VIPRPG×ざくざくアクターズ×ハルスベリヤ叙事詩2 もしもクロスオーバーだったら   作:泉 とも

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さらばニンニン!マッシュポテトになったニンジャ!

 引き続きポテチ王国ゴミ処理場にて。

 

「早く!こドラ早く!」

「この部屋に入るんだ!急げ!」

「ひーっひー!」

 

 施設内にまだ残っていたぽてと君に見つかり、ジュリアたちは手近な部屋へと、逃げ込んだ。

 

「よし、せーの!」

「しまった、こたつを掴まれた!」

「引っ張れ!オーエス、オーエス!」

「わーっしょい!わーっしょい!」

 

 腕を引いて室内へ入れようとした刹那、こドラが背負っていたこたつの布をぽてと君が握り締める。

 

「GRRRRRRRRR!」

 

幕田「なんか鳴き声がおかしいですよ!?」

エロリア「ちょっとそのこたつ手放せないの!」

 

「これはこドラのトレードマークなんじゃん!火山だろうが海底だろうが異世界だろうが時計塔だろうが裁判だろうがバンジーだろうがもう死ぬしかないって戦いだろうが!これだけは手放さなかったじゃん!」

 

「見上げた芸人根性だな」

「尊敬するっすよ。でも付き合うほうは結構勘弁……!」

 

「おりゃーこたつカウンター!」

「GRR!?」

 

 こドラ渾身のカウンターが決まり、ぽてと君は手を離した。

 

 危うい所で室内に滑り込み、一同は無事を確保する。

 

「はーっはーっ」

「……入って来ないですね」

 

 メディオラは怯えた表情で、部屋の仕切りの外に立つ魔人を見る。

 

「その辺のモンスターなら遠慮なく入って来るが、奴らはどういう訳か部屋の中には入って来れないんだ」

 

「吸血鬼じゃあるまいし」

「いよいよ格の高いバケモノだな」

 

 ジュリアの説明にチェッチカが毒づき、ギーが感心する。

 

「実体化はできるが、本質は霊ということだろう。自らに制約が課されており、それを守らなければならない。こちらが迂闊にそれを破れば、直ぐにでもこの部屋に雪崩れ込んで来るだろう」

 

エロリア「解説ありがたいけど、こっからどうするのよ。今の騒動で残りの連中も来ちゃってるわよ」

 

 ドアの外のぽてと君はあっという間にその数を増やした。

 

「部屋に壁を空けて移動するのは」

 

「進めても部屋の数までだ。一度外に出て回り込むしかないだろう」

 

幕田「しかし逃げ続けても終点までに撒けなかったら、私たちは挟み撃ちを受けます」

 

エロリア「あの足の速さじゃ振り切れないわ」

 

 室内に満ちる沈黙。

 斯く成る上は、ここで戦うしかない。

 誰もがそう思ったとき。

 

ニンニン「拙者が参ろう」

幕田「師匠!?」

 

ニンニン「彼奴らがここに集まっているのは、どうやら真のようでござる。他のニンジャたちが上の階への潜入、調査をし終えたことが連絡で入ったでござる」

 

 そう言ってニンジャは懐から、古式ゆかしいトランシーバーを取り出した。

 

ザンニンニン『ようお客さん方、随分頑張ってるようじゃないか。お前らのおかげでこっちは楽が出来た。何処も空っぽなことが分かったから、安心して先を目指しな』

 

エロリア「あらザンニンニン、あんたが来てくれるなんて珍しいわね」

 

ザンニンニン『エロリアか。他所に貸しを作れる機会ってのは、それ自体が仕事だからな』

 

 通話先の同僚にエロリアは軽く驚く。基本的に我関せずで得体の知れない彼、または彼女が、自分から動くことはあまりない。

 

エロリア「ついでに助けに来て欲しいんだけど?」

 

ザンニンニン『なんだまだ残りがいたのか?悪いがそっちは自分で何とかしな』

 

 ザンニンニンは既にぽてと君を、何体か誘き出していた。仕事の出来るニンジャである。

 

ニンニン「そしてそれは拙者が請け負うでござる。この中でアレに捕まらず逃げ切れるのは、拙者しかおらぬ故」

 

幕田「師匠、ですが」

 

ニンニン「ギー殿、撮影のお役目、ここまでとなり申し訳ござらぬ」

 

「感謝の言葉しかない。ありがとう、忍びの方」

 

 ニンニンはビデオカメラを置くと、その場から影のように消えた。

 

「消えた!」

「影に潜ったのだ」

「影に!?」

 

 チェッチカとメディオラが狼狽えるのに対し、柚葉は冷静にニンニンの術を看破していた。そして彼は確かに部屋の外へと脱出していた。

 

 ――そこの薄汚いジャガイモ共、貴様らの相手は拙者でござるよ。

 

「ぽ・て・と」

「た・べ・て」

「GRRRRRRRRRR!」

 

 ――この食べるとブクブク太る油ギトギトのみっともないジャンクフードでござるか?こんなもの、フン!

