ニヤリと少女は笑う。その笑みを見た照は思った事を素直に口に出す。
「・・その笑いは、良い意味で受け取ってもいいの・・咲?」
「・・・・・」
少女は答えない。代わりにヒタ、ヒタ・・とゆっくりカンドラに歩み寄った。そして告げる。
「・・おめでとう私。貴女は呪いに打ち勝ったんだよ!貴女は私が思っていた以上に素晴らしい存在だったんだ!」
ガバッとカンドラは顔を上げた!その視線の先にいた少女は満面の笑みを浮かべていた。
「私が素晴らしい?・・どうしてそう思うの?私は遺伝子に屈した失敗作じゃないの?」
「まさか。それどころか遺伝子を遥かに凌駕する意思を見せてくれたじゃない!」
ポカンとしながらもボンヤリ気な頭で状況を整理する・・・少女の言動から、どうやら自身は遺伝子の呪いに打ち勝っていた・・というのは理解できる。しかしそれを、今までの行動のどの辺を見て言っているのか?それが分からない咲や周りの雀士達。というよりこの場でそれが分かっているのは目の前の少女ただ一人のようだ。
「ふふ、じゃあ最後に教えてあげるよ!貴女の素晴らしい活躍の数々を!」
そう言うとまずは光の方を見て話始めた。
「私が光ちゃんの中に入ったあと、貴女は中学3年まで素の私と同じように振舞った。でもそれは仕方ない事で、あの頃の貴女の周りの人間関係には何一つ変化が無かった。だから貴女も進んで変わろうとはしなかった。」
カンドラも光を見ながら無意識に頷いていた。それはそうだ・・と。
「変わったのはあの火事のあと。あの日を境に光ちゃんと離れ離れになった貴女はもう一度光ちゃんに会う為にあらゆる手を尽くして頑張って、何とか居場所を突き止める事に成功した。でもその隣には小鍛冶健夜・・強力な能力者が立っていた。」
「・・・「そうだね。」」
カンドラを守るように小鍛冶も返事をする。そう、小鍛冶に出会って彼女は変わった。
「小鍛冶という才能の塊のような能力者に出会う事で貴女は知った、世界にはまだまだ才ある者達が隠れ潜んでいる事に。だから貴女は光ちゃんに会うという目的を・・過程にすげ変える事にした。」
「・・え?」
思わず素っ頓狂な声を上げる。少女は目を輝かせながら笑顔で語る。
「自覚が無いとは言わせないよ。お姉ちゃんの言う通り、貴女はもっと楽な道を背負う事だって出来たはず!光ちゃんの脚を治さずに自分が光ちゃんの脚になればいいって!そうすれば光ちゃんは絶対に貴女の傍から離れていかない!離れられない!なのに貴女は光ちゃんに自由を与えた!・・・それはどうして?」
「どうしてって・・それは私が歩けない光ちゃんを見るのが辛くて耐えられないからで。」
「そうそこ!貴女は自由を失った光ちゃんを見て可哀想だと思った!つまりそれは・・・貴女が光ちゃんを道具じゃなく人として見ているっていう事に他ならない!」
その指摘にハッとして光を見たカンドラ。光は嬉しそうに微笑みを返す。
でもまだだ、それだけでは証拠不十分だ。もっと・・もっと欲しい。少女に続きを催促する。
「でもそれだけじゃ、私の気持ちが造られたものじゃないって証明にはならないよ。」
「ふふ・・言ったでしょ?活躍の数々をって。次に貴女は資金集めの為に全国の雀荘巡りをする事にしたよね。それはどうして?」
「それは・・それが一番稼げるかなって。それに協会の人達も雀荘を一新したいって言ってたし。小鍛冶さん達もそれが助かるって言ってくれて・・」
「ふふ、気づいてる?貴女、もうこの時点で他人の意見を聞くように変化してるんだよ?昔の私達だったら絶対に気にしないような大人の都合まで意識しちゃって。」
「え?あ!」
イタズラが成功したかのようにケラケラと笑う少女。そのまま流れに乗って少女は捲し立てる。
