雀荘荒らしの咲   作:ロクナナエイト

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次回南3局開始です、そしておそらく次回で大将戦が終了します。


思わぬ収穫時、到来

 

 南2局 

 

   清澄高校  234600 東

   阿知賀女子  50600 南

   白糸台高校  51700 西

   臨海女子   63100 北

 

(よしっ!二人共ナイスな連携だった!そのまま援護頼むわ!)

(了解です!お二人の事は私が守りますので、どうぞ好きに暴れて下さい!)

(ネリーはこのまま限界まで運を上げ続ける、それでも自摸運は咲と同じ程度だと思って!そしてもう咲の親番は来ない、なら咲がやる事は1つ。早上がりでこの試合に決着を付けに来るはず!気を抜いたらあっという間に試合終了だから!)

 

 コクリと頷く二人、それを見て自身も頷くネリー。同時に雀卓がガシャンと音を立てて山を築く。これももう何度目になるだろうか。格上との長期戦で疲れがピークに達していた三人だったが、なんとか闘志を振り絞って牌を取っていく。そんな彼女達を温かい目で見ながら手牌を整えていく咲。南2局の開始である。

 

(阿知賀の親番・・出来ればシズノにも一矢報いて欲しいけど・・・いや、シズノの分まで私が頑張れば良いだけ!)

 

 二人の為に一生懸命霧を出して守る穏乃。そんな彼女は既に淡の中で、仲間としての地位を築いていた。それを自身の操る霧から何となく感じ取った穏乃は、

 

(・・・淡さん、お気遣いありがとうございます。でもご心配無く、この自分の無力に対するどうしようもない憤りは、いつか個人的に晴らす所存です。ですので今はどうか、ただ目の前の敵を屠る事に集中して下さい!)

(っ!・・・分かった。ただ守ってばかりのアンタの分まで、私が咲をぶっ叩くから!だからそこで安心して見てなさい!)

 

 穏乃は答えない。代わりに笑顔でウインクをした。それを見た淡もウインクで返す。そして・・・

 

「リーチ!」

 

 3巡目にして淡のリーチ!あまりに早い。

 

(・・・僅か3巡でリーチ、手牌の感じからして倍満以上は確実。確か淡ちゃんの能力は、相手の手牌を5向聴にまで落とす事で発生する絶対安全圏、そしてダブルリーチした数巡後にカンをし次巡に自摸上がる能力。・・・だけじゃないね。まだ一つ、何か強力な能力を隠してる。)

 

 でもそれは今じゃない、なら全力を出すまで追い詰めよう。そう思った咲は鳴いて早上がりし、更なるプレッシャーを掛けようとして・・・

 

「・・・ポンっ!」

(っ!?穏乃ちゃん!?)

 

 なんと、ここで穏乃。ネリーの落とした牌を鳴く事で咲の手番をトバした!

 

(シズノナイス鳴き!ついでにネリーもありがとう、貴女のおかげでこんなに早い段階で自摸る事が出来た・・・さぁ行くよサキ!これはシズノの分!)

 

「自摸っ!リーチ、自摸、ドラ1、白、中、混一色、混全チャンタ、小三元!3倍満で親:12000、子:6000!」

 

 ダラララッ!と音を立てて手配を見せる淡、一二三七八九の萬子に白白白中中中發發と綺麗な並び、そして派手な演出に役の高さも相まって観客達はたまらず飛び跳ねた。当然実況の恒子も大盛り上がり、解説の小鍛冶も無言で'三人'に拍手を送った。

 しかし当の本人である淡の表情は真剣そのもの、3倍満をアガったというのに暗いままである。それはもちろん、咲を警戒しての事だった。

 

(私には分かる。サキ、こいつは今内心ニヤついてる。ここまで散々コイツの手の平で転がされてきた私だから分かる。コイツは今即興で何か・・悪い事をしようと目論んでいる!!)

「・・・・ふうーん、大丈夫なんですか?阿知賀の点棒をそこまで削ってしまって?」

「サキ、それは・・どういう意味?」

「いえ、とうとう4万を切ってしまったのかと・・・まぁ、もしここから6600以上削れてしまうような事になれば、その時は容赦なくいきますので・・・お覚悟を。」

(私の点棒が6600以上?・・・っ!?あはは・・そっか、役満か。)

 

 穏乃は気づいてしまった。今咲が言った事は他でもない・・・もしお前がこれ以上無様を晒すような真似をしようものなら、その時は容赦なく能力を解放し役満をぶち当ててこの戦いを終わりにする。というホームラン宣言、いや死刑宣告である。

 

