雀荘荒らしの咲   作:ロクナナエイト

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いよいよ咲の本領発揮です。


雀荘荒らしの咲

 

 東1局

 

   清澄高校  107400 東

   阿知賀女子  84600 南

   白糸台高校 101700 西

   臨海女子  106300 北 

 

「リーチ!」

 

 咲のリーチ宣言を聞いて緊張が走る3人。しかしその中で一人だけ・・阿知賀の大将穏乃だけは、落ち着き払っていた。

 そしてリーチから3巡後、未だに自摸らない咲。もしかしてただのブラフか?二人が緊張疲れに成りかける中、あまり動きの無い咲を見て穏乃は自身の中の神に尋ねる。

 

(・・ねぇ黒百合、咲ちゃんと私ってどっちが強いと思う?)

(当然あの憎たらしい小娘の方だ。・・・業腹だが、あの小娘とお前とでは経験の差があり過ぎる。お前が山で現実逃避気味に駆け回っていた間、あの小娘は自身の宿命と向き合い、命がけの人生を送る覚悟を決め、実際に命を賭けた戦いに身を投じてきたのだ。お前と我々が束になってどれだけ力をぶつけようが、あの小娘はその悉くを無に還すぞ。)

 

 黒百合と和解して少し舞い上がり気味だった穏乃は、もはや自分の相方と言っても過言では無い彼女がまさかそんな事を言うとは思ってもみなかった為、思わず言葉に詰まってしまった。しかし黒百合の方は努めて冷静に状況を分析し、穏乃にそのまま伝える事を選んだ。少し残酷な事をしてしまったかと心を痛める黒百合だったが、それが穏乃の為だと割り切り、あえて父親のように厳しく振舞った。

 

(・・そんなに強いの?)

(強いぞ、小娘は能力とオーラに覚醒し、更には神の身体の一部まで授かっている。そしてそれら全てを扱いきれる程の高い技術力と膨大な気力量・・・我らと繋がりが深いだけのお前では、手に負えん。)

 

 自分で言いながら若干ネガティブになってくる黒百合。一方穏乃が彼女の話を最後まで聞いて、咲への見る目を変えた。そんな二人に実例を見せてあげると言わんばかりに・・咲は動く。

 

「カン!・・・自摸!」

 

 手牌の4萬を暗槓、そして引き入れた牌は案の定アガり牌。嶺上開花である。

 

「自摸,タンヤオ,嶺上開花,リーチ,ドラ2・・・6000ALL、跳満です。」

 

 ニッコリとした笑顔で役を読み上げ、全員から点棒を暗に催促する咲。その笑顔は・・・槍槓した時に見せたあの顔とそっくりであった。そしてそんな咲を祝福するかのように、雀卓に彼岸花がポツリポツリと咲き始めた。

 その笑顔はこの試合を中継しているTVにもバッチリと映っており、実況していた福与アナはたまらず突っ込んだ!

 

「おーっとこれは跳満だーー!?・・いやぁ、役の高さもさることながら良い笑顔ですねー、小鍛冶プロ・・・・小鍛冶プロ?顔を手で覆ったりしてどうしました?」

「・・・・・・・ぁぁ・・・ィィ・・・」

「・・・この中継をご覧の皆さん。ただいま解説の小鍛冶プロが悦に浸っております。復帰まで今しばらくお待ち下さい。」

「・・・・・・・・・フヒヒ・・・」

「(ドン引き)・・・み、皆さん!どうか小鍛冶プロを嫌いにならないであげて下さい!彼女はちょっと頭がアレになっているだけです!」

 

 小鍛冶が咲の活躍を見てハイになっている間にも、次の対局の準備の為に全自動卓は牌を攪拌して山を築いていく。

 

 東1局 一本場

 

   清澄高校  125400 東

   阿知賀女子  78600 南

   白糸台高校  95700 西

   臨海女子  100300 北

 

 そして全員が手牌を整理し終え、再び東1局は始まった。

 

(流石咲ちゃん。跳満をいとも簡単に・・)

(・・これは始まりだ。)

(・・・えっ?)

