VIPRPG×ざくざくアクターズ×ハルスベリヤ叙事詩2 もしもクロスオーバーだったら   作:泉 とも

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レイドバトル級の相手

「大変なことになったじゃん」

 

 こドラたちは冒険者ギルドに張り出された、ぽてと君に関するおふれを見てしみじみと頷いた。

 

「これ、私たちが原因だよな」

「幸いその点は伏せられているが」

 

 おふれには主に次のようなことが書かれていた。

 

 一つ、ぽてと君出現の経緯。

 二つ、使って来る攻撃と弱点。

 三つ、種芋ぽてと君への推測。

 

「昼に起きたら二人共いないし、すぐにこの騒ぎになったから焦ったよ」

 

 先日こドラが起床したのは昼の終わり頃である。

 

「柚葉も戦ったそうだが、よく生きててくれたよ」

 

「うむ、出先で組んだ冒険者や旅人が、思いの外強くて命拾いした」

 

 柚葉はブライアンパンマンたちと、8402プロのことを話した。

 

「なるほど。何も素人の民間人ばかりじゃなかった訳だ」

 

「あれ、柚葉ちゃん『も』ってことは、隊長もぽてと君と遭遇したの?」

 

「ああ、私は旅の魔法使いの護衛を受けたんだが、そこでな」

 

 ジュリアはフトンガフットバナイ山の温泉旅館での一件を話した。

 

「少し散歩がしたいからと、その依頼人と旅館の女将とで近くの沢まで行ったんだ。そこでマナーの悪い観光客がバーベキューをしていたんだが」

 

「あー、何と無く展開が分かっちゃった」

「サメ映画のやんちゃな外国人枠だな」

 

「ああ、注意するべきか迷っていると、ふっとぽてと君が現れて、あっという間に彼らをかぼちゃにして食い殺してしまった」

 

 ※実際にそういう攻撃がある。

 

「一般人なら蘇生は不可能だろうな……」

「下手なホラーより怖いじゃん……」

 

「そしてその目がこちらを向いた。正直私は死を覚悟したが、その魔法使いが恐ろしく強かったんだ、一人でぽてと君を倒してしまった」

 

『一人で!?』

 

 思わずリアクションを揃えるカウンターコンビ。全く関係ないがこドラの炬燵に足を入れるとき、柚葉はこドラのお腹の下に足を入れて、その柔らかい脂肪分の感触を楽しんでいる。

 

「ああ、突然カードを翳したと思ったら、大勢の味方が現れて、その味方が更に味方を呼ぶという戦術を取ってな、私と女将も加わって戦線を維持していたら、彼女が後ろから魔法を連射して、ぽてと君を倒したんだ」

 

 具体的にはマルムゼ魔術兵を呼び出し召喚を出しながらメッサリナの無慈悲を連射するだけの簡単なお仕事である。

 

「まるで軍隊のようだった。うちのヘルやミア並の魔法使いだと思うが、あの風と水で出来たような銛は、美しく、そして恐ろしかったよ」

 

 死ぬまで攻撃するという表現が相応しい猛攻は、しかし静かで洗練されていた。

 

「その人は今どうしているのだ?」

 

「旅館に泊まっているはずだ。今は避難民も押しかけているから、静養という風情ではなくなってしまったが、む?」

 

 三人が話していると、ギルドの壁に大きな依頼書が張り出され、俄かに周囲がざわつき始めた。

 

モブ「依頼だ!それも国からの!」

 

モブ「モンスター討伐の大型依頼!集団参加型!前金有り成功報酬有り!」

 

モブ「こんな依頼は滅多にねえ……美味しい話に見えるが、それだけにヤべエってこった!」

 

モブ「まるで世界樹3のアルルーナ戦みたいに罠の臭いがプンプンするぜ」

 

 などと言いながら、冒険者たちは受けるか受けないかを話し始め、店の中は慌ただしく動き出した。

 

「どうするのだ、隊長」

「うむ。元はと言えば私たちのせいだが」

「受けないの?」

 

「ハグレ王国の皆やサポーターたちがいないのではな。相手は恐らく十中八九ぽてと君の強化個体と見るべきだ。三人でやれる相手ではない」

 

 実際問題数の差は深刻であった。

 

 五大組織は人数で何とかなるが、ぽてと君は都市伝説であり、ポテチ王国という場においては不滅に等しい存在である。

 

 そのために不毛かつ劣悪なキルレシオを相手に強いるのだ。

 

 だが、そんな不安を放置するほど、各組織も手をこまねいてはいなかった。

 

ニンニン「たのもうでゴザル!」

 

 ギルド内に魔王軍の有名人の一人、黒装束のニンジャ、ニンニンがやって来た。

 

「あっニンジャだ! ニンジャだよ二人共!」

「ほっ本当だ! あ、あのニンジャの方ですよね」

ニンニン「如何にも拙者はニンジャでござるよ」

「さっサインください!お願いします!」

 

 柚葉は普段の人を食った態度を金繰り捨て、飛ぶような勢いでニンニンにサイン色紙を差し出した。

 

