VIPRPG×ざくざくアクターズ×ハルスベリヤ叙事詩2 もしもクロスオーバーだったら   作:泉 とも

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祭りの裏側

 じゃがいも世界樹が異世界に放逐された日。儀式が行われていた裏側で、戦い続ける者たちがいた。

 

ゴメス「フン!」

 

「ぽ!?」

 

ゴメス「フンフンフンフンフンフンフンフン!」

「ヴぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 無慈悲な肉棒が敵とは言えクロス先のモンスターを蹂躙する!

 

ゴメス「破アッ!」

「ッアーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 吐き出された膨大な白濁液によってぽてと君が破裂!消滅!大爆発!

 

アレックス「おらもういっちょ!」

「ぽて!?」

 

『もしもの力』を宿した勇者が軽快な音と共に、ぽてと君を吹っ飛ばす。その先に待ち受けるのは、下半身を露出させたゴメス。

 

 この道一筋二十年。彼にすればどの程度の力と角度で当たれば、相手をどこに飛ばせるかは手に取るように分かる。

 

 ある意味永遠の相棒の一人であるゴメスの元に送るなど造作も無いことだった。

 

ゴメス「フン!」

 

「ぽ!?」

 

ゴメス「フンフンフンフンフンフンフンフン!」

「ヴぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 無慈悲な肉棒が敵とは言えクロス先のモンスターを蹂躙する!

 

ゴメス「破アッ!」

「ッアーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 吐き出された膨大な白濁液によってぽてと君が破裂!消滅!大爆発!

 

 ループアニメーションの如く繰り返される作業によって、駆逐されていくぽてと君たち。彼らは種芋ぽてと君に吸収されず、この国に残った個体である。

 

 当然放置して良いモノではない。正に『こんなこともあろうかと』備えていた者がいた。それが。

 

やみっち「今のでラストだよ。お疲れちゃーん!」

 

 闇社会のキュエーンことやみっちことダークネスⅠであった。

 

ゴメス「やはり男のケツじゃないと物足りんのう」

アレックス「一安心だが、美味しい所は皆に持って行かれちまったな」

やみっち「あんたが海の向こうまで吹っ飛ばすからでしょ」

 

 大量にポップしたぽてと君から皆を守るため、最大限遠くまで吹き飛ばしていたアレックスだが、それが仇となり種芋ぽてと君に吸収され損なった者が、結構な数で出た。

 

 まあそのおかげで完全回復が出来ず、世界樹への浸食がギリギリで止まったので、功罪と言った所である。

 

アレックス「面目ない。しかしまさかやみっちがこんな船を持ってたとはな」

 

ゴメス「しかもあのバケモノの討ち漏らしを倒しに行けとは、中々の戦術眼じゃわい」

 

やみっち「私は闇社会のキュエーンだからね!と言いたい所だけど、実際は依頼主がいたの。まだぽてと君は残ってるか?ってね」

 

 ギー・ド・カダンは冷静だった。大ボスを倒しても生き残りがいるのは、ホラー展開のお約束である。

 

 そしてスマホを通じてやみっちに依頼を出したのだ。陸上は他の冒険者たちと、掃討が進められたが、海に飛ばされたモノについては、誰も知らなかったからである。

 

アレックス「そうか。誰かは知らないが気が付く奴がいたもんだ」

 

ゴメス「全くじゃ」

 

やみっち「ともかくこれで依頼は完了ね。そろそろこの「スマホとがらけの二刀流も疲れるから、そっちに迎えに行くわ」

 

 そしてカティサークはアレックスとゴメスを回収し、暮れなずむ水平線を背にして帰路に着く。

 

ゴメス「良い船じゃのう」

やみっち「あ、わかる?」

 

ゴメス「ああ、風と波の音を味わうための船じゃ」

アレックス「珍しく海の男っぽいことを言ったな」

 

ゴメス「こういう船を用意するとは、金周りから考えるとシンシアの物か?」

 

アレックス「あいつがそんな風流の分かるかタマかなあ」

 

やみっち「まあそこは守秘義務ってことで」

 

 彼女は近くの港に停泊し、アレックスとゴメスを降ろすと、二人は音も無く消えた。

 

 またいつもの追いかけっこが始まったのだ。

 

 結果は見えているが、繰り返されることそれ自体が、人々に安心を与えることもある。

 

 例えそれが、勇者がホモにケツを掘られることだとしても。

 

「やあ。終わったかな」

 

やみっち「ありゃ珍しい」

 

 港にはギー・ド・カダンが待っていた。彼女はタラップを踏まず、ふわりと宙に浮き、自分の船へと上がった。

 

やみっち「たった今片付いたとこよ。少なくとも確認が取れた奴は、これで全部ね」

 

「そうか。よくやってくれた」

 

 それだけ言うと、ギーは船縁まで行き、夕日を見た。

 水平線に沈み行く、茜色を。

 

やみっち「当然だけどこれも別料金だから」

「なあ、ダークネス」

やみっち「あによ、びた一文負けないからね」

 

 潮風が二人の髪を揺らし、海鳥の鳴き声が響く。

 

「まだ時間は、あるかな」

 

 夕日さえ退ける赤く深い瞳が、少女へ真っ直ぐに向けられていた。そこには敵意も悪意もない、

 

やみっち「……どこまで行くの」

「暗くなったら帰るよ」

 

 目を伏せて溜息を吐くやみっちに対し、ギーは返せる答えを返した。

 

やみっち「いいわ。行こう」

 

 一人の女性と一人の少女を乗せて、カティサークが進む。光の中に白波を蹴立てて。

 

 ――別荘の辺りに停めるよ。

 ――分かった。

 

 ――こうして夕日を見ていると、あの日を思い出すよ。

 ――結局最後まで話すんだ。

 

 ――この国に来たときは、いつもそうしてるだろう?

