VIPRPG×ざくざくアクターズ×ハルスベリヤ叙事詩2 もしもクロスオーバーだったら 作:泉 とも
ポテチ王国ちゃんとしてるホテル。
ジュリアは悩んでいた。あっという間に三日目を迎えたこの旅だが、流されるばかりで置いてきぼりを食らっている感は否めなかった。
気付けばこドラは幸せそうな顔で朝帰りをし、柚葉は起きたらいなかった。
前者はもうぐっすり寝てるから、明日まで起きて来ないだろう。後者は見失ったらもう消息をつかめない。
「折角だから、私も自分なりに動くか」
などと呟いて、装備を持って街へと繰り出した。
のだが。
ポテチ王国冒険者ギルド。
正業に就いていようが冒険者として登録さえしておけば、誰でも名乗れて依頼を受けられる。安全は何一つ担保されない。
そんな仕事場がこの国の冒険者ギルドである。
「はー、すっかり休みに慣れない体になってしまった」
そしてポテチ王国では行きずりの観光客でさえ、冒険者になれる。そして報酬は非課税の現ナマである。
このためパソコンが普及してるくせに、未だに前時代的な暴力と、政府や行政に依らない自助努力が、国民に横行している有様だった。
「やっぱりどこでもこういう所があるんだなあ」
ジュリアは掲示板に貼られた依頼を見た。どれも飲食店の手伝いばかりだ。
バイトと言っても冒険者ならどれだけ稼いでも非課税なので、大人気の副業なので、不満は出ない。
貼られた先から津波のように有象無象が群がり、該当する店舗へと駆けて行く。
「こりゃこの分じゃ、荒事は無さそうかな……ん?」
そう言いながら残った不人気な依頼を見る。だいたいが割りに合わないものだろう。
彼女はそう判断しながら見ていると、真新しい一枚に目が止まった。
『山の上の温泉旅館まで、荷物持ち兼護衛の依頼』
「おお、あるじゃないか。それっぽいのが」
ジュリアは足取りも軽く、バーのマスターみたいな受付の人に話しかける。
「すいません、この依頼なんですが」
「ああそれ、ついさっき貼ったばかりなんだけど、丁度いいや。まだ依頼主はいたはず。いた。あの席の女性がそうだから、話聞いてみてくれ。受理はこっちでしとくから。相手が断ったら消すけど」
「助かります」
受付のマスターが差し示したのは、カウンター席でコーヒーを飲む女性だった。
「あの、あなたがこの依頼書の、依頼人の方ですか?」
「む、早いな。まだ三十分も経っていないが、まあいい。運が良かった」
小柄な女性は黒い髪に赤いルビーのような瞳の持ち主で、貴族もかくやという風格を醸し出していた。
「荷物持ち兼護衛とのことですが、何名をご希望で」
「何名?そうか、しまったな。人数を書き忘れていた。いやお恥ずかしい」
そう言いつつ、女性はジュリアために飲み物を一つ注文した。
(物腰が丁寧でこの落ち着きよう。羽振りがよくて慣れがある。地元民というより、常連客かな)
などと当たりをつえながら、ジュリアは礼を言ってジュースの炭酸割りを頼む。
「場所は近場でね、荷物も少ないんだ。安全なはずだと思って、一人のつもりでいた」
「護衛が一人は随分と、心許ないと思うのですが」
「いや、邪魔さえなければ、私の身は私で守れる」
「……魔法使いか」
「護衛を増やせば巻き添えにする危険も増える。だから一人でいい」
ジュリアは目の前の女性から強い魔力を感じた。ハグレ王国でも通用するほどの力。
しかし使い手の差が激しいため、内心では別の意味で焦ったりもした。
(ほう、ある程度こちらの力量を察して、動揺も最小限に抑えた。もしかするとこ奴)
女性も女性でジュリアを目ざとく観察していた。
夏のバカンスに不似合いな強者の邂逅。しかしそれが安心にも繋がっていた。
「つまらない依頼だが、君さえ良ければ引き受けてやって欲しい」
「こちらこそ、休みを持て余していたんです。是非ご用命ください」
そう言ってジュリアは手を差し出した。愛嬌で精悍さを隠した顔に、使い倒した完全に硬化した手。
女性はその手を見て、思わず感嘆の溜息を吐くと。
「頼りにさせてもらおう」
小さく美しい両手で、それを包み込んだ。
「名前は」
「ジュリアです」
「そうか。私はギー」
女性はその赤い瞳を、青い瞳の女騎士へと向けた。
「ギー・ド・カダンという」
そして昼。フトンガフットバナイ山にて。
「結構近いですね」
「昔はもう少し遠く離れていたが、それだけ街が大きくなったのだろう」
近くまで馬車に揺られ、最寄り駅からハイキングと洒落込んだ二人は、雑談に花を咲かせていた。
