南3局
清澄高校 228600 東
阿知賀女子 38600 南
白糸台高校 75700 西
臨海女子 57100 北
(よし、じゃあ最後まで見届けるとしますか、貴女方の一致団結した戦いを!)
南3局開始、試合も大詰めも大詰め。もはや誰が見ても勝敗は明らかであった。勝つのは大将咲率いる清澄だと皆が思っていた。無論それはこの場の三人も例外では無い。しかし・・・
(あはは!!痛がってる場合じゃないね、やろう黒百合!勝つ為じゃない、次に繋げる!希望を残す為に!)
(全く、サトハにあんな偉そうな事を言っておいて、結果サポートに回るのが精一杯とか・・・まぁ、咲相手にここまでやれる奴がネリー以外でいなかったのも事実だし。言い訳の用意は最初から出来ている・・・だから、最後まで好きにやらせてもらう事にするよ、皆!)
(サキ、悔しいけど認めてあげる。アンタは確かに強い。テルよりもね。・・・でもね、その強さは絶対じゃない!アンタはこれから自分が格下だと見下しているガキに一発殴られるの。そして痣になる、一生消えない古傷よ。その古傷はいずれ激痛を引き起こして貴女を蝕む。その時が貴女の終わり、そして私が、いや私達が!貴女を倒して栄光を手にする時!)
全員がやる気に満ちていた。最初は敵同士、謀り合っていた者達が共通の敵を前に結託し最後まで諦めずに闘志を燃やす。なんと素晴らしい光景だろうか。まさに咲が思い描く能力者としてのあるべき姿がそこにはあった。
(・・・お母さん、今なら分かるよ。なんでお母さんがあんなやり方を選んだのかって。わざわざ自分を悪役に仕立て上げてまで、私達に本気で悪を憎む心を抱かせたのかって。)
過去に想いを馳せながらも手は抜かない。4巡目にして既に1聴向、だが三人もそれに追いついてくる。
(お母さんなら私みたいに相手を依存させる方法だって出来たはずだよ。現にお姉ちゃんはお母さんの若い頃を真似してクールぶってるんだし。)
6巡目、聴牌。役は早アガりを狙ったタンヤオ、三色が雑に混ざった安い凡手。待ちもドラですらない、対子の2萬と8筒という普通の2面待ち。
(でもしなかった。それは能力者・・いや母親として、自分の娘達が誰かに依存して好き勝手に利用されたりするのが嫌だったからでしょう?)
8巡目、淡が牌を河に落として全員が聴牌した。それをオーラから感じ取った咲は無意識に笑う。
(ふふっ能力者、というより人間が一番やってはいけない事・・・それは他人に自分の人生を委ねる事。この人の言う事だけ聞いていれば良い、この人に仕えているだけで満足。そういった思考放棄は人生を捨てているのと同じ。だからお母さんは私達がそうならないようにスパルタ教育した。おかげで私はもちろん光ちゃんもきっと立派に自立した。・・・お姉ちゃん知らないけど。
でも他の子達は違った。衣ちゃんを筆頭とした全員がそう、みんな私に意見を仰ぐ。まぁでもお姉ちゃんという前例があったからか、同年代に過度な失望や期待はしなかった。反面、対等に接してくれるプロ雀士の皆さんは立派に能力者ろして生きていた。そしてネリーちゃんや穏乃ちゃん、この二人だって盲目的に私の信者になりかけていた。でも・・・)
「ふふ~ん!ロンッ!タンヤオ、一盃口、三色同順、ドラ2、跳満で18000!一本場確定・・・やった、あのサキから直接毟り取ってやった!」
(この子だ、この子の存在が二人を変えた。大星淡、最初に見た時は小判の価値が分からない猫みたいな子だって、お姉ちゃんに付き従うだけの兵隊だって思ったけど・・・違った。この子はその気になればお姉ちゃんをぶん殴れる子だ。決して誰かに屈服したりする事を良しとしない、内なる明智光秀・・下剋上の精神を常に持っている生粋のチャレンジャー。いずれ本当にプロ雀士として一番になって星のように輝く資質を持っている。)
咲に直撃を喰らわせた事でハイになる淡。無論三人の連携があってこその成果であるが、咲が敢えて避けなかったとも言える。というのもネリーと穏乃の気力はほぼゼロ、おそらく次の一本場でガス欠になる。肝心の淡も何やら大技の準備に入ったのか、気力を心臓の付近でオーラに変えながら貯め込んでいるのを感じる。だというのに三人共に焦りは見られない。つまり三人は次の一本場で全てを決しようとしているのだ。
そこまで分かっているのなら話は簡単。相手が死に物狂いで突っ込んで来るというならわざわざ躱す必要も無い。普通に受け止めれば良いのだ。
