VIPRPG×ざくざくアクターズ×ハルスベリヤ叙事詩2 もしもクロスオーバーだったら 作:泉 とも
四日目の夜。
冒険者ギルドこと冒険者の酒場にて。
「どうやら他の酒場で我々の依頼が受理されたらしい」
「ええ!やったじゃん隊長!これでうちらの後に突入してくれるチームが出来たってことだよね?」
「ああ、我々が有事の際には、速やかに回収して引き上げてくれる」
「さながら風来の救助隊だな」
ジュリアたちは自分たちが突入する際に、支援してくれるパーティを募り、それは無事受理された。
「これで残す問題は」
「うちらのパーティが組めてないことじゃん」
世の中は冷たくまた現金なもので、ジュリアたちが先行すると言った途端、俄かに他の冒険者たちは徒党を組み始めた。ニンジャの分身も売り切れた。
そのため彼女たちは未だにパーティメンバー募集中である。
「困ったな。これでも近くの酒場は巡ってみたのだが」
柚葉は周囲を見回した。時間帯と共に客層も変わったはずだが、それでもいの一番に名を連ねてくれる者はいなかった。
「どうするの?三人でぽてと君に挑むのは」
「ううむ、弱ったなあ」
エロリア「あら、誰かと思ったらこドラちゃんじゃない!」
「えっあ!」
こドラが名前を呼ばれて振り返る。するとそこには、先日知り合った純粋なスケベ女ことエロリアがいた。
「え、エロリアちゃん……」
「あの人は確か」
「言うなよ柚葉。思い出すなよ」
「あっああ。そうだった」
ジュリアと柚葉は先日の光景を思い出して口を噤んだ。友人のケツ毛を剃毛していた人物だが、それをこドラの前で言う訳にはいかない。
エロリア「あなたも例の依頼を受けようってのね。それでこれがこドラちゃんのパーティって、前衛三人しかいないじゃないの!」
「それで困ってるんだ」
エロリア「頭数も揃ってないのね。いいわ。私も丁度今来たとこだし、良ければ参加するけど」
「え、本当に?」
エロリア「つっても私も前衛だけどね。一応魔法での攻撃と、単体なら回復ができるわ。まあ器用貧乏って奴よね」
「それでもありがたいよ。あとは後衛を募集するだけだし」
「酒場にいないなら、魔術師協会に行くのも手よ。あそこも業務として魔術師の斡旋やってるから」
「へー、そんなのもあるんだ」
などと話していると、また入り口が騒がしくなる。
一同が見れば、そこには大きなリュックと背負い、手には大きなケースを持ち、また大きな大八車を引いた少女が、店内に入って来る所だった。
やみっち「やーやー冒険者諸君!儲かってるかな!それともこれから儲けるのかな!」
汗一つかかずどやどやしい足取りで現れた、ゴスロリ服の少女は、両手を叩きながら突然商売を始めた。
「な、なんだなんだ、アレは」
店のマスター「ああ、ありゃやみっちだよ」
「やみっち?マスターの知り合いなの?」
エロリア「この辺じゃ名の知れた商人で詐欺師よ。普段はお遊び程度の騙しをやるけど、商売はまだ真っ当なことしてるわ。儲け時と踏んで稼ぎに来たのね」
「なんだか聞いてて腑に落ちない説明だが、商い自体は信用できるんだな?」
エロリア「ええ、信用できない相手に限り、信用ならない物を売りつけるけどね」
それを聞いて柚葉は一瞬だけ苛立たし気な顔をするが、すぐに自分のことではないと気持ちを切り替える。
やみっち「さーさー寄ってらっしゃい見てらっしゃい!死地に赴く勇者たち!今回のやみっち商店は、ヴァーレン大陸産の場所を取らない装飾品をご紹介!」
声を張り上げながら、周りのことなどお構いなしに、店の床に商品を並べ始める。
やみっち「さーいらはいいらはい!今回の目玉はこの耐性ブローチ! 属性耐性と状態異常耐性の二セット!属性ダメージは割合でカットする。これはもう常識!状態異常もこれ一個じゃ頼りないけど無いよりマシ!それぞれ一人、一つずつ!」
「耐性か。風か氷は持っておきたいが」
やみっち「そしてもう一つがこちら!今回の目玉こと腐脚ブーツ!なんと全状態異常に弱耐性が付いてしかも移動タイプが変更!もう普通や鈍足とはおさらば!さっきのブローチと合わせれば二段階!ここまで来ると心許ない半減装備しかなくても、随分と話が違ってくるよ!」
「だいたい一つに絞れば七割から八割は状態異常が防げる訳か」
ジュリアと柚葉は早くも商品に見入っている。
普段は装飾品の装備は一人一つだが、今回は装備欄を取り合わない。
ヴァーレントゥーガ系とざくざくアクターズのアイテム事情は異なるのだ。
やみっち「更に更にぃ!今なら商品三つをお買い上げ頂くと、この無難なマントが付いて来る!こいつは薬草の汁を染み込ませたもので、身に着けるだけで体力が徐々に回復する優れもの!あって困るもんじゃなし!さあさあ早い物勝ちだよ!」