 ――ボケたばーちゃんじゃないんだから。

 

 ――その日が来るまで、同じ話をするよ。

 ――どっちがボケてんだか。

 

 回想シーン。

『昔語り』の続き。

 

「ねえ、どこまで行くの……?」

 

 街を離れて見知らぬ山の中を、二人の少女が歩いていた。一人は未だ服を盗まれたままでよたよたと、もう一人は盗んだ服でドカドカと。

 

やみっち「もうちょっと。いいもん見せたげるから」

 

 まだ開発もされていない藪を抜けて、辿り着いたのは小高い崖の上。

 

 眼下の海と空とを一望することが出来るそこは、圧倒的な景観を誇っていた。

 

「はあ、はあ、まだあ?」

やみっち「もうちょい、いよっし間に合った!」

 

 茂みをかき分けて飛び出し、先に待っていた少女の隣に立つ。

 

そしてもう一人の少女、幼き日のギーは、天地を見た。

 

 夕日に染まる海と空。自分に向けて吹き付ける風と波の音の全てが、余すことなく彼女を包んだ。

 

 この瞬間、ギーは自分の中にあった傷や曇りといった感覚が、一斉に洗い流されていくのを感じていた。

 

 五感の全てが洗練されて、魔法使いとしての才が目覚める。

 

 ――お前が導いてくれたんだ。

 ――そこは完全に偶然だったんだけど……。

 

「きれい……」

 

 胸に押し寄せる膨大な感傷が、大粒の涙となって押し出されて行く。崩れそうな体を、闇の魔法が支え、包んだ。

 

 その闇は優しく、温かかった。

 

やみっち「良い思い出の一つくらいには、なったんじゃないかな」

 

 ――私も昔は金無かったからさ、カッコつけるにはああするしかなくって。

 

 ――十分過ぎたよ。

 

「……私、もう帰らなきゃ」

 

やみっち「そうね、シンデレラでも人魚でも、最後は帰るのが相場ってもんよ

 

 泣き腫らし、日も沈み切ると、ギーは体を離した。

 

やみっち「あっと、服も返すね。結構汚しちゃったけど」

 

「いいの。それあげる。持ってて」

 

やみっち「でもこれって」

「いいの。その方が、いい思い出になりそうだから」

 

 ――自分のみすぼらしいのが嫌で盗んだのに、くれるってんだから面目丸つぶれよ。

 

 ――そうだったのか。ならもっとあげれば良かったな。

 

やみっち「……じゃあ、貰ってあげるわ。ありがたく思いなさいよ」

 

「ふふっそうだね。ありがとう、あっ」

 

やみっち「なに?」

 

 ギーはここで初めて、まだお互いの名前を知らないことに気付いた。

 

「名前……」

 

やみっち「名前、か。私は夜空が落とした漆黒の真珠、明日の闇社会のキュエーン!その名も!」

 

 シュッシュッと動き、ぴょんぴょんと跳ねて、最後にくるくると回り、ビシッとポーズを決める。

 

やみっち「ダークネスⅠ!」

 

 ジャキーンという音が聞こえてくる。

 

「変わった名前だね」

やみっち「まーね。あんたは」

 

 ――正直、魔法具現化のことを知らなかったとは思わなかったわ。

 

 ――教えてくれなかったのは、気を遣ったからかな?」

 

 ――まーね。

 

 魔法具現化、自然界に存在する精霊の魔法版である。

 

 自然界に存在する魔力が長い年月をかけて溜まり、魂を集めて意志を持ち誕生するのが精霊なら、それを魔法で短期間のうちに行われ、発生したのが魔法具現化である。

 

「ギー、ギー・ド・カダン」

 

 その名の意味は、水と風に愛された者。

 

やみっち「そ。それじゃあね、ギー」

 

「ありがとう、ダークネス。これでお別れなのかな」

 

やみっち「きっとね。今夜のあたしは妖精さんよ。あんたを一時(いっとき)慰めて、思い出になって消える役目なの」

 

「また会いたいよ」

 

やみっち「そんときは本性見せて、服以外もぶんどっちゃうわよ。ほら、戻った戻った」

 

 二人は薄紫色になった街へ帰り、大人たちに怒られたりしてから別れた。

 

 

 それから何年かの月日が流れた。

 

 

やみっち「まさか出世して、ちょくちょく来るようになるとはね」

 

「ふふふ、恋する女は恐ろしいよ」

 

 夕日が水平線に完全に沈む頃、ギー・ド・カダンは微睡んでいた。

 

 あの日のままの闇に抱かれて、安らぎに流されるまま、瞼を閉じて雫を流す。

 

「ただいま。ダークネス」

やみっち「うん、まあ、お帰り」

 

 水面の上のカティサーク。月が舞台に昇るまで、小舟のように揺蕩って。

 

 おお、うるわしのカティサーク。

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