雀荘荒らしの咲   作:ロクナナエイト

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やっと局が進みます。


主人公・大星淡

 

 

 南1局3本場

 

 

 ガシャンッ!

 

 巨人が崩壊した直後、雀卓が再び山を築く。それは南1局3本場の合図でもあった。しかし・・・

 

「ネ、ネリーさん!大丈夫ですか!?牌は持てますか!?」

「っ痛・・・大丈夫、ちょっと貧血気味なだけだから・・・」

 

 観客達の為の分かり易い嘘を付きつつ、ゆっくりと手牌を揃えていく。巨人が倒壊したショックがフィードバックし、精神に大きな亀裂を生じさせた。脚はガタガタと震え、指もあらぬ方向へと曲がろうとするその姿は、とても麻雀などプレイ出来るような状態には見えない。それでも・・

 

(・・・まだだ、まだやるべき事がある。)

 

 ネリーの切り札たるフェイタルカムイは散った。しかしネリーの目は未だに闘志を燃やし続けていた。

 

(まだフェイタルカムイの残骸は消えずに残っている!)

 

 そう、咲に内側から燃やされて砕かれた巨人の遺体、その肉片が床に散らばったままなのだ。

 

(確かに咲の言う通りだった。ネリーはぶっつけ本番で手に入れたばかりの力を使って自滅する醜態を・・・他でもない咲に晒してしまった。もはやネリー一人の力では咲には勝てない・・でも!)

 

 手牌を取り終えたネリー、すると今度は足元に散らばる泥に意識を集中した。

 

(ばらけろフェイタルカムイ!そして彼女に力を与えろ!)

 

 瞬間、散らばっていた全ての泥が霧散し卓上で一つのオーラの塊に成ろうと集まり始める。それはさながら、小さな命の光が集まり大きな星へと成長していくようで・・その変化に他三人も手牌そっちのけで目を向けた。そして出き上がった星は上空へと飛翔し、一回くす玉の如く止まったかと思うと物凄いスピードで淡目掛けて落下した。

 

「・・・えっ!?ちょっ!?」

 

 見惚れていた淡は当然指一本動かせずに星と激突。とんでもない輝きに包まれながら、星は淡と同化した。その様子を見た三人は、

 

(さぁ、あの時約束した通り、ネリーが失敗したら今度は貴女の番。・・・勝手に気力と運を盗んでごめんね、後は頼んだよ。)

(へー、驚いた。もう精神はボロボロのはずなのに、まさかここまでオーラを操れるとは。これは来年が楽しみだね。)

(うええええええええっ!?だ、大丈夫ですかーーーーっ!?淡さーーーーーーーーんっ!?)

 

 全員全く違う反応をしていた。そして肝心の淡は・・・

 

(お、おお・・・おおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーー!!!???)

 

 輝きはすぐに身体の中に溶け、淡は解放された。解放された淡が初めて思った事は・・・

 

(え、えっと・・淡さん?大丈夫ですか?すごく光ってましたけど・・・)

(ふ、ふふふふふ・・・)

(えっ?あ、淡さん?・・・)

(・・・咲、見せてあげるよ・・超新星爆発って奴をね!)

 

 他でもない咲への対抗心だった。

 

 

「・・・っ!?、・・・・・はぁ。」

「ん?どうしたのすこやん?何か試合の展開に思うところが?」

「いえ、そうではなく・・・いえ、そうですね。」

「いやどっちやねん!?なになにどうしたの元世界ランク2位さん?歴戦の勇者の直感が何かを察知した?それともアラフォーの勘でも働いた?」

「アラサーだよ!・・・はぁ、虚しい。」

「いや虚しいって、今の試合を見て何で虚しいになるのよ?」

「いや、私が咲ちゃ・・咲選手と同い年でしたなら・・・もう少し私の人生も薔薇色だっただろうなぁって・・・」

「・・・えーはい皆さま、ただいま私の相方が皆さまのお茶の間をキンキンに冷やしてしまうという解説にあるまじき愚行を犯してしまい、大変申し訳ありませんでした。」

「いやそれこーこちゃんが言うの!?」

「ふははは・・・えーさて、まぁ下らない茶番を挟みまして、解説の小鍛冶さん。今の状況は如何でしょうか?」

「そうですね、やはりこれは後半戦東1局の焼きまわしと言ったところでしょうか。先程と同様、咲選手がカンを増やしていく事で役満まで持っていこうとしていますね。」

「うーん、我々一般人からしてみれば大変理解に苦しむ戦術でありますが、まぁそれは置いといて。ではこの3本場で四槓子が?」

「いや、それがちょっと風向きが変わったと言いますか。」

 