「そしていざ雀荘荒らしを始めたら、今度は各地で困ってる能力者達の為に慈善活動!金銭的に困っている子供の援助から、能力が暴走して途方に暮れている能力者への教育まで、幅広く活躍して尊敬を集め!遂にはこの会場を埋め尽くす程の雀士達を引き寄せるカリスマ的存在にまで昇華した現代の革命家!それがカンドラ!貴女よ!」
ババ~ンッ!!というSEが付きそうな感じでカンドラを指差した少女。差されたカンドラは一瞬硬直したあと、会場に集まったみんなをグルッと壇上から見て・・
(私が?ここにいる全員に?・・ああ、確かにこれは・・良いものだね。)
顔に出さないように、しかし確かに感動していた。ここにいる全員が自分の誘いに乗ってくれたという事実に。ずっと光の事だけ考えて生きて来たカンドラはようやく、自分が今まで成してきた事の大きさをハッキリと理解できたのだった。そして一言呟く。
「・・・そっか、そうだったんだ。」
その呟きの意味を黙って聞いていた照や小鍛冶には分からなかった。しかし自身の分身である少女と光には理解できた。それをみんなにも知ってほしくて少女が代弁してあげる。
「今まで全然気にしてこなかったけど・・私ってこんなにすごい事をしてきたんだねって顔してる。」
「え?・・ああ、代弁ありがとう。そしてありがとう。」
「自分の光ちゃんを愛する気持ちが嘘じゃないって気づかせてくれて?」
「うん、最初は全然信じられなかったんだけどさ。こうやってみんなの顔を見てたら・・・なんかスッキリした。ああ、私は私なんだなって。」
良い表情をしているカンドラは、今度はじっくり檀下の雀士達の顔を見つめ始める。彼女達との出会いを振り返りながら。
(雀荘荒らしを始めて1年と半年・・・最初に出会ったのは桃子ちゃんと加治木さんだった。二人は桃子ちゃんの能力がいずれ自分達を引き裂くんじゃないかって怯えていた。私だってそんな結末を見るのが嫌だったから・・だから、ほんの少し手を貸した。少なくとも私にとってはほんの少しの事。でも二人はすごく感謝してくれて・・いつの間にか私の秘書みたいになっちゃって。こっちの方こそ本当に助けられたよ。ありがとうね。)
じっと見つめられて、負けじとニコッと笑顔を返す二人。その二人の近くに怜と竜華が立っていた。
(あの二人との出会いは本当に偶然だったけど今でも思うよ。あの時出会っておいて良かったって。あそこで出会っておかなかったら二人共死んでたかもしれなかったし。死んでたかもと言えば・・)
今度は豊音と小蒔のいる2校の方へ顔を向ける。向けられた2校の全員が花のような可愛い笑顔を返す。
(あの時は本当にヤバいって思ったよ、間違いなく私がいなかったら悲惨な事になってた。まさか六曜の力が神様関係だったとは思いもしなかったし。でも助けられて良かった・・小蒔ちゃんの方もね。そして・・)
同じく助けられて良かったと言えばでカンドラが探した二人組は・・会場の奥の方にいた姫子と哩の博多コンビだった。
(哩さんの行動には驚かされてばかりでした、まさかあそこまで能力に人格が影響されるなんて。でもあの二人の間にもちゃんと愛があるって分かって良かったですよ。で、愛と言えば。)
ゆっくりと視線を移動させて見つめたのはネリーと淡と穏乃。この三人の急速な連携の成長には流石の咲も驚いた。
(この三人は規格外だった。出会って少ししてまるで家族のような仲の良い連携を見せるまでに至った。そのコミュニケーション能力の高さ、きっとこれからの麻雀界でそれぞれ派閥を作って私の前に立ちふさがる事になるんだろうな。ふふふ・・楽しみ。)
一通り全員の顔を一瞥したところで最後に、大好きな清澄の麻雀部の顔を拝見する。カンドラと目が合うやいなやニパーッと顔を輝かせる少年少女達。そんな彼らをカンドラは・・愛おしいと思った。