 

 咲の跳満を見て改めて咲の実力を思い知った穏乃。しかしまだ彼女は理解していなかった、咲の本当の力を・・それどころか、自身の場の支配を強めて真っ向から咲に向かっていこうとしていたのだ。当然黒百合は止めに入る。咲の力のおおよそを把握している黒百合は、まだ駄目だと穏乃を暗に諭しに入る。

 

(小娘の本気はまだこれからだ。)

(そんな・・でも咲ちゃんは跳満をアガッているんだよ?いくら咲ちゃんでも跳満をいきなり繰り出す程の気力を一度に使ったんだし、しばらくは普通に打つんじゃ・・)

(はぁ・・・お前に霊的な訓練を全くさせてこなかった我らにも非はあるが、それにしても鈍すぎるぞ・・お前。)

(はい?)

(・・あの小娘はまだまだ元気が溢れている。おそらくあの跳満も、奴にとっては軽い殴打のようなもの。そして今は連撃を放つ為の前段階、といったところだろうな。)

(・・・跳満が軽い?18000点が?そしてそこから連撃が飛んでくる?・・・ま、まさか・・そんな訳・・・)

「リーチ!」

 

 黒百合の言葉に動揺している間に4巡進み、5巡目にして咲が再びリーチを宣言。黒百合の言う通り、連撃を放とうとしている。

 

(なっ!?嘘・・・ホントに!?)

(今は気力を霊力に変えて溜めろ・・・この局の後に奴の神の力は一旦消える。その隙を突いて流れを掴むぞ!)

 

 黒百合の作戦を聞いてすぐに冷静さを取り戻した穏乃。思考をリセットした穏乃は、咲が前巡に捨てた中を自身も捨てる事で確実に逃げる。他の2人も咲が捨てた牌を捨てる事で堅実に逃げに回る。

 それから2巡後・・咲は再び花を咲かせる。

 

「・・・カン!」

 

 暗槓である。ここまでは前局と同じであった・・・がしかし、

 

「・・・カン!」

 

 再度暗槓をする。2度目のカン・・・そして、

 

「自摸!」

 

 暗槓からの自摸・・すなわち嶺上開花である。

 

「リーチ,純チャン,自摸,嶺上開花・・・6100ALLです。」

 

 再び咲は自摸アガる。役は先程と同じ嶺上開花、同じ跳満。加えて1本場な為300点が加算される。その事実を咲の手牌を凝視しながらゆっくりと理解していく3人・・・とここで、3人は気づく。先程よりも彼岸花の数が増えている事に。しかしそれを訝しむ間を・・咲は与えない。

 

「・・・このペースでいけば、南入り前には終わりそうですね。」

 

 まるで冷蔵庫の中身を確認しながら、今夜のおかずは何にしようか、と呟いた時のような・・・まるで日常会話を話すかのようなトーンで独り言を零す咲。しかしその独り言を聞いた3人は絶望する。

 

(そ、そんな・・まさか咲!?ネリー達が南入り後に動く事を見抜いて、その前に試合が終了する可能性を匂わせる事で・・ネリー達に、ネリーにさっさと仕掛けに来いって挑発しているの!?)

(こ、こんな事が・・いや、落ち着け私!今サキがやっている事は別にそこまですごい事じゃない!現にスミレやテル、もちろん私だって!予選の雑魚相手に能力を使ってやりたい放題してきたじゃない!それをサキは私達相手にやっているってだけの話で・・・あーーもうムカツク!!すっごいムカツク!!!それって私達をその辺の雑魚と同格に見てるって事でしょ!?ウガアアアアァァ馬鹿にしてええええぇぇ!!!)

(・・・黒百合、これがまだ続くの?)

(ああ・・というより、それくらい事前に予測できなかったのか?)

(いや、咲ちゃんが嶺上開花の能力を使えるのは知っていたけど・・・まさかこんな風に連続で跳満を出せるだなんて・・)

(そうではない、小娘の姉の話だ。)

(・・・へ?)

