VIPRPG×ざくざくアクターズ×ハルスベリヤ叙事詩2 もしもクロスオーバーだったら 作:泉 とも
「ハピコ!このぽてと君は頭の芽を育てて何かをするつもりだ!攻めの手を緩めるな!」
「私たちの攻撃で、ぽてと君の防御はまだ落ちてるから、イケるはずだよ!
「あいよっ!そういうことですってよ皆の衆!」
援軍に駆け付けたハピコが、後続の味方に声を掛ける。そこにはジュリアのとは異なるもう一つのパーティがいた。
「オーキードーキー! ここでお前との因縁に終止符を打ってやる」
「皆さん、私たちの攻撃に合わせてください!」
『シャボンフリーズ!』
アンクルサムを思わせる銀髪のアメリカ人美女ことイリスと、下半身がタコの魔物ことスキュラの女性、ウズシオーネが同時に最高位の水+氷魔法を唱える。
「ぽあ!?」
種芋ぽてと君の塞がりかけた傷口が凍結し、再生が妨害される。
「よし!私も続くぞ!出でよ、歴戦ラージプート隊!」
続いてジャープールがSP召喚を使用し、体力と芸の多いアザプ兵の上位クラスを出現させる。
彼らは更に下位のアザプ兵を召喚し、何処からともなく土塁を投げて、ぽてと君の片足を固めて動きを阻害する。
「擲弾注意!」
そしてチェッチカは持っていなかった爆弾を、何故か持っていた彼らは、それをまとめて投げつける。
KABOOM!! 中衛くらいまでなら何とか倒せる威力の爆発が、そこそこのダメージを与えた!
「ぽてっと、とっと」
「はっはっは―!どーん!」
「とおおおおおおおおおお!?」
よろめいた所にグリフォンに乗ったミシェルが突撃を決める!
ヴァ―レントゥーガで何より怖い騎兵の突撃を!
「ほーれほれほれ倒れろ倒れろ倒れろー!」
こドラを降ろしたハピコが、更に超高速で連続攻撃の追い打ちを仕掛ける。別パーティだから運動長指定も別で、ハピコストライクが使用可能なのだ。
「おおおおぉぉーーーー!!」
キャロル「思ったよりもやるわね。アンカレット!」
「お任せを」
体勢を崩し倒れ行くぽてと君の頭上に、黒衣の女性が飛び上がる。
日の光を遮るような、漆黒の魔剣を高々と掲げて。
キャロル「魔法剣、バーストⅣ!」
キャロルの放った無属性魔法が、アンカレットの黒魔剣に吸い込まれて行く。
「いざ!」
頭頂部の芽を目がけて振り降ろされた魔剣が、吸収した魔法を増幅し、炸裂させる。
周囲に累が及ぶほどの爆発が起き、空間を震わせた。
デイジー「リカバー!」
最後に行動し全体回復によって、デイジーがキャロルのフォローをすると、延長された一ターンが、ようやく終わりを告げる。
「やったか!?」
エロリア「ちょっおま」
幕田「フラグ乙」
柚葉の言葉に思わず二人からツッコミが入る。
案の定トドメは刺せていなかったらしく、ぽてと君の巨体はまだ、その動きを止めていなかった。
「ぽおおてええとおおー!たああべええてええー!ッポオオオオオオオオ!!」
「まだ立つのか、いや違う!全員離れろ!」
ジュリアの声に全員は、種芋ぽてと君から距離を置く。直後に競馬場もかくやという地鳴りが、耳に届いた。
「シット!奴め、ピンチになって他のぽてと君たちを呼び寄せマーシタ!」
「数で張り合われたら一巻の終わりですね……!」
爆速で現れた大量のぽてと君たちは、多かれ少なかれダメージを負っていたが、それでも二桁を超える数で集結。
このとき全員が劇場版ドラえもんばりの負け戦を想像したが、事態は思わぬ方向へと転がった。
「食べて!」
「は?えっ……」
「おいしいよ!」
ぽてと君が種芋ぽてと君の、口の中に飛び込み、食われる。
「食べて食べて!」
「おいしいよ!おいしいよ!」
