雀荘荒らしの咲   作:ロクナナエイト

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過去と今の咲1

 

「貴女は・・私?」

「うーんちょっと違うね、私は貴女の能力そのものが意思を持った存在・・・かなぁ?ごめんよく分かんないや。」

 

 目の前に現れた少女は腕組みをしながら何処吹く風といった感じに飄々としていた。そんな少女にあっけに取られていると、

 

「ゲホッゲホッ・・・さ、咲?私の身体から出て来たの?」

「勘違いしないでね?まだ分離した訳じゃないから・・私の家はまだ貴女だからね。」

「そ、そっか・・・えへへ。」

 

 その返事に嬉しそうに笑う光、そしてそんな彼女を見た少女も嬉しそうに笑った。互いに笑い合った二人は再び前へ向き直る。

 

「・・さて、じゃあさっさと済ませようか。」

 

 少女がパチンッと指パッチン。その仕草は咲そのもので、その事からやはりこの少女は咲なんだとみんな内心納得してしまっていた。そして指パッチンを合図に光の周りに集まっていた魚達が次々に本へと還っていき、最後に変身した図鑑を残して少女の背後に整列した。

 

「っ!その図鑑は・・」

「これは私の存在そのものと言ってもいい記憶、私が生まれる要因になった全てがここに記されている。そして内容を知った光ちゃんは私と協力関係になった。まぁ、あの火事の時はちょっと意地悪しちゃったけどね。」

 

 思うところがあるのか、申し訳なさそうな顔をするがそれもほんの一瞬ですぐに偉そうな顔へと戻った。

 

「ここに、みんなが知りたがっている全てが載ってる。できれば身内にしか見せたくないんだけど今日は特別。全員揃って咲という能力者の過去へご招待してあげましょう。」

 

 明るい声で音頭を取ると図鑑をバラバラとめくって思いっきり宙へと放り投げた。途端に図鑑から七色の光が溢れ出しその場の全員を包み込む。慣れてきていたはずなのに特段眩しく感じた咲は反射的に目を閉じた。次に目を開けた時に目の前で待っていたのは幼稚園児特有のスモッグを着た咲であった。場所は先程三人が遊んでいた公園、しかし他二人の姿は無い。幼稚園児の咲だけが一人でブランコに座ってぼーっとしていた。桜の木が青々とした葉を付けている事から時期は五月頃、太陽が真上に来ている事から時刻は午後2時前。そこまで分かった咲が感想を一言。

 

「あれは・・能力に覚醒する前の私?」

「うんそう、あれが私が生まれた瞬間だよ。」

 

 光の傍で少女がポツリと零した。

 

「私が・・つまり貴女が?」

「うん私。でも貴女はその心臓が動き始めた時に生まれたんだ。だから貴女も紛れもなく私の一部なんだよ。」

 

 まるで謎かけみたいな言い回しでどこか掴み切れない、少女の言葉を紐解こうとしていると幼稚園児の咲が一言。

 

「・・・もうすぐ蛇が前を通る。」

 

 予言めいた台詞。一瞬何かの隠語かと疑ったが、草むらから一匹の茶色い蛇が出て来た事から普通の予言だった事が判明した。蛇はニョロニョロとブランコの前を横切って隣の茂みへと消えていった。それを見て一番驚いたのは予言した咲本人であった。

 

「本当だ・・・本当に起きた。じゃあこれが私の能力、未来視の力!」

 

 幼稚園児の咲は力の覚醒を自覚してキャッキャしていた。一方でここまで聞いた照はすぐさま愛に尋ねた。

 

「お母さん!?」

「違うわ、この頃の咲・・ていうか三人共、そもそも能力を形にする事すら出来なかった。風を起こそうと空気を圧縮すればすぐに霧散するし、手から炎を出そうとしてもほんのり指先が温かくなる程度。息を吐くように使いこなせるようになるのはもっと先の話。でも咲はバリエーションだけは豊富で毎日毎日全く違う能力の片鱗を見せていたわ。どれも形にならなかったけど・・だから、仕方ないから私が咲の名前から方向性を決めたの。」

