A.原作の運命操作の能力に加えてオーラ操作という能力を獲得したから
原作より強くなってはいる。(そうは見えない)
今回はそんな感じの内容です。
「目が覚めた時に貴女が消えていたのがどうしようもなく悲しかった。だからもう一度会いたかった、会って手の中の札束を押し付けたかった。自分で稼げるからこんな金いらないって..でもあの時のネリーにはそんなアテも無くて、ただただ貴女の優しさに甘えるだけで・・それが凄く惨めで。」
カンドラとの出会いから別れをお互いの視点から振り返っていた2人。最初は立って話していたが、あの時のようにカンドラが膝枕を促してきたのでネリーは大人しく従った。カンドラの太ももはあの時と同じで居心地が良く、隠そうとしていた醜い本心をつらつらと並べてしまった。
「もちろん貴女には本当に感謝している。でもあの別れ方は酷いと思うよ。」
「・・その事に関してはすみませんでした。あの日はあまり時間に余裕が無かったものでいい加減な対応をしてしまいました。ですので貴女に渡した200万もそのまま返ってくる事は無いと思っていました。」
僅かに気まずい沈黙が流れるが、それもすぐに掻き消えた。
「・・貴女がネリーを救ってくれたあの日から、ネリーはずっと貴女に会いたかった。ネットや雑誌を手当たり次第に漁って貴女を追いかけた。会って貴女に借りを返したかった・・例えネリーが貴女に”取るに足らない小娘”って思われていようと..もっと貴女と一緒にいたかったんだよ。」
「ネリーさん・・」
カンドラとの短い出会いから別れを話し終えたネリーは、次にカンドラに会った時に言おうと思っていた決意を叫ぶ覚悟を決めた。カンドラの膝から起き上がり、今度は両肩をがっしり掴んで縋り付くような形で、サングラスの先にある瞳に顔を合わせた。
「・・ごめんカンドラ、今はまだ200万円なんて大金持ってない。でもいつか必ず返す!ネリーが高校を卒業するまでには必ず!だから見てて欲しい!ネリーはこのインターハイの個人戦で必ず優勝する!あの宮永照を倒してネリーがチャンピオンに君臨する!そうしてちょっとずつ有名になっていけば、いずれは沢山のスポンサーからお金が回ってくる!来年になる頃には多分200万ぐらい貯まる!そうやって真面目にお金を稼げばカンドラだってネリーの事を認めてくれるでしょ!?」
「・・ネリーさん、そこまでしなくても私はすでに貴女を認めています。貴女が一度決めた事を絶対に曲げない人だというのは、貴女のオーラを見れば分かります。」
「違う!ネリーの人間性なんかじゃなくて..いや人間性も大事だけどそれ以上にネリーの実力を認めて欲しいの!」
「・・? ネリーさんの実力?」
「ネリーがお金を一番効率良く稼ぐ方法って麻雀の大会でいい結果を残す事なんだよ!でもいい結果を残すには先天性の能力や後天性のオーラを誰よりも上手く扱う必要がある..でしょ!?だからそれを貴女に認めて欲しいんだよ、貴女に出会った時とは違うって貴女自身のお墨付きが欲しいんだよ!」
勢いで捲し立てるネリー。そんな彼女の気迫に押されたカンドラは取り合えずネリーを落ち着かせようとする。
「大丈夫です!分かってますよ!ネリーさんがその辺の雀士とは1線を画す事くらい!確かに私が出会った時のネリーさんはオーラだけじゃなく能力の面でもどこか頼りなかったです。でも..」
「そうだよ頼りなかったよ!だから努力した!あれから運を操作するだけじゃなくオーラの操作も出来るように努力した!あの時貴女が私に見せてくれたオーラの記憶を頼りに頑張った!そしたら私のオーラも答えてくれた!今までの運命操作だけじゃない、オーラを技として使えるようになるまで鍛え上げた!貴女が教えてくれたおかげ!だから!・・・」
「・・だから?」
「・・その、200万返し終わったら..ネリーを貴女の..右腕?的なアレにして、今度はネリーが人助けをする優しい貴女を傍で支えたいなぁ..なんて」
言い終わると同時にとんでもない羞恥心がこみ上げてくる。結局のところ、このネリー・ヴィルサラーゼは生まれて初めてできた心の底から尊敬できる人物に置いて行かれるのが嫌なのだ。だからこのように力を誇示するような宣言をしてしまった。自分はもう、貴女が救わなければいけない有象無象の一人ではない。貴方の隣に立って、数多の危険から貴女を守れる守護者としての力がある!だから傍に置いて欲しい!と。
(そう・・つまりは惚れた女の尻を追っかけてるだけの小娘。それがこのネリー・ヴィルサラーゼのさっきまでの在り方。でも今からは違う!)