「なるほど、では三人分貰おうか」
「え、いいの隊長?」
「今回はヘルもスライミーズもいないからな。少しでも耐性を積み増して行かないと」
やみっち「即決即断は良い買い物の必須スキルだよ、毎度ありー!」
そうしてジュリアたちは普段の装備に加えて、やみっち商店のアイテム類を購入した。
「一応デスタイツは三人分あるが、能力低下や混乱などを考えると」
「うちら魔法キャラじゃないから導師のローブ着られないしね……」
エロリア「デバフと状態異常をばら撒いてしかも強いってのが嫌よね。まあ最近じゃ珍しくもないけど」
やみっち「さーここからが掘り出し物の時間だよ。はい先ずはこれ!『英雄の盾』!なんとびっくり能力ダウンと混乱防止!お値段なんと時価!」
『時価!?』
やみっち「そしてそして!お次はこれ!『銀糸葉文黒紗衣』水風スタンに耐性有り!そしてこれが最後!『真銀翼状飾冠』!これも混乱と能力ダウン無効!さー今買えば生存率が跳ね上がるぞー!」
※この物語はRuina 廃都の物語を応援しています。リメイク版がsteamで出るらしいから皆も買おうね。ダイレクトマーケティング。
「どうしよう隊長。今うちにめっちゃ欲しい奴だよアレ」
「しかし時価だからなあ、買えなかったらそれまでだぞ」
エロリア「素直に諦めるのが一番ね」
やみっち「無いかー。無いかなー。そりゃないか。とても一般冒険者の手が出るようなもんじゃないしねm9(^Д^)プギャー」
何故わざわざ煽るのか分からないが、酒場の空気が少し悪くなる。だがその時だった。
「その装備。頂こうか」
小柄な魔法使いが、二人の女性を連れて、酒場のドアを潜る。
やみっち「……へえ、強気じゃないの。幾ら出す?」
「これから好きなだけ持って行くといい」
その魔法使い、ギー・ド・カダンは漆黒のカードをやみっちへと投げた。
やみっち「さっきも言ったけど遠慮しないよ。毎度あり!」
「うむ」
漆黒の外套に身を包んだ、ルビーのように赤い目をした、妙齢の女性。彼女はジュリアたちの元へ向かうと、静かにほほ笑んだ。
「ギーさん。どうしたんですか、こんな所に」
「故有って私も、あの魔人退治に付き合わねばならなくてな。またパーティを組んでもらいたい。私もメンバーを連れて来た」
「うっす」
「どうも」
彼女背後にはチェッチカとメディオラがいた。
「それは、あなたほどの人が加わってくれるなら心強いですが」
「誰?この人」
「隊長が言っていたぽてと君を倒した人だろう」
「ああっ、例のスゴイ人!」
ギーが二人に恭しく一礼するのを見て、こドラたちは息を飲んだ。こんなちゃんとした人がこの世界にいてもいいのか?
そんな危機感さえ覚える。
「よろしく頼むよ隊長。これで何人かな?」
「七人です。あと一人空きがありますが」
「ならそこのニンジャの女性にしよう。如何かな?」
そこには全ての分身を貸し出して、へとへとになったニンジャ師弟がいた。
幕田「わ、私ですか?それなら師匠のほうが」
ニンニン「幕田よ、こういうとき同性のほうが、気兼ねし難いというものぞ。安心せい。拙者は陰ながらサポートしてやるでござる」
幕田「師匠がそう仰るのでしたら……」
「決まりだな。前衛四人・中衛一人・後衛三人だ」
なお中衛はチェッチカである。
「すごい。あの人が来たら話があっという間に決まっちゃった」
「渡りに船ではあったが、こうもすんなり話を決められて、全く嫌な気がしない。相当な人物だな、アレは」
こドラと柚葉は感心しきり、ただ頷く。王国にも頼もしい人物は何人かいたが、このように人の上に立つタイプはいない。
(強いて言えばマリーかティーティー様だけど、あっちと比べると温かみには欠けるかなあ)
こドラはそんなことを考えながらギーを見る。
その風格はまるで、ドラゴンの偉人のようだと思った。
「よし、では明日の朝一番で乗り込もう。相手方にもそう伝えてくれ、マスター。それと警備隊長と参謀、運動長については、私が決めさせて頂くが、よろしいかな」
「構わないよジュリア隊長。私は人を率いる経験には乏しいものでね」
本当のことではあったが、その場の全員が嘘だと思った。口に出して言うことは無かったが。
「承知しました。私も精一杯尽力させて頂く。よろしく、ギー。ジュリアで構わないよ」
「ああ、よろしく。ジュリア」
ギーは差し出されたジュリアの手を握り返した。彼女たちの旅行の四日目は、パーティ結成と翌日の突入を決定した所で、幕を下ろしたのだった。