VIPRPG×ざくざくアクターズ×ハルスベリヤ叙事詩2 もしもクロスオーバーだったら   作:泉 とも

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カメラ『は』止めるな

 一方その頃ポテチ王国ちゃんとしてるホテル。

 

「……その巨大な存在は、煙管を吹かしながら、街の混沌を眺めていた」

 

「えっ、自分で言うんですか」

 

 ホテル最上階のベリーインポータントパーソンルームに坐します、その一柱の名は八潮路至深。

 

 ハルスベリヤ叙事詩2のラスボスにして8402プロの社長を務める邪神である。

 

 そしてその隣にいるのは娘のアルシア・アルシカ。社長秘書兼女優として、会社の仕事をこなす才媛と言えば聞こえは良いが、実際は親のことで方々に謝り倒す苦労人である。

 

「やはりこの国は良い。全社員に通達。この国の現在起きている問題に参加し、可能な限り撮影しろ。カメラは止めるな」

 

 唐突な決定に、アルシアは無言で煙管を吹かした。親の真似で始めたこれだが、今では精神安定剤入りのこれを手放せなくなっていた。

 

「……分かりました。すぐ連絡します」

 

 本編中では言葉を覚えろなどと言われるが、親のほうがよっぽど言葉が通じないのは、彼女は自分の人生で痛感していた。

 

「こういったトラブル、ハプニング、アクシデントに揉まれることで、人間に味が出てくるのだ。バカンスは終わりだ!」

 

「社長自らが戦えば話は早いのでは」

 

「おいおい如何に私が超火力で近付かれる前に敵を薙ぎ払えるとはいえ、攻撃の合間に騎兵で接近されて、殴り殺してる間に召喚や岩に埋め尽くされたら負けることくらい、お前なら知ってるだろう」

 

 何気に行動パターンと倒し方がデフォシナのリッチームクガイヤそっくり。

 

 言い換えれば高速高耐久で数の多いぽてと君は、この邪神の天敵とも言えた。

 

「ああそうだ。仲良しグループで固まるのもいいが、折角だから現地の冒険者たちとも組むようにな」

 

 そうしてこのぽてと君討伐に、8402プロも参戦することになったのである。

 

「大変なことになってしまった」

 

 笑いのセンスがイタリア系のナポレオンこと、ミシェル・ブーランジェは途方に暮れていた。

 

 アレックスのズタズタになったケツ穴の鑑賞会に、こういうのが好きな女友だちを呼んで興じていた最中、事件は起こった。

 

 そのアレックスは勇者に戻り、ぽてと君を吹っ飛ばしまくり、街の守りに出て行った。

 

 幸いにして彼女たちのそんな奇行に気付き、咎める者もいなかったが、職場から言い渡された内容は、危険の伴う無茶振りだった。

 

「とりあえず現地の人と組めって言われても」

 

 ミシェルは各地にある冒険者ギルドへと向かった。一般的には冒険者の酒場と認識される場所であり、一般客もそこそこいる。

 

 むしろ他の飲食店が襲撃された結果、戦力がまとまっている場所に集まるようになっていた。

 

「ヌイ―さんは太ったシュフランの看病してるし」

 

 食べ過ぎてもどき化したシュフランは、ぽてと君に蹴散らされて現在入院中である。

 

「うちの事務所の人間もちらほらいるけど」

 

 既に大半がパーティを組んでいる。

 

 ジャッキたちなどは片っ端から好みの異性や同性に色目を使っている。

 

「あ、ミシェルちゃん。丁度良い所に!」

「あ、アンカレットさん、こんにちは」

 

 ミシェルは事務所最古参の一人である女優、アンカレットに声を掛けられ慌てて頭を下げた。

 

「あなたまだ誰とも組んでないしょ。私と組んでくださらない?」

 

「ええっ!?私なんかでいいんですか!」

 

 長い黒髪に妙齢の艶めかしい目上の女性にすり寄られ、彼女の内心で喜びと恐怖がせめぎ合う。

 

「早くしないと他の魔女たちに捕まってしまうわ。あの人たち私に前衛をやらせるつもりなのよ!」

 

 顔色を悪くしているが、当然と言えば当然の頼られ方である。アンカレットは後衛ではない。

 

 広域攻撃もできるバリバリの前衛キャラである。

 

「うちの魔女が集まってるなら、大概の相手は初っ端で沈むのでは」

 

「でも攻撃を引き受けるのは私ですよ。本音を言えば痛いのは嫌ですね」

 

「バクスロベスさんは」

 

「もうとっくに取られちゃいました。騎士役を演じた人たちはもうすごいモテ具合でしたよ」

 

 ハルスベリヤ叙事詩2には味わい深い男性キャラも多いが、高齢で風格のある男性と言えば間違いなく彼だろう。

 

「ここ陸だし、イルカがいないし、私役に立たないのでは」

 

「大丈夫!ツクール2000グリフォンがいるから、レンタルできるから!料金私が持つから!」

 

 大女優アンカレットにとって魔女たちは、かつて自分が受け持った後輩たちである。皆外見は良い物の性格が悪く、ここまで避けられるくらいには、うんざりされていた。

 

「じゃあ、まあ、それで良ければ」

「ありがとう。恩に着るわね!」

 

「とは言っても、今回推奨は8人だから、後6人は要りますよ」

 