 

 南1局 3本場

 

   清澄高校  242900 東

   阿知賀女子  54900 南

   白糸台高校  34800 西

   臨海女子   67400 北

 

 

(感じる・・私の中に。二人の熱い思いを。)

 

 心機一転、ネリーから気力と運を受け取った淡はやる気に満ちていた。それもただのやる気ではない・・不退転の覚悟を決めていた。

 

(・・・二人とも、少しいい?)

(はい!こちらもサポートの準備は出来ています!)

(・・・ごめん、淡。勝手にオーラを盗んで・・)

(それはもういい、こうして返してもらったし。それに・・アンタが本気で咲に勝ちたかったって事がよく分かったから。だから・・いい。)

(・・ごめん、ありがとう。)

(それと穏乃も。アンタもよく頑張った。あの咲に格の違いを見せつけられて、それでも後半戦に挑もうと奮起したんでしょ。流石、準決勝で私に一矢報いただけの事はあるわ。カッコよかったわよ!だから最後までよろしく!)

(っ!!!・・・ううぅ、ぐすっ・・あ、ありがとうございます。)

(よしっ!なら後は分かるわね!)

(ええ、ネリーが三人の運を限界まで操作して自摸まで持っていく!)

(私はその間、残っている気力で咲さんの場の支配を出来る限り崩します!)

(OK!直接殴るのは私に任せて!あ、でもチャンスがあれば貴方達も自摸っていいからね。)

 

 三人の作戦会議が終了し、ネリーが2巡目最後の牌を河へ落とす。3巡目の開始と同時に、三人も動き出した!

 

(まずはネリーがネリーと淡と穏乃の運を少し上げる!これで咲の聴牌速度に付いていけるはず!)

 

 能力を使って咲の場の支配に追い付こうと頑張るネリー。当然オーラは使わない。使った結果フェイタルカムイは爆散したのだ、それを見てもまだ性懲り無く使おうものなら、今度こそ咲は手加減しない。次はネリーの身体が地面に転がる事になる・・・と、ネリーは思っている。その被害妄想にも似た思い込みは、恐ろしい事に当たっていた。

 

(・・・良かった、ちゃんと学習してくれて。そうだよね、私のオーラが即死級の危険性を孕んでいると知った以上、能力を中心に戦わざるをえないよね。うん、これなら内側からバンッ!ってやらなくてもいいかな。やっぱりネリーちゃんは物分かりの良い生徒だね、教師からして見ればありがたい事この上ないよ。)

 

 暖かい目で見守る咲、そしてその視線は穏乃にも向けられていた。

 

(ほう、もう出来る事は無いって思ってたけど、あの植物の神様達、随分と過保護なんだ。ちょっと見直したかな。)

 

(・・・今私が出来る事、それは咲ちゃんの気を引いて、少しでも淡さんから注意を逸らさせる事。その為にも・・・もう一度!)

(待て。)

(っ!?・・・・もしかして、黒百合!?)

(ああ、我ら全員をゆっくり回復させるよりも、我だけを集中して回復させた方が勝率が上がる、という我らの総意でな。なんとか我だけ戻ってきたぞ。・・・まだ勝負は続いているな。)

(うん!これから最後の攻勢を淡さんが仕掛ける。その間、私達は咲ちゃんが邪魔してこないように少しでも場の支配を削るつもりで・・・)

(なるほど、ならその考えは悪手だ。やめておけ。)

(え?どうして?)

(はぁ・・・よいか穏乃?そもそもお前の能力は攻めるのに向いておらん。それは分かるな?)

(ん、んーーー・・・うん!何となくそんな感じがするのは分かるよ!)

