雀荘荒らしの咲   作:ロクナナエイト

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待っていた瞬間

 

「えーあーうん、マイクチェックOK。こんばんは皆さん!本日は清澄高校麻雀部のインターハイ団体戦優勝を祝っての祝勝会、改めインターハイ団体戦終了に伴い皆さんのこれまでの努力への労いを兼ねた慰労会にご参加下さり誠にありがとうございます。」

 

 壇上に登った咲がマイクを黒服から受け取りそのまま挨拶を始めた。とここで、

 

「咲ぃぃぃーーーーー!!!」

 

 咲の姿を確認するや否や一目散に走り出した照!まさかこの衆人環視の中で暴走するほど馬鹿じゃないと思っていた菫は咄嗟に肩を掴んで止めようとするが間に合わず、彼女の進軍を許してしまった!

 

「しまった!?誠子!お前のオーラで照をここから釣り上げたりは!?」

「えっ!?いや無理ですよ!?オーラを感知するのですら精一杯なのに!!」

「まずいぞ!私の矢じゃ照の風の防壁を貫けない!どうすれば!?」

 

 言い合っている間にも照は進む!壇上に上がる為の二つの階段、その右側目掛けて走る。だが当然、壇上へ真っすぐ行く道は咲を守る者達によって塞がれていた。天江と荒川がそれぞれ壇の右端と左端を担当しており、さらにその前を複数の能力者が守っていた。誰が見ても突破は困難に思われた。だが照は戦闘IQが高かった。

 

「ならっ!!」

 

 自身の少し先に能力で筒状の風の壁を作って斜め上に向ける。そのまま突っ込んだ照は大砲の要領で空へと打ちあがり、あっという間に咲が話している壇上のど真ん中へとたどり着いてしまった!それをいち早く理解した衣が叫ぶ!

 

「咲!」

「という訳で本日は無礼講という事で・・おっと、」

 

 照の襲来を当然予期していた咲はサッとその場から退く。瞬間、先程まで咲が立っていた場所付近に照は着地した。

 

「さぁ咲!今度こそ話してもらうわよ!」

「おやおや、確かに無礼講と言いましたが、ホントに礼儀ゼロでやって来る人がありますかね?」

「うるさい!さぁ話してもらおうじゃない!何で貴女がカンドラとして雀荘荒らしをする事になったのか!TVで語られなかった真実を!!」

 

 大きな声で自身の問いかけをわざと会場全体に響くようにした照。彼女の思惑通り、その問いを聞いた者は皆一様に立ち止まる。語られなかった真実?、確かに気になる、私も知りたい、私も私も!と自分も同じ疑問を持ち答えを欲しているといった空気が会場全体に流れ始めた。

 これ以上照の暴挙を許してなるものかと衣達が壇上に上がろうとするが、咲が僅かな手の所作で合図して止めた。何か考えがあるらしい。

 

「ふふん、ここにいるみんなも同じ疑問を抱えているようよ。だから咲!今すぐ答えて!」

「うーーん、今すぐですかー。参ったなぁ、その事はもう少し後にこっそり教えてあげようと思っていたのですが・・・でも今夜の慰労会の趣旨を考えたらなぁ・・うーーん。」

 

 何やら先の事を考えて悩んでいる風に見える。そんな風にうんうん悩んでいる咲が答えるまでじーっと待っていようとしていた照だったが、気づいてしまった。指先を唇に当てて妖艶な雰囲気を出しながらうんうん悩む可愛い妹が・・・ちょっとずつだが自分から距離をとっていってる事に。

 

(また逃げる気!?そうはさせない!!)

「はぁっ!!」

 

 右腕に風を纏わせて小さな竜巻を作るまで1秒、それを咲に向けて発射する為に姿勢を整えるまで1秒、そして発射・・咲に竜巻が当たるまで1秒かからない。しかし咲も、

 

「おっと!」

 

 絶対一回は不意打ちしてくると思っていた咲は即座に翼を広げて弾く。1秒かからない。

 

「逃げるな咲!早く答えて!」

「ふふふ、そんなに待ちきれないなら力づくで来たらどうです?幸いにも、ここに集まっているのはオカルトに足を突っ込んだ若き雀士達!これからの時代、オカルトに精通していなければ麻雀界で生き残っていくのは不可能に近い!それを今夜分かってもらいたくて皆さんを招待したところもあるので・・・どうです?ここは1つ能力者同士で戦う事で、能力者がどういった存在なのかを改めて理解させる為のデモンストレーションをするというのは。」

「デモンストレーション?・・いいよ、ようは私達の能力を例にして色々説明したいんでしょ?その代わりこれが終わったらすぐに喋ってもらうから。」

「ええ、それで構いませんよ。元々話す予定だったので・・・では!」

 

 指をパチンッ!と鳴らして合図する咲。それと同時にこの会場内に大量のオーラが広がった。それを入り口付近で感じ取った三人は顔を見合わせる。

 

(このオーラ・・一人だけのものではありませんね。少なくとも十人以上の能力者が出し合っています。)

(やるじゃん穏乃、そこまで分かるようになったんだ。)

(はい、咲ちゃんの言った通り・・私にはそっち方面の才能だけはあるようなので。)

(ていうかサキは何考えてんの?このオーラで場の支配をする訳でも無いようだし、何でこんなオーラを無駄使いさせるような真似を?)