(あはは・・まず南3局で咲ちゃんが私に跳満12000を直撃、そしてオーラスで役満32000を当てて綺麗に終わらせる・・・結果咲ちゃんは無名の清澄を全国1位にまで引っ張っていった伝説の雀士カンドラとして華々しくデビュー、白糸台と臨海は毎年決勝まで残っているから運が悪かったで終わる・・・半面、私は咲ちゃんと同じようにほぼ無名だった阿知賀を頑張って引っ張って来た大将なのに、実力に差があり過ぎて他校に良いように利用された挙句何の良いところも見せられずに散って無様を晒した最低最悪の大将として・・・インターハイに永遠に名が残る事になる。当然みんなから馬鹿にされる、何も知らない一般人からも、学校のみんなからも・・・もしかしたら阿知賀のみんなや和からも。あはは・・・・・こわいよぉ。)

 

 思わず両肩をぎゅっと抱きしめて俯く。怖いのだ穏乃は。これから先に高確率で待ち受けている結果が。そしてその先の人生を一人で歩む事が。俯いて怖がっている穏乃は自身を守る霧のベールが弱まっている事に気づけない。

 

(怖い・・・嫌だ、また山の中で一人になるのは嫌だ!せっかく憧と再会出来たのに!せっかく和ともう一度、仲良くなれそうだったのに!それが、今までの頑張りが全部無くなるなんて・・そんなのヤダ!)

 

 強く肩を掴んで目を瞑る。余りの締め付けにせっかく和らいでいた肩の痛みがぶり返す。黒百合が急いで痛みを肩代わりしに入ってもまだ痛い。でも逆に今はその痛みに何故か安心感を覚えていた。と、その時。

 

(・・・ふふふ、私が導いてあげようか?)

(・・え?この声?)

 

 瞼の裏に咲の顔が浮かび上がる。その顔はいやに鮮明で、まるで本人が目の前にいるかのようだった。

 

(穏乃ちゃん、貴女は本当は強くてカッコイイ人だよ。将来間違いなく大成する。でも今までの運が悪かった、貴女は自分の中の才能を知る機会に恵まれずにここまで来てしまった。私がさっき教えた力の解放もまだまだ簡易的なもの。そう、貴女の中には未だ多くの未知なる力が詰まっているんだよ。)

(・・・それを解放すれば、私も咲ちゃんみたいになれる?咲ちゃんみたいに色んな人を助けて・・・色んな人から好かれるように、なる?)

 

 ・・・・・・・フフ、

 

(もちろん!私が手取り足取り教えてあげるよ。だから穏乃ちゃん、これから言う私の指示をよく聞いて・・・)

(なーーーーーにしとるんじゃ、おのれはあああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!)

 

 突然!穏乃の目の前が虹色の閃光に包まれる!その光は穏乃を温かく包み込み、柔らかな温もりを与えた。一方で咲の方は・・・

 

(ああああああああああああああああああああああ!!!???眩しいいいいいいいいいいい!!!???)

 

 めっちゃ眩しがって何処かへ姿を消してしまった。

 閃光は何度か明滅を繰り返したかと思うと、やがて昇竜のように空目掛けて昇っていき、そのまま闇の中へと消えていった。その光を追うように穏乃が顔を上げて目を開けると・・・そこには息切れしてる淡と呆れているネリーとこめかみを押さえて痛そうにしている咲の姿が!

 

「んはぁっ!?い、今のはっ!?」

「ああぁぁぁ・・・ちょ、加減を考えて下さい淡さん。私じゃなかったら気絶してましたよ。」

「はぁ・・はぁ・・う、うっさいわね。そ、そもそもアンタが怪しげな勧誘しなきゃいいだけの話でしょ!・・ぜぇ、ぜぇ・・」

「・・ごめん咲、ネリーも手伝ったから威力が出ちゃった。でも咲も悪いよ。ああいう事を追い詰められているならともかく優位な状況で、それも守りに徹している人にやるのは流石に駄目だって、ネリーは思うな。」

「くううぅぅ、た、確かにネリーちゃんの言う通り。・・・っよし!丁度そろそろ全自動卓が山を築く頃合いですし、全員瞑想してたという事で。後でマスコミに聞かれたら誤魔化しといて下さいね。」

(しまったああぁぁぁ・・雀荘荒らししてる時の癖でやっちゃったああぁぁぁ・・・これやると相手の麻雀がボロボロになる上にジャンジャン賭け金を増やしてくれるから、ほぼ無意識に使っちゃうんだよねええぇぇ・・・最後の最後でやっちゃったーーー・・・あーー、後で穏乃ちゃんに謝らなきゃ。)

 

 話術で相手の心に無理やり隙を作り、そこから少しずつ黒のオーラを入れてネガティブ思考を加速させ篭絡する搦め手。さすがにインターハイで使うような事はしないと事前に小鍛冶に言っていた咲だったが、いつもの雀荘荒らしの癖でついついやってしまった。その事に珍しく反省の色を見せた彼女なのであった。反対に穏乃は・・・

 

(あ、ありがとうございます淡さん、ネリーさん。危うく道を踏み外す?ところでした。)

(ううん、気にしないで。ネリーも咲のおっちょこちょいな一面が知れて得があったし。)

(そうそう!仲間なんだから気にしないの!)

