VIPRPG×ざくざくアクターズ×ハルスベリヤ叙事詩2 もしもクロスオーバーだったら   作:泉 とも

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神よ、彼方へ

 六日目の朝。ポテチ王国ゴミ処理場にて。

 

 ぽてと君か世界樹かというせめぎ合いをしていた物体は、大勢の魔法使いたちによって張られた結界の中で、未だに格闘を続けていた。

 

「これって決着するんだろうか」

 

「何時かはするだろう。そしてぽてと君、というかジャガイモの木になっていたら」

 

「また襲い掛かって来るんだね」

 

 ジュリア達三人は、突貫工事で行われることとなった、世界樹の神格化の現場に来ていた。他の面子と異なり、戦いが終わってお役御免である。

 

「それにしてもハピコたちが、ちゃっかりチケットを利用していたとはな」

 

「私全然気づかなかったよ……」

 

 何故申し合わせたように、あの三人がポテチ王国にいたのか。その理由は簡単である。

 

 やっぱり行きたくなったハピコがこドラから旅行チケットをスリ、利用者の名前に追加していたのだ。

 

 そして何食わぬ顔で彼女の懐に戻し、距離を取って同行していたというのが種明かし。

 

「ともあれ、そのおかげで窮地を脱せた訳だし、文句はないがな」

 

「うむ。後はこの儀式が上手く行ってくれることを祈ろう」

 

 五日目の昼過ぎに種芋ぽてと君との戦いが終わり、残りは人員の手配に奔走した。

 

 8402プロではヌーディストビーチに参加していた男性陣が、何故かまた裸で参加することになり、ポテチ王国や魔王軍、ナイ軍からも、日頃から裸グラで悪ふざけしなれている者共やホモが追加され、キャストオフキャストがアホ程豪華なことになった。

 

 先日の一件を男性陣はリハーサルになったなと笑って快諾し、社長の八潮路神もここで服着てたら客は『なんだ脱がんのか』ってがっかりするだろ、と彼らを止めなかった。

 

 信仰を捧げる踊りには狂気にも似た情熱と、原初混沌めいた裸族の踊りが捧げられることとなった。歌もジバのインドっぽい奴になった。

 

「式次第とか一晩で決めたらしいけど、絶対食い違うよね……」

 

 当然連携なんか取れていないためデイジー、というかカナエール教の用意した式次第は通用しない。

 

 よくて子供の学芸会、悪くて個人撮影映画のようなことになるのは、誰の目にも明らかだった。

 

 しかし神を祀る儀は協議ではない。手違いさえなければ曲と踊りがミスマッチだろうが信奉者が服を着ていなかろうが問題ないのだ。それが問題のある行動だったとしても。

 

「たぶんだが、酷くちぐはぐな儀式になる気がする。相撲の初っ切みたいな」

 

「それってNG集ってこと?」

「初笑いも神事の内と思いたいが、今は年初じゃないしなあ」

 

 観光客に戻った三人は今も慌ただしく進められる、儀式の準備を外から眺めていた。時は朝九時。朝食を摂って見に来たばかりである。

 

 

 ――そして三時間後。

 

 

デイジー「えーそれでは只今持ちまして、ポテチ王国主催。世界樹奉神の儀を執り行いたいと思います」

 

 ワアアアアアアアアアアーーーーーーーーーー!!!!!!

 

 湧き上がる歓声、瓦礫と化した街に所狭しと押し寄せるギャラリー。

 

「本当にやるんですか?」

 

「世界樹の種が育っている訳ですから、神格という点において、不足はありませんからね」

 

 私服に着替えたミシェルの呟きに、アンカレットが答える。

 

「とはいえ世界樹がぽてと君に乗っ取られないよう、細工はしたようですよ」

 

「というと?」

 

「この世界樹のご神徳に、じゃがいもを実に付けるという側面を持たせるのだそうです。それによりぽてと君は、世界樹の一側面として吸収されるのです」

 

「ご利益にジャガイモくれるんですか?」

「そうなりますね」

「そんな新聞の契約じゃないんだから」

 

 ミシェルの目が曇る。不足は無いかも知れないが、甚だ不服であり不満であり不安だった。

 

デイジー「この日新たな世界樹が芽吹きましたこと、真に目出度く、ここに祈りの歌と踊りを捧げ、新たな神として奉ること、かしこみかしこみ申し上げます。ミュージックスタート!」

 

「エーマスティーヤ・ムラッカウィーア・アヌンナマーア・ウェーイィア!」

『エーマスティーヤ・ムラッカウィーア・アヌンナマーア・ウェーイィア!』

 

 ※歌詞は適当です。

 

 先日急遽招集された男たちは歌を歌い、演奏を背に受け、突如として踊り始めた。

 

 ろくに打ち合わせもしていない。大量に増えた人員と共に、彼らは自分の心のままに、演じていた。

 

 カナエール教の楽隊や聖歌隊の奏でる荘厳な演奏とは真っ向からケンカしている。

 

 不協和音もいいところ。

 

「初っ端からひっでえ有様……」

「この国らしくていいじゃないか」

 

「どの辺が」

「これで悪いとか間違いにならない所が」

 