(ああ、二人は知らないのか。オーラとか能力っていうのはね、その場の気力の密度が高くなればなるほど無能力者でも見えるようになる性質があるんだよ。)

(えっ!そうなんですか!?)

(うん、だから今日の大将戦とか咲の彼岸花がほとんどの無能力者に見えたはずだよ。)

(なるほど・・最初にデモンストレーションするって言った時は見えない奴に配慮が無いなぁとかと思ったけど、確かにこれなら全員見る事が出来るか。どこまでも考えてるなぁサキ。)

(・・・ん?ちょっと待って下さい。咲ちゃんの合図でオーラが散布されたという事は、このデモンストレーションは予定されたものだった?という事ですか?)

(え?じゃあテルの暴走も予定内?いやいやまさか・・・)

 

 咲がどこまで考えていたのか・・・悪寒が走った三人は揃って壇上の方を見る。壇上では咲が照の竜巻を弾きながら能力の説明を続けていた。

 

 ガキンッ!バシッ!ベシッ!

 

「とまぁこのように、対象を切りつけたり燃やしたりして物理法則をある程度操れる物理型のものから、相手の精神に悪影響を与えたり概念的なものに作用する事が出来る特殊型のものまで、能力の種類は千差万別で全く同じものというのは存在しないと言っても過言ではありません!」

 

 この説明にちょっと疑問を感じた辻垣内がネリーに尋ねた。

 

「なぁネリー、カンドラの嶺上開花の能力ってあるだろ?あれって麻雀以外で使ったらどうなるんだ?」

「(え?いきなり何?)そうだね・・・たぶん一定の標高以上に生える植物に気力を与えて、華を咲かせながら操る能力・・・かな?」

「まんまだな。それに普段使いも悪そうだな。」

「馬鹿だねサトハ、咲がその程度の欠点を克服してないとでも?」

「え?克服したらどうなるんだ?」

「たぶん本来より気力を多く消費する事で全ての植物を自在にコントロールできる・・・みたいな事になってると思う。」

「それは・・・恐ろしいな。」

「あと宮永家の連続和了の能力も合わせると・・能力で影響を与える植物の数を増やせば増やすほど、消費する気力も少なくなっていく・・・省エネ特化みたいな感じになるのかな?」

「いやヤバいだろそれ。ようは兵隊を増やした分だけ必要な気力量が減っていくんだろ?・・・そんなヤバい能力を一個人が持っている・・恐ろしいな。」

「あとオーラとの併用も考えると・・・たぶん咲の支配下の全ての植物が気持ち良いオーラを出す性質を持って、麻薬みたいに周りの人間を片っ端から咲に依存する中毒者に変えていく・・・みたいな?」

「・・・・・いや怖すぎるわ。でもカンドラはそういう事を今までしてこなかったんだろ?なら根っこが優しい良い子なんだな、彼女は。」

「当たり前でしょ?もし咲がそういった能力をフルに使っていたのなら今頃ネリーは臨海じゃなくて清澄の制服を着てたよ、絶対。そして咲の命令を忠実に実行する事だけが生きがいの人形になってたね。」

「・・・本当に、彼女が良い子で良かった。」

(・・もしもしネリーちゃん?今大丈夫?)

 

 突然頭に響く咲の声、ビックリして壇上に顔を向ければ照の攻撃が苛烈さを増していた。一方で咲は防戦一方だが表情は余裕そのものだ。

 

(いい加減お姉ちゃんの風の能力だけじゃ地味だからさ。二人を連れて今すぐ飛んでこれない?)

(も、もちろんだよ咲!すぐ行く!)

 

 咲からの指名に有頂天になったネリーは急いで二人に声を掛ける。

 

「ちょっと二人共!今すぐ壇上に行くよ!」

「え?急に何?」

「もしかして、咲ちゃんから何かお願いされたんですか?」

「そうそう!いい加減チャンプの派手なだけでバリエーションが無い能力に嫌気が差したらしくてね。今すぐ私達に派手に登場して欲しいんだって!」

「派手に?・・・ああ、そういう事。なら私の能力で飛んで行こうか。」

 

 察しの良い淡が二人の手を取って壇上向けてダッシュする!慌てて辻垣内や菫が止めに入るが壇上の二人に集中していた為に間に合わず、あっという間に三人は空へ飛翔した!

