軽くつついてやれ。」
「了解!適当にジャブを打って、最後に強烈なアッパーを叩きこんでくるよ!」
作戦内容の全てを理解してウキウキになる淡。しかし彼女の頭には・・
(でも・・さっき言っていたサキの奥の手が何なのか・・・サキは様々な雀荘を巡って負け知らずの古今無双・・国士無双?・・・なんかあり得そうでヤダな。)
という、連想から生み出された幻の奥の手に恐怖を覚えてもいたのであった。
そして現在、全員が手牌の整理を終えて南3局が開始されようとしていた。
(さぁ、もうちょっと支配を強めて、点を稼いでおこうかな!)
そう意気込んで自身の牌へ手を掛けた・・その時!
(・・ホヤウカムイ!)
突如!会場を包んでいた淡の支配と穏乃の支配が消滅!後には何もないまっさらな空間だけが残った。
(んなっ!?)
(えっ?何この感じ?)
(やっぱりやってきたね!咲!)
そう、咲が準決勝でホヤウカムイから授かったホヤウの翼。それを一振り羽ばたかせたのである。それを理解できたのはネリーだけで、他の2人は何が起こったのか分からないでいた。しかし淡は、
(ま、まさか!?準決勝の時に使っていた北海道の大将の技!?それを何で咲が!?)
感受性が咲程では無いが、能力者の中では高い方の淡は、準決勝の試合中に獅子原が繰り出したカムイ達の姿と能力も見えていた。無論咲が神様から翼を授かった事も分かってはいたが・・
(ちょっとスミレ!?サキが神様の力を使えるのは準決勝だけだから安心していいって言ったのはスミレだよね!?使えても気力の相性的に1回が限度だろうってテルも言ってたよね!?じゃあ何でサキはこのタイミングで貴重な1回を使ったの!?ていうか貴重な1回を使っておいて、サキまだピンピンしてるんだけど!?全然気力が無くなった感が無いんだけど!?)
ミーティングの際、咲のホヤウカムイの能力は相性の問題でもう使えないと部長は判断していた。使えても1回が限度だろうと白糸台随一の能力者である照のお墨付きもあった。その2人を信じた淡は、故に判断を誤った。淡は自身が唯一安全に点棒を稼げるであろうタイミング・・・前半の東場という貴重な時間を様子見に使ってしまったのだ。その時間が過ぎてしまった今、もう淡単体ではどうにも出来ない。
(ど、どうしよう!?場の支配があっけなく!?・・お、落ち着け私!まだ勝てる!幸いにも潰されたのは場の支配だけ、まだ絶対安全圏が潰されただけだ!Wリーチに役を絡ませる方はまだ使える!)
自身のアイデンティティの消失に動揺しかける淡だったが、何とか落ち着きを取り戻す。彼女の言う通り、まだWリーチの方は問題無く使えた。
(むしろこれはチャンスか?場の支配が無くなったのは私だけじゃない・・あの阿知賀の大将と臨海の大将だって、場の支配は得意分野だったはず。それを潰されて、阿知賀の方は隠してる能力が無ければもう何もできない。臨海の方はまだ運を使って戦えるっぽいけど・・当然サキだってその事は分かってる。たぶん先に臨海の方を潰しにかかるはず、だからその隙を狙って私が一気に気力を爆発!跳満を直撃させればいける・・・か?)
即座に作戦を練り直し、先に他校が潰される事を想定して動き出す淡。一方で穏乃の方は・・
(・・あれ?何か私の・・場の支配が・・無くない?)
今まで確かにあった場の支配。それを何となく感じ取っていた彼女であったが、ここに来て初めての支配の消失を体験し、戸惑いを隠せないでいた。
「・・え?・・あれ?・・」
声に出して動揺してしまう。当然他3人は察してしまった。彼女にはもう、何も頼れるものが無いと・・他に何の能力も持ち合わせていない事を。
(よし!やっぱり阿知賀は手札切れ!後は臨海とサキを警戒するだけ!)
(阿知賀脱落・・何だ、てっきり咲が利用するものだから、他にも何か持ってるものだと思ってたけど・・まぁいいか。予定通り、これからも後半戦に向けて運を溜める作業を続ける。)
(ふーん、やっぱり場の支配一本でここまで登って来てたんだ・・・だけど、それじゃあ私やネリーちゃんには届かないよ。だから・・・後で、ね。)
それぞれが思い思いの感想を抱きつつ、試合は進んでいく。しかしこの局は誰も実らず流局。てっきり咲が何か仕掛けてくるかと身構えていた淡と穏乃だったが、肩透かしを喰らい拍子抜けしてしまう。しかしネリーはこれで確信する。咲が本気を出すのは後半戦からだと・・そして嫌な想像もしてしまう。
(もし咲が前半戦が始まって直ぐに全力を出してきたとして、それにネリーは応える事が出来たかな?・・・いや、絶対に無理だった。咲にはあれだけの能力やオーラ、なにより技術がある。例えネリーが運を使いまくって、点棒上では咲の上を行ったとしても・・すぐに抜かされていた。・・・ハハ、やっぱりタイマンではまだ勝てないか。)
自身の独力での限界を感じて少し頭を垂れるネリー。しかし、
(だけど今やっているのは2人打ちじゃ無い!4人打ちだ!だからこそネリーにも勝機はある!見ててね咲!咲に本気の笑顔を作らせてあげられるのはネリーだけだって事を・・思い知らせてあげるから!)