(仲間・・・ですか。)

(?・・何よ、仲間じゃないならただの友達?)

(いえ、友達って言うか・・・私なんかがお二人と仲が良いだなんて・・釣り合いが取れてないなーって。)

(っ!?・・あのね、少なくとも私はアンタの事を友達だと思ってるわよ。)

(えっ?)

(まぁ、前半戦までは私もアンタの事は大嫌いだったけど・・今は違うわ。アンタは間違いなく強い、それこそサキがいなければ私やネリーと良い勝負を繰り広げていただろうなってくらい。)

(いえ、そんな・・私なんかがお二人と同格だなんて・・・)

(はぁ~~~、この際だからハッキリ言うわ。アンタが何を気にしているのか知らないけど・・・・私はアンタともっと仲良くなりたいよ。)

(ふえっ!?)

(インターハイが終わって、次の個人戦でも戦いたい。それが終わって次の大会でも戦いたい。そして大会が終わった後に一緒にワイワイ騒ぎたい。もちろんネリーやサキも混ざって四人で!そして話したい!麻雀の事とか、普段何してるのかとか、将来の夢とか!全部知りたい!)

(な、何でその中に私が混ざってるんですか?)

(だって、アンタは私とは別の強さを持ってるから。で、その強さを出来れば手に入れたい!それが神の力なら、その神から認められるような強さを手に入れたい!そういう意味で、アンタは私よりも強いって言ってんの!だから、アンタらとはこれからも長く付き合っていきたいから・・・その、私は勝手に仲間だと思ってる・・って事よ!)

(・・・・ネリービックリ、貴女がそんなに熱い魂を持ってるなんて思わなかった。見直したよ。じゃあこれからはネリーの事を呼び捨てにしていいよ。代わりにネリーも貴女の事呼び捨てにするから、そこんとこよろしく。)

(こっちこそ、これからもよろしく。・・・で、アンタはどうなの?私とは仲良く出来ない?)

 

 この試合中、自身の能力を自覚し同時に限界を知って大人になった穏乃。現実の大きな壁に無力感を抱き、甘い誘惑に惑わされそうになり、すっかり自信を無くしていた。しかし、そんな自分とこれからも仲良くしたいと明るい笑顔で誘ってくれる淡に問われ、ほんの僅かに沈黙した後・・・

 

(・・・はい、私も淡さんやネリーさんともっと仲良くしたいです!)

(うん!良い笑顔よ穏乃!じゃあこれからもよろしく!)

 

 二人が笑顔で笑い合う。それを見ていたネリーも思わず微笑む。最初は敵同士だった三人だが、共通の敵を相手に切磋琢磨し、とうとう友達になるまでに至った。そんな友情物語を・・・横からじっとりと見ていた咲は・・・目を瞑って内心を顔に出さないように頑張っていた。

 

(ああ~~~~・・・最高、本当に最高だよ三人共!さっき穏乃ちゃんに精神攻撃した時はやっちゃったって本当に焦ったけど、結果的には大成功だった!!!ホント、この三人なら光ちゃんも満足するかもしれない!同い年でここまで能力と雀力が強い!性格もまぁOK!戦い方も個性があって良い!なにより協力する事の重要性を理解した!・・・文句なし!いやー長かった、長い旅だった。)

 

 自身の人生において最も難しいと思われていた仕事を遂にやり遂げた。その事実に感極まって思わずヤッターーー!!!と叫びだす数秒前といったところであった・・・が、

 

 ガシャンッ!!

 

 全自動卓が山を築く。南3局開始の合図である。

 

 

 南3局 

 

   清澄高校  228600 東

   阿知賀女子  38600 南

   白糸台高校  75700 西

   臨海女子   57100 北

 

 

 

つづく

決勝戦はどんな展開を望みますか?

  • 能力を使った麻雀対決をがっつり書いて
  • 麻雀対決はあっさりでいい
  • 麻雀はいいから能力で直接戦って欲しい
  • 麻雀シーン少な目、キャラ同士の会話多めで
  • 試合中の回想シーン中に会話を多めで
  • 特になし、作者のお好きにどうぞ
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