 

 他2人と同じように、咲の跳満から様々な事を連想していた穏乃。そんな穏乃の相棒こと黒百合は、3人とは全く別の事実から咲の能力の解析を進めていた。

 

(小娘の姉・・確か宮永照だったか?あの不味い気を持った娘がさんざん連呼していたな。)

(え、うん。不味い気の娘?・・・あの世界ランク2位の小鍛冶さんの再来って呼ばれていて、その人と同じようにインターハイで無双し続けている人だよ。・・あの人と咲ちゃんが姉妹だって知ったのはつい最近だけど。)

(ほう、となるとあの特性・・というより能力は親からの遺伝か。)

(え?嶺上開花が?)

(違う、連荘の方だ。よくは知らんが宮永照は一度自局でアガりだしたら止まらないのだろう?)

(うん、9局目に九蓮宝燈が出るまではね。・・たぶんそういう場の支配なんだろうけど・・・)

(なるほどな、ようやく合点がいった。その連荘の場の支配とやら・・あの小娘にも、しっかりと遺伝しているようだぞ。)

 

 その黒百合の言葉を理解した瞬間、視界が一気に真っ白に漂白される。意識が一瞬何処かへと旅立ち、頭が後ろにクラリと落ちる。

 

「・・・っ!?っとと・・」

 

 釣られて身体まで椅子から落ちそうになるが、その前に意識が戻ったおかげで、寸でのところで体勢を立て直す。幸いにも周りにはそこまで不審がられなかった。

 

(・・・ごめん、何て言ったかもう一回聞いて良い?)

(二度は言わん、しっかりと精神を立て直せ!・・・まだ負けた訳では無い。)

 

 そう言い残して再び霊力の充足に努める黒百合。残された穏乃は、・・・そうだ、まだ負けた訳では無い!と、一人戦う決意を新たにした。

 しかし具体的な解決案は・・全く思いつけなかった。

 

 

 東1局 ニ本場

 

   清澄高校  143700 東

   阿知賀女子  72500 南

   白糸台高校  89600 西

   臨海女子   94200 北

 

 

(どうするべきか・・ここでネリーは仕掛けるべきなのか?)

 

 相変わらずの東1局、その二本場。しかしネリー達3校はここに来て危機的状況に立たされてしまっている。

 

(あの咲がここに来て本気で攻めてきた。てっきり必要以上に相手を嬲るような真似はしないと踏んでいたのに・・まさか後半開始早々にコッチを叩き潰しに来るなんて・・どうする!?ここで攻勢に出るべきか!?)

 

 その中で一人、具体的に咲を倒せる案を持っていたネリーは悩んでいた。今咲に攻撃を仕掛けるべきか?確かに咲をこのまま放っておけば、姉である宮永照のように連続和了を決め続ける可能性はある。しかし、その連続和了が宮永照と全く同じ、前局よりも役を高くしなければいけないのがデメリットとして存在しているのだとすれば・・突破はそこまで難しく無い。

 

(阿知賀の先鋒がやっていた、手牌にドラを集める能力。あれをネリーが幸運の能力を使って疑似的に再現してドラを引き寄せてしまえば、確実に咲のアガりを遅らせる事は出来る。加えて9局目・・九蓮宝燈が炸裂するまではまだ時間がある。・・ついでに言えば、咲は最初から跳満を炸裂させてしまった事で、役作りに毎回時間が掛かってしまう事になった。・・うん、ここまで条件が揃っているなら・・・いこう!ここで運を使ってドラを引き寄せ、咲の手を止める!)

 

 ここでネリー・ヴィルサラーゼ!運命操作の能力を使って咲のドラを封じる作戦を決断!全自動卓が牌を攪拌し始めたその瞬間に、

 

(フェイタルカムイ!)

 

 自身の運を高める事で、ドラが出来る限り自分に集まるように試行する。しかしここで咲も、

 

(ホヤウカムイ!)

 

 本日3度目のホヤウを発動!これにより再び淡と穏乃は何も出来なくなってしまった。しかし今回のネリーの幸運の能力は、場の支配とは無関係ゆえ無事発動。あくまで運に頼る選択が功を奏す形となった。

 それから全員が牌を取って手牌を確認する。内2人の顔は明らかに青ざめていたが、ネリーだけは口角が上がっていた。

 

(よし!ドラの東が3つ暗刻になっている!これだけ出来れば上出来!あとはネリーが運を使って早上がりすれば・・・咲の進撃を止められる!)