「え?じゃあ叔母さんは咲の能力を最初から嶺上開花にするつもりで?」

「いえ、むしろ能力とは正反対の・・・自分の努力が実を結んで欲しいって意味で咲にしたの。ほら、花が咲かなければ実は生らないでしょ?」

 

 へー、と咲を含んだ周りは感心した。当然少女の咲も感心した。そうこうしていると幼稚園児の咲に変化が。

 

「すごいすごーい!これが私の力!私が一番乗り!これでお姉ちゃんや光ちゃんよりも・・・え?」

 

 突然頭に手を当てて蹲った。それを見ていた者のほとんどはどうしたんだろう?と首を傾げていたが、何人かの能力者・・特に怜はすぐに気づいた。

 

(あ!あれめっさ遠くの未来を予知したんや、その反動で痛がってんねや。)

 

 分かるわーと理解を示すが同時によく痛いだけで済んだなーとも思っていた。怜の場合は病弱という欠点もあるが、そも未来視の能力は大なり小なり負担が大きい。そのため能力の暴発でいきなり遠くの未来を見るような事があれば脳への激痛は免れない。なのに映っている園児の咲は蹲るだけで泣き叫んだり発狂したりする様子は無い。その結果に能力との相性が良いのかな?と一応の納得をした怜なのだった。

 一方でようやく頭を上げた咲は、苦しそうな顔をしつつも頭の中を整理する為に見たものをそのまま口にした。

 

「い、今のは・・・まさかこれから起こる未来?動く椅子に乗るようになった光ちゃん、光ちゃんのおうちに輪っかっかの茶色い紐。その紐に光ちゃんの首が食い込んで・・・光ちゃんがぶらーんぶらーん・・・・死んじゃった。」

 

 その言葉に驚いて一同光を凝視する。視線を感じた光は黙って一回頷いた。どうやら光は咲から記憶を引き継いだ際に全てを包み隠さず知らされていたようだ。そんな中、少女咲の独白が挟まる。

 

(この時私が予知した未来、それは愛する光ちゃんの死だった。大好きな親友であり同じアークタンデの能力者である彼女の喪失。それは私の精神に深い傷を残した。)

「これが未来?これから訪れる?・・・やだ!絶対やだ!」

 

 再び頭を押さえて蹲った園児の咲。頭の中でどうにか出来ないか子供なりに考えるが浮かぶのはどれもしょうもない策ばかり。

 

(どうにかして自分が予知してしまった未来を回避したい、しかし今の自分にはどうする事も出来ない。じゃあどうする?誰かに頼るのか?頼ったとして誰が自分のような子供の言い分を信じてくれる?・・・自問自答の末に私が辿り着いた結論は。)

「・・・強くなる、お母さんが言ってたように。宮永のおうちはずーっと昔から選ばれた才能ある人しか生まれないって言ってた!だったら私も才能があるはず!未来視の力だけじゃない!もっと他の力も使えるように!」

 

 そう言ってブランコから思いっきり跳ねて着地すると、右手をかざして叫んだ。

 

「凍れ!」

 

 目標は公園の隅っこにひっそりと生えていた雑草の一本、目標目掛けて凍るように命令した咲。するとどうだろう、大地に根差した主根から徐々に氷柱に飲み込まれていき最後には綺麗な氷のオブジェとなってしまったではないか。

 

「次は・・よし、燃えろ!」

 

 次の目標は水飲み場の付近に落ちていたタバコの吸い殻、それ目掛けて燃えるように命令した。するとタバコはあっという間に炎に包まれて黒焦げになってしまった。

 

「すごい、私の中にこんな沢山の力が・・・でもダメ!これじゃ光ちゃんの心をいやしてあげられない!未来の光ちゃんは暗い顔をしてた!なら光ちゃんを笑顔にするような力が・・・」

 