一人、また一人と高い声で叫びながら、次々に口の中へと返って行く。
「食べて!食べて!食べて!食べて!食べて!食べて!食べて!食べて!食べて!食べて!食べて!食べて!食べて!食べて!食べて!食べて!食べて!食べて食べてたべてたべてたべて!たべて!たべてたべ」
「おいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいおいしいオイシオイオシシシシイオイオイシオシオイシイヨヨヨヨヨヨヨヨ」
「いやああああーーーー!」
メディオラが発狂した。
「おい、気をしっかり持て!チェッチカ、この子を連れて下がれ!」
「はっはい!」
異常な光景を目の当たりにして、他の者たちも険しい表情を浮かべている。
「他の奴らを食って、回復しているのか」
エロリア「その割に傷塞がってないけど」
幕田「見てください!芽が!」
くのいちの指差すほうに一同の視線が集まる。
種芋ぽてと君の頭頂部から伸びた芽が、ぐんぐんと成長して見たこともない木へと成長していく。
「あれは、世界樹ですね。実物を見るのは初めてですが」
アンカレットが呟く。今や土台となった種芋から養分を吸い尽くし、屍に根を張り踏み潰した。
口に入り損ねたぽてと君たちに根が突き刺さり、ググポン……ググポン……という音と共に中身を吸収される。
「ポテト……」「タベテ……」「オイシイ、ヨ」
「あ~何だろう。これからまたグロ路線になっちゃうのかなあ」
こドラはこれまでのフィクションや現実の、凄惨な場面を思い出し、心が乾きつつあった。
他のハグレたちが逃亡劇の最中に、モンスターたちに襲われたであろう亡骸。
大量のモンスターの波に抗い、右も左も屍の山となった防衛線の記憶。
リュージンが人間に戻れるという、偽りの奇跡を演じる裏で行われた、人体実験の失敗と頭が破裂した女冒険者。
どれ一つ取っても残りの人生はもういいだろうという出来事ばかりである。
キャロル「見て、花が!」
デイジー「アレはじゃがいもの花ですね」
「花が咲くとどうなるんです」
デイジー「そろそろ根っこの芋が太ってる頃だから……」
「まさか」
じゃがいも博士のポジションを引き継いだデイジーの言葉に、アンカレットと柚葉の顔色が悪くなる。
地響きが起きて、地割れが発生する。
「こっこれは、復活するって流れか!?」
「ならやっぱり、攻撃を再開したほうが良くないですか!」
「ウェイト! よく見ロ」
ハピコとウズシオーネをイリスが制止する。地面から伸びた腕に、木の根が絡まり押さえ付けようとする。
「あ!皆さんあれを!」
チャンデラーが指差したのは、先ほどのじゃがいもの花を咲かせたのとは別の枝。
そこにはまた別の花が咲いている。
エロリア「アレって世界樹の花よね。一輪で豪邸が建つとかいう奴」
「マジで!?でもこれってじゃあつまり、どういうことなの?」
「恐らくはぽてと君に取り込まれた世界樹の種が、じゃがいもの浸食に抗っているのではないでしょうか。ぽてと君が弱り芽の再生と成長に力を割いたことで、世界樹はぽてと君の支配から脱却しつつあるのです」
キャロル「なるほどね」
「つまり世界樹が勝てばぽてと君が消えて、世界樹が誕生する訳だね」
幕田「迂闊に手出しは出来ませんね」
黒公アンカレットの言葉に皆一様に感心し唸る。さながら光と闇の人格がせめぎ合っている場面である。
人間とサルの境界にいる者がいたらサルにしてしまうのがVIPRPGだが、幸い今回はそうでない人々が大勢いるので、ご安心。
「バット、このまま見ている訳にも行きまセーン」
「そうは言うがイリス、何か手はあるのか?」