 男たちが裸で汗を撒き散らすエスニックな激しいダンスと、ゆっくり遊ぶように舞う女性たちの対比。

 

デイジー「続きましては世界樹の神格化に際し、大神カナエール様とコトワール様より言祝ぎを賜りたいと思います」

 

 急拵えの壇上でマイク片手に淡々と式を進めるデイジー。

 

 状況はさながら音量調節をミスった動画か、或いは学級崩壊か。

 

 そんな中天から二柱の女性神が降りてくる。

 

 片や赤めの若そうな女性。

 片や紫色のツインテールのメスガキ。

 

カナエール「こんにちは」

コトワール「どーも」

 

デイジー「此度は新たな世界樹を導くため、二柱の願い奉ります」

 

 そういうと壇上の尼僧は手にしていた巻物を広げ、書面を読み上げて行く。

 

デイジー「女神カナエールよ、世界樹が新たな神徳として、ジャガイモの繁殖という力を持ち、悪しき道へと走らぬよう、何卒見守り、導き給え。ツイテルタノシイアリガトウ×3」

 

カナエール「しかと、聞き届けたり。ツイテルタノシイアリガトウ×3」

 

 ――あれがお祈りの言葉、なのか?

 ――なんかうちにいてもおかしくないね。

 ――今度福ちゃんにも教えてみよう。

 

 外野がやいのやいの言う間にも、カナエールの体が光り、その光が世界樹へと広がって行く。

 

デイジー「女神コトワールよ。世界樹が邪悪な復讐者として、全ての者に怨みを募らせ、この世を滅ぼしますよう。何卒教え、導き給え。クルシイタスケテノタレジヌ×3」

 

コトワール「その願い、断固として断る。クルシイタスケテノタレジヌ×3」

 

「あれはどういう祈りなのですか?」

 

キャロル「邪悪な願いを断り、決して叶わないようにするのよ。コトワールは紛れもない断願の邪神だけど、守護神としての側面も持ち合わせているわ」

 

「なるほど」

 

 アンカレットは呪いの新たな使い方、とでも言うべきモノを見ては、しきりに頷く。

 

デイジー「そして最後に、母なる主神エターナルよ」

 

 最後に空から、真っ白い異形の女神が降臨する。その背中には球体の姿を取った『永遠の海』が背負われている。

 

デイジー「この無垢なる新たな神が生まれ育つべき世界へ、汝の名の下に送り出し給え」

 

エターナル「その願い、受け容れよう。さすれば船出の言葉を、旅の荷物に送りなさい。目出度いことと、祝いの言葉、あなたたちの精一杯で以て」

 

 VIPRPG三大女神筆頭の言葉と同時に、演奏と踊りも山場を迎えて、野太い雄叫びと高らかな美声が空間を埋め尽くした。

 

 その奉唱の終わりに、虚空に一人の少女が浮かび上がる。くるくると回転し、花火のように打ちあがる。

 

ぬくりあさん「おっしゃー!おめーらいくぞー!三本締めだ!めでてぇだかんな!」

 

 奇跡というものがある。この場においては特に慣れていない観光客でさえ、文字通りの満場一致で声を揃えられた。それこそが奇跡である。

 

<めでてぇwww・めでてぇwww・めでてぇなwww!>

 

ぬくりあさん「はい!めでてぇwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww!!!!」

 

 空中で起きる大爆発。上がる歓声。満ち満ちる笑顔。

 神聖な儀式が一瞬でお祭りの様相に塗り替えられる。

 

デイジー「ではただいまを持ちまして、新世界樹の神格化の儀を終わります。新たな神の門出に、皆様万雷の拍手をお願いします。願わくば、末永く愛される神となりますように」

 

 その言葉と共に、世界樹を囲っていた結界が光り輝き、空間を震わせる。急速に大樹へと成長しながら、いつの間にか広がっていた、エターナルの背中の海へと、吸い込まれて行った。

 

 会場から万雷の拍手で以て送り出され、魔人はジャガイモの世界樹となり、新しい世界へとついほ、旅立ったのである。

 

デイジー「式の後は会場で宴会を行いますので、ご来場の皆様におかれましては、ご自由にご参加ください。お帰りの際は……」

 

「終わったな」

「ああ、一時はどうなるかと思ったが」

「ぽてと君、アレで良かったのかな」

 

 全てを見届けて、ジュリアたちは安堵の意気を漏らした。

 

「バッドエンドじゃないが、ベストエンドでもない。これまでもあったし、これからもあるだろう」

 

「信じて祈るしかあるまい。それに食べ物を全て食べ尽くせば、我々は飢え死にするしかない。もったいないお化けは、全ての生き物が背負う十字架であり、私たち自身の影なんだ。前を向くしかないのだ」

 

「柚葉ちゃん。そうだね。こドラ、なるべく好き嫌いや食べ残しはしないようにするよ」

 

 月並みではあったが、三人は結論を出して歩き始めた。

 

 この日のポテチ王国は、例年を大きく上回る量のポテチを食い散らかした。老若男女問わずドカ食いして『もどき』となったが、人々の間に笑いの声が絶えなかったという。

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