(部長、優希ちゃん、まこさん、京ちゃん。そして和ちゃん。みんなと初めて出会った時は不安が大きかったけど今は逆に安心を覚えるよ。生まれて初めて・・光ちゃん以外の人に素の自分をさらけ出して、そして受け入れてくれた人達。清澄麻雀部のみんながいたから・・私はここまでやってこれた。だから・・ありがとう。そして最後に。)
いつからか、自分の横にいるのが当たり前になっていた存在である小鍛冶健夜。最後に彼女を見る・・見られた小鍛冶はその視線の意味を理解し、うっとりしながら見つめ返した。
(ありがとうございます小鍛冶さん、そしてプロ雀士の皆さんも。貴女達がいなかったら私はカンドラとして活動する事すらできなかったでしょうから。こんな生意気な子供の言う事を真面目に聞いてくれて、本当にありがとうございました。)
心の中で深々とお辞儀をした後に、ゆっくりと視線を逸らし少女の方へ顔を戻す。
(挨拶は済んだ、私は光ちゃんを一番に愛していたし他のみんなの事も愛していた。それがハッキリした今、もう悔いはない。)
当然口にはしない、何故なら少女もカンドラも同じ咲だから。視線とオーラで十分理解り合った互いはもう少しだけ名残惜しそうに見つめ合い・・・少女が口火を切った。
「じゃあ・・・一つに戻ろっか。」
「うん。」
即答したカンドラ。当然外野が制止に入る、特に姉が口うるさく。
「ちょ、ちょっと咲なに!?何する気!?」
「「元に戻るんだよお姉ちゃん。」」
少女とカンドラが同時に答える。シンクロした二人の声に思わず身体が強張る。
「え!?・・・え?」
「「元々私達は分かたれた存在、なら元に戻るのが自然の流れでしょ?」」
そう言って互いにゆっくりと一歩ずつ歩き始める。当然照は止めに入るが、それを母親である愛が止める。
「そんないきなり・・」
「照、それ以上は野暮ってものよ。」
「えっお母さん?」
「・・さっきのやり取りを聞いたでしょ?全ては咲が、自身の分かたれた意思が遺伝子の呪いにどこまで抗えるのか見極める為にやった事。その為に光ちゃんに記憶を移してまで・・結末は見ての通り、咲は見事に呪いに打ち勝ち、光ちゃんを道具じゃなく一人の人として愛していると証明し、他にも沢山の人と愛を育んだわ。予想以上に素晴らしい結果が観測できた今、もはや別れ続ける理由は何処にも無い。二人の記憶と身体は一つとなって元の自然な形に戻っていくの。」
そんな・・と両者を見て呆然とする照。愛の解説に微笑んで感謝を伝える両者、そんな二人を見て愛も・・
「・・お疲れ様。貴方達はアークタンデの呪いを解き明かし、光ちゃんの死の運命や多くの能力者達の命を救った英雄よ。貴方達の母親として誇りに思うわ。ええもう、本当に良く頑張った。だからこれからも・・自分達の正しさの為に力を振るいなさい。」
涙ながらに二人の新たな門出を祝う。そんな二人の距離はもうゼロに等しく、あと一歩で触れ合う所まで来ていた。
ここで一歩を踏み出せばもう元には戻れない。だから最後に、
「「・・・お母さん、みんな、ありがとう。」」
この場の皆に感謝を残し・・そして一歩、両者は踏み出した。
続く
お久しぶりです。
電気屋に預けていたパソコンが返ってきました。
調子はかなり良いです、なのでこれからは投稿頻度も以前のように戻ると思います。
決勝戦はどんな展開を望みますか?
-
能力を使った麻雀対決をがっつり書いて
-
麻雀対決はあっさりでいい
-
麻雀はいいから能力で直接戦って欲しい
-
麻雀シーン少な目、キャラ同士の会話多めで
-
試合中の回想シーン中に会話を多めで
-
特になし、作者のお好きにどうぞ