たった今ネリーは宣言したのだ。個人戦で優勝すると!そしたら今度はネリーがカンドラの為にお金を稼ぐ番だ!そして稼ぎ終わったら、最後は2人で色んなところに出向いて困っている人を助けるさすらいの旅人、みたいな感じになれたらなぁ。もちろんそれはカンドラが望めばの話で、それが嫌なら..恋人..みたいに甘くデレデレした関係..でもいいかな..///・・みたいな事をネリーは妄想していた。
興奮して若干言いたい事が纏めきれていないネリーだったが、そんなネリーの言葉を白のオーラを使って大まかに理解したカンドラは..内心苦笑していた。
(あはは、参ったなぁ。別に私は自分の目的の為だけに雀荘荒らしをしているだけで、人助けの為にわざわざ危険なところに飛び込んだりしないんだけどなぁ。それに困っている人を助けるのも全員助けてるわけじゃないし、私は自分が可哀想だと思った人しか助けてないんだよなぁ。)
そう、カンドラが人助けをするのは相手に同情する余地がある場合だけだ。それ以外には非情に徹する。気に入らない人間はバッサリ捨てる、気に入った人間は深く愛す。それが彼女の在り方だった。
(でもネリーさんは紛争地域の出身だし、分かりやすい英雄を求めているのかな?もしかして私が底の無いお人好しだと勘違いしていて、それを横から参謀のような立場でサポートしていく、みたいな関係になりたいのかなぁ。でもごめんね、私そんなに優しくないんだ。)
そこまで考えてふと疑問がよぎる。
(そもそも何でこんなに私に執着してるんだろう?確かに一緒に食事して深い話をした間柄だけど..あれ?これだけ聞くと合コンで意気投合したカップルみたいな?・・とりあえず聞いてみようか。)
「あの、ネリーさん。もし私がネリーさんの思うような善人ではなかったとしたらどうします?」
「え?・・ああ!いや違くて、貴女を支えるっていうのはその..い、色んな意味でって事で..だから、貴女が人助けをやりたくなくなっても別によくて、その、えと・・貴女はネリーに明確な生きる目標をくれたから、ネリーも貴女の生きる目標・・にはなれなくても、生きる理由の一つになれたらなぁって思って。」
なんかモジモジしだしたネリー。頑張って言葉にしてはみたがネリーの想いは虚しくも空を切る事になる。ネリーの曖昧な言動のせいでカンドラは曲解してしまった。
(ああなるほど、ネリーさんの中では私は既に大事な家族だから、同じように私もネリーさんの事を家族だと思ってくれると嬉しい、って言いたいのかな?)
そう結論付けると同時に少し申し訳なく思った。
(ごめんね、ネリーさん。今の私が軽率に家族を増やす事は出来ないんだ。例え血の繋がりのない絆だけの家族だとしても。まだ"謝っていない"からね。)
とりあえずやんわりと否定しようとしたその時!
「いやぁ、みや..嶺上さんってあれっすね。旅先で出会った子を片っ端から虜にしていく魔性の女ってやつっすね。」
「うお!貴女いつからそこに!?」
ステルスモモこと、東横桃子が急に姿を現した。
「ずっと居たっすよ?私の本気のステルスに気付かないようでは、まだまだカンドラさんの右腕にはなれないっすね。」
「!・・そんな事、貴女に言われなくても分かってるから!」
口では反撃したネリーだったが、心の底ではこの東横桃子という能力者に、カンドラの相棒というポジションで遅れをとっていると感じた。
(やっぱりコイツ強い!能力、というよりオーラの扱いが段違いだ!麻雀の勝負だけならネリーの方に軍配が上がるとは思うけど、他の勝負だったら多分負けてる。)
珍しく弱気になったいるネリーだったが、それは相性故の判断だった。ネリーの運命操作もオーラ由来の新しい能力も、結局のところ使える回数に制限があるのだ。それに比べて目の前の東横桃子のステルスはおそらく常時発動するタイプの能力、いくらネリーの能力が運を引き寄せても桃子には逃げられる。もちろん桃子が何処にいるか分かる麻雀ならば勝てはするだろうが、それでも楽勝とはいかないだろう。
何より桃子から”おそらく”放たれているであろう”透明”のオーラの異質さにネリーは畏怖の念を抱いていた。このオーラが桃子の天性のステルス能力をさらに底上げしているのが運命視から見て取れた。
そんなネリーの様子を見ていたカンドラは、ネリーへの評価を少し上げた。
(私がネリーさんに初めて会ってからまだ数ヶ月。当然ネリーさんは人に頭を下げるタイプじゃないからオーラの習得ほぼ独学..それにしてはすごい成長スピード。まだぎこちないけど、ちゃんとオーラを自分の意識で操って桃子さんのオーラを感知出来ている。ふふ、ネリーさんならいつか私を超える程のオーラの使い手になれるかもね。)
その場の3人が互いにオーラで牽制し合う殺伐とした空間が発生したが、それも少しの間だけで自分の力不足を痛感したネリーが口を開く。
「カンドラ!やっぱりネリーはまだ弱い!能力勝負には自信があるけどオーラの勝負ではまだまだヒヨッコだって痛感した!でもこのインターハイは麻雀の勝負だから!麻雀なら誰にも負けないからね!」
そう宣言するネリーを見たカンドラは・・マスクを外して今できる最高の笑顔を返した。
「はい!ネリーさんの優勝を楽しみに待ってます!」
カンドラがマスクを外して笑顔を見せた・・ネリーはそれがカンドラからの心からの信頼の証だと感じてちょっと涙ぐんだ。
「!・・うん!グスッ!絶対優勝してみせるから!」
言い終わるのと同時に勢いよく立ち上がり、靴を履いてからカッコよく扉を開けて帰って行った。
「ふふ、カッコつけちゃって。」
「高校生なんてカッコつけてナンボっすよ。」
残った2人はお互いに微笑ましいものを見た、といった感じで笑い合う。・・・がしかし
「・・ん!?あれ!?」
「ん?どうしたっすか?」
「ネリーさんって確かお姉ちゃんの一味に見張られてたんだよね!?」
「そうっすね。(一味って..自分のお姉ちゃんを輩扱いっすか)」
「ネリーさんがこのまま一般の人が通る廊下に出ちゃったらこの場所がバレちゃうじゃん!?」
「あ!?・・すぐに追いかけてくるっす!」
言うが早いか、桃子は急いで靴を履いて出ていった。
(そうだったっす。ネリーさんがあまりにも青春してたからついつい忘れてたっす..でもいいっすね。ああいうの..まるで少し前の自分と加治木先輩を見てるようっす。)
ネリーを急いで追いかける傍らで、桃子はネリーとカンドラの在り方に過去の自分と先輩を重ねるのだった。