VIPRPG×ざくざくアクターズ×ハルスベリヤ叙事詩2 もしもクロスオーバーだったら 作:泉 とも
「でやああああ!!」
ジュリアが渾身の力でタックルをぶちかます。
エロリア「せーの!」
「ヨイショオ!」
エロリアとチェッチカが全力で斧と剣を叩き付ける。
しかし。
「ぽてと、たべて」
種芋ぽてと君に全くダメージが入らない。黒い表面から硬質な音が跳ね返り、全く物理的な攻撃を寄せ付けない。
「皆離れていろ。メディオラ」
「はい、ギーさん!」
二人の術師が魔法を放つ。波のようなものと、玉のような光魔法が飛び、水と風で出来た銛が突き刺さる。
銛も最初は弾かれるが、光魔法の着弾してからはヒビを入れるようになり、その傷口を広げていく。
幕田「今です!」
「うむ、せい!」
幕田と柚葉がヒビに攻撃を捻じ込み、刃を通そうとする。
片や傷口を広げたが、もう一方は炎属性の残り火を、揺らめかせただけだった。
「ぽてと……たべて……」
そして種芋ぽてと君は、彼女たちを意にも介さず、灰を食べ続けるだけだった。
「こりゃ埒が明きませんぜ。こっちのことは眼中に無いおかげで、反撃はして来ませんが」
エロリア「ただの物理攻撃は文字通り刃が立たないわね」
そしてたった今付けた傷も、どんどん塞がっていく。
「アレか?灰を圧縮してダイヤモンドみたいに硬くなってるのか」
「でもダイヤって傷は付き難いだけで壊れ易いって言いますよ」
「メディオラちゃん賢いなあ」
「えへへ」
ジュリアに褒められて照れる幼女。本編中の死んだ目をした様子が嘘のようにかわいい。
余談だが木は燃やす際の空気の量によって、燃焼した後が分岐するので、炭になったり灰になったりする。
「みんな!ちょっと来て欲しいじゃん!」
撮影を頑張っていたこドラに呼ばれ、全員が一度集結する。
「今のターンを見返してみて欲しいんだ」
そう言って撮影を中断すると、今しがたの攻防を皆の前で再生する。覗き込む頭が多くて非常に狭い。ぎゅうぎゅうである。
エロリア「何か気付いたことある?」
「先ず普通に殴っても駄目だな」
「ダイヤは特定の方向に割れ易いというが」
ジュリアとギーがぽてと君の頭頂部を見る。
「内側から外にとなると、あまり意味はないことだな」
「あれ自身が種であり殻なんでしょうな」
「炎はもう全く効かない。弱点が変化している」
チェッチカと柚葉が腕を組んで唸る。
幕田「ギー殿の魔法もあまり。水を弾くかのようでした。質量と硬度で風の削りも通りが悪い。ただ」
幕田がそこまで言ってメディオラを見る。
幕田「メディオラちゃんの魔法、恐らく光属性と思いますが、アレは吸収しました」
エロリア「やっぱり光合成してんのかしら」
幕田「恐らく。あの真っ黒な外見だから光を集めるのでしょうが、それでも足りないのではないのでしょうか」
「栄養不足ってこと?」
こドラの問いかけに幕田が頷く。今も灰を食い続ける怪物の背には、陽の光が嫌味ったらしく注がれ続けていた。
「灰を食べ、光を浴び、芽が伸びる」
「ジャガイモを真似してるって訳ですかい」
エロリア「灰を食べるのは余計じゃないの」
「いえ、お芋は水と栄養が豊富だと、蔓を伸ばして全然身を付けないそうです」
「芋を実らせるためには自分で自分を追い込むしかないのか。それで自分が泣くことになったとしても」
エロリア「つくづく救いの無いバケモノね」
メディオラとジュリアの言葉に、エロリアが肩を竦める。まるで己を憐れむウソ泣きのようだが、もったいないお化けが望んでやることでもない。
これは言わば無駄になった食べ物を再生させる行為であり、味わう苦しみは必要な過程なのだ。少なくとも、ぽてと君にとっては。
「一つ言えることは、アレが光魔法を受けると吸収し、その際に防御が落ちるということだ。芽が育つに連れて体が脆くなり、水でふやかしたり、冷やして傷めることが可能になる。再生もするが、ダメージが入れば物理的な攻撃も通るようになるだろう」
ギーのまとめによって、一応攻略の目途は立った。しかし。
「だがメディオラ一人では光魔法の量が、我々だけでは火力が足りない。到底攻め切れないだろう」
「チェッチカ。爆薬は持って来てないのか?」
「ばっ馬鹿言わないでください!空港で武器持ってけって言われても、流石に発破を持ち歩いたりしませんよ!そんなキチガイかテロリストじゃないんだから!」
ジュリアの言葉にギーが眉間を抑え、そして発した言葉にチェッチカが切れ気味に反論する。