 

 自らの勝利を確信したネリー。少なくともこの局は咲の上を行ける!・・・少なくともこの時はそう思えたのだ。

 だが、すぐにそれは間違いだったのだと気づかされるのである。

 二本場が開始してから3巡後、

 

「ポン!」

「えっ?」

「おや?駄目でしたか?」

「いや、大丈夫だよ・・・ただ・・」

「ただ?」

「・・ううん、何でもないよ。・・・はい、どうぞ。」

「ふふ、ありがとうございます。」

 

 咲が穏乃の捨てた3筒をポンで鳴いたのだ。その行動を3人は少しだけ不思議に思った。特に淡は不思議に思う時間が長かった。

 

(はぁ?なんでカンじゃなくてポンな訳?ていうかテルと同じで連続和了を狙っているんだとしたら、そもそも鳴く事自体悪手な訳だけど・・まさか加槓狙い?)

 

 そう、そこまでは3人の中で一番気づくのが遅かった淡だったが、逆にそこから真実に到達するのが最も早かったのも淡だった。

 

(ちょっと待って・・・そもそもなんで最初から跳満なんていう高い目を狙いに行ったの?サキが本当にテルと同じ連続和了の能力を持っているんだとしたら、そんな後から自分の首を絞めるような事はしないはず・・・・・まさか!?サキの連続和了の条件って!!!)

 

 しかし、淡一人が気づいたところでどうしようも無いのである。5巡目、今度はネリーが捨てた7索をポンする事で2鳴きとなり、作られる役もかなり絞られてきた。

 

(うーん、咲ちゃんが作ろうとしているのはタンヤオ、いやトイトイかな?トイトイとタンヤオの組み合わせなら、後はドラが3つ絡むだけで跳満。今は二本場だから6200ALLが確定・・でもドラの気配はネリーさんの方からするんだよなぁ。というよりネリーさん、さっきから能力を軽く使っているようだけど・・どんな能力?今までの試合結果を見る分だと、アガるスピードが速くなって火力も高くなる・・っていう単純な能力に見えるんだけど、だとしたら今の状況に説明がつかないし・・うーん、分かんないなぁ・・・)

 

 取り合えずまだ咲は動かない・・そう、ネリーと穏乃は思っていた。そしてこの時、ネリーは既に聴牌していた。手牌は[4萬,4萬,5萬,5萬,6萬,6萬,7萬,8萬,9萬,東,東,東,發]の發単騎待ち。役は一盃口,場風の東,混一色,ドラ3,自模れば8000,4000の倍満である。もうネリーは勝ちを確信していた。流石の咲も遊び半分で打っているのだとすれば、これは防げないだろうと・・次の自分の自摸で終わりだと思っていた。しかし・・・

 

(来いっ!・・・あれ?發じゃない?)

 

 ネリーの自摸は不発に終わった。しかしネリーはまだ余裕だった。まぁこんな事もあると、運をかなり制限している現状だからこんな事もあると、楽観視してしまっていた。そして6巡目の咲の自摸番になって、そんな甘い考えは二度としない方が良いと・・・ネリーは痛感する事になる。

 

「カン!」

 

 咲が自模った牌は3筒、それをそのまま加槓。その動きで流石の2人も察しが付く!

 

(なっ!?まさか咲ちゃん!?咲ちゃんの連続和了ってお姉さんとは条件が違うの!?)

(そんな・・・ここまで来て・・ネリーが・・競り負ける!?)