「オフコース。私ぽてと君倒すため、色々と勉強しまシタ。予定はチョット狂いましたが、ちゃんと手は打ってありマース。カモン!」
イリスが指を弾くと、軽い音と共に狐耳をした狐耳の巫女が現れる。
???「勇者たちから突然の依頼でやって来たが、こりゃ大事じゃのう」
「なつさん!?いや、違う」
寝る前さん「妾は寝る前。しがない巫女じゃよ」
狐耳の巫女さんは眠そうな素振りでジュリアたちへと向き直る。
キャロル「……なるほど、あれを調伏し神として奉ろうと」
デイジー「古来より強大な邪神や悪魔を封印する際に、よく見られた封印の仕方です」
イリスはその言葉に邪悪な笑みで以て肯定した。自分たちがされる行為を、敵対者にしてやろうというのだ。
「もう少し手こずるかと思ったが手間が省けた。今のうちに準備を進めよう。ここから何をすればいい?」
似非外国人の真似を止めて、イリスは寝る前に尋ねた。
寝る前さん「先ず奴の周囲に結界を張り巡らせ、周囲の空間と切り離す。次に奴を神に祭り上げるための格式をでっち上げ、祈りを捧げる。最後にどこか適当な場所へ封ずるのじゃ。結界についてはこの場の者でも出来るじゃろう」
「格式はどうするのだ」
寝る前さん「そこはカナエール教かポテチ王国で考えておくれ」
デイジー「えっ!?」
柚葉の問いはデイジーに丸投げされた。
「祈りを捧げるのは、何か形があるのか?」
寝る前さん「ゆっくりしている暇はないから、歌や踊りで済ませるべきじゃ。歌手と踊り子を手配して欲しい。結界の維持や見張りに魔法使いもまだまだ足りん」
ジュリアはヌーディストビーチの男性たちを思い出した。彼らはギーと同じ芸能事務所の所属で、ちゃんとしてるホテルに泊まっているはず。
「場所ってどこに封印するの?」
寝る前さん「飢餓に苦しむ国や世界、人々は無限におる故、そこに放り込めば即効で感謝されるじゃろう。説明は以上じゃ。では早い所取りかかろう」
寝る前さんはテキパキと話を仕切り、魔法使い系の仲間を集めて作業に入った。
「ジュリア隊長、私たちは事務所の皆さんに、声をかけてみようと思います」
「メディオラ、大丈夫か。まだ安んでたほうが」
「お恥ずかしい所をお見せしました。もう平気です」
「そうか、済まないな。チェッチカさん、彼女を頼む」
「任せてください。安全圏となれば尚更頑張りますよ」
「そちらのお二人も」
「自己紹介もろくにせず恐縮ですが」
「後にしましょう。それこそ全部片付いたときにでも」
「ありがとうございます。では私たちはこれにて」
ミシェルとチャンデラーは軽く頭を下げると、8402プロの四名が去って行った。
エロリア「うちも誰かいないか見て来るわ」
幕田「私も」
「うむ、また会おう」
「エロリアちゃん、無理しないでね」
エロリア「なーによ。私まだあんたのこと狙ってんだからね」
「え!?」
エロリア「逃げなきゃお持ち帰りしちゃうわよ、じゃーね!」
エロリアと幕田が去って行った。
「こドラモテモテだな」
「からかわないでよ隊長」
「こドラはかわいいから仕方がない」
「もー柚葉ちゃんまで、ってあれ?」
こドラが周囲を確認すると、この場にもう一人、残っているはずの人物がいない。
「ハピコがいない。さっきまでいたのに」
「本当だ。どこに行ったんだろう」
「イベントの発生を察知して雲隠れしたのでは」
三人は辺りを探したが、結局見つからなかったので、ホテルに戻ることにした。
「うっへっへ、一輪で豪邸なら、私は城に住めますなあ!」
ハピコが世界樹に貼り付いて、お花摘みに励んでいたとも知らず。そしてそれは結界が完成するまで続けられたのだった。