 それからも咲は公園で日が暮れるまで能力の練習を続けた。風を起こしたり水を湧かせたりと色々試してみるがどれもこれも物理攻撃にしか使えない。肩を落として落胆した彼女は再びブランコへと腰掛けるのだった。

 

「はぁ・・・やっぱりむり、いろいろできても光ちゃんを笑顔にできる気がしない。そもそもなんで光ちゃんはあんなに落ち込んでいたんだろう?それが分からないとどうにもできないよ。」

(どうにかして未来の光ちゃんの心情を探る事が出来ないかと一人で模索して模索して・・・そして約1時間、私は一つの結論に至った。)

「オーラ・・お母さんが言っていた才能ある人と普通の人のカケハシとなる力。普通の人でもできるようになる感情に左右される力。これをできるようになれば、可能性が広がるって!」

 

 そこから場面は一転、空に広がっていた夕焼けが暗転して闇に溶けた。そして闇から再び光が溢れ出し明るく空を照らす。明るい空に舞う数々の桜の花びら・・・季節は春。咲と光は揃って幼稚園を卒業した。そして明日は人生初の小学校登校日、本来なら明日に備えて家でゆっくりしているのが望ましいとされる期間。しかし咲は公園で一人ブランコに座りながら揺れていた。

 

「よし、オーラはまぁまぁコントロールできるようになってきた。これなら光ちゃんを私の心の世界にさそえる日も遠くない。そして力・・能力の方。こっちはあの図鑑にのっていた能力はだいたいつかえるようになれた。まぁでもはじめに目覚めた能力が未来視じゃなきゃこうもトントン拍子に行かなかっただろうなー。」

(この時の私は未来視の力を使って将来の自分が能力を使っている場面を見て学習するっていうインチキに近い方法で能力を習得していっていた。その際に自分がオーラを使って精神世界を作れる事も知って同じように世界を構築したりもしていた。そしてその世界の中で例の図鑑を発見した。でも図鑑に書かれている事を知って半分絶望もしていた。)

「まさかなー、お母さんと光ちゃんのお母さんの二人に今までの宮永のおうちの能力が半分ずつに別れて渡っていたなんてなー・・・参っちゃうよ、本当に。」

 

 その発言に愛は大きなショックを受けた。目は点になり呼吸する事も忘れる、そんな母親の様子を見てヤバイと思った照が急いで正気に戻そうとする。

 

「お母さん!?どうしたの!?」

「・・っはぁ!はぁはぁ・・何でもないわ、ちょっと驚いただけ。でも・・・結構ショックね。」

 

 何やら母親がショックを受けているらしい、しかし照は何でなんだろう?とイマイチ分からない様子。そんな照を見て少女が補足した。

 

「宮永家は代々能力者の家系。歴代の能力者が使えるようになった異能の数々は全て遺伝子に記録されながら子孫に継承される。でも上手く継承出来ない場合もあった、それがお母さんと光ちゃんのお母さん。どうしようもない理由で二人の代で二人の身体に半分ずつ、という形で能力が渡ってしまった。だから当然私とお姉ちゃんが使える能力も本来の半分で光ちゃんももう半分しか使えない。まぁほとんどの能力を眠ったままにしているお姉ちゃんには関係無い話だったかな?」

 

 あくまで照に向けて喋ったつもりだった。しかしそれを聞いて辛そうな顔をしたのは愛の方だった。愛は一回顔を手で押さえた後に申し訳なさそうな顔をしながら少女に向き合った。

 

「はぁーーー・・・ごめんね咲。私達のせいでこんな事になっちゃって。」

「ああ、やっぱり分かるんだお母さん。何で私が光ちゃんの中に入る必要があったのか。私の身体をこうして残す必要があったのか。事の真相が・・点と点を線で結べたんだね。」

「ええ全部ね。貴女が未来を見れるなら私に気づかれずに能力を極められたのも納得がいくし、何で光ちゃんの中に記憶を移したのかも納得がいく。でもお願い、このまま最後まで見させて。」

「もちろん、最初からそのつもりだよ。じゃあ記憶の再生を続けるね。」

 