 

「行くよ二人共!はいジャンプーーーー!!!」

「ハイッ!うおあおぁぁぁぁーー!!」

「ぴょんッと!いやっほーーー!!」

 

 叫びながらも無重力状態を上手く利用して綺麗に咲側に着地した三人。唐突な三人の登場に会場もどよめく!

 

「ではここで選手交代です!私に代わって臨海女子の大将ネリーちゃん!白糸台高校の大将淡ちゃん!阿知賀女子学院の大将穏乃ちゃんです!この三人にチャンピオンを相手取ってもらいます!」

「ちょっと咲!もうデモンストレーションは十分でしょ!さっさと・・」

「すいませんチャンピオン!来ないならこちらから仕掛けます!とぉっ!」

 

 照と同じように右手にオーラで出来た蔦を巻き付けていた穏乃は、それを鞭のようにしならせ照目掛けて振り下ろす!

 

「なっ!?ああもう!」

 

 しかし流石はチャンピオン、常に身体に纏っている風の壁できっちりガード。不意打ち気味だった攻撃にもしっかり対応した。そして再び始まった能力者同士の戦い。

 

「えーただいま登場した彼女達の能力は見ての通り、穏乃ちゃんと淡ちゃんが物理型、ネリーちゃんが特殊型となっております!」

 

 穏乃が蔦の鞭で防壁を壊そうとするが、それを避けつつ竜巻で連撃を続ける照。その竜巻を防ぐために手を突き出し無重力空間を竜巻内に展開、内側から食い破る淡。そして技を繰り出す二人に後ろから指示しつつ気力の補充もしてあげる司令塔ネリー。

 この時、生まれて初めて能力者同士の喧嘩というものを体験した三人は無意識に思った。麻雀をやっている時とはそれぞれの役割が全然違うなーと。

 

(驚いた、まさかネリーより先に穏乃が真っ先に攻撃するなんて・・・ふふ、このデモンストレーションに参加して良かったよ。もし参加してなかったら二人の能力を勘違いしたまま帰るところだったからね。)

(すごい、ネリーの指示が的確でどこからテルの攻撃が来るのか分かるから無駄に気力を使わなくて済む。それに・・すごく安心する。ネリーって案外部長向きなんだね、スミレももっと見習って欲しいなー。)

(ありがたい、二人のサポートがあるからガンガン身体を動かして気分良く攻撃出来る!それにしても、淡さんの場の支配って物理的に作用するとあんな感じになるんだ。)

(ほー・・あの小娘、無重力を自在に操れるのか。先程は三者に掛かる重力を無にし飛翔。今は空間内の空気を無重力にする事で空気を上に飛ばし竜巻を内側から破って威力を軽減。弱った竜巻をオーラの壁で弾いているな。)

(えっ!?ごめん黒百合それどういう意味!?よく分かんないけどめっちゃ頭の良い人しか分からない事言ってない?)

(そんな難しい事ではない。風船を想像してみろ、昔のお前が楽しそうに持っていたあの赤い球の。)

(うんうん分かるよ!それがどう関係するの!?)

(その風船から手を離したらどうなる?)

(え?そんなの飛んでくに決まってんじゃん!)

(それと同じ事だ。空気を地上に縛り付けているのは重力。その重力から解き放たれた空気は周りの空気を置いてけぼりにして物凄い速さで飛び回る。その空気をオーラで纏めて一方向に動くよう誘導する事で竜巻を食い破り勢いを減少させる。あとは低レベルのオーラの壁で防ぐだけ。まぁ、可能なら内側から竜巻の勢い全てを止めたいのだろうが・・・あの咲の姉なだけある、竜巻一つ一つがしっかりオーラで整えられている。)

 

 三人がかりで照を抑え込んでいるこの状況。最初こそ咲と照の姉妹勝負を横から見て楽しんでいた一同だったが、それが三人vs照になってから違う考えが頭をよぎり始める。そんな皆を代表して透華が衣に尋ねた。

 

「ね・・ねぇ衣。もしかして、麻雀の強さって能力の強さに比例したりするものなの?」

「何故そう思う?」

「何故って・・・だってあの宮永照さんと咲さんが互角、いえ咲さんの方が余裕そうでしたけど。とにかく、その照さんにあの三人が連携して互角なのは明白で・・」

「で、そんな三人の内の誰か一人にでも勝てるかと言われたら・・そんな自信すら無いと?」

「・・ええ。正直あの決勝戦の最後を見たら・・もし私が彼女達と同じ場所に立っていたとしても、最後までトバずに残る事すら不可能に思えますわ。そして今、自身に襲い掛かるチャンピオンの暴風を前にして互いを信頼し合い笑っていられるあの三人を見て、私と彼女達の間にある明確な差というものを・・・今この場でハッキリと実感しました。」

