VIPRPG×ざくざくアクターズ×ハルスベリヤ叙事詩2 もしもクロスオーバーだったら   作:泉 とも

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もしも夏休みだったら

 ※この物語はVIPRPGとハルスベリヤ叙事詩2とざくざくアクターズのクロスオーバーものとなります。

 

 とある夏のポテチ王国、ポテチ城の王様の前。いつものBGM。

 

王様「こっち向け」

 

 くるり。

 

王様「クロスオーバー」

アレックス「把握」

 

 という訳で物語は始まったのである。

 

 ポテチ王国の夏は観光シーズン真っ盛り。そこにクロス先の作品がやってくるというのが今回の設定である。

 

アレックス「いいのかこれ」

王様「VIPRPGだからね」

 

アレックス「いやでもさ、うちって結構ヨゴレじゃん? 大丈夫?」

王様「そこはほら、みんなで頑張ろうよ」

 

アレックス「お前クロス先がゴメスに掘られてみろ。一生出禁じゃすまねえぞ」

 

王様「そこはほら、みんなで頑張ろうよ」

 

アレックス「……一応全員に連絡出しとくけど、掘られた奴に慰労金出せよ」

 

王様「大丈夫大丈夫。そこは予算組んであるから」

アレックス「税金の無駄使いだな」

 

 こうして一夏の間、ポテチ王国のどこかで誰かが、ゴメスに掘られている、かもしれないことになった。

 

 観光客を守る肉の盾である。

 

アレックス「まあ、他の国の人に汚いものを見せる訳にもな」

王様「あ、魔王把握はふつうにやるよ」

アレックス「なんでよ」

王様「みんなそれを見に来るからだよ」

アレックス「ころすぞ」

 

王様「ゲイレイパーに掘られてることを国中に知られてるんだから、世界中に知られたって大した変わらんよ」

 

アレックス「そうかな、そうかも」

 

王様「むしろクロス先から『あの、ガチホモにお尻をずぼずぼされてた方ですよね』って顔を赤らめて聞かれるかもしれないよ」

 

アレックス「ころすぞ」

王様「でも相手がめっちゃかわいかったら?」

アレックス「…………」

王様「現実としてその問答を想定しておくべきだと思うよ?」

アレックス「たしかに」

 

 アレックスは妄想した。この国のそんな汚いものを好奇心から見に来た美女、美少女が、自分にそんな質問をする場面を。

 

 そんな質問をしてくる相手を。

 

王様「DLサイトのヒキニートやオタクくらいチョロい展開が待ってるかもしれないよ」

 

アレックス「やぶさかではない」

 

 仮に部屋に誘われて、相手の子が自分の襲い掛かっても、それはそれでと思うアレックスだった。

 

王様「友だちとか呼ばれちゃったりして」

アレックス「いいねー」

王様「ラストで逆にしてみて欲しいとか言われたりして」

アレックス「R―18の竿役も久しぶりだな」

 

 すっかりRTP顔になったアレックスは、完全に乗り気になっていた。

 

アレックス「しゃーねーな。ゴメスは引換券とかガチャのチケットみたいなもんか」

王様「普段はそんなことないからね、この夏だけの特別だよ」

アレックス「普段がおかしいんだよな」

 

 そんな邪な妄想に期待を膨らませながら、アレックスは観光シーズンでの魔王把握に備えるのであった。

 

 

 一方その頃。

 

 

「は~困ったじゃん。誰も相手がいないじゃん」

 

 ここはハグレ王国。人間と異世界人が共存する、異世界の小さな国、の交番。

 

 そして彼女はこたつドラゴン。こどらの愛称で親しまれる、王国民の一人であった。

 

「おお、珍しいじゃないか。こどらがここにいるなんて」

 

 彼女に声をかけたのは、全身を鎧で覆った女騎士、ジュリアだった。赤い長髪を三つ編みにして、今日も警察として王国の治安を維持している。

 

「あージュリア隊長、丁度いいところに」

「なんだなんだ。困りごとか?私でいいなら聞くけれど」

 

「実はこの前ヘルパーさんから、旅行のチケット貰っちゃって」

「おお、次元の塔のあの人か。最近会ってないなー」

 

 チケットには『ポテチ王国一週間の旅』と書かれていた。

 

「その時期は用があって行けないからって、リューコちゃんに会いにいったときにもらったんだ。でも」

 

「でも、どうかしたのか」

「これ団体チケットじゃん。最低でも三人いないと使えないんだ」

 

 そこでこどらは深々と溜息を吐き、ジュリアは小首を傾げた。

 

「うん?  なら皆を誘えばいいだろう。三人くらいなら誰かいるだろ」

 

「それが、行先が問題なんじゃん」

「なに?もしや治安が良くないのか」

 

 ジュリアはもう一度チケットを見たが、その名前に心当たりは無かった

 

「ポテチ王国は農業国で、モンスターと人間が共存する国じゃん。世界中のポテチを作ってて、どんなポテチも食べ放題じゃん」

 

「おー、なんだかうちみたいじゃないか。それのどこに問題があるんだ」

 

「笑いの方向性じゃん……」

 

 歴戦の勇士であるジュリアは、これだけで危機を感じ取った。

 

 しかし決めつけや先入観で結論を急いではいけない。彼女は続きを待った。

 

 結論から言えば、その慎重さが仇になった。

 

「ポテチ王国のお笑いは、シモネタに振り切ってるんじゃん……!」

 

「し、下ネタ。そうか、そういう国民性ってあると思うよ、うん。傭兵連中だって、結構下品だったりするし」

 