 

 2人がショックを受ける中、淡は咲のオーラの動きを注意深く分析していた。それが果たして何の役に立つのかは分からないが、少なくともここで何もしないで見ているよりかはずっとましだと思ったからだ。

 そんな3人に見守られながら、咲は更なる高見へ登る。

 

「カンッ!」

 

 加槓して引いたのは、またもや槓材の7索!これも咲は加槓して更に牌を引く!引き入れたのは6筒!そしてこの牌を咲は・・

 

「・・カン。」

 

 静かに暗槓。これで3つ目のカンである。そしてこの時に3人の疑念は確信へと変わる。咲の連続和了は、彼女の姉の宮永照とは全くの別物だと。

 

(やっぱりそうだ・・サキの連続和了はカンが重要なんだ。場が進むごとにカンを一つずつ増やしていかなきゃいけない・・それが縛りになっている。そして多分点数は関係ない、どれだけ点が低かろうがカンを一つずる増やしてアガッていけば、それでOKな能力なんだ・・・駄目だ、私の絶対安全圏と相性が悪すぎる。絶対安全圏は相手の手を5向聴まで落とすオーラの支配で、4巡目までは絶対に相手は聴牌しない。でもこれは相手が鳴きを入れなければの話で、今回みたいに何度も鳴かれた場合は効果が薄れる。Wリーチの方はまだ何とか対抗できそうだけど・・・駄目だ、今の多芸なサキに勝てる気がまるでしない。)

 

 特に淡への精神的なダメージは顕著であった。ガックリと肩を落として自身の胸に視線を落とす彼女は、控えめに言って満身創痍である。

 そんな淡の事など知った事かと言った様子で、咲は山から牌を引き入れる・・・引き入れた牌をコトッと優しく揃えて手牌を見せる咲。

 

「・・・自摸。」

 

 既にカンが3つ開かれている為、見えないのはたった今自模った牌を含めて5つ。その5つがネリーの目に入る・・・入れてしまったネリーは、自身の心に小さな亀裂が生じる音が聞こえた気がした。

 

「自摸,白,トイトイ,三槓子,嶺上開花・・・跳満、6000ALLの二本場なので、6200ALLです。」

 

 白が3つ、そして發が2つ・・・咲が暗槓によって引き入れたアガり牌は發。つまり天は、幸運に愛されしネリーよりも、流れに乗っている咲を選んだのだ。雀卓に所狭しと咲いている彼岸花達も、そうだそうだと言いたいのか・・真っ赤に輝きながら揺れ動いて主張を続けている。

 

 

 東1局 三本場

 

   清澄高校  162300 東

   阿知賀女子  66300 南

   白糸台高校  83400 西

   臨海女子   88000 北

 

 

 一方その頃、この試合を見ていたTVに噛り付いて見ていた清澄の面々は、咲の戦い方に痺れていた。

 

「うおおおお咲すげえぇぇ!!!これが咲の本気かよおい!!」

「すこいじぇ咲ちゃん!まさかこんなに暴れるなんて思っても見なかったじぇ!!」

 

 咲の分かり易い活躍に大興奮の二人。ついでに言うと、この試合を見ているほとんどの観客も同じような反応を示していた。もはや咲がプロ雀士として華々しくデビューするのは必然だろう・・と、麻雀協会の重鎮も試合を見てニコニコしていた。しかし、そんな二人とは少し距離をとって、なにやら話し込んでいる二人がいた。

 

「・・・のぉ和、あの咲を見てどう思う?」

 

 一人は清澄の頭脳兼料理担当の染谷まこ、そしてもう一人が・・・

 

「・・・随分と、退屈そうですね。」

 

 咲の一番の理解者を自称している、原村和であった。

 

「そうじゃのぅ、大将戦が始まって直ぐの頃は、まぁまぁ楽しそうな顔をしていたんだがのぉ・・」

「はい、ネリーさんの方を見てなにやら物珍し気な顔を見せていましたが・・」

「ああ、やっぱりあれはそういう顔か。咲本人が自覚しとるかは分からんが、あの顔は割とよくしているから案外分かり易いものよのぉ。」

「うふふ、そうですね。あの顔は染谷先輩が珍しい料理を作ってくれた時によく見る顔ですよ。」

「ふはは!ではなんじゃ?咲は試合の最中に臨海の大将を見て食事の事を思い出していたのか?全く・・堂々とするのは構わんが、もう少し緊張感を持って欲しいところでもあるな。」