「この分だと野生の猛獣なども出ないだろう」
「そうですね。ゴリラとかコアラは出そうも無いかな」
「それが出るならキリンも出そうだな」
ジュリアは終始にこやかで、ギーはずっと無表情だったが、互いにそれなりに楽しそうだった。
「正直私いらなかったんじゃないですか。なんなら今からでも、依頼をキャンセルしても」
「おいおい。私の見込みが甘かったからとは言え、力不足だったと君を追い返すような客ではないよ」
「うーん、でも何か、気が済まないというか、気が進まないというか」
ギーの私物も大した量も重さも無かった。
護衛というよりも、ほとんど付き添いと言ったほうが良かった。
「ならもう少し付き合ってくれ。話し相手もいないし、それに」
「それに」
「私は君が気に入り始めている」
先を行く足を止めて、ジュリアはギーへと振り返る。小高い山から吹く風は、青く澄んだ空気を運んで来る。
「えっそうですか。どんな所が?」
「君からはだいぶ血の臭いがしている」
その言葉に女騎士は一瞬ぎょっとして、自分の体臭を嗅いだ。
上等なシャワーと石鹸でよく洗ったはずなのに。
「それなのに君からは狂気や悪意は感じられない。相当な場数を踏んでなお正気でいる。あの冒険者ギルドの者ではないだろう」
格が違い過ぎる、とギーは語った。
「参りましたね、そんなに観察されていたとは。如何にも、私の本業は傭兵です。冒険者より、ずっと人間を相手にして来た。最近腰を落ち着けた先も、厳しい戦いに臨むことが多くて、戦いが染み付いて難儀してるんです。本当は旅行で来たんですが」
「なるほど。だからあそこにいたのか。わざわざ仕事を求めて」
ジュリアは恥ずかしながら、と言って笑った。
「私も似たようなものだ」
「ギー殿もですか」
「私もこの地に、昔の私を求めてやって来た。そこに自分があるような気がして」
坂の上の雲を見上げながら、二人は歩く。ほどなくして、遠くに趣のある旅館が見えて来た。
――温泉旅館ダークネス。
「また風情のない名前だなあ」
「うむ。こればかりはしょうがないが、回避のしようもあったろうに」
二人は旅館の名前を見ながら、何とも言えない表情をした。
「まあいい。取り敢えず部屋を取ろう」
「しかしまさか旅行先のホテルから別の旅館に来るとは」
彼女たちは旅館に入り、受付を見た。
やみっち「本日は旅館ダークネスにようこそ。ご予約のギー・ド・カダン様ですね。早速お部屋に案内します」
受付にいたのは、先日闇市にいた魔法具現化のダークネスⅠだった。
「わざわざ仕事の邪魔をして済まないな」
やみっち「いいええ、いいんですよそんな。そちらの方は」
「ギルドで雇った護衛だ。必要は無かったようだが」
「どうも。荷物持ちのジュリアでーす」
やみっち「どうもご丁寧に。お部屋は同室でよろしいですか」
「どうする?君が望むなら部屋を取るが」
「いえ、そこまでして頂くのは流石に」
やみっち「……でしたらキャンセルの入ったお部屋に、お泊り頂くのはどうでしょう。急なことでしたから、料金の方はお安くさせて頂きます」
「ありがたいですが、泊っている宿に連絡も入れないと」
やみっち「それならこちらでしておきますよ」
「おかみもこう言ってるんだ。頼まれたと思ってくれないだろうか」
ジュリアはこっそり自分の懐を検めた。今の所は別に使った覚えもな無く、手付かずのままの財布。
有事に備え多めに持って来た。ここが使い時だろうと、決心を付ける。
「うーん、そういうことなら。ああそれと、宿のほうにはまた別に伝言を頼みたい。仲間がいるもので」
やみっち「畏まりました。ではお先にお部屋へご案内します」
やみっちはギーとジュリアを連れて部屋へと移動した。
「驚かないのか?」
「何がですか、ギー殿」
「こんな年端も行かなそうな娘が、旅館をやっていることに」
「そういえばそうですね。いえ、前に妖精の少女がやってる温泉宿を見たことがあって、感覚が麻痺してたのかも」
「ほう、是非ともその話を、後で聞きたいものだな」
「ええ、喜んで」
やみっち「こちらです。ジュリア様はお向かいのお部屋で、夕食は〇時からとなります」
「うむ。ありがとう」
「それじゃあギー殿、お荷物をどうぞ。それではまた後で」
そうしてジュリアとギーの三日目は、ここで折り返しを迎えた。
時を同じくしてアレックスは自宅で美少女たちにケツ穴鑑賞会を開かれ、写真を撮られ恥辱に興奮して身悶えしている頃のことである。