VIPRPG×ざくざくアクターズ×ハルスベリヤ叙事詩2 もしもクロスオーバーだったら 作:泉 とも
「ぽおおてええとおおーーーー!」
種芋ぽてと君は見境なく工場内の壁を破壊し始めた。
「奴め、ジャガイモの燃えカスが運ばれなくなったから、自分で取りに来たな!」
「しかし集積場を辿るのではなく、我々を追って来た点を鑑みるとだ。その程度の知能ということでもある」
ジュリアと柚葉は飛散する瓦礫から身を守りながら、黒い巨体を観察した。
物事を順序立てて考えるより、不満の感情を結び付けるのが優先されている。
苛立ちを顕わにしながらも、探すことが念頭に置いてある。
「たぶん私たちが何かやったなって思って、こっちに来たんだよね」
「恐らくはな。そしてその近くに灰があるはずだとも」
こドラの言葉にギーが頷く。
問題解決に際して原因に思い当たるが、人を責める気持ちが強いため、集積場の奥ではなく、ジュリアたちを追ったのだ。種芋ぽてと君は。
幕田「機械ではなく、やはり怨霊の類なのですね」
エロリア「もったいないお化けって食べ物を粗末にした奴を祟る霊だもんね。冷静に考えれば他責の元祖っていうか」
そうこう言う間にも、焼却炉近辺の屋内は荒らされ、フォークリフトや空のコンテナが引っくり返され、肥料用に梱包された灰を、掃除機のように吸い込んでいく。
「このままだとピットまで行くのは時間の問題ですぜ」
「餌箱に頭を突っ込んで食べるとか動物みたい」
チェッチカとメディオラがその光景を見ながら呟く。
「どうにか奴を誘導して焼却炉に入れられないか」
「溶鉱炉とは違うからな。恐らく無理だろう」
ジュリアの発案は呆気なく却下された。
未だに安全面への配慮が全然進まず、悲惨な事故が起きるのが溶鉱炉。映画みたいに人が落ちて溶けて死んだりする。
一方で焼却炉は作業工程から、機械類が一連の物として連結、パッケージングされており、人が入る余地が無い。
何年経っても軽いね、人命!
「とはいえここが破壊されて火災でも起きれば大変なことになる。どうにか奴を外に連れ戻さねば」
エロリア「こちとら歯が立たないってのに、じっとしてられないのね」
「いや、一つだけ手がある。メディオラ」
「はい。何でしょうかギーさん」
「お前、ドラゴンファングとポルタサンタは使えるな」
「はい。大丈夫です」
相手の言わんとしていることを察して、メディオラは息を飲んだ。杖を握る手に力が籠る。
エロリア「それって魔法?」
「ああ。光属性の大魔法だ。私が知る限り両方使えて、一日に一度とはいえ、この二つを立て続けに放てる人間は彼女しかいない」
エロリア「なるほど。それでアタックチャンスを拡張しようって訳ね。ハイリスクハイリターンは嫌いじゃないわ」
全員の視線が小さな聖女兼女優に向けられる。
ハルベリ的には光の大魔道なのだ。
「となると今度は奴をどうやって誘導するかだが」
「こドラが行くよ。この辺にある灰をかき集めて、ぽてと君の気を引くから。皆は先に出ていて」
こドラはそう言うなり、パーティを抜けた。そして灰×99個を手に入れた。
「正気かこドラ!?奴が素早くないとはいえ、危険過ぎるぞ!」
「でも私、正直何の役にも立ってないじゃん。せめてこれくらいはしたいんだ」
エロリア「こドラちゃん……」
自嘲の笑みを浮かべて言う仲間の姿に、誰も言い返さなかった。安易な慰めをしている場合ではない。
誰もが自分にその時が来るかもと、分かった上で戦っているのだ。
しかしだからと言って、見捨てるという選択肢は無かった。
エロリア「なら私も付き合うわ。物理組は暇だし」
「それもそっすね」
エロリアは灰×99個を手に入れた。
チェッチカは灰×99個を手に入れた。
「柚葉はな、お主のそういう所が好きで、相棒にさせて貰ったのだ」
幕田「数は多いほうがいいですよ。こドラさん」
柚葉は灰×99個を手に入れた。
幕田は灰×99個を手に入れた。
「全く、仕方のない奴らだな」
「ふふふ、いいじゃないか。隊長」
「じゃ、じゃあ私も!」
ジュリアは灰×99個を手に入れた。
ギーは灰×99個を手に入れた。
メディオラは超頑張って灰×99個を手に入れた。
ジュリアやギーのように経験と風格から統率するのではなく、その場の誰もが良心を喚起される。
こドラの魅力による団結であった。
「みんな、ごめんね、でも……ありがとう……」
エロリア「いいってことよ。それじゃ始めましょ」
「そうだな。おい、ぽてと君!」
「ぽ?」
今更ながらこういうとき、相手の名前に君付けするの間抜けだなって、皆思ったけど、『君』までが名前だからしょうがない。
「お前の欲しがっている灰ならこっちだ!」
「ぽってっとおおぉぉーーーー!」
「来た来た来た来た!」
「走れ!」
一同は灰を持って逃げる。
破壊された壁から外へ出て、十分な広さがある所を目指して。
エロリア「そらっこっちよ!」
幕田「こっちにもあります!」
「ぽっ、ぽてっ?」
「隊長、目標が分散して立ち止まった」
「オツムはあまり良くないようですぜ」
分散した灰の袋を追って、種芋ぽてと君がふらふらと追い掛ける。途中にある物全てを踏み潰しながら。
「よし、これを利用すれば、十分外まで誘導できるだろう」
そうしてさっきまでいた灰の集積場跡地まで戻ると、八人は抱えていた灰を眼前に投げ捨てた。
「メディオラ、行けるか!?」
「はい!やれます!」
一足先に現着していた幼聖女は一つ目の呪文詠唱を終えていた。灰の前に大魔法発動の魔法人が廻る。
「アクラガスの数律門よ、我その聖なる扉を叩かん、故に汝、門を開き。道を指し示せ。窓から注ぐ光の如く……!ポルタ・サンタ!」
「ぽ……?」
召喚用ゲートを応用した光の大魔法が発動し、無数の光の柱が天へと逆流する!