「・・・でも安心しましたよ。」

「ん?何がかえ?」

「・・咲さんを心から笑顔に出来るのは、今のところ私達以外にいないって事です。」

「・・・・・お前さん、今とんでもない顔をしとるぞ。」

「ええ、でも良いでしょう?咲さんとお揃いっぽくて?」

「あんなぁ・・今はまだ咲が興味を持ってくれているから良いが、こっちはいつ梯子を外されるのかと毎日ビクビクしとるんじゃぞ?」

「大丈夫ですよ、咲さんは離れていきません。というより・・・私がどこまでも付いて行くから問題ありません。」

 

 どこまでも真っすぐで自分本位な意見を述べる和。そんな彼女の堂々とした表情を見て、

 

(やっぱりこの二人、似た者同士だのぉ。)

 

 と一人納得する染谷なのであった。

 

 

 そして会場では・・・咲以外の3人の顔が絶望に染まっていた。

 

「カンッ!」

 

 三本場から3巡後、咲は再び暗槓する事で3人の・・いや、3校の心を折りに掛かる。

 

(だ、駄目だ・・半端に幸運を使った程度じゃ咲の支配に勝てない・・かといって全力で運を使ったとしても、あの気力量じゃネリーの方が先に参っちゃう・・・どうする!?一人じゃどうにも出来ない!!)

(・・・強い・・テル。テルがサキに一回も勝てなかったって言っていた意味がよく分かったよ。これは一人じゃ勝てないよ・・・テルはよく心が折れなかったね?だって自分が9局掛かってやっと出来る事を妹はたった4局で出来るんでしょう?あはは・・・最悪の現実だね。もしサキがテルの代わりに白糸台に入学していたとしたら・・私もあの子達みたいに、サキの取り巻きの一人として生きる事を自分から望んでいたのかな・・・。)

(・・黒百合、はっきり言うよ・・私達ってもしかして、最初から積んでた?)

(やっと気づいたか・・そうだ、あの娘がその気になれば、この状況は試合開始からすぐの頃にも起こっていただろう。そうしなかったのは強者故の余裕の現れか・・それとも何か他の思惑があっての事かは知らないが・・いずれにしても、もう遅い。我らとお前が試合前に相互理解を果たせなかった時点で・・我らの負けは決まっていたのだ。)

「カンッ!」

 

 二度目の暗槓・・牌を引き入れる・・・その牌を一瞥した咲はニヤリと笑って、

 

「カンッ!」

 

 三度目の暗槓、いつの間にか彼岸花は4人の足元にまで咲き誇っているではないか。

 

「・・・カンッ!」

 

 四度目、この局最後の暗槓・・・そして・・・

 

「・・・・・自摸。」

 

 呟き・・牌を倒す。その動きを3人は・・ただ黙って静かに見ていた。

 

「・・・自摸,四槓子,四暗刻単騎待ち,嶺上開花・・・48000ALLの三本場で48300ALLのトリプル役満と言いたいところですが、この大会のルール上ダブル役満以上は全て普通の役満扱いになる為、16300ALLとなります。まぁ・・宮永照選手の出した九蓮宝燈のダブル役満も普通の役満扱いになっていたので・・これでイーブンですかね?」

 

 さりげなく姉との比較を入れる事で、視聴者達に自分の方が格上だと刷り込む咲。そんなある種の茶目っ気を披露する咲を・・・画面越しに見ていた照は・・

 

「忘れもしない、私の心に染み付いてとれないアガり方・・・これを、この酷い打ち方を・・・全国の雀荘でやっていたの?・・咲、貴女の狙いは何なの・・・?」

 

 未だに実の妹の真意を理解できずにいるのであった。

 

つづく

 

決勝戦はどんな展開を望みますか?

  • 能力を使った麻雀対決をがっつり書いて
  • 麻雀対決はあっさりでいい
  • 麻雀はいいから能力で直接戦って欲しい
  • 麻雀シーン少な目、キャラ同士の会話多めで
  • 試合中の回想シーン中に会話を多めで
  • 特になし、作者のお好きにどうぞ
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