 仲間が見ていない所では、一人でおでん缶を開けながら、自分でもそういうことを言ってしまうときがあるジュリアは、強く言えなかった。

 

「だから誘うラインがかなり厳しくて。男性陣とペットと子供を除くと、もう半分は消えたでしょ」

 

「そうだなあ。それで、誰に声をかけたんだい」

 

「まずエステルちゃんでしょ。でも後輩二人に守られて、断られちゃった」

 

「他には」

 

「ヤエちゃん、でも『雪乃の教育に悪そうなことは知らないでいたい』って」

 

「分かる。他には」

 

「ルフレちゃんは『守らないといけないイメージがある』って」

 

「拾い食いして寝込んでたくせになあ」

 

「イリスちゃんはアメリカ人だから行けるよねって聞いたら『ごめん、ちょっと日頃の態度を見直すわ』ってカタコトまで止めて断られた」

 

 他の王国民にも打診したが、応じてくれたのは女侍の柚葉だけだった。

 

「あと一人なんだ~。こどらは世界中のポテチを食べながらドシモのお笑いを見るという最低の贅沢を諦めきれないよ~!」

 

 あまりにも情けない告白だったが、ジュリアは心動かされていた。

 

 せめてこれが一番最初に声をかけてくれていたら。いやしかし。

 

 一週間の海外旅行。それもタダ。

 

「ジュリア隊長~こどら一生のお願いだよ~!一緒に旅行行ってよ~」

 

「こ、こらこら、泣きつくんじゃない。全く仕方ない奴だな」

 

 振り切ったドシモ。それが何を意味するのか。気になる。

 

 ジュリアの心の中のおじさんが、叫んでやまなかった。

 

「仕方ない。騙されたと思って付き合ってやる。予定もないしな」

 

「あ、ありがとうジュリア隊長! やったー!」

 

 こうしてこどら、ジュリア、柚葉の三人の、ポテチ王国行きが決定した。

 

 

 一方その頃

 

 

 一艘の豪華客船が、洋上をゆっくりと進んでいた。船の側面には『8402プロ』と書かれている。

 

 その船には多くの観光客たちが、これからのバカンスに心を躍らせていた。

 

「コスタ公、今度行くポテチ王国ってどんな所なんですか」

 

 金髪の美少女、ミシェルが海を眺めながら言う。

 

「ミシェル、公は要らない。役はもう降ろしているのだから」

 

 それに対して答えたのは、小柄な妙齢の女性だった。名をギ―・ド・カダンと言った。

 

「ポテチ王国は我が国、ヴァーレン王国との友好国であり、農業国だ。名前の通りジャガイモが名産で、世界中のジャガイモを作っていると言われている」

 

「へー、ご飯は期待できそうにないですね」

「ふふふ、そうだな」

 

 ヴァーレン国、それは国の主な産業として、大河ドラマの映像作品を輸出する映像産業国である。そこには多くのプロダクションが存在し、中でもこの8402(八潮路)プロは『ハルスベリヤ叙事詩』という作品で高い評価を受ける、大手の一つであった。※

 

※所謂『はい設』である。

 

 彼女たちは撮影が終わったことで、打ち上げの旅行に出かけていた。

 

「しかし何かと風変りな国だ。芸の肥やしにはなるよ。真面目に芸に打ち込むだけでは、早晩行き詰まるのが役者というもの。変な話、真面目に遊び続けなくては、芸の道は開けないのだ」

 

 優しく諭すように言う彼女に、若輩のミシェルは感心したように頷く。

 

 演技力はいまいちだが、ずば抜けた美貌で役を勝ち取った彼女は、この役者畑の大物女優を自分の目標にしていた。

 

「あー、やっぱ私も本編でギーさんと絡みたかったなあ、きっとそのほうが画面映えしたよ」

 

「おいおい。それではヌイ―の立場がないよ。コスタ編の成功は、私ではなくお前と、そしてあの人なくては果たせなかったことだ。私ではお前を支えきれなかっただろう」

 

 ヌイ―というのは彼女たちの同僚であり、同じく撮影を受けた女優の一人である。味のある演技にアクションもこなせ、非常に人気がある。

 

「クラウドファンディングで戦史編の費用をあっさりと集め、期待以上のものを演りきった。立派だったよ」

 

「うー、ギーさん褒めすぎですよう。こっちが恥ずかしくなっちゃう」

 

 照れるミシェルに微笑みながら、ギーは水平線を眺めた。

 

 船を追って、数人の人魚が泳いでいるのが見える。

 

「あ、人魚の皆さんだ。船に乗らなくて平気なんですかね」

「彼女たちにはあのほうが楽なんだよ」

 

 客船に乗っていないのは、何も人魚だけではない。体が大き過ぎるもの、集団行動が取れない者などは、自前で先行していた。

 

「しかしポテチ王国か、久しぶりだよ」

「ギーさんは行ったことあるんですね」

「ああ、子役の頃から、何回か」

 

 潮騒の風に吹かれて、ギーは目を細めた。まだそこに、皆はいるだろうか。

 

 内心に在りし日が蘇る。

 

「うちにも亜人はいるけど、向こうにもいるんですよね」

 

「ああ、精霊や神様もいるらしい。あとは、魔法も」

 

 ――あの子は今も、あの場所にいるかな。

 

「へー、親近感湧きますね。ん、魔法?」

「見えて来た、あれだ」

「わっ本当だ。おー、あれがポテチ王国!」

 

 船の前方に、島と港が見えてくる。

 

 かくして8402プロの面々は、ポテチ王国に上陸したのだった。

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