このときエロリアと幕田がそっと顔を背けた。ポテチ王国では爆発オチが日常茶飯事なので、合わせる顔が無かった。
「どうする隊長?後続を待つか?」
「途中のぽてと君たちにやられないといいけど……」
「予定だと我々の一時間後に出発だそうだから、この施設に到着するのは」
幕田「後二十分くらいですね」
くのいちが胸元から小さな懐中時計を取り出す。
「みんな服の中に色々持ってるんだね」
エロリア「こドラちゃんは何かないの?」
「アメちゃんなら持って来てるけど」
エロリア「いいじゃない。一個ちょーだい」
「あっじゃあ私も」×6
カラコロペロペロもむもむガリガリ。
「ほむ。奴から手出しはして来ない。後続を待つにしても、その間何かできることは無いかな」
エロリア「こドラちゃん口の中のアメ玉交換しない?」
「しっしないよそんなこと!えっちな本じゃないんだし……」
エロリア「ほっほーう」
二人が乳繰り合うのを横目に、眼前の巨大なコゲジャガイモを眺めつつ、他六名は考える。
「……あの、隊長さん」
「何かなメディオラ」
手を挙げたのは小さな女優兼尼僧、メディオラだった。
「あの食べてる灰を取り上げるのはどうでしょうか」
「なるほど。それならあの芽の成長を、多少は遅らせることができるかも知れないな」
「はい。焼却炉から出た灰が運ばれて来る以上、工場の電気を落とせばそれで出来ると思います」
「でかした。よく考えたな、メディオラ」
ジュリアに頭をぐしぐしと撫でられて、メディオラの頬が赤くなる。修羅場においてこの遠慮のない距離感が、少女には心地よかった。
「ううむ、メディオラ殿は中々に知能派なのだな」
「出来る子役ってのは学校要らないくらい勉強してますからね。自力で」
「よし皆聞け!一旦戻って、工場の電源を落とす!それで種芋ぽてと君の成長速度を落としにかかるぞ!」
『はい!』
リーダーの言葉を受けて全員が一斉に返事をする。それぞれが素人でないこともあったが、間違いなく、ジュリアの風格の為せる統率であった。
「といっても、私はこういう機械の止め方は分からないのだが」
「難しく考えるこたないです。要はスイッチ探して切ればいんですよ」
「大元の配電盤まで行かずとも、壁や機械に備え付けの箱を開ければいい。そこにブレーカーやスイッチ類が入っているはずだ。制御盤という奴だな」
『へー』
チェッチカとギーが適切な助言をして、残りが感心する。世の中にはブレーカーが落ちないように固定するクソ馬鹿がいるが、それをやると火災になるから絶対にしないように。
ブレーカーが落ちる場合の停電は、単なる電力不足なだけではなく、安全装置としての役割も果たしているのだ。真面な教育を受けた文明人なら先ずやらない失敗だが。
「あったよ!」
「こっちもありました!」
そして一行は来た道を少しだけ引き返し、工場の焼却炉付近を探索。制御盤を開けて、無事に焼却物の灰の運搬を停止させた。
フィクションだと壊しがちだが、実際はそんなことをする必要が無いケースは多い。
幕田「これでぽてと君への灰の供給は止まるはずですが……うわっ!」
建物が揺れた。地震ではない。
大きな衝撃が断続的に、施設を直撃している。
「……隊長。思ったことを言っていいかな?」
「ああ。いいぞ。たぶん同じ考えだ」
「ペットの給餌器ってあるだろ。スイッチを押すと餌が出る奴」
「あるな」
「慣れると中に餌が入ってなくても、ペットはスイッチを何回も押すようになるそうだ」
「そうか」
「これと同じじゃないか?」
「そうだな」
普通は餌が突然出なくなったとしても、いきなり『もう餌は出ないんだな』と理解したりはしない。
何度か同じ行動を繰り返すし、何なら自分で餌を探し、取りに行く。
――ぽ・て・と。
施設を揺るがす轟音に混じって聞こえる。呪詛のような声。
エロリア「こんなことならセーブ妖精さんを雇っておくんだったわ」
「ごめんなさい。私が余計なことを言ったから」
「誰も疑わなかったのだから、お前に反省の余地はない。それよりも気を付けろ。来るぞ!」
しょげかえるメディオラをギーが諭し、警告する。直後に工場の壁が吹き飛び、さっきまで微動だにしなかったはずの巨体が、のっそりと侵入して来た。
「ぽ・て・と……!た・べ・て……!」
「しかしまあ得る物はあった」
「得る物って?」
「やはりこの灰は、食わせないほうがいいってことさ」
八人は再び武器を構えて、種芋ぽてと君と対峙する。
第二ラウンドの始まりであった。