 そこで初めてニヤついた悪い笑顔を見せた少女。その笑顔もやはり今の咲カンドラにそっくりだった。

 そして皆の視線は再び記憶の方へ釘付けになり、それを確認して少女も記憶の再生を開始した。

 

「でもどうしよう?このままだとあと3年後、小学3年生で光ちゃんは車にひかれて足が動かなくなる。そこから人生にぜつぼうして自分から命を・・・そうなる前に何か、光ちゃんが自分から死んじゃわないように心の支えをあげなきゃいけない。でも何を?心の支えってそもそも何?そんなの人によってバラバラだし私の場合は・・・私、いやでも、そっか記憶・・・ああ、私をあげればいいんだ。」

 

 この発言に咲は息を飲む。確かに自分ならそうする、と過去の自分の行動をすんなり受け入れている自分にも息を飲んだ。そして少女の独白が始まった。

 

(この時私は決意した、自分の記憶を光ちゃんに移植する事を。でもそれを決行する為にはどうしても必要なものがあった。それを手に入れる為に私は・・・)

 

 そこで独白は途切れ記憶も霞がかって霧状に変化した。そのまま霧散するかに思われたが霧は姿を変えて全く別の風景を映し出した、場所は何処かの学校。グラウンドには冬の寒空の下で放課後のクラブ活動に励む少年少女達の姿があり、そんな彼らを教室から見下ろしている二人の少女がいた。咲と光、小学1年生になった彼女達は暖房の入っていない広い教室で・・・互いに肩を寄せ合っていた。

 

「いやぁ・・今日も寒いね咲。」

「そうだね光ちゃん。でも光ちゃんが傍に居てくれるおかげで温かいよ。」

「ホントに?私の方は咲が渡してくれたカイロのおかげでぽかぽかだけど・・咲ホントに大丈夫?カイロ無しで平気?」

「平気平気。それより光ちゃんの方こそ大丈夫?給食の食べ過ぎで動けないって昼休み中ずっと保健室に行ってたんでしょ?」

「うん平気・・でも無いね。お腹が張って若干苦しいかな。」

「そっか。でもそのおかげでクラブ活動サボれたし、こうして光ちゃんと一緒にいられるし・・私はラッキーかな。」

「んもう咲ったら・・・でもそうだね。私も咲と一緒にいられて幸せ。」

 

 なんと微笑ましい光景か。二人の少女が互いに信頼し合い、肩を寄せ合いながら暖を取っている。これにはこの場の全員もニッコリである。

 

「でも本当に不思議。何でかな、咲か照のどっちかと一緒にいると心が休まるんだよね。まるで自分の失った身体が戻って来た・・みたいな?」

「ふふ何その例え?でも私も一緒。光ちゃんと一緒なら何が起きても大丈夫って、そう思えるんだ。お姉ちゃんは・・別に?いてもいなくてもどっちでもって感じかな?」

「あはは!嘘ついちゃ駄目だよ咲。本当は照の事も大好きな癖に。」

「別に・・・でも、その辺の何の能力も持たない凡人よりかは好きだよ。」

「ぶっ!分かりやすく照れてる!照に見せたらどんな反応するかな。」

「・・・ふふ、きっと顔を真っ赤にして俯くと思うよ。お姉ちゃん寂しがり屋だからさ、きっとその日の夜は私と一緒に寝ようって誘ってくると思う。」

「お!おっとな~!ならその時は私も一緒に混ざってもいいかな?」

「もちろんだよ!三人で朝までフィーバーだね!」

 

 なんとませた小学生だろうか、とても1年生の会話とは思えない。これにはその場の一同揃って苦い顔をした。特に愛は頭を押さえて、どこで教育間違ったかな~?と自分の落ち度を後悔していた。そんな最中、二人の会話は唐突に終わりを迎える。

 

「・・・・ふわ~あ、ねんむい。」

「ああやっぱり?沢山食べた後は眠くなるよね。それに今日は朝から体育だったしね、しょうがないよ。」

「うん・・・咲、いいかな?」

「ふふ、はいはい。どうぞ私の膝枕だよ。」

 

