「人造のもの。それってつまり・・」
「そうだよ。私達が光ちゃんの事を愛し求めるようになったのは・・全部ご先祖様達によって仕組まれたものなんじゃないかって・・遺伝子によって操作されたものなんじゃないかって・・・私は思った。」
唐突に過去の自分から語られた最悪の可能性。しかし咲はその仮説をすんなりと受け入れていた。ああ、やはりそうなのか・・と。通じ合う二人、しかし照はまだ納得がいかないようでたまらず割り込んだ。
「ちょっと!?なに自分同士で納得してるのよ!?私はまだよく分からないわよ!もっとちゃんと話して!」
「・・・さっきの記憶で見たように、私と光ちゃんは何故か一緒にいると物凄く安心を感じる事が多々あったんだ。そしてそれはお姉ちゃんと光ちゃんの間でも起きていたっぽいんだけど・・・でもお姉ちゃんはそういうのをあまり感じなかったんだよね?」
「ん!?・・・うん、さっき見た咲と光みたいな感じには・・私と光の間には無かったわね。でも三人一緒にいるのが正しいんだ!っていう強迫観念みたいなものは確かにあったわ。」
「ああそう言う事。お姉ちゃんは私達二人を守る騎士様だったんだね。だからか・・OK、ありがとうお姉ちゃん。」
「あ、うん。・・・それで?それが何で仕組まれたものだって事になるのよ。」
その質問にうーんと一回。そして眉を顰めながらゆっくりと解説し出す。
「・・図鑑を完成させた私は、そこから新しく過去視っていう能力を身に着けたの。」
「過去視?」
「過去視は名前の通り、実際に過去に起きた出来事を覗き見る事が出来る能力。ただし見れる範囲はアークタンデの遺伝子が混ざった人の過去に限定される。」
その答えにハッと息を飲んだのは愛。彼女は恐る恐る尋ねる。
「・・何を見たの?」
「うん・・ご先祖様が遺伝子に魔術的な呪いを仕組んでいる光景。」
「・・具体的には?」
「私によく似たご先祖様が生命を司る神様の前でスープを作ってた。洞窟の中で自分の腕から滴る血を集め、色んな薬草やら鉱物やら生き物やらを混ぜ込んで・・最後に神からの祝福を受けてスープは蒼く輝いてたよ。それをゴクゴク飲み干したご先祖様は、腫れぼったいお腹をウットリとした表情で撫でて・・『我が愛し子よ。これで一族は永遠の繁栄を約束される。例えどれだけ血が薄まろうと世代を超えて力は戻り、我らは再び繁栄を取り戻す。そうしてこの輪廻は永遠に廻り続ける。』・・みたいな意味合いの事を言ってたんだ。」
最後まで聞いた愛は心痛な面持ちで顔を伏せた。咲も光も、同じように辛そうだ。それでも照だけは前を向いていた。その瞳は怒りに燃えていた。
「・・は?じゃあ何?私達が今こんな面倒な状況になっているのは全部ご先祖様が仕組んだ事なの!?光の脚が動かなくなったのも、それを治す為に咲が馬鹿みたいな借金背負ったのも・・全部私達一族の繁栄の為に必要な事だから黙って受け入れろって・・・?」
「・・・・・うん、たぶん。」
瞬間、照のオーラがブワッと湧き上がり・・・彼女はキレた。
「ふ・・ふっ、ふざけるな!!私達は一族の繁栄なんて望んじゃいない!少なくとも私はそうだった!私は三人で仲良く暮らしていければそれで良かったんだ!!なのに全ては繁栄の為?アークタンデが世界に君臨する為の道具?ふざけるな!!私も咲も光もお母さんもお前らの為に生まれて来た訳じゃない!!」
先祖へ向けた悪態はまだまだ続き、やがてふーっ、ふーっと肩で息をするまでキレ散らかし、それでもなお怒りが収まらない様子。そんな姉に見かねて少女が口を挟む。
「もういいかな?私の記憶を消しても?」
「はぁはぁ・・へ?」
返事も待たずに少女は記憶の再生を終了した。記憶は霧のように塵に成り、ゆっくりと少女の中へ戻って行った。
「このあとは知っての通り、私が光ちゃんに記憶を移す事を提案。了承を得てそのまま実行、結果私は光ちゃんの中で生きる事になって身体の方も新しく人生を歩み始めた。」
虚ろな目で語る少女、その視線の先にはカンドラがいた。自分同士で見つめ合う・・・そして数秒後、先に視線を切った少女はおどけた口調で語る。
「さぁ、これで私と光ちゃんが隠している事はもうないよ。本当に隠し事は一切なし。全てはこの私、正真正銘本物の宮永咲の独断から始まった事。三人の中で誰よりも早く能力に覚醒した私は未来視の能力で光ちゃんの死の運命を知った。そして最悪の運命を回避する為に自身の遺伝子に眠る全ての能力を解放する為に奮闘し、光ちゃんの中に眠っていた遺伝子と接触する事で歴代の全ての能力を操れるまでに至った。そんな、そこまで至った私が光ちゃんを救うために選んだ最善の方法が・・・光ちゃんに私の記憶と人格を移植する事。結果は上々、光ちゃんはこうして死の運命から逃れ、私は光ちゃんの中で能力を極め続ける事が出来た。」
そこまでは笑顔だった少女。しかし話し終わった途端に曇り顔になる。そんな少女の変わり様にいち早く声を掛けたのは母の愛であった。
「・・それで?貴女の眼にはどう映ったの?こっちの咲は?」