続く南4局は流局一歩手前まで長引いたが、僅差で淡が執念からのアガりを見せつける形で決着した。
「自摸!・・・自摸,混全チャンタ,ドラ3・・親6000,子3000!」
この自摸に一番驚いたのは、淡からそれなりに運を吸い取っていたネリーであった。
(うそ・・かなり運を吸い取ったはずなのに、ドラ3が乗るなんて・・・いや、まさか・・そうか!)
ここでネリー、自身の運を操作できる能力を使用した際に、ある法則が働いている事を理解する!
(なるほど、そういえば今のネリーは自分の運を出来る限り下げている状態で戦っているんだった。そしてそれは咲も同じで、咲はカムイを使って場の支配を無くす事で、まっさらの状態で戦っているんだ。だからネリーにはドラみたいな高い役になりそうな牌は来ないし、咲は能力やオーラ無しの状態で戦っているようなものだから、本当にランダムに牌を引くしかない。その一方で、あっちの2人。特に阿知賀の方は未だに場を少しでも支配しておこうと、躍起になって気力を消費し続けている。でもその甲斐あってか、支配が少しずつ元に戻っていってる。だからドラが向こうに集中しているのか・・・でも白糸台の大将の方が上みたいだね。あっちは咲のカムイの効果が切れる瞬間を狙って、空間にオーラを漂わせるに留めて気力の消費を避けている。そして裏では別の能力を発動して、開幕から聴牌の状態をずっと保ったまま戦い続け、その途中でドラを3つ拾って少しでも点を高くしようと頑張っていたと・・いやはや、なかなか頭が切れる上に度胸もある。もう少しオーラや能力に精通していたら、私達に並ぶことも出来ただろうにね。)
原因が特定出来たところで、大将戦前半が終了。結果は以下の通りである。
清澄高校 107400 東
阿知賀女子 84600 南
白糸台高校 101700 西
臨海女子 106300 北
点数だけで見れば、前半戦開始時点と同じで清澄が1位を独走している事に変わりなく、各校の点差も大して開いていない・・なんとも代わり映えの無い戦いであった。しかし、それは各校の大将の実力が拮抗しているともとれる為、この試合を見ている観客達は大いに盛り上がっていた。
そして前半戦が終わった大将達の心持ちであるが・・まず咲は暇そうにしていた。ついでネリーも暇そうにしてはいるが、ちゃんと神経を尖らせていた。一方で淡は、咲の思いがけない能力の使用に頭を悩ませていた。そして穏乃は・・意気消沈していた。
「あーー、疲れましたねー。」
「えっ!?あっ・・そう、ですね・・・」
「フンッ!今の内に余裕ぶっこいてなよ!後半戦で巻き返してやる!」
そう言うと淡はプリプリ怒りながら会場を後にした。
「うーん、ネリーも疲れたーー。ちょっと休憩してくる。」
ネリーも会場を後にして、トイレへと向かう。
そしてこの場には・・穏乃と咲の2人が残された。
気まずい沈黙が流れる・・・すると咲が、
「穏乃さん、でしたっけ?」
「うぇっ!?あっ!?はい!なんでしょうか!?」
ボケッとしている穏乃の虚を突く形で話しかけた。驚いた穏乃はどもってしまう。
「・・穏乃さん、ハッキリ言って・・どうです?この試合・・ちょっと厳しいなぁ、なんて思ったりしません?」
「えっ?・・・いやその・・はい、ちょっと・・というかかなり、厳しいなぁって。」
まさか咲が場の支配を消し飛ばす能力を持っていたとは・・そこまで予想できなかった穏乃は、もう完全に諦めムードであった。
「そうですか・・・じゃあ、取り引きしませんか?」
「えっ?・・・・」
ここで咲、まるで悪魔のような笑顔を作りながら、純情な穏乃に取り引きを持ち掛けた!
「私のオーラで貴女の中に眠る力を引き出してあげます。それなら貴女も勝てる見込みが出て来るでしょう?」
「そ、それは・・でもいいんですか?そんな事して?私が強くなって困るのは貴女の方では?」
「あはは!それならそれで構いませんよ!むしろそれくらいでないと、麻雀をやってて楽しいって思えませんので。」
その言葉を聞いて僅かに曇り顔になる穏乃。目の前にいる自身の憧れの人物は、私と戦っていても楽しくないというのだ。じゃあ和は?昔の旧友は、今の私を見てどう思うだろうか?やはり、つまらない人だ、と吐き捨てるのだろうか?・・・そんなのは・・嫌だ!
「・・・分かりました。そこまで言うなら・・・お願いします!私の力を引き出して下さい!」
その言葉で更にニヤリと笑う咲。彼女は表情を崩さずに両手を差し出して言った。
「さぁ・・私の手に貴女の手を重ねて下さい・・・そうすれば、力が手に入ります!」
「ゴクリッ!・・・・行きます!!」
唾を飲み込んで勢いよく咲の手を握る穏乃!すると・・・
(えっ!?う、うわあああああああああっっ!!!???)
(ではご案内しましょう!私と貴女の心の部屋へ!)
二人は白水の時と同様に・・二人の心が作り出す空間へと堕ちていったのだった。
つづく
決勝戦はどんな展開を望みますか?
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能力を使った麻雀対決をがっつり書いて
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麻雀対決はあっさりでいい
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麻雀はいいから能力で直接戦って欲しい
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麻雀シーン少な目、キャラ同士の会話多めで
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試合中の回想シーン中に会話を多めで
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特になし、作者のお好きにどうぞ