「ぽってえええとおおおおーーーー!?」
ぽてと君の体が宙に浮かびかけると、彼はその黒い巨体が全力で踏ん張る。頭頂部の芽がにょきにょきと伸び、全身にヒビが入る。
「総員突撃用意!」
「黄金竜の牙! 黒檀の杖! 私は剣でなく、数多の神名によって、あなたを倒します!――ドラゴンファング!」
そして今度は空から光の塊が降り注ぐ!
上下からの同時攻撃により、ぽてと君の全身が光に包まれ、同時にヒビの入る音が次々に響き渡る!
「突撃!」
『うおおおおおおぉぉぉぉーーーーーー!!』
飛んでいくメッサリナの無慈悲を追い、前衛が光の中へと向かっていく。
エロリア「ぜえええいっ!」
振り降ろされた斧は弾かれることなく、芋の体に食い込む。
エロリア「イケる、通るわ!」
「幕田さん、私たちは上をやろう!」
幕田「上、あの芽ですね!」
侍とくのいちは疾風のように駆け上がると、成長を続ける芽を斬り付けた。
「たべったべでええ、おおおああああ!!
木になろうとしていた芽を傷つけられ、初めてぽてと君が苦悶の声を上げた。だが。
「うおっ避けろ!あぐっ」
光の中から突き出された手足が、見境なく振り回される。ジュリアはこドラを庇いその辺の壁に激突、埋没してしまう。
「隊長!」
「ひっ怯むな!攻め続けるんだ!」
「こっこのお、私だって本気出しちゃうぞー!」
こドラは大きく息を吸うと、氷属性のブレスを吐く。周囲に霧が立ち込め、急速に温度が下がる。
「もひとつおまけだ、ホワイトアウト!」
「あの娘、竜人だったのか」
エロリア「素敵よこドラちゃん、もっとやったれー!」
霧と霜により周りには雪が降ったようになり、それが光を反射し更に攻撃の機会を延長する。
「っぽおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
最早何も見えず、只管暴れるぽてと君。その巨体と剛腕が唸り、ジュリアたちを襲う。
無暗な攻撃は早々当たらないが、しかし威力とプレッシャーは十分だった。
「ってええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」
「う、うわああああ!」
加えてなんとぽてと君が火を吐いて、それがこドラを直撃した。風と氷の魔法が使えなくなった代わりに、火属性の攻撃が可能になっていたのだ!
「あぐ、うあああ!」
エロリア「こドラちゃん!」
幕田「逃げてください!」
突然の反撃に怯んだ瞬間、空が曇る。
ぽてと君が苦し紛れにジャンプし、こドラの声がしたほうへボディプレスを仕掛けた。
狙って当てられないのだからという、直感に従った最適解が、とどめの一撃にならんとする。
「まずい!」
「間に合わねえ!」
「こドラっ!」
柚葉が短い悲鳴を上げるのと、巨体が地響きを起こすのは同時だった。その衝撃は光と冷気を吹き飛ばし、濛々と土煙を上げる。
視界が晴れたとき、ぽてと君は立ち上がり、その下には潰れたこたつがあった。
「そんな……!」
「こドラ……!」
どんな時も離れなかったこたつ。
水着イラストに映ってなくても、どこからともなく取り出していた謎の多いこたつ。
だけどハグレ王国やサポーターの皆が、一度は入ったことのあるこたつ。
ニワカマッスルやかなづち大明神でさえ、無理やり足を入れさせたこともある。
そのこたつが。
粉々になっていた。
「こドラアアアアアアアアああああああああぁぁぁぁーーーーーーーー!!」
柚葉の慟哭が、痛いほどの沈黙を呼び起こす。そして。
「はっはーい」
間の抜けた声がした。空の上から。
幕田「えっ」
「まさか」
「いやー、危ない危ない。間一髪だったね」
「その声は……」
光と霧と煙が晴れた空を、ジュリアと柚葉が見上げる。
そこには一人のハーピーが飛んでいた。股にこドラを挟んで。
『ハピコ!?』
「よっと」
「うわあ!」
彼女は器用にも空中で一回転すると、こドラの位置を股から背中へと移した。
「ハピコ、どうしてここに」
「細かい話は後々。まあ強いて言うなら、真打は遅れてやって来るってことで!」
ハピコが軽くアゴをしゃくってある方向を示すと、そこにはジュリアのパーティとは別の一団が向かってくるのが見えた。
「あ、ありがとうハピコ。もうだめかと思ったじゃん……!」
「いっひっひ!なんだ弱気になっちゃって。でも仕方ないよな。こたつがおじゃんになっちまったんだ」
笑いながら彼女は薄目を開くと、その水色の瞳を冷たく光らせた。
「高くつくぜえ?ハグレ王国のこたつはよぉ……!」