「・・・・・・」
少女は沈黙を貫く、心の準備が必要なのだ。代わりに間を持たせようと光が口を開いた。
「わ、私も知りたい。ここまで共犯しておいてなんだけど、本当にこの方法しか無かったのかな・・って。」
「光?この方法しか無かったって・・何が?」
「あの日、咲が私の中に記憶を移す決断をした時に・・一旦止まって、一緒に別の方法を取った可能性もあったのかなって。」
「え?・・でもその選択は光を救う為に絶対に必要だって・・」
「ううん、私を救う方法なんていくらでもあった。それこそ、あの時の咲なら未来視で見た可能性をそのまま頭に流し込んで私に死の運命を信じさせる事だって出来た。他にも、暴力的な手段で拉致監禁して恐怖で私の行動を縛る事だって・・・でも、そんな簡単な方法を取らずに自分の身体から私の身体に記憶を移すなんていうハイリスクな方法を選んだ。」
「言われてみれば・・・どうして?」
「それは・・」
「それは自分の愛が本物かどうか確かめたかった・・そうでしょ?咲?」
代わりに答えたのは愛だった。彼女はそのまま少女に問いかける。
「咲・・自分の遺伝子に大昔からの呪いが施されている事を知った貴女は、光を愛する気持ちはアークタンデ再興の為に遺伝子が発現させた本能のようなものなんじゃないか?そう疑問に思ったのね?」
会場が再びザワザワし混乱が支配し始める。構わず愛は続けた。
「否定しようにも気づいた時には既に遅し、状況証拠は揃い過ぎていた。過去視で見た先祖の呪いの儀式、遺伝子によって別たれた歴代の能力、そして光ちゃんに対する異常なまでの独占欲。これらの事から先祖の呪いが発動しているのは明白、でもそれがどこまで強力なものなのか?そこまでは分からなかった。そこに僅かな希望を見出した貴女は・・身体だけを残して光ちゃんの中に身を潜め、その後の行く末を見守る事にしたのね。」
「・・・うん、そして結果は出た。だから私がこうして出て来たの。」
少女が口を開く。先程まで散々好き勝手に喋っていた少女が再び口を開いた。ただそれだけの事なのに・・気づけば会場中が静まりかえっていた。
「貴女が抜けて自我が希薄になった身体。もちろん咲としての最低限の記憶は残しておいてあったから、特段困るような事にはならなかったわ。ええそれはもう・・母親の私ですら気づかない程に。それ程に貴女の仕事は完璧だった。あとは誰にも気づかれないまま、咲として振舞う身体がどんなアクションを起こすのか、じっくり観察するだけでいい。意思が弱くなって光ちゃんに対する最低限の記憶しか持たない自分、呪いが予想通りの強さなら空っぽの自分は光ちゃんを何よりも優先しておかしな行動を取るはずだと・・・結末は貴女が按じた通り。カンドラの名前を手に入れたこの子は全てを犠牲にして光ちゃんの元へとたどり着いた。この子は・・・・呪いに屈したのね。」
それを最後にカンドラはガックリと膝から崩れ落ちて四つ足の状態となった。その姿からは、まるで冬の寒さに凍える捨て犬の如き頼りなさをたまらず感じてしまうほど。すぐに小鍛冶が傍に駆け寄ってカンドラを抱き寄せる。しかしカンドラは何も言わない。されるがままだった。
もしや彼女の精神は粉々に砕け散ってしまったのか!?不安で頭がおかしくなりそうな小鍛冶だったが、しかし次の愛の言葉で脳がフリーズしたため狂う事は無かった。
「でも貴女・・・内心笑顔でしょ、違う?」
「っ!?・・参ったな~、そこまで分かっちゃう?」
「ええ、母親だもの。分かるわよ。」
右手で顔を押さえながら天を仰いだ少女。指と指の隙間から覗くその口角は・・・確かにニヤけていた。
つづく
あけましておめでとうございます。
新年早々ですが私のパソコンの調子は相変わらずです。
時間を掛けても直らないので、一旦近所の電気屋に見てもらう事にします。
また投稿頻度が下がる可能性がありますが、直ったらこれまで通りの投稿頻度に戻る事は保証します。
決勝戦はどんな展開を望みますか?
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能力を使った麻雀対決をがっつり書いて
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麻雀対決はあっさりでいい
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麻雀はいいから能力で直接戦って欲しい
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麻雀シーン少な目、キャラ同士の会話多めで
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試合中の回想シーン中に会話を多めで
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特になし、作者のお好きにどうぞ