VIPRPG×ざくざくアクターズ×ハルスベリヤ叙事詩2 もしもクロスオーバーだったら 作:泉 とも
五日目の朝。ポテチ王国ちゃんとしてるホテル玄関にて。
「よし。全員いるな」
昨日集まった七人の仲間たちを見つめ、ジュリアは頷く。こドラ、柚葉、ギー、チェッチカ、メディオラ、エロリア、幕田。
合わせて八人のパーティが、思い思いの表情を湛えて、佇んでいる。
「ニンジャ殿、これが昨夜お話した撮影機材だ。よろしく頼む」
ニンニン「しかと承ったでござる」
ついでにニンニンも。
「これより我々はポテチ王国ゴミ処理場へと向かい、内部の調査へと赴く。今回の目的はあくまで深部にいると思しき『種芋ぽてと君』の確認と、そこに至るまでの道の解明だ。中は修羅の赤シンボルこと言わずもがな、ぽてと君しかいないと思っていいだろう。なるべく敵とのエンカウントを避けて進むぞ。いいな」
作戦内容を確認するジュリアに、こドラが青い顔をする。
「だけどもし接触したら、戦うんだよね」
「ああ、正直普通のぽてと君にさえ勝てるかは怪しい。だがやらねばならん。今回はパンドラ無しだから、くれぐれも慎重に行く必要がある。気を引き締めてくれ」
エロリア「パンドラって何?こドラちゃん」
「簡単に言うとテレポート用のアイテムだよ。うちらはいつも全滅の危機はそれで回避してたんだ。勿論それが通らない場面もあったけど」
「その使い手は幼かったから、この国はまだ早いと思って連れて来なかったのだ。よもやこのような事態になるとは、思わなかったしな」
こドラと柚葉の言葉に、ギーとチェッチカはメディオラを見た。
「他所の国の人たちのほうが、うちより倫理観しっかりしてますね」
「全くだ。お恥ずかしいことこの上ないよ」
「あの、何かすいません」
芸能界にコンプライアンスといった意識は毛ほどもないので、こればかりはやむを得ないことであった。
エロリア「それで?このまま歩きで行くの?ゴミ処理場はそこまで遠くないけど」
「いや、ホテルのチェックアウトに、テレポートのサービスがあった。昨夜のうちにそれを使わせて貰えるよう頼んであるから、行きだけは早い。受付に話し掛ければ、何時でも行けるようになっている」
「はえー、みんな何時の間に」
「手回しが良過ぎて怖いくらいですね」
こドラとチェッチカはまるで部外者のように感心していた。ゲームなら勝手に進行してくれるが、実際は誰かの手配があってこそである。
「後続は我々の一時間後に出発する予定だ」
「あの、その人たちを待って行かないんですか」
「ああ、もしも一網打尽にされたら、目も当てられないからな。全体を考えれば、我々が進んで貧乏くじを引くしかないのさ」
メディオラの問いにジュリアが答える。こういう問答によって、地味に周囲の好感度を得ているのだが、本人はその自覚が無い。
「よし、では行こう。転移した矢先に敵が目の前にいるかも知れない。準備だけはしておくように」
そして彼女たちはテレポートによって、ポテチ王国ゴミ処理場へと移動した。
転移魔法による瞬間移動。その荒唐無稽さに、しかして誰も戸惑うことは無かった。
慣れがあったり、この程度では驚かなかったりと様々だ。
「あれ、隊長。ここってゴミ処理場じゃなくない?」
一同が飛ばされたのは、何処とも知れない道の上。辺りにはぽてと君だけに留まらず、見知らぬモンスターたちも徘徊している。
「ああ、念のため少し手前に届けて貰えるように言っておいたんだ。敷地内だとぽてと君に囲まれてスタートしそうだったし」
「なるほど」
そう言ってジュリアたちは周囲の状況を確認する。瓦礫と化した郊外で、眼前のゴミ処理場だけは無傷で残っているのが、何ともいえず不気味だった。
「ぽてと君……いるね……」
「ああ、うろついてる奴らにはなるべく近寄るなよ、行くぞ」
ジュリアの指示で全員が動き出した始めたそのとき、甲高い音と共に、空に一つの何かが爆ぜた。
エロリア「何?花火」
「発煙筒だ、しかし誰が、何の合図で」
チェッチカが疑問に答えた矢先、周囲のどこにそれだけ潜んでいたのか、大量の冒険者たちが姿を現した。
<突撃―!>
彼らは雪崩を打ってぽてと君に襲い掛かる!