 そう言って咲は冷たい床に座って足を伸ばす形で膝枕を作る。そこに光は頭を預けると、

 

「ああ~気持ちいい・・・お休み咲。」

「うん、お休み~。」

 

 あっという間に眠ってしまった。その間実に30秒、普通ならありえない。

 

「・・よし眠ったね。ごめんね光ちゃん、ちょっと心を覗かせてもらうよ。」

 

 案の定これは咲の能力によるもの。この能力は対象を即座に眠らせる事が出来るが、今回の咲は入念な下準備の末ようやく成功させたあたり未熟と言わざるを得ない。

 

(この時の私は光ちゃんの心の世界からある情報を手に入れようとしていた。でもこの作業を素早く終わらせる自信が無くて、だから冬まで待つ事にしたの。)

「お邪魔しま~す。・・・・・おお、ここが光ちゃんの心の世界!綺麗な魚がいっぱい・・さて、この中の一匹がターゲット・・。」

 

 光の心の世界、それは先程この場の全員が見た美しい魚達が泳ぐ楽園そのものであった。どうやら咲はその中の一匹に用があってわざわざこんな事をしたようだ。

 

(まず光ちゃんがオーラに目覚めている事が絶対条件、でなきゃ覗いた際に心の世界が構築されない可能性もあるからね。その為に私は冬まで待って光ちゃんの成長を見守る事にした。次に場所、自分の家じゃお母さんやお姉ちゃんにバレる可能性があったからね。バレるのは避けたかった、だって自分の都合に他人を巻き込むのは私の良心・・プライドが許さないから。それら全ての条件が整ったのがこの日、クラブ活動をそれっぽい理由でサボって好き勝手出来るこの時だった。)

「ふー、ここまで準備するのも大変だったけどここからも時間が掛かりそうだね。まずどれがどの記憶なんだか分かんないや・・・でも。」

 

 スッと懐から本を取り出した、それは先程見た図鑑だった。

 

「未来視を通じてこの本には本来の半分しか能力が載っていない事を知った。そして残りの半分が何処にあるのかも・・未来の私はそれを手にするどころか未来視に覚醒する前に光ちゃんが死んじゃって、そこから後を追って海に身投げした。でもこの私は違う!この私は物心付いた頃から未来視を使えた!だから効率的に経験を積めたし知識量だって子供の比じゃない。今の私はもう未来の私の詰みポイントを乗り越えてる!さぁ、ここが運命の分岐点!来て!アークタンデの能力達!今こそ一つに戻りアークタンデの力の全てを私に!」

 

 手に持った図鑑が勝手にバラバラとページを開く。その音に引き寄せられてか、一匹の大きな魚が口をパクパクさせながら近づいてきた。その姿はシーラカンスによく似ていた。

 

「おお・・貴女が。さぁ来て、アークタンデの全てをここに!」

 

 シーラカンスは咲を見下ろしたまま動かない、しかし代わりに口から泡を大量に吐き出した。泡は図鑑へゆっくりと引き寄せられて触れ合い、次々と溶けていく。やがて全ての泡が溶け、それを確認した咲が、

 

「や・・やった!これで私はアークタンデの全ての能力を使えるようになれる!ありがとう光ちゃん!」

 

 それを最後に視界は暗転、次に目を開けた時に見えたのは愛する光の穏やかな寝顔だった。それを見て微笑みながら急いで教室の時計を確認する。ほっ・・時刻はまだ4時、クラブ活動終了まで残り30分といったところ。安堵した咲は再び顔を光の方へ向けて、

 

「もう少し待っててね光ちゃん。もう少しで・・・光ちゃんと一緒にいられるから。」

 

 それを最後にしてまた世界が暗転、可愛い寝顔を見せる光も霧がかかって見えなくなった・・がそれも一瞬、再び霧が晴れればまたいつもの公園。そこで咲は一人ブランコ・・ではなくシーソーの真ん中に座ってぼーっとしていた。季節は夏、セミの鳴く声が反響する中、彼女は涼し気に空を見上げていた。