(そうだ。先程はお前の戦いたいという意思を組んで攻めに転じてやったが、本来我らの気質は守勢。守りに重きを置いた戦い方を得意とする。お前の霧の能力も例外では無い。)

 

 言われてみて確かにと頷く。今までの自分は前半戦で守り、後半戦南入り後に攻勢に転じていた。でももし、試合が終わるまで守る事に重きを置いていたらどうなるか?・・・

 

(考えた事も無かったな。)

(それが普通なのだろう、こと勝ち進めなければならない勝負事においては尚更な。だが今は違う、今は仲間を守る為に能力を使え。)

(うん、やってみるよ。)

 

 コクンと頷いて意識を自分達三人に集中する。

 

(まず自分に集中しろ、内側から気力を垂れ流すイメージだ。それをゆっくりと纏え。・・・・よし、よいぞ。後は奴のオーラが混じらないように注意しながら、ゆっくりと広げていけ。)

(・・・よし、二人の身体にピッタリ張り付けた!)

 

 そこまで出来たら後は簡単!と言った具合で、たちまち三人は穏乃の作った霧で覆われた。これで咲の作った場の支配からの悪影響を受けずに済む。

 

(やった!後はこの状態を気力の続く限り維持するだけ!)

(・・・・・だが気を付けろ。奴はまだ翼を二振りするだけの気力を温存している。)

 

 言われて目線を向ければ咲はもう穏乃を見ていない。彼女の視線の先には、自身を打ち倒さんと闘志を燃やすチャレンジャーの姿があった。

 

(行くよサキ!超新星ビックバン淡ちゃんの力!思い知らせてやる!)

「リーチ!」

 

 8巡目!咲の四槓子が成立する寸でのところで淡がリーチを掛けた!

 

「どうよサキ!」

「どうって、まだリーチしただけじゃないですか。はは・・でも、"速さ"と"運の良さ"は素晴らしいと思いますよ。」

 

 今までやられっぱなしで鬱憤が溜まっていた為か、ちょっと有利になっただけでイキり散らす淡。それを軽くいなしつつ、サポートしてくれた"傍の二人"に対しては賛辞を送った。

 

(まぁでも、今回はこの子の・・いや、三人の連携勝ちですかね。)

 

 9巡目、ゆっくりと牌を引いてこの局の負けを認める咲。しかしその顔は、頑張った子供に微笑むような温かみのある含み笑いであった。

 

(この局の私の敗因、それは前局に私のオーラの特性を三人にバラしてしまった事。その所為で穏乃ちゃんが本来の戦い方、守り重視の戦い方にシフトチェンジ。私の白のオーラを一切受け付けない、純100%の穏乃霧で三人を守りに入った。ネリーちゃんはフェイタルカムイの構成素材である気力を運と一緒に淡ちゃんに譲渡、淡ちゃんが回復したのを確認してそのまま三人の運の操作に集中した。そしてアタッカーである淡ちゃん、彼女は他二人のサポートの恩恵を受けながら伸び伸びとプレイ。生来の強運と膨大な気力を使って倍満クラスの聴牌まで移行、たぶんこの局に彼女はアガる。うん、見事だよ三人共。その調子で最後まで私に付いてきてね、でないとつまんないから。)

 

 コトッと河へと牌を捨てる。それを見て穏乃が山から牌を取り、ほぼノータイムで自摸切り。まるでさっさと淡へ番を渡したいようであった。そして・・

 

「っ!自摸っ!!!」

 

 引いた牌を手牌に加えて高らかに宣言する淡!

 

「自摸!タンヤオ!一盃口!三色同順!リーチ!一発!ドラ2!3本場で親8300,子4300の倍満!」

 

 大声で自身の功績を突き付けた彼女は、今度こそ笑顔で咲に喰って掛かった。

 

「どうよサキ!アンタのターンはこれで終わりよ!そしてこっからは私達のターンなんだから!」

 

 まるっきり子供だなぁ・・・そんな事を思いながら、彼女は笑顔を返すのだった。

 

 

つづく

 

 

 南2局 

 

   清澄高校  234600 東

   阿知賀女子  50600 南

   白糸台高校  51700 西

   臨海女子   63100 北

 

 

 

決勝戦はどんな展開を望みますか?

  • 能力を使った麻雀対決をがっつり書いて
  • 麻雀対決はあっさりでいい
  • 麻雀はいいから能力で直接戦って欲しい
  • 麻雀シーン少な目、キャラ同士の会話多めで
  • 試合中の回想シーン中に会話を多めで
  • 特になし、作者のお好きにどうぞ
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