「馬鹿な!私たちが行くと分かっているはずだ!」
「ああ、分かってる。見ろ隊長」
ギーが指差す先、戦う冒険者たちは、殺到してくるぽてと君たちを引き付けて、どんどん遠くへ離れて行く。
「陽動か。味な真似をしてくれる」
「我らが突入し易いように、敢えて姿を見せてくれたのだな」
ギーの言葉に柚葉が目頭を押さえる。あまり感情を見せない女侍だが、奇しくも戦場に現れた義に胸を打たれる。
幕田「急ぎましょう!彼らの想いを無駄にしないためにも!」
一同はごみ処理場へと突入した。少なくとも敷地内はもぬけの殻。労せずして侵入を果たすことが出来た。
「改めても見ると、大きいですね」
メディオラが巨大な工場の入り口で、その広さに圧倒される。文明と国力そのものともいえる巨大な工場。その区画が延々と広がりながら、半分を食料廃棄物を処理する機械が埋めているのだ。
――ぽてと、たべて。ぽてと、たべて。
「なんだ、幻聴か」
「いや、これはぽてと君の嘆きだ。この施設そのものが、奴を生み出し呼び込むプラントになっている。この瞬間にも、あのもったいないお化けは生まれているのだ」
「お化けが生まれるってのも変な話ですぜ」
「でも少しかわいそうですね。だってここがある限り、ずっと怒り、悲しみ続けるってことでしょう」
ジュリアとチェッチカの会話に、メディオラが憐みの表情を浮かべる。
そう、この戦いの発端、非が有るとすれば、それは紛れもなく人々に有る。
しかしそれを止めることは出来ない。どれほど歪であっても、周り続ける社会の歯車は、用意には止められないのだから。
「そうだな。だがそれでも彼らを倒し、この流れを止めなければならない。私たちは決して善良な生物ではないんだ。今は、生きるために、生きることを考えて、戦おう。頼めるかな、メディオラ」
「ええ。私とてそのつもりです」
幼いながらも決意を固めている尼僧に、ジュリアは内心で安堵した。
思えば自分の周りの幼子は皆、このように強い意志を持っていたと。
「隊長、これからどう動く?」
「種芋ぽてと君の姿が分からない以上、施設を速やかに、かつ虱潰しに調べるしかない。相手は巨大な怪物かも知れないし、ぽてと君の色違いみたいな奴かも知れない」
幕田「手分けして当たりたいですが、戦力の分散は自殺行為ですね」
ぽてと君と戦うためだけに選ばれたベストメンバーでさえ、苦戦は免れない。一戦そのものが命取りになりかねないのだ。
「よっし、これでいいはずじゃん」
「こドラは何をしているのだ」
「そこの受け付けのパソコンに、ここの見取り図が入ってたじゃん。だから手当たり次第にメールでそれを送って、印刷もした所。ほいマップ」
エロリア「偉いわこドラちゃん!あなたこういうこと出来たのね!」
「えへへ、こう見えてツクールもちょっとは出来るんだ」
こギャルドラゴンは機械に強い。スマホとPC操作くらいはお手の物である。
「よし。ではこの見取り図に沿って、点検をして行こう。その場合最終的な目的地は」
幕田「焼却炉、ですね」
それは不思議な、確信めいた予感だった。
恐らく、十中八九、そこに『奴』はいる。
「帰路はどうします」
「予定を組んでも意味は無い。その時帰れる道を行こう」
「ごもっともで」
ジュリアの返事にチェッチカは肩を竦める。
「最後に一度、我々の陣容を確認しておこう」
警備隊長 幕田賢治 ニンジャ陣!
スタン・麻痺・睡眠・不意打ち無効 毎ターンスピードアップ。
参謀長 ジュリア ご存知毎ターン終了時にバステ解除。
運動長 チェッチカ ファントム・ウィズイン二種。
片方は所謂FFのとんずら。もう片方はジャンプみたいなもので、自分を後衛と交代し、戻るまでの数ターン消失。相手を一方的に攻撃する。
「万全や完璧とは言い難いが、それでもやるしかない。各員、奮闘を期待する。では」
ジュリアは七人の仲間を見て、号令を発した。
「突入!」