 

 照と三人の戦いはもう少し続きそうだ。そんな中、咲が笑顔で黒服から何かを受け取ったかと思うと、それを一つ戦場へ放り込んだ。

 ひらひらと舞ったのは一枚のテーブル掛け、この会場の机に敷かれている物と同様のものだ。ただ一つ違うのは、その舞っているテーブル掛けの真ん中には大きな汚いシミが付いていた。おそらく売り物にならない為廃棄処分が決定していた物の一つだろう。そんな死刑を待っている布切れが戦場へ放り込まれ、ひらひらと落ちていった次の瞬間!

 

 ビリィィィ!!!

 

 テーブル掛けは照の竜巻によって、大きな断末魔を叫びながら一瞬であの世へ送られた。残された残骸がパラパラと壇に降り積もる。その一部始終を見ていた一同は脳に本能的な恐怖を覚えた。自分達はこんな恐ろしい力とこれから先向き合っていかなければならないのか・・と。

 そんな彼女達の反応を見た咲はうんうんと頷くと、再び何かを戦場へ投下した。今度は一本のペットボトル型のスポーツ飲料、それが何かを理解した四人の行動は早かった。まず淡がペットボトルを空中で無重力状態にする。次に穏乃が浮いているペットボトルを真っ二つに切断、バキィッと嫌な音が響く。最後にネリーが割れた中身を急いで四等分すると急いで三人の口元へオーラで運ぶ。残った一つは地面に叩きつけようとしたが寸でのところで照が竜巻でキャッチしてそのまま口元へ風で運んだ。そして空のペットボトルの残骸が重力に引かれて地面に落ちるまでに四人は水分補給を終えて、戦いは元の勢いを取り戻した。ちなみにこの間約二十秒、その速さに透華が驚きの声を上げた。

 

「すごい・・これが、能力者の技!」

「・・・透華、彼女を呼んできてくれないか。」

「えっ!?・・彼女って・・・今ですの!?」

「ああ、あと少しで三人の気力が尽きる。そうなる前に咲が止めに入ってデモンストレーションは終了するだろう。そしていよいよ咲の過去の全てが語られる。なら彼女がいなきゃ始まらない、そうだろう透華?」

「っ!!ふふ・・ええ、分かりましたわ。彼女を呼んで参ります!!」

 

 何やら先んじて動き始めた衣。そんな彼女の予測通り、この戦いは唐突に終わりを迎える。四人の戦いが五分経過した頃、今日の戦いでオーラを消耗し切ってしまっていた三人に疲れの色が出始めた。そんな中あらかた能力についての説明を終えた咲が、

 

「はい両陣営そこまで!四人共お疲れ様でした!大変素晴らしかったです!」

 

 そう言ってホヤウカムイの翼を一振り。途端にあれだけ激しく渦を巻いていた竜巻が一瞬で無に帰した。同様に淡のオーラの壁や穏乃の蔦も消えてしまった。

 戦いは終わった。そう理解した途端三人はその場に座り込んでふーーっと大きく息を吐いた。そして互いに笑いかけ合いながらゆっくりと立ち上がる。どうやらまた一つ彼女達の絆が深まったようだ。一方で照の方はというと、相変わらずの唯我独尊っぷりで咲に突っかかっていった。

 

「さぁ咲!これでいいでしょう!さっさと全て吐きなさい!」

「・・・そうですね、これから先能力者と関わっていくのなら私が何故カンドラになったのか・・・戒めとして知っておいて損は無いと思いますし・・・」

 

 何やら小声でぶつぶつ頭の中を整理し始めた咲。しかしそれも数秒の事、再び顔を上げた咲がマイクを近づけてハッキリと宣言する。

 

「分かりました。ではお答えしましょう・・・何故、私がカンドラになったのか。その秘密を・・・」

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






次回 いよいよ語られるカンドラの全て!
   咲が大金を求めたのは何故か?
   その理由が明らかに!

決勝戦はどんな展開を望みますか?

  • 能力を使った麻雀対決をがっつり書いて
  • 麻雀対決はあっさりでいい
  • 麻雀はいいから能力で直接戦って欲しい
  • 麻雀シーン少な目、キャラ同士の会話多めで
  • 試合中の回想シーン中に会話を多めで
  • 特になし、作者のお好きにどうぞ
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