そして改めて理解するだろう・・・今の咲には何をやっても敵わないと。全力の一撃を耐えて涼しい顔をする彼女の顔を見て、三人は悟るのだ。
(はは・・それでも折れはしないんだろうなー。うん、絶対に折れない。そして来年も挑んで来る。またこの闘志を燃やした目で睨みつけて、口は強敵を前にしたワクワクで笑いながら、まるで子供のように・・・三人一緒に・・・・・嗚呼、戻りたいなぁ、光ちゃんがいたあの頃に。)
南3局 一本場
清澄高校 210600 東
阿知賀女子 38600 南
白糸台高校 93700 西
臨海女子 57100 北
(・・・二人共、ありがとう。)
おそらくこれが最後になる。この一撃を持って自分は気力を全て使い果たす。その後に気絶しかねない事を見越しての感謝だった。
(・・・こちらこそ、本当にありがとうございました。淡さんのおかげで、私がここまで戦う気になれたと言っても過言ではありません。)
(・・癪だけどネリーだってそうよ。淡のその真っすぐな心を見て、ネリーもここまで来れたんだから。だから・・ありがとう。癪だけど。)
(へへっ・・試合が終わったら連絡先教えなさいよね。アンタらとはまだまだ話足りないんだから。)
そのお誘いにニッコリと、はにかんで応える穏乃とネリー。そのはにかみ笑顔に少年のようなわんぱく笑顔で答える淡。
それを最後に三人は前を向く!それと同時に全自動卓が山を・・築かない!未だ攪拌中だ!しかしそれでも、正真正銘最後の戦いが!今始まろうとしていた!
(よっしゃ!まずはコッチから先制だよサキ!)
未だ全自動卓が牌を攪拌しているこの状態で淡が切り札解放!溜めていた気力を全て解放し、普段無意識に発動させている絶対安全領域までも解除し、自身の全てをこの卓の中で暴れ回っている牌に込める!
(へー、淡ちゃんの切り札は最初から決まった牌を呼び込む未来予知タイプの能力か。同じ白糸台の中堅渋谷尭深さんのハーベストタイム、あれを天性の才能だけで無理やりやろうとしているって感じですかね、でもそれだと滅茶苦茶寿命が減りそうで・・ん?)
ここで咲、淡の背中から何かが伸びている事に気づく。
(ん?・・・んっ!?あれっ!?・・・違うっ!?この人、空いや宇宙から何かエネルギーを受け取って・・星の力を借りてるのか!?)
急いでエネルギーの流れを辿る。当然咲の感知範囲にも限界はあるため正確な距離までは分からないが、確かに流れは上空から来ていた。
(驚いた、まさか星からエネルギーを受け取れるとは。なるほど、先程大量に消費した気力はあくまでビーコン。そのビーコン目掛けて星が淡ちゃんを通してエネルギーを送っているって事ですか。・・・自分で言うのもアレだけど、私は本当に運が良かったですね。もし淡ちゃんがプライドを捨てて小鍛冶さんあたりに頭を下げて弟子になっていたりしたら・・私は100%負けていた。)
咲は改めて淡の才能に心の底から驚愕していた。まさか星の力を借り受ける事が出来る人間が存在するとは、流石に予想外だった。
(うーん・・大星淡・・・大星。もしかしたらこの能力は一族特有の体質なのかもしれませんね。いや、それより彼女の先祖が地球外生命体と何らかの取引をしたという線の方が高いですね。何にせよこの事は試合が終わり次第急いで協会の重鎮達に知らせなければ。でないとこの試合を見ている悪い人達に彼女が利用されかねません。)
「・・・あ、あの咲ちゃん。」
「ん?どうかしましたか穏乃ちゃん。」
「いやその・・眼が怖いなーって。」
言われてみて、ああそういえば。と一人納得する。どうやらうっかり淡々とやる事をこなす仕事モードに入っていたようだ。指摘を受けた咲は直ぐにいつも通りの外向け用の自分へと切り替える。
「ああ、ごめんね穏乃ちゃん。怖がらせちゃったよね、敬語で返事しちゃったし。・・・うん、もう大丈夫だよ。」
「ほっ良かった。てっきり私達を直接攻撃する気なのかと思っちゃったよ。」
「うふふーー、そっちのバトルもご所望で?」
「うえっ!?いや、そんな滅相も・・・」
とここで、ガシャンッ!と全自動卓が音を立てて山を築く。それを見た全員が一斉に意識を切り替えて試合に集中する。数秒前まで存在した年相応の少女達は鳴りを潜め、代わりに四人の雀士達が顔を出す。最後の戦いが始まった!
