ちょっと仕事の方で自主退職を促されまして・・・
もしかしたら半年くらい職探しで更新が止まるかもしれません。
南1局 2本場
清澄高校 218300 東
阿知賀女子 63100 南
白糸台高校 43000 西
臨海女子 75600 北
南2局2本場・・・長かった大将戦もいよいよ終わりが見え始めた頃だが、既に勝敗は明らかであった。今まで隠していた実力のほとんどを解き放った咲は雀荘荒らしカンドラ、その名の通りの戦いぶりを見せる事で観客を魅了し尽くした。無論見ている人間のほとんどが恐怖を抱いたが、同時に強い憧憬の火も灯った。自分もあんな風に牌を自在に操り、襲い来る全ての雀士の心を挫きたいと。
「これが咲ちゃんの本来の実力かぁ。やっぱSNS上でも話題沸騰ですね・・・部長?どうかしたと?」
「ん?いやな・・・やっぱー、咲ちゃんは一味も二味も違うなぁって思うたんや。」
かつて彼女に嫉妬の炎を燃やした白水哩はそう言った。しかし、
(ふふふ、そげ言う割には随分とスッキリとした顔ばしとーばい。・・・良かった、ちゃんと吹っ切れたんやね。)
パートナーの鶴田姫子には全てお見通しだ。哩はもう・・自らの嫉妬心に惑わされたりしないと。
「そげん事より部長、SNS上での麻雀に対する関心のデータ集め・・・ちゃんとやっとーと?」
「ん?あっ!?ごめん手が止まっとった!」
急いで協会から与えられた仕事に戻る。そんな様子を微笑ましく見守りつつも、今後の麻雀界に巻き起こるであろう混沌を予見して、一人難しい顔を作る姫子。
(ばってんこれからが大変やね。これから先、部長みたいに嫉妬に狂うた能力者がわんさか生まれまくるとば想像したら・・・誰かがそっちの方面で咲ちゃんば支えないかんよね。)
しかしその瞳は、これから先も彼女の傍で仕事を続けられる未来を見通して、ルンルンに輝いているのであった。
(咲!今度はこのネリー・ヴィルサラーゼが相手だよ!阿知賀の大将には経験の差で勝ったようだけど、ネリーにその隙は無い!)
一方、今SNSで話題の中心になっている宮永咲が無双している試合会場では、たった今咲が高鴨穏乃を下し見事自摸アガりをして南1局2本場に入ろうとしていたところである。
そんな中、貴重な戦力が一人減ってしまった事に僅かな危機感を覚える淡とは対照的に、咲とそれなりの付き合いがあるネリーは一人猛っていた。
(ふーん、今度はネリーちゃんが相手か・・・というか、もうネリーちゃん以外満足に戦えないのか。穏乃ちゃんは神様を焼いた痛みがそのままフィードバックして牌を持つだけで精一杯、淡ちゃんはネリーちゃんに色々吸われた上にさっきの私との打ち合いで気力切れ。後はネリーちゃん一人倒せばそれで終わり・・・ふーん、あっけないものだね。)
(随分と余裕の表情だね咲。でも本当に大丈夫なのかな?ネリーはもう咲のやり方を全部解析し終えたんだよ。)
そう思うと同時にネリーはフェイタルカムイを再び発動。彼女の背後に再び巨人が姿を現す。
(ネリーさん!っ痛うぅぅ・・・すいません、後はお願いします。)
(ネリー・・頼んだよ。偉そうな事言っておいてあれだけど、こっちももう限界だから・・・アンタが負けたら、こっちも自爆覚悟で突貫するくらいしか策は無いから。ホント頼むわよ。)
ネリーの力の象徴である巨人に希望を託す二人、その思いを視線から受け取ったネリーは・・数秒二人に何かしらの合図を送った後、気合を入れ直した。その直後、雀卓が山を築いて2本場開始の合図を送った。