 

「はーー・・半年経って3分の1か。まぁでもそんなものかな、遺伝子が覚醒している訳じゃないからね。」

 

 何やら自分の努力に対して対価が見合っておらずご立腹な様子。そこへ独白による補足が入る。

 

(光ちゃんから残りの能力の情報を全て得て、図鑑を完成させた私はそれらの習得に躍起になった。結果は努力虚しく理想の3分の1と振るわなかったけど。その原因は当然遺伝子・・そもそも遺伝子には優性遺伝子と劣勢遺伝子というものがあって、優性遺伝子は名前の通り発現しやすい遺伝子の事。反対に劣性遺伝子は発現しにくいもの。でも決して発現する事が悪い事ではないから、そこは間違えないでね。そして本題、アークタンデの能力が載っていた遺伝子は全て優勢遺伝子で、普通なら発現するはずだった。でもそれが狂ったのがお母さんの代。お母さんと光ちゃんのお母さんは互いに違う部分の劣性遺伝子が発現してしまった。そのせいで能力も最大で半分しか覚醒させる事が出来なかった。)

 

 そこまで聞いて曇り顔になってしまう愛。まさかこの騒動の根本的な原因の一つに自身の遺伝子が関係していたとは・・改めてやるせない気持ちになってしまった母親、それを見た少女は笑って許し、助け船を出した。

 

(でもそれが、アークタンデ再興のきっかけにもなった。)

「えっ?」

(確かにお母さんたちは生まれつき使える能力の種類に限りがあった。でもそれは、能力の出力を底上げする事にも繋がった。歴代の能力者達は全員全ての能力を満遍なく使いこなす事に重きを置いていたから火力が出なかった。良く言えばオールラウンダー、悪く言えば器用貧乏。でもお母さん達は能力数を絞る事で出力を上げる事に成功した・・いや、そういう風になる劣勢遺伝子を発現させた。だからお母さんはアークタンデ家の先祖返りとして大会で活躍して世界に爪痕を残せた。そしてそれは娘達にも引き継がれ、こうして日本で最も知名度があると言っても過言ではない雀士カンドラ誕生のきっかけにもなった。だから私はお母さんから受け継いだ遺伝子に感謝しているし誇りにも思ってる。)

 

 まさかの独白に思わず涙腺が緩む愛。咄嗟に手で覆い隠す・・そんな母親の珍しい仕草を見て満足感を得た少女は次にこう続けた。

 

(これらの情報は図鑑を完成させた際に後から浮き上がってきたもの。私もお姉ちゃんも光ちゃんも、半分ずつの状態では決して見る事が出来ないアークタンデの記録。大昔にアークタンデが栄華を極めていた時代のご先祖様が、未来視でこうなる事を予見した為にあらかじめ仕込んでおくハメになった道しるべ。・・・そして、それら全ての情報を読んで私は思い立った・・・・・私が光ちゃんを求めるこの衝動は・・人造のモノなんじゃないかって。)

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 





次回、いよいよかつての咲が何故このような行動に及んだのか。その全てが明らかに!

それとすみません、最近パソコンの動きが滅茶苦茶重くて・・文字を打つのに1秒くらいラグが出るのですが、それが積み重なると10文字打った結果が画面に全部表示されるのが10秒後、みたいな事になり変換ミスなどを直す事すらままなりません。

なので投稿がかなり遅くなるかもしれません。どうか気長にお待ち頂けると幸いです。

決勝戦はどんな展開を望みますか?

  • 能力を使った麻雀対決をがっつり書いて
  • 麻雀対決はあっさりでいい
  • 麻雀はいいから能力で直接戦って欲しい
  • 麻雀シーン少な目、キャラ同士の会話多めで
  • 試合中の回想シーン中に会話を多めで
  • 特になし、作者のお好きにどうぞ
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