(さて、淡ちゃんが準備するところを黙って見逃がしてあげた訳ですし、ここからはこっちも遠慮なくいかせてもらいますよ!)
全員が山から牌を取って手牌整理に入ったこのタイミングで咲が先制!指先砲弾で三人の集中を落としにかかる!
(させない!)
それをいち早く気づいた穏乃が霧の防御で守りに入る!淡の時と違い防御に特化した彼女の霧は、咲の砲撃を難なく防ぎきる!
(ほお!穏乃ちゃんが能力者としてちゃんと目覚めたのはさっきの休憩時間の終わり。なのにもうここまで能力を使いこなすとは・・・いや、穏乃ちゃんに付いてる優秀なアドバイザーの事を考えれば当然の結果か。)
烈火の如く迫る攻撃を見事防ぎ切った穏乃。そんな彼女の実力と彼女に付く神様達を素直に賞賛した咲。
(大丈夫か穏乃?)
(うん、平気。でも驚いた。私の霧ってこんな風にも使えるんだね。)
(ふはは、この程度なモノか。いずれは手をかざすだけで自由に相手を窒息させる事だって出来るようになる!・・まぁ、我らの助けありきだがな。)
依り代の活躍に内心お祭り状態の黒百合。一方で自身の攻撃が防がれた咲は次なる作戦に移る!
(だったらこれはどうかな!)
これまでの戦いで撒いた自身のオーラを全て活性化!突然周囲が夕暮れ時のように暗く、茜色に染まる!何事かと目だけで周囲を見渡せば、そこには辺り一面に咲く彼岸花の姿があった!警戒しつつも再び手牌に意識を戻して更に驚愕する!なんと彼岸花は卓上、そして牌の一つ一つにまで浸食し、そこからゆっくりと芽吹きながら華を咲かせる為に成長を続けているではないか。その成長過程に数秒意識を割けば、次に目に入って来たのは燃える花弁。自然と目線を宙へ向ければ、空から大量の彼岸花が燃えながら雪のようにゆらゆらと降り積もる!落ちた火種はすぐさま灰になって地面や卓上に溶け、そこから新たな彼岸花を咲かせる。なんと幻想的な光景か。・・・思わず三人も麻雀そっちのけで、目の前の幻想に心を奪われる。
(これは!まさかここまで広範囲かつ強力な場の支配を展開出来るなんて・・・流石だよ咲。でも残念、穏乃が守ってくれてる以上これはただの自己強化の延長でしかない。つまりネリー達が気にする必要は全くもって無いって事!)
1巡目、既に淡が牌を切っていた事が幸いした。ネリーは山から牌を取ると手牌へ組み込み、要らなくなった牌を河へ叩きつけるように落とす。いわゆる強打、通常なら咎められるべきマナー違反行為であるが、今回はこれが功を奏した。
ダンッ!
((ビクッ!!??))
突然の場違いな大音量に思わずビックリして目が点になる二人。しかしそのおかげで咲のペースから解放された。
(あ、ありがとうネリー。助かった。)
(しっかりしなよ。淡のその力、滅茶苦茶コントロールが難しいんでしょ?)
(うんそう、最近やっと操れるようになったヤツで、発動もままならなかったんだけど・・)
(淡さん!今日は私達が付いてますからね!試合後に倒れても私達が運んであげますから!遠慮なくぶちかましちゃって下さい!)
(えっ?ああうん・・・アンタ、思ったよりフレンドリーなんだね。ますます気に入ったよ。)
たまらず赤面する穏乃。それを見て淡は赤くなったり青くなったり忙しい子だな、なんて呑気な事を考えつつも力の制御に集中した。そしてサポートに徹するネリーは、
(すごい・・オーラ?気力?霊力?何なのか分からないけどすごいエネルギーだ。こんな凄いものを扱えるなんて・・咲やネリーも才能の塊だと思ったけど大星淡、コイツは違う。ミョンファと同じ遺伝子レベルで何かある・・・宇宙由来の存在?だったり?)