「咲・・・いくよ!」
「うん、ネリーちゃん。」
気合の入った声で咲に話しかけたネリーとは裏腹に、どこかもう勝負はついているとでも言いたげな、やる気の無い声で答えた咲。・・・咲は気づいているのだ。ネリーの新たな力、フェイタルカムイに存在する欠点に。故に咲は自身の勝利を疑わないのだ。
(この感じ・・本当に気づいてないんだね、フェイタルカムイの弱点に。)
それぞれが手牌を並び替えて整理する。最後に顔をしかめながらゆっくりと牌を整理し終えた穏乃を確認した咲が第1打を放ち、2本場は廻り始めた。
「南2局2本場が始まりました!さぁすこやん、2本場は一体どのような展開になると予想されますか!?」
「そうですね、おそらくここまで目立った活躍をしてこなかったネリー・ヴィルサラーゼ選手がいよいよ動き出すと思います。」
「ほほう!それまたどうして!?」
「咲選手の連続和了を止める為です。現状、あの三人の中でそれが出来る可能性が一番高いのは彼女だけです。それに他二人は既に満身創痍ですし。」
「満身創痍?うーん、それは点棒上での意味ですかね?確かに三人の中で一番点棒が残っているのは彼女ですが、穏乃選手だってまだ点棒は残っていますよ?」
「・・・彼女の表情を見て下さい。」
「表情?・・・ああ、確かに。何処か苦しそうですね?これは一体?」
「おそらく、咲選手に緑一色をあと一歩のところで止められたショックで疲れが一気に襲ってきたんだと思いますよ。役満が完成しそうなところを止められるのは結構辛いので。」
(本当は咲ちゃんが神様達を不意打ちで燃やして、依り代の彼女にもダメージがいったんだけど、そんな事真面目に言っても面倒なだけだし・・適当にそれっぽい事言っとこ。)
話の分からない相手の為にそれっぽい事を言って誤魔化す小鍛冶。内心面倒だなと思いつつもこれも能力者の代表としての仕事だと自分を励まし、今日もときどき死んだ眼になりながら頑張る彼女なのであった。
「なるほど、しかし先程の穏乃選手は惜しかったですねー!あと少しで役満をアガれるところだったのですが・・」
「はい、おそらくそれをいち早く察知した咲選手が”運良く”先にアガれた・・・といったところでしょうか。」
本当はそんな事露ほども思っていない小鍛冶だったが、こうでもしないと無能力者の視聴者達を納得させられないと自分に言い訳して、敢えて咲のアガりを幸運だったと評した。しかし、こうして思っても無い事をスラスラと話していると、段々とストレスが溜まって来るのだ。しかも今しがた彼女がラッキー扱いしたのは、自身が愛してやまない咲その人。建前があるとはいえ大好きな人を下げるような事を言うのは、彼女にとって物凄いストレスなのだ。
(あーーーーーー、ごめんなさい咲ちゃん。帰ったら思いっきりビンタしていいからね。)
もはや死んだ眼どころか死んだ顔をしている彼女であったが、それでも咲の為に頑張らなめればと奮起し、再び前を向く。
「さて、それで話は戻って現在2本場3巡目・・・おおっとこれはー?」
「おや、ネリー選手がもう聴牌していますね。役はタンヤオ、ドラ2だけですが2萬、5萬、8萬の3面待ちですか。」
「おおっと!ここでネリー選手既に聴牌!もしやこれは咲選手の連続和了を止める為の布石かー!?これには流石の雀荘荒らしカンドラも引っ掛かるかー!?」
(声が大きいよ、こーこちゃん。)
(よし、聴牌!しかも萬子の3面待ち!)