 

 外でポテチの袋が破裂する音がした。直後に地団駄を踏む音がする。

 

 そしてぽてと君たちが一斉にそちらを向く。

 

幕田「師匠、どうか、どうかご無事で……!」

 

 幕田は悲壮な顔をして、涙を流した。

 

 ――なんだその目は。芋が踏みつぶされたのがそんなに気に入らんのか。ほれっ!ほれほれっ!

 

 もったいないお化けの前で、食べ物を無碍にする暴挙。ドアの前のぽてと君たちが、ゆらりと動き出す。

 

ニンニン「忍者がこんなもん食えるかー!」

 

 投げつけられたポテチ袋がぽてと君の顔に当たる。

 

 無拍子で駆け出し、一拍も置かずトップスピードで間を詰める魔人たち。

 

ニンニン「行け幕田!」

幕田「師匠!」

ニンニン「さあ来いバケモノ!来るでござる!」

幕田「師ぃ匠おおおおーーーー!」

 

 廊下に響く戦いの喧騒は、瞬く間に遠ざかっていく。

 

 ――アバー!サヨナラ!!

 

 やがて遠くから、男の断末魔と爆音が風に乗って届いた。

 

「……行こう。先を急がなければ。あの人に申し訳ない」

 

幕田「……はい!」

 

 ジュリアに肩を叩かれ、くのいちは涙を拭いた。いつも馬鹿なことばかりしているが、やるときはやる。しかしそれが今は、今だけは悲しい。

 

「カメラはこドラが持つよ。大丈夫。今度は、大丈夫だから」

 

 自分に言い聞かせながら、こドラは撮影用のカメラをこたつに固定した。その姿は肩にキャノンを持つロボットの如し。

 

「幸いにも目標は絞られた。向かうはこの先の焼却炉だ」

 

 柚葉の言葉に皆が頷き、立て籠もっていた部屋を出る。ニンニンが去って行った方を一瞥し、一人、また一人と背を向ける。

 

 ゴミが運び込まれる集積場、そのゴミが運び出されるクレーンとコンベアーの先には、巨大な円筒状の焼却炉。

 

 皆そこにいるだろうと思った。その光景を見られる場所、或いはゴミとなったポテチを焼却するための、操作が出来る場所に。

 

 ――だが実際は違った。

 

「いない……?奴はいったいどこにいるんだ」

「もしかして種芋ぽてと君なんていなかったんじゃ」

 

「いや、いたよ」

 

 ジュリアとこドラが戸惑っていると、同様に周囲を探索していたギーが戻って来た。

 

「見つけたか!」

「ああ、こっちだ」

 

 神妙な面持ちで皆を案内する彼女に連れられて、全員は施設を出た。正確には屋内から。

 

 進んだ先には建物と、焼却された灰を運び出すトラックの破壊された跡が有った。

 

 ――ぽてと、たべて。おいしい、よ。

 

 それは機械的に運び出される、ポテチだった物を、無尽蔵に口に運んでいた。

 

「あっああ」

「これが、こいつが……」

 

 灰を頬張り続ける『彼』は、譫言を繰り返しては、涙を流し続けている。

 

 大きさにして既に二階建ての家より高く、広い。それは今もなお、肥大し続けていた。

 

エロリア「種芋ぽてと君って奴ね」

 

 ――ぽてと、おいしい。おいしいよ。

 

 真っ黒い炭のようになったぽてと君の頭頂部には、同じくどす黒い芽が伸びている。

 

「何だ?ジャガイモの芽か、アレ」

「不味いぞ隊長、このまま行くと恐らくは木になる」

「ジャガイモって地上に出てるのは茎だったような」

「へーメディオラちゃん物知りー」

 

 ハグレ王国の三バカに交じって、幼い女優が博識を披露する。一応断っておくが、割とハグレ王国成人の部では標準的な知力である。

 

 ハグレ王国の大人あんまり頭よくない……。

 

「恐らくは世界樹の種とやらと競合しているのだろう。世界で初のジャガイモの木が誕生するかも知れない」

 

「そうなると、どうなるんです?」

「木の実にジャガイモが実り、更にジャガイモが収穫される」

 

幕田「でもそれってこの場合悪循環を加速させるだけでは」

 

エロリア「流れで行くと100%そうよね」

 

「繰り返すが、私たちは生きるためには戦わねばならない。例えそれが、身から出た錆であっても。例え神や悪魔が正しく、人類を滅ぼさんとしても、私たちはそれに逆らわねばならないのだ」

 

 ジュリアが抜剣し、盾を構える。それに倣い、それぞれも戦いの準備を整える。

 

「それがどれほど烏滸がましくても、我々はこう言うしかないのさ」

 

 歴戦の傭兵隊長が、鬨の声を上げる。

 

「お前たち、この国を守るぞ!」

『おう!』

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