 ミシェルは寄せ集めでも良いから、取り敢えず六人集めようと思い、周囲を観察した。

 

 せめて自分以外の肉壁が欲しい。そう思っていると。

 

「あ、お父さん!」

「おやミシェルさん。私はお父さんじゃないぞ」

 

 いたのはジャープール・ラジャ・チャンデラ。ハルベリでは非常に弱い人材で、殴り合いだとイェールーンにも負ける悲しき存在である。

 

 彼は元々売れない大部屋俳優だったが、コメディホームドラマの父親役で一世を風靡、以降は事務所での愛称がお父さんとなっている。

 

 顔グラもマジでお父さんって顔してる。

 

「あ、ごめんなさい。その、今私たち、社長の例の奴で、その」

 

「ああ、実は私もなんだ。君たちと違って私はそんなに強くないから、相手がいなくてね」

 

 プロレスラーのようなガタイをしているが、単純な殴り合いで他の前衛には勝てず、擲弾を投げてもかすり傷しかつかなかったときの絶望感を、皆様にも是非一度経験して頂きたい。

 

「私たちと組んで貰えませんか。失礼ですけど、壁役がいなくて。SP召喚のカード貰ってますよね」

 

「ああ、私でいいなら喜んで。社長もね、私とか一部の脇役の人たちに『流石にちょっと悪かった』って能力を調整してくれたから、少しは役立つと思うよ」

 

「ありがとうございます。これで前衛にもう一人、残りは後衛に回復と火力が欲しい所ですが」

 

「四人は魔女の人たちにお願いしたらどうです?」

「あの人たちは回復ができないから駄目です」

 

 ミシェルの打診をアンカレットはきっぱりと断った。

 

「ヨハイーナさんはどうですか。彼女なら騎兵で回復もこなせますから、攻撃に守りに壁役に厚みがぐっと出ますよ」

 

 ヨハイーナは薄幸のヒロインという表現が良く似合う女優であり、結構な人気がある。

 

「あとはニンジャの貸出をしているそうですから、そちらを頼るのもいいでしょう」

 

「私ニンジャって初めて見るなあ」

 

「彼らは頼もしいですが、今回の仕事を考えると撮影班として雇うのもアリですね」

 

 などと話していると、酒場が急にざわつき始めた。

 

 ――キャロルだ……!

 ――デイジーもいる……!

 ――この二人が揃って来るなんて。

 ――やっぱこの案件ってヤバいんだ。

 

「なんですか?」

「さあ、有名な人が来たみたいですけど」

 

 モーセでも現れたのか、人波が一斉に左右に別れて行く。その奥から進み出るのは、二人の女性。一人の魔法使いと、一人の尼僧だった。

 

キャロル「誰もいないわね」

 

デイジー「勇者や各勢力の主だった層は、既に行動に移しているようですから」

 

キャロル「ちっ出遅れたわね。幾らかでも使えそうなのが残ってれば……」

 

 如何にも魔女っ子という格好をした魔法使い、キャロルは周囲を見回して、アンカレットに目を留めた。

 

キャロル「いたわね。いいのが」

 

「私でよろしいのですか?」

 

 数秒の間、二人は視線を交わして、無言で同じテーブルに着く。

 

「こちらは前衛三人。私が魔法戦士、騎兵、そして歩兵。依頼の推奨人数が8人ですので、先ずは後衛を探していました。足りない分はニンジャでと考えております」

 

キャロル「私が魔法使いで、あっちの眼鏡が僧侶。見ての通り回復役よ。出来ればあと一人か二人は魔法使いが欲しい」

 

 双方のリーダー格は即座に話を決めにかかった。それを見ていた残りの三人も、近くのテーブルで自己紹介を済ませる。

 

「私たちこういう者です」

「名刺どぞー」

「まあ、俳優さんたちなんですか」

「えへへ、まあ副業といいますか、本業といいますか」

 

 一転して穏やかな雰囲気で、そのまま料理の注文までし始める。

 

「こちらの奥の手に大量召喚があります。爆発力はありますが一度限りなので、ちゃんとしたパーティを組む必要があります」

 

キャロル「当然ね。見た所あのおじさんを外しても良さそうだけど」

 

「チャンデラ―さんは人当たりが良いので、団体行動には欠かせません。前衛にはもう一人心当たりがありますので、後二人ですが、おや」

 

キャロル「ちょっと、注文なんかしてないわよ。ああ、もしかしてデイジーかしら」

 

 二人が話していると、その途中で飲み物がテーブルに置かれた。そして『彼女』はそのまま席にどっかと座った。

 

「no no これはワタシからのご挨拶デース」

 

 インチキ臭い言葉遣いの女が、無遠慮に同席すると、アンカレットとキャロルは一瞬で殺気を纏う。

 

「悪魔が私たちに何用ですか」

 

キャロル「人の皮を被るのは上手いようだけど、隠す気が無いわね」

 

「オーウ、ドントウォーリー、心配しないで。ワタシたち、あの怪物倒すため、遠い国から来ました」

 

 そう言って悪魔が指を鳴らすと、もう二人の女性らしきものが、店の中へと入って来た。

 

「レッツジョイナス。オーケー?」

 

 悪魔の姫、イリスはそう言って二人に微笑んだ。

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