僅か3巡にして早くも聴牌したネリー。しかも3面待ち、なんという幸運であろうか。しかし、彼女はまだ笑わない。
(まだだ、まだ駄目だ。この程度の罠、咲はすぐに見抜いて手を打って来る。だから・・・)
自身の背後にいるフェイタルカムイに指示を出す。彼女の命令通り、巨人は足元から自身の分身たる泥を2つ生み出し、宿敵の生足へとゆっくり近づいていく。ついでにもう片方を素早く穏乃の腕へと密着させた。もちろんこちらはただのフェイク、咲が本命だと気づかせない為の分かり易い陽動である。
(そうだ!そのままバレないように憑りつけ!そして咲の全てを吸い上げろ!そして弱った姿をネリーに見せて!そのままネリーに命乞いして!ネリーに頼って!ネリーを必要として!)
咲への歪んだ欲望を抱きつつ、念のために巨人に追加の泥を準備するよう指示しておく策士ネリー。表情にも余裕が見られる。
これには流石の咲も終わったか?と、いくら咲がすごいとはいえ足元から気力やオーラを吸い上げられて弱体化してしまったらヤバいのではないか?と、場の支配を維持するだけでも気力を使うのに嶺上開花までしなきゃいけない事を考えると・・・もう無理では?と、横から見ていた穏乃は思った。
更にネリーは運とオーラの出力を上げて確実に自模る姿勢を咲に見せた。当然咲もオーラの出力を上げて対抗した、それはつまりネリーの誘いに乗ったという事でもある。それを見た淡も思った、今回ばかりはネリーの勝ちだと。既に聴牌しているネリーにここから追いつけるすべはないと。
・・・それから7巡経って10巡目のネリーの自摸。
(来いっ!・・・・ああもうっ!何で、何でこんなに来ない!?)
聴牌してから7回目の自摸。だというのにアガり牌が一つも来ない・・・無論他二人もネリーの為に引こうと頑張ってはいるのだが、やはり来ない。三人合わせて21回、20回以上引いて出ないのは流石におかしい・・・そう思い始めたその時!咲が可哀そうとでも言いたげな、憐みの表情をネリーに向けた。
「・・・無駄だよネリーちゃん。その程度じゃ私には追い付けないよ。」
「・・・へ?」
「ふふ、私の自摸番ですね。」
咲の自摸番、ゆっくりと牌を山から取って手元に引き寄せる。そのスローとも呼べる動きは見ている者に様々な疑念を抱かせる。
(何で咲はネリーに憐みの目を?・・・まさか、いや、あり得ない!ネリーは今カムイを使って運と気力を吸い取っているんだ!悟られない為にフェイクの泥も作って阿知賀にくっ付けた!だから確実に咲は弱っているはずなんだ!)
そんなネリーの心の声も虚しく、咲は現実をつまびらかにした。
「・・ふふ、カン。」
2本場1回目のカン、しかも槓材は2萬!ネリーの待ちであった2萬!暗槓のため槍槓する事も出来ない!
「んなっ!?」
「噓でしょ!?」
「ぐっ!?くーーーーっっ、サキッ!!!」
純粋に驚くネリーと穏乃。しかし淡だけは咲に敵意を向けていた。決して頭の中をネガティブにしないように努めていた。
「続けてカンッ!」
更にカンを重ねた。開かれた4枚は全て8萬、しかし今度のカンは新しく引いてきた牌を含んでいない。つまり、咲はずっと前からネリーの待ちの一つである8萬を握り潰していた事になる。その事実を理解したネリーは・・
(嘘っ!?運もオーラもそれなりに使ったはずなのに・・・くっ!まだだ!まだ負けた訳じゃない!!)
心が折れそうになるも寸でのところで踏みとどまる。まだネリーには3つ目の待ちである5萬が残っていた。
(ネリーの手牌は34567萬,4筒の暗刻,7筒の暗刻,6索の対子。待ちは2萬と5萬と8萬、この内の2萬と8萬は既に死んでいる。でもまだ5萬は生きている!いや、確実に咲の足を止めている!)