自画自賛を挟みつつも淡の能力を素直に認めていた。そしてこのエネルギーに触れて実感する、これは気力とは決定的に違うと。同時にこれに近いエネルギーを知っている・・・ミョンファ、ネリーと同じ臨海メンバーで中堅を務めていた少女だ。
ネリーはミョンファが神と宇宙人の遺伝子を元に作られた人造人間である事を知らない。しかし彼女の歌に混じって放たれるオーラは何処か変だとは感じていた。そしてそれが神様や人間のそれとは半分くらい違うという事も感覚で理解していた。そして淡の宇宙からのエネルギーに触れる事で確信する。ミョンファも宇宙由来の何かを持っていて、それを自分に隠していたと。もしかしたら彼女は自分達に本当の実力を隠していたのではないかと悪い予想が広がって・・・
(いや、今は淡の幸運を調整するサポートに徹しよう。ミョンファへの追及は後でいくらでも出来る。)
広がる前に畳んで仕舞う。流石に二人を正気に戻した手前、肝心の自分が目の前の勝負に集中しないのは理性が許さない。
そうして三人は前を向く。中でも淡は不敵に笑っている、最後の一撃まであと少しといったところ。彼女の手牌もそれをアピールするかのように巨大なエネルギーで主張している。そんな彼女達を見て咲も・・
(ふふふ・・・さぁ、見せてもらおうじゃありませんか大星淡!貴女の星との繋がりを持って繰り出される最強の役満を!!)
ここまで誰もトバずに来た感動からか、いささかハイ気味になりつつある咲は自身を守るオーラを全て解いて掛かって来いと挑発する!それに淡も乗った!
(いくよサキ!まずは聴牌!)
2巡目、聴牌した淡はリーチをせずに牌を河に捨てる。それを見たネリーも計画通りと言わんばかりに笑って牌を自摸切る。そして咲の番、咲の引いた牌は白!
(白・・・なるほど、それが貴女の役満ですか。)
引いた白をそのまま自摸切る。当然淡は大きな声で叫ぶ!
「ロンッッッ!!!」
叫ぶだけに留まらず、立ち上がりダラララッ!!と手牌を崩して役を見せつける!手牌は、北北東東南南西西發發中中白、と綺麗な字一色の七対子であった。
「大七星!!!・・・じゃなくて、字一色!!!役満!!!一本場!!!48300点!!!」
そして放たれるエネルギーの奔流!!今までの彼女の放つオーラ由来のものとは決定的に違う!!星由来のものが無防備な咲に襲い掛かる!!当然疲れ切っていた淡は加減など出来ず、いやする気もあらず!!そのまま直接咲にぶつける!!
(喰らいなさい咲!!今までアンタに好き勝手やられた分、今ここで出来る限り返してやるわ!!)
自身を壊さんと迫りくる未知なるエネルギー、一般人が喰らえば廃人確定もの!それを咲は・・・
「っ!・・・・・・・・・ふぅ、流石だね淡ちゃん。見事な役満だったよ。」
受けきった。そして何事も無かったかのように振舞った。それを見て淡も・・
「は、ははは・・・ま、まだまだこんなものじゃ・・・ない・・。」
何事も無いように振舞おうとして口籠る。使い慣れないエネルギーを放った反動とこれまでの疲労で、牌を握るだけで精一杯なのだ。
(だ、大丈夫ですか淡さん!)
(・・ごめん、大丈夫じゃないわ。どっちか少しだけ気力を分けてくれたら嬉しいんだけど。)
(ふふ、仕方ないわね。ここはネリーが(私のをどうぞ、淡ちゃん。)
びっくりして目を押っ広げれば、目の前の咲がニコッと笑ってオーラを分け与えた。
(サキ・・・)
(三人共よく頑張りました。また来年も挑んできて下さいね。)
その後、南3局二本場を早アガりのタンヤオ(親1200、子700)で制した咲が、そのまま南4局も早アガり混全チャンタ(親2000、子1000)で終わらせ・・・大将戦は終了した。
結果は以下の通り、
インターハイ団体戦決勝 大将戦 結果
清澄高校 168900 東
阿知賀女子 36900 南
白糸台高校 139800 西
臨海女子 54400 北
他校と圧倒的・・・とまではいかず、それなりの差をつけての・・清澄の優勝である。
つづく
大将戦終わりました。
なので、いよいよこのお話も終わりへと向かいます。
決勝戦はどんな展開を望みますか?
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能力を使った麻雀対決をがっつり書いて
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麻雀対決はあっさりでいい
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麻雀はいいから能力で直接戦って欲しい
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麻雀シーン少な目、キャラ同士の会話多めで
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試合中の回想シーン中に会話を多めで
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特になし、作者のお好きにどうぞ