ニンニン「フヒヒwww構わんでゴザル。お名前は、お嬢さん」

「柚葉です。柚葉ちゃんへでお願いします」

ニンニン「把握。さらさらーっと」

 

 柚葉はニンジャのサイン色紙※を手に入れた。

 

 ニンジャのサイン色紙

 装飾:素早さ+2000 スタン睡眠無効

 

幕田「何をやってるんですか師匠……」

「あっ今度はクノイチじゃん!」

「すいません、サインください!」

 

幕田「ええ、私もですか。じゃあ、はい」

 

 柚葉はクノイチのサイン色紙※を手に入れた。

 

 クノイチのサイン色紙

 装飾:素早さ+1500 混乱即死無効 影走り習得※

 ※影走り 味方の攻撃毎に追撃。多段攻撃のおともに。

 

「感動だ。まさか本物のニンジャに会えるなんて」

「でも名前が『幕田賢治』ってこれ男の名前じゃない?」

 

「偽名じゃないのか、そこは流石に」

 

「いや、歌舞伎では男性が女性役を務めることがある。そして歌舞伎はニンジャの選択履修科目」

 

「えっじゃあ男の人なの!?こんなキレイなのに!」

 

幕田「いやあの、そこは、まあ、ごほんっ!話を進めましょう、師匠お願いします」

 

 幕田は少し顔を赤らめて、ニンニンに先を促した。

 

ニンニン「うむ。拙者たちは人数不足と彼我の戦力差を埋めるべく、分身の貸出をしに来たのでござる」

 

「分身の貸出?」

 

ニンニン「見たほうが早いでござろう。やるでござるよ幕田」

幕田「はい、師匠!」

『分身の術!』

 

 いつもの。

 

「すっごい!とんでもない数の分身だ!しかも触れる!」

 

ニンニン「普段パーティは四人で組むものでござるが、今回の相手は容易にそれを全滅させられる怪異。しかしこちらの人数にも限りがある」

 

幕田「そこで国中のニンジャや、分身のできるモンスターたちを頼り、各パーティの補充をしようということになったのです」

 

「えっじゃあ他にもニンジャが」

 

ニンニン「探せば各地におるでござろう。全員得意分野が異なる故、ニンジャが四人でもキャラ被りはしないはずでござる」

 

幕田「先ずはパーティを組んで、足りない分を分身で補うと良いでしょう」

 

「すっげー手厚い。こんなことってあるんだ」

「それだけ問題が深刻なんだろう。安心はできない」

「隊長。取り敢えず人数の目途は立った訳だが、どうする」

 

「迂闊に手を出しても危険だから、情報が出るまで待とう。と言いたい所だが、それは皆同じだろう。誰かが先鞭を付けねばならない。であるならば、我々が行くべきだろう」

 

「それはニンジャの方たちがもうしているのでは?」

 

ニンニン「それが分身を突っ込ませて様子を探ろうとしたのでゴザルが」

 

幕田「ゴミ処理場の奥にいることまでは分かりましたが、それだけです。生半可な攻撃は通用しませんでした。道中にもぽてと君たちが大勢いて、手の内を見ることは」

 

「分身をもっと送り込めないのですか」

 

ニンニン「拙者たちも無限に分身出来る訳ではないのでゴザル」

「そりゃそうだよね」

 

幕田「ニンジャたちの総力を結集して分身を全て使えば、或いは。しかしその場合、街に回せる分がいなくなるので、結果として被害は拡大します」

 

「なるほど。全体で見ると今は種芋を相手にするより、街のぽてと君を討伐しているほうがマシであると」

 

 ジュリアの言葉に幕田が頷く。ボス戦に直行するRTAめいたことをすると、先に死ぬのは自分のほうである。

 

 タワーディフェンスは横着してはいけないのだ。

 

ニンニン「そういうことでござる。幸いこの大陸は面倒事に事欠かないので、勇者たちや冒険者が強く、装備の類は充実しているでござる」

 

幕田「本当は廃棄されるぽてちを食べきれれば一番良いのですが」

 

「フードロスは考え物だよね。こドラもお店で出す食べ物の量はいつも考えてるよ。お年寄りはすぐお腹いっぱいになるし、若い人は沢山食べたいし」

 

ニンニン「ほう、お主飲食店をやっておるのでゴザルか?」

 

「小さな喫茶店ですけどね」

「それよりも隊長、話を戻すが」

 

「ああ、様子を見に行きたいが、中にもぽてと君が大勢いるとなると、厳しい」

 

 ジュリアは少しの間、沈思黙考した。いつもは悪ふざけをしたり便乗したりだが、考えればちゃんと考えられる人なのだ。

 

「まずは仲間を集めて、それと手伝ってくれるグループを一つ募集しよう。お互いが囮であり、本命であれるように」

 

「承知した。ならば私が依頼を出して来よう」

 

 そう言って柚葉は店のマスターの元へと向かった。

 

「でも隊長、一緒に来てくれる人なんて見つかるかなあ」

 

「なければ我々だけで行くしかないが、正直厳しいだろうな」

 

 ジュリアは溜息を一つ吐くと、壁に貼られた依頼書を見た。

 

 いつの間にかこの依頼の話をする者は、周囲には誰もいなくなっていた。

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