キッと咲を睨みつけるネリー。
(咲はネリーのアガり牌を自身の槓材にする事で、破滅の運命を見事に躱した。そして残る5萬も既に暗刻になっている可能性が高い・・・でもそれは逆に、咲の連続和了を止める大きな足かせにもなっているはず!)
心に僅かに余裕が出来る、それに伴って顔にも明るさが戻った。
(咲の連続和了はカンを一つずつ重ねていく事で始めて成立する。そして今の咲の手牌7枚の内の3枚は5萬と考えれば、確かにネリーにとっては絶望的だけど・・・他の二人にとってはどうかな。)
分かり易く二人にウインクをして合図を送すネリー、された二人もウインクで返した。無論、3人はオーラで互いの手牌がどんな感じなのかなんとなく分かる為、このような確認行為は別に必要ないのだが。
(よしっ!咲がネリーに注目してくれたおかげで、二人が聴牌まで到達する事が出来た!)
そう、ネリーは今局の手牌整理時点から既に策を弄していた。2本場開始直後、フェイタルカムイの効果範囲を拡大して二人に幸運を少しだけ分け与えていたのだ。それに気付かせない為の2つの泥、分かり易いオーラの解放を行い、自身に咲を注目させた。結果咲の手はネリーを意識して5萬を抱えて手が遅くなり、3槓子完成まで遅れる事態になった。一方ネリーから幸運を分けて、いや返してもらった二人はそのまま運に乗って聴牌へとゆっくり進軍。気付かれないように、それでいて速さも必要だったが何とか聴牌まで到達する事に成功した。傍から見ればネリーだけが不利な状況だがその彼女こそが、咲をここまで追い詰める為に後の後まで考えて策を敷いた本人に他ならないのである。
(いける!ここで咲の親を終わらせてしまえば、後はネリー達がそれぞれの親番で頑張って自模り続ければいいだけ!そして3人の内の誰か一人でも咲の点棒を超える事が出来れば・・)
「それが甘いって言ってるんだよ、ネリーちゃん。」
瞬間、脳が考える事をやめる。表情も消える・・・冷や水を掛けられるとはこの事を言うんだろうなと、傍で見ていた穏乃は思った。
「カン。」
3度目の暗槓、開かれた4枚は5索・・・そして至る。
「自摸。」
残された5枚が露わになる。6筒、7筒、8筒・・・そして2枚の5萬。ネリーの予想は外れ、咲は5萬を2枚しか抱えてはいなかった。
「なっ!?ネ、ネリーは確かに運を使った!それこそ、普通に使えば役満クラスはアガれるだけの運を!なのに何で・・ただのタンヤオすらアガれないなんて・・・・」
「ああ、その事・・・じゃあはい、私の代わりにめくって確認していいよ。」
「?・・な、何を?」
「何ってドラ表示牌の事だよ?まだ3枚とも確認してないでしょ?」
そこまで言われてハッと気づく。咲のカンに驚くばかりですっかり頭から抜け落ちていた。
「・・分かった。」
震える指先で一枚目をめくる・・・開かれたのは、
「(っ!!??)・・・ここまでの差が。」
5萬・・・ネリーの最後の希望は、最初から潰えていたのだ。
「ああ、そこにあったんだ。お、最後のドラ表示牌が5筒・・てことはドラが1つ絡んで倍満だ。やったー。」
全く感情の籠っていない喜び。そんな咲とは逆に、声にならない慟哭を心の内で叫ぶネリー。彼女の渾身の策も・・ついぞ咲には届かないのであった。
つづく
決勝戦はどんな展開を望みますか?
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能力を使った麻雀対決をがっつり書いて
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麻雀対決はあっさりでいい
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麻雀はいいから能力で直接戦って欲しい
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麻雀シーン少な目、キャラ同士の会話多めで
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試合中の回想シーン中に会話を多めで
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特になし、作者のお好きにどうぞ